前回の復習と今回のテーマ
今回のエピソードは、前回のエピソードの続きとなっております。 まだ前回のエピソードを聞いていない方は、聞かなくても楽しんでいただける内容だとは思うんですけど、前提知識となっているものもたくさんあるので、できれば前回のものを聞いてから、今回のを聞いていただけたらと思います。
前回の話は、意味役割というのをテーマに取り上げました。 意味役割というのは、名詞、ないし名詞句の文中における役割のことで、例えば、意思をもって何かを行う者はエージェント、動作の影響を受けて変化する者はペーシェント、あるいは道具、インストゥルメントと言われる意味役割も認められて、
太郎がトンカチで窓を割ったといった場合、太郎が動作を行うエージェント、トンカチでこれは道具、窓が変化するペーシェント、このように文の中では実現しています。
エージェントは主語になりやすくて、ここではペーシェントが目的語に現れていて、
道具のインストゥルメント、トンカチでっていうのは、でというある意味脇役として現れていますが、
例えばこのトンカチインストゥルメントっていうのは常に脇役というわけでもなくて、
確かに脇役のことが多いかもしれませんが、例えば英語だと、
This key opens the door とか言った場合、この鍵がドアを開ける、とかいうことができるんですよね。
この文で、This key っていうのは、道具ということができて、エージェントとはちょっと言いづらいんですね。
というのが、鍵自体が何か意思を持ってその動作を始めているわけではないので、ここではやはりインストゥルメント、道具だと思います。
このように主語や目的語には、あらゆる意味役割が現れうるんですが、主語にはエージェントが現れやすくて、
逆にペーシェントとかシームって言われるものは目的語として現れやすいみたいな話を前回したんですよね。
今挙げた例のように、道具みたいなものが主語になることもあります。
今回のエピソードは、意味役割がどのように文中で実現するか、つまり主語として現れるのか、目的語として現れるのか、そのバリエーションみたいなのをちょっと見ていこうと思います。
エージェントとペイシェントの典型的な配置
BGMです。
始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。高山敏樹です。
前回のエピソードでもお話しした通り、エージェントっていうのは主語として現れやすいです。
で、典型的な他動詞っていうのはエージェントが主語で、ペーシェントが目的語となるようなものなんですよね。
太郎が窓を割る。花子が紙を破く。
この太郎とか花子というのがエージェントと言われるもので、動作を意識的に始めて行う、遂行するような、そういった典型的には人として現れるものです。
一方、窓とか紙っていうのは変化する対象で、状態が変わるわけですね。
そういったものはペーシェントで目的語として現れやすいです。
受動態っていうのはこれが逆転するというか、ペーシェントが主語となるような、そういう統合操作みたいな言い方ができます。
窓が割られる。紙が破かれる。ここではペーシェントが主語として現れています。
受動態の話は置いといて、エージェントとペーシェントを要求するような動詞は、
普通エージェントが主語、ペーシェントが目的語として現れます。
もしペーシェントを主語にするんだったら、受動態みたいな特殊なことをしなきゃいけないんですね。
この辺の話は過去にエピソード撮ったことがある気もするんですが、
ひとまずエージェントとペーシェントがあるならば、エージェントが主語、ペーシェントが目的語。
これがかなり強い傾向としてどんな言語でもあると思います。
ただ、どっちを主語にしてどっちを目的語にするかっていうのが、少し揺れがあるというか、
あるいはどっちのパターンも存在するみたいな組み合わせもあるんですね。
エクスペリエンスとスティミュラスの配置の揺れ
それがエクスペリエンサーとスティミュラスと言われる2つの意味役割のペアです。
エクスペリエンサーっていうのは経験者、スティミュラスっていうのは刺激物とか言っていいと思うんですが、
例えば、見るとかかなと思います。
太郎がテレビを見る。
この文において太郎がエクスペリエンサーで、テレビがスティミュラスです。
さらに言うとエクスペリエンサーが主語で、スティミュラスが目的語なんですよね。
