00:02
あの、お酒、アルコールの健康への被害っていうのは、思うよりも深刻なんですね。
世界では毎年300万人近くがアルコールの使用が原因で亡くなっているとされています。
アルコールは心臓病や肝臓病、そしてガンなど多くの病気のリスクを高めます。
依存性があるので、過剰に摂取することでこのような健康被害をもたらすわけです。
いわゆるアルコール依存症をアルコール使用障害と呼ぶんですが、世界では全成人の5%程度が何らかのアルコール使用障害であると推計されています。
他の依存症と同じようにアルコールの使用をやめるのは困難を伴いますし、他の薬物よりも入手が簡単っていう問題もあるわけです。
しかし治療を受けているのは依存症の人もごく一部です。
また治療薬っていうのもあるんですが、使っているのはさらにその一部なんです。
以前よく使われていた薬がジスルフィラムというもので、これを毎朝飲んでおくとお酒を飲んだ時に気持ちが悪くなるので、飲むのが抑止されるっていう薬です。
ただちゃんと毎日この薬を飲んでいけないっていうのと、このやり方が懲罰的であるっていうのがあります。
他には飲酒欲求自体を軽減できる薬もあるんですが、認知度が低いこととそういった治療を受け薬を使うことに偏見もあるっていうのが現状のようです。
なので、認知度が高くて多くの人が抵抗なく使っている薬で依存症に効果があるものがあれば、問題のあるレベルで飲酒をする人が減らせるっていうのがあります。
そうでなくても非常に多くの人が対象になるわけなので、効果の高い新しい薬はいつでも歓迎なわけです。
糖尿病の治療薬にGLP-1作動薬っていうタイプのものがあって、今非常に注目を集めています。
薬物としてはセマグルチドっていうのが有名で、商品名のオゼンピック、ウエゴビ、リベルサスっていうのを聞いたことがある人は多いと思います。
03:13
この薬は元々糖尿病の治療薬として開発された薬で血糖値を下げる作用があります。
かなり新しい薬で2017年に承認されて、そこから使われるようになりました。
しかし、この薬の臨床試験の過程で血糖値への作用とは別に、食欲を減らすことによって体重を低下させる作用があるっていうことがわかりました。
しかもその効果が非常に大きく、胃のバイパス手術に劣らないレベルの減量が確認されたんです。
肥満によって痩せたいと思っている人はたくさんいるわけですから、肥満治療薬、つまり痩せ薬としても後に承認されます。
それが2021年とつい最近のことなんですが、比較的手軽で効果も高いことから人気を博し、特にソーシャルメディア上での口コミとか専門家の推奨に後押しされ、世界中で急速に普及していきました。
このように多くの人に使われるようになったことで、興味深いことが報告されるようになります。
GLP-1作動薬を使っている人では、お酒の消費が減っていること、そして飲酒への欲求が低下しているということなんです。
また、この人での報告とは別に、動物実験でもGLP-1作動薬とアルコール消費との関係が示されていました。
マウスやラットのようなゲッシュ類の動物、さらには猿でも、GLP-1作動薬を投与するとアルコール消費が減るということが報告されていたんです。
ですから、GLP-1作動薬がアルコール依存症の治療に使えるのではないかと考えられるようになりました。
でも、もちろんこのような実験は人ではないですから、人でも同じかはわからないわけです。
さらに、GLP-1作動薬を使っていた人でアルコール消費が減っていたっていうのも、糖尿病とか肥満の人に投与していたらお酒が減っていたっていう話なわけで、厳密に比較の対象を用意して薬の効果を調べた研究ではないわけです。
06:14
それでも、このような結果を受けて、アルコール依存症の人にセマグルチドなどのようなGLP-1作動薬が使われるケースがあるんだそうです。
GLP-1作動薬は今のところは糖尿病と肥満治療にだけ承認されていますから、適応外の使用ということになります。
このように、すでに使われてしまっているっていう現状がありますし、アルコール依存症の治療への期待っていうのがあるので、ちゃんと対象を取った臨床試験が待ち望まれていたわけです。
先日、セマグルチドのアルコール消費への作用を調べた臨床試験の結果が初めて報告されていたので、今日はその結果について話していきます。
ポッドサイエンティストへようこそ、佐藤です。
今日紹介するのは南カリフォルニア大学のクリスチャン・ヘンダーショットラによる研究で、2025年2月のジャマサイキアトリーに発表されたものです。
さて、この研究は臨床試験の結果を報告しているんですが、通常、薬の臨床試験は3段階に分かれていて、1段階目、第1層試験では、少数の病気でない人を対象にして、安全性の確認をします。
第2層では、少数の患者で効果を調べて、第3層で多くの患者に投与して効果があるのか、最終的な判断を行います。
今回の論文は、少なめの人での第2層試験の結果になります。
では、中身ですが、対象になったのがアルコール使用障害に相当するんだけど、自分では治療を求めていたわけではない人48人になります。
この人たちをセマグルチドを週1回注射するグループと、比較の対象として効果のない偽の薬をどちらか分からないようにして投与するグループの2つに分けています。
09:02
この2群を比較するということになるんですが、薬の投与は9回、だから9週間にわたって調査をしています。
