ダイエットの効果の減退
今日は、ダイエットの話をしていきたいと思うんです。
肥満というのは、世界的な社会問題で、多くの人が減量をしたいと思っているわけなんです。
勿論、運動をして体重を落とすというのもあるんですけれども、
ダイエット、つまり、摂取するカロリーを減らして減量するというのが、メインのやり方になるわけなんです。
体についている脂肪というのは、エネルギーを蓄えたものだから、
単純に食べて取り入れるエネルギー量を減らせば、体重は減るんですよね。
確かに、ダイエットを始めると、しばらくは順調に体重が減っていくわけなんです。
でも、あるところからダイエットの効果が減っていくんですね。
体の方がエネルギーが足りない状態に適応して、エネルギーの消費量を減らすということをするんです。
だから最初は、体重が順調に減っていても、ある時点から体重が落ちなくなってしまって、
その結果、十分な減量ができずに、ダイエットが失敗に終わってしまうということも多いんです。
ただ、それがなぜそうなってしまうのかということに関しては、未知な点が多いんですね。
でも、言われていることがいくつかあって、その一つは、熱の生産が減るということなんです。
ダイエットによるエネルギー消費の低下
人間も高温動物ですから、体温を維持するために熱をずっと作っているんですけれども、それが減るということなんですね。
これに関しては、脂肪細胞が関係しているということが言われています。
さらに減量すると、運動するときに筋肉がより効率よくエネルギーを使うようになるという話もあるんですね。
でも、ダイエットという非常に身近な問題で影響もすごく大きいことなんですけれども、
こういう変化に関しては、まだ分かっていないことが多いという状態なんです。
なんですけれども、最近、こんなふうにダイエットでエネルギー消費が低下するのの理由を一部明らかにした研究があったんです。
さらにその研究では、このエネルギー消費の低下を食い止めて、さらに減量させる分子、ホルモンを明らかにしているんです。
ポッドサイエンティストへようこそ、こなやです。
今日紹介する論文は、マクマスター大学のドンドンワンらによって行われた研究で、2023年6月にネイチャーに掲載されたものです。
この研究グループが目をつけたのが、GDF15というホルモンなんですね。
このホルモンはですね、がんの時なんかに量が増えるもので、食べ物の摂取量を減らす作用があるということがすでにわかっていたんです。
だから例えば、マウスにこのホルモンを投与すると、食べる量が減って体重が減るということが受験的に示されていたんです。
なんですけれども、エネルギー消費量との関係というのはよくわかっていなかったんですね。
今回この論文では、食べる量が減るだけではなくて、エネルギー消費の方にもGDF15が関わっているのではないかと考えて、その仮説をマウスを使って検証しています。
ただ今回のこのケースでは、この仮説を実験で持って検証するのというのがちょっとややこしいんですね。
普通であれば、1つの薬物を投与したグループと投与していないグループを比較すれば、その薬物の効果が検証できるんですけれども、
今回の場合はですね、このホルモンをマウスに投与すると、食べる量が減るわけなんです。
だから投与したグループとそうでないグループを比較するわけにはいかないんですよね。
投与しないでおいたグループというのは普通に餌を食べるので、食べる量が違ってしまうわけなんです。
なので、エネルギー消費量がどうなっているかを調べるためには、同じように食べる量は減っているんだけど、
このホルモンが投与されているマウスとそうでないマウスを準備して比較する必要があるわけなんです。
それで今回の実験ではですね、ペアを作ることによって検証をしています。
まずGDF-15を投与したマウスというのを準備するわけですね。
このマウスでは普通に高カロリーな食事を自由に食べさせておいたんです。
でも食べる量がGDF-15の効果によって減りますから、それでも普段よりは少ない量を食べるわけなんです。
この時に実際に食べた量というのを測って記録しておいたんですね。
これとは別にGDF-15を投与していないマウスを準備するんですけれども、
このマウスというのは放っておけば自由にたくさんご飯を食べてしまうわけなんですけれども、
食べる量を制限するわけなんですね。
そのさっきの記録しておいた量だけを食べさせたんです。
こうするとですね、食べている量は同じなんですよね。
なんだけれども片方はGDF-15が投与されていて、もう片方は投与されていないというペアができるわけです。
こういったペアをたくさん準備して比較をしていったんです。
