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皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
脳の調子もちょっと良くなってきたので、今日はXやFacebookでもつぶやいた話題についてお話ししたいと思います。
題名は、物差しをあてて字を書いた年賀状、というものです。私は、初任校が商業高校だったんですけど、結婚の関係で2年で転勤しまして、定時制に勤めることになりました。
初担任をここの定時制でしましたね。その時、35人入学生がいたんですけど、どんな子がいたかというと、全日制を不合格で落ちてしまった子や、不登校の子、働いている男の子や女の子、
大体男の子が多かったんですけど、陶美職さんとか塗装工とか建設現場で働いている子が多かったですね。女の子はホステスさんもいたりして、厳しい状況で学校に通ってきていました。
夜間定時制だったので、働いている子が多かったんですけど、30歳ぐらいの中学校を卒業しただけの子で、もう一回高校の資格を取りたいという、ちょっと大人の人とか、それから暴走族が結構たくさんいましたね。
それから、やっぱり障害を持つ生徒もいました。今にして思えば、24、5歳でこんな重い課題を持つ生徒を35人も受け持つっていうのが、本当に信じられないんですけれど、私本当に何もできなくて、自分の力量の無さを嘆いていたように思います。
でもね、長い年月経って振り返ってみると、結局これって教育の現場の本質だと思うんですよね。本当に多様な生徒、重い課題を持った生徒はたくさんいるわけで、そんな中で学力っていうもので輪切りにされて、そういう学校にしか来れなかった子っていうのは、どこの教育現場でもいると思うんですよ。
その人たちを1.235名引き受けた私は、1人抜け2人抜け3人抜け気がついたら、2年生に明かれたのは14人。家庭訪問を繰り返し、何度も何度も給学届や退学届を書いて苦労した1年間でした。
その中に知的障害を持つS君という生徒がいました。S君は手が不自由だったし、知的障害もあったし、言葉もあんまり明瞭に出なくて、コミュニケーションがとても難しい子だったんですね。
でもね、無遅刻無欠席、真面目に通ってました。プリントとかもうまくスピードを持って字が書けないんだけれど、必死で喰らいついて字を書いてプリントを撤出するっていう、本当に努力家で真面目で粘り強くて根性のある生徒だったですね。
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やっぱりね、人に対して本当に誠意があって一生懸命なんですよ。例えば野球部に入部したんですけど、手が不自由な彼はボールなんか投げられない。でもね、ずっと球拾いをやってました。
球がこぼれたらターッと走って行って、たどたどしい足で走って行って一生懸命ボールを拾って行って、そういう彼を見て野球をやっていた野球部のね、バンカラな連中たち、暴走族とか夕食少年さんたちは彼を見て彼を守ったりしてました。
というのもやっぱりそういうね、障害を抱えてたどたどしくて本当に弱々しい感じだったんで、多分どこかでからかわれたりちょっかい出されたり、ちょっとしたいじめを受けてたと思いますね。
そういう中野球部の生徒に守られながら、一緒にずっと頑張ってきました。私も担任だったんで、いろんなことで話しかけたり面談するんだけれど、急に話しかけたら逃げるんですよね。びっくりしちゃって。
それでも一生懸命話しかけて、彼は言葉にならない言葉で、はいとかいいえぐらいしか言えなかったりと、そんな中でも毎日毎日おはようとかさよならとかね、声かけをしながら一緒に時を過ごしてきました。
そしてこの12月ですね、そそそっと近づいてきて、あのとかっていう感じでね、紙と鉛筆を差し出すわけですけど、それ見たらアドレス帳だったんですね。おそらくこれってもしかして年賀状書いてもらえるの?って聞いたらうなずくんですね。ありがとう、私も届いたら返事を書くねということで、私の住所を書いて渡しました。
お正月が来て彼の年賀状が届きましたね。鉛筆書きでした。物差しを当てて一字一字、何度も消した跡がありました。表書きはあのちゃんと住所書いて名前書いて黒瀬直美先生。裏はあけましておめでとうございます。これだけです。涙が出ましたね。
思い必死で丁寧に届くまでどんな気持ちで待ってたんだろうとか、私の方も届いてから相手を思う気持ちが生まれてきました。
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ずっと苦労しながら学校に通って、それでも相手を大切にして、自分自身にも負けないで自分の行きたい学校にずっと通っていたんだと思います。
人間は優劣ではない。生きていく様子、生き様が勝負なんだなと彼から学びました。書くっていうのはこういうことなんだと相手への思い、必死に伝えること、心と体で伝えること。
デジタル時代なんですけど、もう一度書くっていうことを見直したいなと。12月になったら彼のことを毎年思い出しています。すいません、今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。