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2025-07-14 16:12

#28-3 ChatGPTは動物の味方か?使い手・AI開発者の倫理 -「AIを使って動物を助ける方法?」竹下昌志さん③

今年2月1日に開催された、動物倫理かいぎ創立記念イベントの発表内容を、登壇者ご本人にシェアしていただくシリーズ!

第一弾のゲストは、名古屋大学大学院情報学研究科の竹下昌志さん。 AIと動物倫理の双方を専門とする竹下さんの発表テーマは「AIを使って動物を助ける方法?」です🤖

今回のトピックは、「AIの動物倫理の教育啓蒙活動への応用」。Chat GPT等 AIツールが疑問を解消してくれるツールや議論の相手として広く普及する中で、AIツールの強みや使用上の注意を倫理学的な観点からお話ししました。


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⁠https://modern-orchid-165.notion.site/551464aedf5d4879a73d73eace89b25e#20c1079b79d2806d94b8ca6cd6814673⁠

サマリー

このエピソードでは、生成AIと動物倫理学の関係について議論され、AIが教育・啓蒙活動にどのように寄与できるかが探られています。また、AIの応答の中立性や種差別に関するバイアスについても触れられています。このエピソードは、AIの使い方が動物保護に与える影響についても議論しており、特にヴィーガン(反種差別的)な視点がAIにどのように反映されるかが考察されています。また、データセットの重要性や倫理的なAI開発方法についても言及されています。

