2024-01-25 17:54

e55 涙の意味

感情による涙は何のためなのか?

他の動物は涙で化学的なコミュニケーションを行うものがいて、人間ではどうかを検証した研究の話です。


https://neurosciencenews.com/womens-tears-male-aggression-23591/

https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3002442

https://www.theguardian.com/science/2023/dec/21/human-tears-ease-aggression-study-brain

サマリー

「涙の意味」というエピソードでは、ゲッシュ類を含む哺乳類には涙がコミュニケーションのためのツールであることが示されています。研究では、涙に含まれる成分が攻撃性を低下させる効果があり、脳の活動にも影響を与えることが示されています。涙の意味に関する研究では、涙に反応する匂い受容体が存在することがわかりましたが、この受容体が攻撃性を変えているかや涙に含まれる物質についての研究はまだ不十分です。今後の研究が期待されています。

涙のコミュニケーション機能
あの人はなぜ泣くのかっていう問いがあるわけです。
シンカロンで有名なダーウィンも、嬉しいとか悲しいっていう感情によって泣くっていう現象を不思議に思っていて、
1872年に出版された本の中で、涙を流すことには目の機能を維持すること以外の機能は認められず、
感情による涙は偶然生まれたものだろうと推測しています。でもその後の150年で、人以外の哺乳類では、
涙は目の機能維持のためだけではなくて、コミュニケーションを取るためのツールであるっていうことが示されています。
その化学物質が涙には含まれていて、必要なタイミングで放出することで、それがフェロモンのように別の個体に伝わるっていうものです。
で、こういったコミュニケーションの機能の一つは繁殖に関係するものなんですね。
例えばマウスのようなゲッシュ類では、オスの涙がメスの性周期とか性行動を変えるっていうことがわかっています。
それから涙と攻撃性の関係も知られているんです。
ブラインドモールラッドと呼ばれる地中に暮らすネズミがいるんですけれども、この動物では涙で体を覆うことによって階級が上位のオスからの攻撃が減るっていうことが示されています。
さらにマウスでは、メスとか子供の涙はオスの攻撃性を減少させるっていうことも示されていて、そこで働く化学物質とか神経回路も明らかになっているんです。
つまりゲッシュ類では涙っていうのは化学物質でコミュニケーションを取るためにあるっていうことなんです。
ただこういったゲッシュ類を含む多くの哺乳類には除鼻器と呼ばれるフェロモンの検知を行う機関があるんですね。
涙と攻撃性の関係
で涙の成分っていうのもそこで検出されているんです。でも人を含む一部の霊長類っていうのはこの機関を持っていないんですね。
さらに人間の涙の機能について研究を行うっていうのには技術的な制約もあってあまり行われていないんです。
だから人の涙にも同じような機能があるのかについてはよくわかっていなかったんです。
今日はこの点を検証した研究を紹介します。
Bot Scientistへようこそ。こなやです。
今日紹介するのはハインツマン研究所のシャニ・アグロンらによる研究で、2023年11月にプロスバイオロジーに掲載されたものです。
この論文の内容に入っていく前にまず、人の涙についてこれまでにわかっていることなんですけど、
2011年と2012年の研究で、男性が女性の涙をかぐと男性ホルモンであるテストステロンの量が減るということが発表されています。
さらに性的興奮が低下するということも示されているんですね。
でもこの変化というのが小さくて、最終的な行動にどのような影響を及ぼすかということもわかっていません。
これらの研究というのは10年以上前になるわけなんですけれども、その後の続報と呼べるような研究もなかったんです。
でもそういうふうに涙とテストステロンの関係が示されていて、テストステロンというのは攻撃性に関係があると知られているので、
今回の論文の筆者らは涙と攻撃性について調べていっています。
研究を行うためにはまず涙を集めないといけないわけですね。
このために泣くのが得意だという人を集めてきて、そのうちの特に涙の量の多い6名に悲しい映画を見てもらって涙の採取を行いました。
1回につき1人当たり1.6ミリリットル集めたとあったんですけれども、これって相当な量だと思うんです。
ちなみに涙の提供者はすべて女性でした。特に女性を集めようとしたわけではないんですけれども、そういったふうに大量に提供できる人はみなそうだったということです。
攻撃性を調べていくわけなんですけれども、参加者はすべて男性で31名でした。
涙を嗅いだ状態とそうでない状態で攻撃性を比較するっていうことをしたわけです。
涙っていうのは感覚的には無臭なので、参加者は涙を嗅いだかどうかはわからないということになります。
涙の影響
攻撃性を調べる方法なんですけれども、特典原産型攻撃パラダイムというゲームを行っています。
これ攻撃性を調べるのにはよく使われる手法だということなんですね。 具体的にはパソコンで対戦をするゲームなんですけど、
参加者には人間と対戦していると伝えておいてあるんですけれども、実際には相手が何をするかは研究者がコントロールをしています。
このゲームはポイントを稼ぐことが目的のゲームで、ゲームが終わった時点で実際にそのポイントに応じてお金が参加者はもらえるというふうに伝えてあります。
最初にくじを引いて先行と後行が割り当てられるんですね。 でも実際は参加者が必ず後攻になるように仕組んであります。
ゲームの内容としては攻撃側は相手のお金を盗む、もしくは何もしないという選択ができます。
守り側はこちらも選択肢があって何もしないで1ポイントもらうか、相手のポイントを減らすということができます。
