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2024-01-18 16:21

e54 食べ物の好き嫌いと免疫

食べ物の好き嫌いと免疫系・アレルギーとの関係を明らかにした研究の話です。


https://www.sciencedaily.com/releases/2023/07/230712124624.htm

https://www.sciencedaily.com/releases/2023/07/230712124604.htm


https://www.nature.com/articles/d41586-023-02179-3

https://www.nature.com/articles/s41586-023-06188-0

https://www.nature.com/articles/s41586-023-06362-4

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結構前にとある知り合いが話していたことなんですけど、
彼女の子供が卵を食べようとしないそうなんです。
嫌いだって言って、せいぜい一口食べるかどうかなんだそうです。
で、ある時、そんな好き嫌いをしててはいけないって言って叱って食べさせたんですね。
そうしたらその後に気持ちが悪くなって全部吐いてしまったそうなんです。
で、彼女が言うにはきっとアレルギーがあったんだろうっていうことなんですね。
でも親がその時までアレルギーだっていうことに気づいてないっていうことは、こんな風に吐いてしまうことが何度もあったわけではないと思うんです。
で、そうであればその本人、子供もアレルギーがあるってわかってないはずなんです。
でもそれを感覚的には嫌いな食べ物であるって認識してるんじゃないかってことなんですよね。
でもそんなことってできるんだろうかって不思議に思ったんです。
そのアレルギーを起こしているのは免疫系なんですよね。
だから原因物質であるアレルゲンも免疫細胞が検出しているわけなんです。
でも物が好きかどうかっていうのは脳の神経が決めていて、味とかは感覚神経が感知して、それが脳に伝わるわけです。
免疫系も脳神経系っていうのもどちらも脳を記憶するっていう特別な能力を持つシステムなんだけど、全く別のシステムなんです。
だからアレルギーがあったとして、その吐いたりとかそういう反応が起きてない状態でその情報が脳に伝わるもんだろうかって思うんです。
ただ脳と免疫系っていうのはお互いが制御し合うっていう話があるんです。
例えば脳でできるコルチゾールっていうストレスホルモンは免疫反応を抑制するっていう働きがあるんですね。
逆に免疫系は感覚神経の一部を刺激して脳に影響を与えることができるっていうのもわかっているんです。
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でもこんな風に免疫系や神経系の全体へ作用するっていう話ではなくて、特定のアレルギーに関する免疫の記憶が脳に作用して食べ物の好みを変えることがあるかどうかははっきりしてないんです。
もしそうであったとしてその仕組みが何なのかっていうのは全くわかってないわけです。
最近まさにこの点を調べた研究が発表されていたので、今日はその話をしていこうと思います。
ホットサイエンティストへようこそ、こなやです。
今日紹介する研究は2023年7月のネイチャーの同じ号に掲載された2つの論文で、イエール大学のエスターフロアシャイムらによるものと、ドイツがん研究センターのトーマス・プラムラによるものです。
アレルギーがあるとその対象の物質、アレルゲンが体に入ってきたときにくしゃみとかかゆみとか応答したりするわけです。
こういった反応っていうのは体の中からそのアレルゲンを除く反応なわけですね。
もしその食べ物のことを嫌いになって避けるように行動が変化すれば、それもそのアレルゲンが体の中に入ってくるのを減らすことにつながるわけです。
免疫によってそういう食べ物を避ける行動が起きることを示唆する研究っていうのもあるんですけど、まだはっきりしていなくて、その詳しいメカニズムはよくわかっていなかったんです。
今回のこの2つの研究っていうのはその点を検証しているんですね。
どちらもやっていた実験としてはオボアルブミンという卵の白身のタンパク質に対するアレルギーをマウスで引き起こすっていうものです。
免疫反応を強化するアジュバントっていうものがあるんですけれども、それと一緒に投与するとアレルギーを持ったような状態になるんです。
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この状態でアレルギー、つまりオボアルブミンが好きかどうかを調べていったんです。
具体的にはただの水とオボアルブミンを含む水を用意しておいて、それを選ばせたんです。
オボアルブミンをアジュバントと一緒に摂取したマウスではオボアルブミンを含む水を避けていたんです。
でもオボアルブミンのアレルギーになっていないマウスではそんなことはなかったんです。
だからやっぱりアレルギーを食品として避けるっていうことが確認されたんです。
この状態でオボアルブミンを無理やり飲ませるとアレルギー反応が確かに起きるんですね。
このアレルギーを避ける行動っていうのはアレルギーによる炎症などの反応よりも先に起きるんです。
だからこのアレルギーを避ける行動っていうのは体を守ることができる反応と言えるわけです。
こんなふうに避けるときに体の中で何が働いているのかっていうのを次に調べていったんです。