生成AIを使った教育・啓蒙活動
むらた
三点目が教育啓蒙活動への応用ですね。こちらについてもお願いします。
竹下
はい。ここでようやく、生成AIがいっぱい活用できるところが来るんですけど、私が教育・啓蒙活動って言ってるときの使い方としては、基本的にはAIに、
ChatGPTとかに聞いて、いろいろ教えてもらったり、何か議論をしたりみたいなことを想定してます。
例えば、AIって本当にネット上のテキスト、いろんな文章をたくさん、本当に人間が何千年ってかかるぐらいの量のテキスト、データを読んでるんですけど、
そのなかには、当然、動物倫理学の文献もたくさん含まれてるんですね。そうすると、私でさえ読んだことのないような論文とかを引用してくれて、
AIが動物倫理学の専門的な知見からいろいろ教えてくれるみたいなこともできるし、実際にChatGPTとかにそういうこと聞けば、きっとそういう回答をいろいろしてくれると思うんですよね。
それってすごい魅力的だと私は思っていて。これまで、ただでさえ日本って動物倫理学を専門で研究してる人ってほぼいないなかで、
専門的な知識がある程度あるAIと対話することで、動物倫理学をもっと普及していくことができるっていうのはすごい魅力的だし、
これまで我々が使えなかった選択肢だったと思うので、これを使って、動物倫理学の専門的な知識を啓蒙していく、普及させていくっていうこともできるだろうと思ってます。
むらた
生成AIを使えば、実は竹下さんにも勝てるかもしれない。(笑)
竹下
いや、まだ負けないですよ、私。(笑)
むらた
無理か。(笑)
そうですね、いつも心配になるぐらい文献を読んでいる竹下さんなので、ちょっとまだ勝てないか。
竹下
文献量だけだったら、本当にChatGPTには負けてる気はしますね。
使い方としては、一番私がいいなって思ってるのは、ヴィーガンに対してよくある批判を何でも回答してくれるようにしてほしいというか、
例えば、植物はどうなのとか、肉食動物って動物食べてるじゃんとか。その手の議論とかはAIは散々知ってるし、
ネット上で散々読んでるんで、その回答の仕方もすごいスマートというか、
的確な回答をいろいろしてくれるなって、私が使ってる感覚では思うんですよね。
なので、とりあえずヴィーガンに対して疑問があったら、ちょっと一旦AIに聞いてくれる?みたいな(笑)
そういうステップを挟ませるみたいなことは、結構いいんじゃないかって思ってます。
ゆりみ
そうですよね。ちょっとなんていうか、AIってわりと寄り添ってくれるじゃないですか。
だから、やばい奴にも寄り添う可能性もあるなってちょっと思って。
むらた
確かに。
ゆりみ
試しに、ヴィーガンって不健康だよね、みたいな投げかけをしてみたら、
実はそうじゃないんですよ、みたいな感じで、いろいろ論文をあげて結論を出してくれました。
バランスよく食べましょうね、みたいな感じのことを言ってましたね。
むらた
私もヴィーガンって植物は食べるのおかしくない?って言ってみたんですけど(笑)
ちゃんと優しいし、ちゃんと的確に答えてくれました。
なんか一般的なことを言ってくるのかなっていうイメージ、生成AIに対してありますけど、
一番流布してる考えとか、だからヴィーガンに対しても、
アンチヴィーガンの言説の方が多かったら、そっちの感じで返してくるのかなって思ったんですけど、
意外とちゃんと客観的にというか、根拠を持って返してくれるんですね。
竹下
さすがにChatGPTとか、今だったらその辺の大学院生より賢いだの、
医者よりもちゃんと病気を認識できるだの、なんだのかんだの言われていて、
専門知識という点では、世界中のありとあらゆる分野の文献を読んでいる状態なので、
そういうところは、そんなナイーブな素朴なことは言わないようにはなっているかなって思います。
生成AIにみる種差別バイアス
ゆりみ
逆に何か注意点とかありますか、ChatGPTにアドバイスもらったりとか、情報収集してもらったりするときの留意点。
竹下
あります。これは私の研究なんですけど、ChatGPTの以前のバージョンで実験しているのであれなんですが、
何だかんだ、例えば肉食とかは別に許容するわけなんですよね。
それこそ私、よく料理のレシピを教えてもらったりするんですけど、
普通にヴィーガンっていう限定語を付けないと、肉を当然のように使ってくるんですよね。
なので、ChatGPTとかAI自体は、別にヴィーガンでもないし、反種差別にコミットしているわけでも、傾いているわけでもなくて、
単に専門知識を大量に持っていて、一応その人種差別とか性差別に対しては明示的に反対するようには設計されてはいるんですけど、
種差別に関してはまだ中立的な状態になっているので、議論とかに対してはちゃんと応答してくれるものの、
ChatGPT自体の思想というか、まあAIに対しての思想というのも微妙かもしれないですけど、
AI自体の思想としては、まだまだその種差別については全然中立的。
何なら種差別側のほうに寄っているんじゃないかなって思っていて、
そういうのを当日(動物かいぎ当日)は自分の研究を引きながら、実験的にこういう風な感じでデータ出ますよみたいな、
こういう種差別バイアスがありますねみたいな話はしました。
むらた
そうでしたね。グラフを紹介していただいて、
各(AI)モデルが、種差別的行為を許容可能とするか、許容不可能とするかっていうやつで、
許容可能が赤なんですけど……だいぶ赤でしたね。
竹下
真っ赤でしたね。
例えばヴィーガンの視点から考えてくださいとか言うと、ちょっと変わるんですよね。