でも相手のポイントを減らす方を選んだ時には自分のポイントは増えないんですね。 これを交代合体に行うというターンを繰り返します。
だから守り側から見ると何が起きるかというとですね、 まあ最初何もしないで1ポイントを獲得するっていうのをやるんですけれども
時々突然自分のポイントが減るっていうことが起きるんですね。 でそれを見ると対戦相手が自分のポイントを取ったっていうことがわかるわけです。
でこういった時に報復として相手のポイントを減らすこともできるし、 でもそれをしても自分には何の得にもならないから何もしないで1ポイントをもらうっていうこともできるんです。
でどういった選択をしたかで攻撃性を評価していくということになるわけなんです。 一般にですね
攻撃の定義っていうのがあるんですね。 でそれは相手を傷つける行為をすることなんです。
これは別に物理的なものでなくても相手が嫌がることなら何でも攻撃なわけなんですね。 だから相手のポイントを減らすっていうのは攻撃になるわけです。
で自分がポイントを取られた時にどれだけの割合で相手のを減らしたかを 攻撃性の指標として評価に用いたわけです。
で実験の結果なんですけれども涙をかいた時には そうでない時と比べて攻撃をした割合が40%程度低下していたということなんです。
だから涙から揮発するものには 攻撃性を低下させる作用があるっていうことがわかったわけです。
さらにこの研究ではファンクショナル MRI という脳のどの部位が活動しているのかを測定する装置を使って
涙をかいた後だと攻撃性に関わる脳の部位の活動が低下しているということを明らかにしています。
だから涙の何かの成分が攻撃に関わる脳の活動に影響があるというところまで明らかにしたわけです。
でまあ涙の中にフェロモンみたいな分子があって働いているようなんですけれども、それが何なのかまでは明らかになってないわけです。
さらにマウスとかだと匂いとは別にフェロモンのような分子を感知する機関があるんですね。
でも人間にはこういったものがないんです。 人間は匂いは感じるわけなんですけれども、匂い物質に反応する分子っていうのはわかってきているんです。
涙の反応する受容体
つまり匂いの受容体っていうのが童貞されているんです。 そういう匂い受容体っていうのはすでに300種類以上童貞されているんですけれども、
この論文ではそのうちの62種類について別々にバイオ細胞で作らせて涙に反応するのかを調べていってます。
その結果4種類が涙に反応するっていうことが明らかになりました。 というわけでここまでの実験で涙をかぐと攻撃性が低下するっていうことと
人間は涙に反応する匂い受容体を持っているというところまでわかったわけです。 ただ注意しないといけないところもあるんですね。
これは筆者らも言っていることなんですけれども、涙に反応する受容体があるっていうことは示しているんですけれども、
この受容体が攻撃性を変えているかは検証していないんです。 人間で遺伝子に変異を入れて検証するっていうことは不可能だし、
これらの受容体を阻害するような薬物っていうのも開発されていないから実験の使用がないわけなんです。
だから本当にこれらの受容体が攻撃性に関わっているかはわからないっていう段階なんです。
さらに涙の中にあってこれらの受容体に作用する物質もこの研究では明らかになってないわけです。
この論文なんですけれども、多くの一般向けの解説記事で紹介されていたんですね。
だいたいこんなタイトルがついていたんです。 女性の涙は男性の攻撃性を下げる。
もっと言うと女性が悲しくて流した涙には男性の攻撃性を下げる作用があるみたいな、そんな内容なんです。
もちろん見出しのインパクトがあるからそうやってつけられているんだろうし、確かにこの研究ではそのようなことが示されているわけです。
涙の効果と課題
でもこういったタイトルを見ると、男性の涙には効果がないとか目にゴミが入って出た涙には効果がないと
案に入っているような気がするわけなんですけれども、それはそうではないんです。
今回の実験では涙の提供者はすべて女性だったんです。 特に女性を集めようとしたわけではないんですけれども、
なかなかたくさんの涙を確保するのは難しくて、たくさん泣ける人を集めたらそうなったということなんです。
さらに安全で簡単な方法として悲しい映画を見てもらって、だから感情による涙だったんです。
攻撃性を測るテストに参加したのはすべて男性だったんですけれども、これは過去の研究で涙が男性ホルモンに影響があるっていうのが分かっていたので限られた
サンプルで実験するっていう都合で、まず男性からやってみたということなんです。 というわけで、男性の涙とか悲しい時以外の涙を使って実験をしてないですし、
女性への影響っていうのも調べてないわけです。 だから特に女性の涙だけが男性にだけ影響があるのかっていうのは分からないということになります。
この論文の筆者らは、特に女性の涙がっていうふうには考えてないようなんですね。
むしろ男女は関係なくて、例えば言葉をまだ話せない赤ちゃんが泣くことによって周りの人の攻撃性を下げて身を守る。
そんなのが涙の働きである可能性っていうのを論文の中では挙げていました。 もちろんこれも想像なわけで、実際にどうなのかはまだまだ実験して検証する必要があるわけです。
そしてやっぱり一番の課題は、涙に含まれていて攻撃性を抑える化学物質が何であるかっていうのを童貞することなわけです。
でもそれには大量の涙が必要になるわけで、なかなか難しそうだなというところです。
かつては感情で泣くっていうのは人間特有の現象だと言われていたんですね。
でも他の動物でも目の機能維持以外のためにも泣いていて、それは別の個体と化学物質でコミュニケーションを取るためのものなんです。
今回の研究は人でも同じような機能があるということを示唆していて、人間が流す涙も他の動物と変わらないということなのかもしれません。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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