アレルギーのときに起きる反応があるんですけれども、まず免疫が形成されるとき、その感染と呼ばれる現象があります。
ここではまずアレルゲンが細胞の中に取り込まれて、Lパーティー細胞という免疫細胞がB細胞というのを活性化します。
このB細胞っていうのは抗体を作る細胞なんですね。
このB細胞から抗体が放出されます。
マスト細胞と呼ばれる免疫細胞があって、これはその細胞の表面に抗体をくっつけるんですね。
この状態になるとマスト細胞の表面に抗体があるので、そのアレルゲンに反応する細胞になるんです。
この後にアレルゲンが入ってくると、マスト細胞にアレルゲンがくっつくんですね。
その結果、マスト細胞からいろいろな分子が放出されます。
それがヒスタミンみたいなアレルギー反応を起こす物質で、くしゃみであったり炎症であったりが起きると。
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そういうふうにして免疫系は働くわけです。
この過程に関わっているものと、好きか嫌いかの変化について調べていきました。
まずマスト細胞が機能しないマウスを調べたんですね。
そうするとオボアルブミンを避けるという反応が見られなかったんです。
さらにIgEという抗体を作れないマウスでも調べてみたんですけれども、このマウスでもオボアルブミンを避けることが見られませんでした。
というわけでこのアレルギーに対する監査の過程に関わるものっていうのは必要であるということがわかったわけです。
次にマスト細胞から放出される分子のうちどれが重要かを調べていったんですね。
だからヒスタミンが作れないマウスとかを調べていったんです。
でもヒスタミンは関係ないということがわかりました。
他にもいろいろ調べたんですけれどもロイコトリエンという分子が関係あるということがわかったんです。
ロイコトリエンっていうのは脂質メディエーターと呼ばれるタイプの分子で炎症とか気管死の収縮を引き起こすことが知られています。
だからきっとこのロイコトリエンが何らかの作用で脳まで影響を及ぼすというところまでわかったわけです。
ここまでがプラムラの研究によって明らかになったことです。
もう一方のフロアシャイムラによる研究でもIgEやマスト細胞が行動の変化に関わっているということを明らかにしているんですけれどもさらにいろいろ調べています。
彼らが明らかにしたのはアレルゲンが入ってくると脳の特定の領域が活動しているということです。
それがいくつかの領域があるんですけれども味覚を含めて感覚情報とか感情とかに関わる領域で、気皮刺激の需要に関わるとされる場所です。
だからいかにも関わってそうな場所で神経の活動が起きているということがわかったわけです。
さらにこのグループが明らかにしたのはアレルゲンにさらされると腸でGDF15というホルモンが作られるということです。
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このGDF15というのが最近注目を集めているホルモンで脳に作用して食欲を減らしたりとか吐き気を起こしたりするホルモンなんです。
オボアルブミンに対するアレルギーを持っているマウスはオボアルブミンを避けるわけなんですけれども
GDF15の作用を抑制するとオボアルブミンを嫌う行動が見られなくなったという結果だったんです。
だからアレルゲンの忌避にGDF15も必要であるということがわかったわけです。
というわけでアレルゲンに対する免疫が形成されると次にアレルゲンが入ってきて腸で吸収された時に2つのことが起きるんです。
まず1つがアレルゲンがマスト細胞に作用してロイコトリエンが放出されてそれが何らかの形で脳に作用するということですね。
もう1つはGDF15が腸で作られてそれも脳に作用するということのようです。
その結果この特定のアレルゲンを好まなくなって避けるという行動を取るようになるということなんです。
だからアレルゲンを少量食べると炎症みたいなアレルギー反応が起きる前に脳への指令が出て食べないようにすることによって
体を守るという仕組みがあるということが今回の研究で明らかになったんです。
今回の研究っていうのはマウスで行われたものなんですよね。
おそらく人っていうのはマウスよりも複雑な学習をしていると思われるので
最初に話した卵アレルギーの件がこのマスト細胞とかGDF15によるものであるかはわからないというところがあるわけです。
でも食品の好みに免疫も関わっているかもしれないなんていうことを明らかにした面白い研究だったわけです。
この番組をそれなりには面白いと感じて今後も継続したらいいなと思っている人にちょっとお願いがあります。
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まず今ですね、自分の知り合いに同じようにこんな話を面白いと思いそうな人がいないか考えてみてください。
このエピソードがもうすぐ終わるのでそうしたらメールとかLINEとかでこの番組を進めてみてください。
疎遠な人だったりしたら連絡するきっかけになるのでなおさらいいと思います。
さらにPodcastの聞き方を知らない人の方が多いのでSpotifyとかApple Podcastのことも教えてあげてほしいんです。
お手数をかけてしまうんですけれどもご協力をいただけると嬉しく思います。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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