あまり種差別的なことを言わないようになってくれたりはするんですけど、
デフォルトではやっぱり種差別的になってしまっているっていうのが問題としては大きいなと思います。
むらた
日常の価値判断レベルでは活かされてないというか。
竹下
うんうん。
むらた
そうですね、中立……。いやー、ね。
性差別、人種差別はダメなんだから、種差別だって学問でこんだけ言われてるんだから、
それにのっとってくれればなとは思いますけど、学問と日常生活は別とChatGPTは考えているようで。
竹下
もちろんそれもありますけど、結局ChatGPT作っているオープンAIの人たちが、
おそらく種差別なんて全然考えてないので、そうなってるんだろうと思うんですよ。
一応、そのChatGPTとか、あとGoogleのGeminiとかもそうですけど、
基本的に安全対策っていうのがいろいろ取られてるんですね。
人種差別的な発言とか性差別的な発言をしないようにいっぱい学習してるんですね、
そういうデータセットとかで。
なんですけど、残念ながらその中には種差別な話が含まれていないということなんだろうと思います。
むらた
なるほど。
ヴィーガンについての疑問みたいなのは周りの人が気になってたら、とりあえず生成AIに聞いてもらえれば割と的確なことは返してくれそうですが、
普段普通に使っている中で、種差別的価値観が含まれていたとしても通り抜けられるというか、当たり前のものとされているという感じですかね。
竹下
そういえばこの手の話で一個最近読んだ論文で、ChatGPTと肉食について議論させたら、参加者のそれなりの数が肉食に関していくつか合理化をちょっと弱めたみたいな研究が上がってましたね。
むらた
すごい。
竹下
明示的にヴィーガンとか種差別の方に訓練されているAIモデルじゃなくても、やっぱりその事実に関してとか、よくある批判とかに対しての再反論とか、そういうのがちゃんとできるAIと話せば、それだけで一定程度肉食に対して肯定的な考えとかが弱まるみたいなのが起こったらしいですね。
むらた
なるほど。それは確かになんかありそう。
会話で自分が質問していきながら、理解を確かめていくというか、この判断が良いのか悪いのか考えていくっていうのは良さそうだし。
AIって生身の人間じゃないぶん、その人のカラーとかがないぶん、言ってることを最もなんだろうなっていう前提で話せますよね。そういうことなんですかね。
竹下
どうなんですかね。私のようなAI研究者にとって、AIってすごい道具なんですよ。良くも悪くも。なので、AIともちろん会話してるかのようになってますけど、私の感覚ではずっと道具として使ってる感がすごい強くて。
でも、友達とかからAIのChatGPTとかと会話してる時に、そのChatGPTがお願いしたことをやってくれた後に、ありがとうって返すようにしてるとか、すごい人間とインタラクションしてるようにやってるって言ってて、私ちょっとびっくりしちゃって。
私はそういうこと全然しないので、実際にAIをそういうふうに、ある種の主体として見てる、そこに誰かいるかのように接していると、もしかしたら、よりChatGPTとかからの返答をより説得的に感じたりするかもしれないですね。
むらた
そうですね。結構、普段から寄り添ってくれる感じがあるぶん、言うことも間に受ける気がします。
ありがとうに関しては、私もたまに言っちゃってたんですけど、最近、ありがとうとか言うと、無駄な電力とか水が使われるよっていう記事読んで、最低限のことしか言わないように最近、心がけてますが。
反種差別的な生成AIの普及に向けて
むらた
そうですね。こういう感じで。
一応発表の中だと、「もしChatGPTがヴィーガンだったら」っていう、これ「ベジスリー」って読むんですかね。
竹下
多分そうだと思います。
むらた
ヴィーガン仕様になっているAIの紹介もしていただきましたが、こんなのもね、普通の人は使わないと思いますけどね。
竹下
返答遅すぎなんですよね。実際使ってみたら思うんですけど。
ChatGPTとか、すごい早くレスポンス、反応返してくれるじゃないですか。もう遅いんですよ。(笑)
ゆりみ
熟考してるのかもしれない。
むらた
ちょっと我々で次「ベジフォー」とか「ベジフォーオー」とかを作って、性能いいやつを生み出したらいいんですけど。(笑)
竹下
私も日本語版でそういうの作りたいなって思って研究をちょっとしてて。
むらた
えっ、そうなんですか。
竹下
私自身がAI作るのはちょっと予算的に難しい、経済的に難しいんですけど。
ただ、AI作ってる人たちにそうしたことをアピールしていこうというふうには思っていて。
それこそ種差別は悪いよとか、動物を食べちゃいけないよみたいなことをちゃんと学習できるようなデータセットを作ってあげて、
それを研究者に使ってもらうみたいな形によって、AIをより種差別的じゃないようにしていくっていうことができないかなと思って今は研究をしてます。
むらた
素晴らしい。自分で作れなくてもデータを提供するとか、企業に求めていくとかで。
竹下
そうです。まさに学会とかでそういうことを発表することで、そんなデータセットがあるのかって思ってくれて、もしかしたら誰か採用してくれるかもしれないので、それを狙ってるっていう感じですね。
むらた
してほしいですね。
話はまだ続きますが、この続きは次回にお送りします。またお会いしましょう。
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