しかし、エクスペリエンサーとスティミュラスを要求する動詞が、
常にエクスペリエンサーを主語にして、スティミュラスを目的語にするわけではないんですね。
これがエージェントとペーシェントのペアとはちょっと違うところです。
like という英語の動詞について考えてみると、
私はその結果を気に入ったとか言うときに、
I liked the result とか言えるんですよね。
ここで I は経験者で主語として表れていて、
the result 結果というのが、スティミュラスが目的語として表れています。
これは like という動詞を使うと、そういう配置になるんですが、
please 喜ばせるという動詞を使うと、今のが逆になって、
the result pleased me となるんですよね。
そうなると、the result スティミュラスが主語として表れていて、
me エクスペリエンサーが目的語として表れているので、
I liked the result と逆転してますよね。
英語には割とこういうものがあって、
例えば fear 恐れるという動詞は、
エクスペリエンサーが主語、スティミュラスが目的語ですが、
frighten 恐れさせるみたいなものは、
主語にスティミュラス、目的語にエクスペリエンサーが表れます。
I fear dogs だったら、私は犬が怖いですけど、
dogs frighten me だったら、犬が私を怖がらせるとなるんですよね。
このエクスペリエンサーとスティミュラス、両方主語になり得るというのは、
どちらも主語としての資格がある意味であるからなんですよね。
例えばエクスペリエンサーの方は、普通人が主語になるんですよね。
人、人間というのは主語になりやすいので、
そういった意味でエクスペリエンサーが主語になりやすい。
一方、スティミュラスの方は動作を誘発する原因なんですよね。
つまり動作の発端というか始まり、起点ということができます。
そういった意味で主語になりやすいので、どちらのパターンも認められるんですよね。
副多動詞と壁塗り構文
日本語はどうですかね。
あんまりスティミュラスが主語になるような構文みたいなのは、それほど多くないかもしれません。
さて、今までの話は多動詞についての話で、どっちが主語でどっちが目的語になるかというような話でした。
それとは別に副多動詞というのも考えられて、これは3つ名詞句が出てくるような動詞です。
目的語っぽいのが2つあるような動詞のことを副多動詞って言うんですね。
副多動詞については関連エピソードがあるので、ぜひそちらも合わせて聞いていただけたらと思います。
この副多動詞でも、どの意味役割を目的語にするかっていうのがちょっと揺れがある場合があって、有名なのは壁塗り構文と言われるものです。
日本語で考えることもできて、壁をペンキで塗るということもできれば、ペンキを壁に塗るということもできます。
今回の場合は主語については動作集、エージェントで共通しているのであまり考える必要がないのですが、
これらの文において、壁は location で、ペンキは patient と考えることができます。
壁をペンキで塗ったといった場合、ロケーションが目的語として表れていますが、ペンキを壁に塗る場合は、
patient のペンキが目的語として表れています。
塗るという動詞は、3つ意味あくわりが必要で、エージェント、これは主語として表れればいいと。
残りの2つ、patient と location をどっちを目的語にするかで、2つパターンがあるということですね。
日本語は二重目的語構文みたいな、2つ目的語が出てくるというのは許されないので、
どっちかを目的語にすると、どっちかは脇役に回るしかないんですね。
ペンキでとか、壁にとか、でとかにというのが必要になります。
というわけで、意味あくわりは主語になりやすいものとか目的語になりやすいものとか、ある程度傾向があるものもあるんですけど、
エクスペリエンサーとスティムラスみたいに揺れがあるものもあったりとか、壁塗り構文みたいなのもあったりとか、結構面白い現象もあるんですね。
まとめと次回予告
というわけで今回はここまでということで、また次回のエピソードでお会いいたしましょう。
番組フォローをまだしていない方はよろしくお願い致します。
お相手はシンガ15でした。