ホルモンGDF15の作用
まずこれらのマウスの体重の変化なんですけれども、
GDF-15を投与していなくてでも食べる量が制限されたマウスの場合はですね、
最初体重が確かに減っていったんですね。
なんですけれども、2週間ほどすると体重の減少が止まってしまうんですね。
2週間ほどすると体重の減少が止まって、もうそれ以上は体重が減らなくなっていたんです。
だから人間の場合でダイエットを開始していても、あるところから体重が減らなくなって失敗するという、
そんな状態が再現されたわけです。
これに対してGDF-15を投与していたマウスの場合はですね、
2週間を超えても体重が減り続けて、測定は6週間で終了したんですけれども、
その6週間の時点でもまだ体重が減り続けていたんです。
そのGDF-15を投与したマウスもそうでないマウスも、食べていた量っていうのは同じなんですよね。
だから入ってきたカロリー、エネルギーっていうのは同じなんだけど、
でも体重の変化に違いがあったわけなんです。
ということはGDF-15が投与されていないマウスではエネルギー消費量が減って、
もうそれ以上体重が減らなくなっているんだけれども、
GDF-15によってエネルギーの消費量っていうのが維持されているっていうことが考えられる、
そんな結果だったんです。
次にですね、この研究グループはこんな風に体重の変化に違いが生まれる仕組みを明らかにしていきました。
その一つ疑問になることがあったんですね。
GDF-15っていうのは作用する場所、結合するタンパク質が脳の中にあるんです。
だからGDF-15っていうのは脳を調節するんですね。
なんだけれどもエネルギー消費っていうのは、脳でも起きるんだけれども、
脂肪細胞とか筋肉が大きな影響を持つと考えられていたんです。
ということは何らかの形で脳から筋肉なり脂肪細胞なりに情報が伝わっていたんですね。
その辺についてもいろいろ実験をしていったんですけれども、
わかったのはですね、ダイエットによる体重の減少が行き詰まるのは脂肪よりも筋肉が重要だっていうところで、
ダイエットをすると筋肉でのエネルギー効率が良くなるっていうことなんです。
さらにですね、GDF-15が投与された場合は脳から自律神経というのを伝わって、
そこから筋肉にあるアドレナリン需要帯が刺激されるっていうことなんです。
そうすると筋肉でのエネルギー効率が良くなるということなんです。
そうすると筋肉でのエネルギー効率が悪いままで維持される。
その結果エネルギーが消費され続けて体重が落ち続けるという、そういうところまで突き止めたんです。
というわけで今回の研究の結果をまとめるとですね、
GDF-15っていうホルモンはまず食べる量を減らすっていう作用があるんですね。
これは以前からわかっていたことなんです。
これに加えてGDF-15はダイエットによってエネルギー消費が減るのを止めるっていう作用があるんです。
普通であればダイエットをすると筋肉でのエネルギー消費が減るんですけれども、
それを止めることによって体重が減り続けるっていう、そういう効果があることがわかったんです。
ここまではマウスの研究だったんですけれども、
人のダイエットにどういう意味があるのかっていうのが興味を持つところなわけです。
今回紹介した論文ではですね、人でのGDF-15の量なんかも測っているんですね。
さらに筋肉での代謝に関わる遺伝子の発現量なんかも調べているんです。
ただ、まだまだ人間での減量に直接関わっているっていうことを示す証拠までは掴めていません。
ただ、体重が落ちやすい人とそうでない人がいるっていうのはわかっていて、
ひょっとしたらGDF-15みたいなものがそんなところに関与していたり、
GDF-15をうまく使えば体重が落ちにくい人の治療に使えたりするかもしれないっていう、
そういう可能性をこの論文の研究者らは述べていました。
今回のエピソードはソロポッドキャストの日の企画トークテーママッチングでの配信ということになります。
この企画はおじさん主催で共通のメインテーマ、秋から連想したトークテーマについて話すということになっています。
食欲の秋なんて言いますから、ダイエットっていうのをテーマとした話を今日していったわけです。
これに加えてですね、もう一つ別にテーマを考えて番組の最後に発表するということになっていて、
私が考えたのが秋といえば月ということです。
この企画では同じように一人でポッドキャストをしている人が多数配信しているということになっています。
ぜひチェックしてみてください。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。