投与した量は糖尿病とか原料で使われる量で少なめとされる量を投与していて、副作用は通常見られるようなマイルドなものだけで、深刻なものとかアルコールとの相互作用でひどい有害作用が出るようなことはなかったということです。
でも、事情があって途中から継続できなかった人がいて、一部データが48人分集まっていないところもあるという形になります。
試験としては、実験室内でのテストと日々の生活を報告するというのの2つに分かれています。
実験室のテストでは、実験参加者の人を部屋に呼ぶんですけど、好きなお酒を用意しておいて、自由に飲んでいいっていう状態でどれだけ飲んだかっていうのを測定しています。
で、これをセマグルチドの投与が始まる前と終わった後、だから9回目の投与の後に行っています。
それから生活の報告の部分では、薬を投与している期間に毎日どれだけお酒を飲んだかの記録をつけてもらっていて、そこから1日あたりの飲酒量、飲んだ日の数、それから大量に飲んだ日の数を割り出しています。
さらにどれだけ飲みたい気持ちがあったかも報告してもらっています。
さて、結果です。
まず、実験室でどれだけ自由にお酒を飲むのかを調べたテストなんですが、セマグルチドを9週間投与されたグループと偽の薬のコントロールのグループと比較すると、セマグルチドのグループの方が大幅に飲む量が少ないっていう結果でした。
全く飲まないっていうわけではないんですが、セマグルチドを投与してない時の6割程度しか飲んでいないということでした。
それから生活の中でどれだけお酒を飲んでいたかの結果です。
まず、お酒を飲む日の数はセマグルチド投与ありなしで違いがありませんでした。
でも飲む日に飲む量っていうのが違っていて、セマグルチドのグループの方がその日に飲んだ量は少ないっていう結果だったんです。
12:10
それから大量に飲んだ日っていうのが定義されていて、男性だと缶ビール5本、女性だと4本以上に相当する量のアルコールを飲んだ日になるんですけど、
この大量に飲んだ日がセマグルチドを取った人は少ないっていう結果を示していました。
さらにアルコールに対する渇望、飲みたいっていう気持ちがセマグルチドのグループでは低いっていう結果も示しています。
ですから結論としては、セマグルチドでお酒を飲まなくなるわけではないんだけど、飲みたいっていう気持ちは減っているし、飲み始めてからより少ない量で飲むのをやめるっていうことだったんです。
それで飲酒量が減るわけなんですが、このお酒を減らす効果が既存のアルコール依存症の治療薬よりも大きいっていうことだったんです。
さらに実験に参加した人でタバコを吸うっていう人についてはタバコの消費量も調べていて、セマグルチドを投与された人の方が喫煙量が減っていたっていうことでした。
だからセマグルチドにはタバコについても量を減らす効果があるっていうことなんです。
というわけで、ちゃんと偽の薬を用いてコントロールを取った臨床試験で、GLP-1作動薬セマグルチドに飲酒量を減らす効果があるっていうことが確認されたわけです。
そのアルコールの健康被害なんですが、一般に飲む量が多ければ多いほど被害が大きいんですね。
だから逆に言うと消費量を完全にゼロにできなくても減らせば健康リスクの改善が見られるわけです。
しかも既存の薬よりもセマグルチドの方が効果が大きいっていうことなので、アルコール使用障害の治療に期待が持てるっていうことになります。
もちろんこれは48人っていう比較的少ない人に対して行われた臨床試験なので、まだたくさんの人を対象にした第三層での確認が待たれます。
15:00
それに自分からは治療を求めていたわけではないっていう人を対象にしていたっていうのがあって、極端に飲酒量が多い人で試験をしたわけではないんです。
なのでどのようなレベルのアルコール使用障害に効果があるのかはまだわからないっていう段階になります。
GLP-1作動薬は奇跡の原料薬として非常に注目を集めていて、社会現象にすらなっているんですが、他にも作用があるんではないかっていう更なる期待が持たれています。
今回は飲酒と喫煙の抑制っていう話だったわけですが、他の薬物依存を抑えるっていう話もありますし、
さらには心筋梗塞や脳卒中みたいな血管障害とか腎臓病、それに認知症や鬱と話が良すぎるくらい様々な病気のリスクを下げることが示唆されているんです。
しかし、その効果が本当であるのを確認するためには、コントロールされた臨床試験が必要なんです。
今回の研究は、飲酒について初めてそのような効果を示したものっていうことになります。
今日は科学系ポッドキャストの日の配信になります。
毎月多くの科学系番組が共通テーマのもと配信を行っています。
今回のテーマが4月7日の世界保健デーにちなんで、保健だったので、健康問題についての話をしました。
各番組のエピソードがSpotifyプレイリストにまとめられているので、もし良ければ検索してみてください。
今回のホストが宇宙話と腸内細菌相談室っていう2つのポッドキャスト番組です。
どちらも科学論文を紹介することの多い番組で、特に腸内細菌相談室は生物系ですし、
だいたい毎週腸内細菌に関する論文を紹介しているので、当番組のリスナーは気にいる人が多いんではないかと思います。
リンクにショーノートを載せておきますので、興味がある人はチェックしてみてください。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。