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2023-10-12 18:58

Bonus Episode 10 用語解説:受容体 (Video podcast)

今回のエピソードはビデオポッドキャストです。Spotifyのみでビデオを観ることができます。その他のアプリで聞いている人は、お手数ですが、このエピソードだけSpotifyでご視聴ください。


この番組にたびたび登場する「受容体」という用語を黒板で解説します。

サマリー

ビデオポッドキャスト形式で、用語の解説や受容体に関する説明を行っています。細胞から細胞への情報伝達や神経伝達物質の働きについて、シナプスや需要体の役割を解説しています。情報は需要体と伝達物質で選別されています。ニコチン需要体やムスカリン需要体など、アセチルコリンは異なった作用を引き起こすことがあります。心臓の働きを調節するためには、興奮を引き起こすアドレナリンと副交感神経の作用という二つの伝達物質が関与しています。

ビデオポッドキャストの試み
今日は、いつもみたいに最新の研究を紹介するというわけではなく、一つの用語を解説するという、そういうことをちょっとやっていきたいと思っているんです。
今回初の試みとして、ビデオポッドキャストという形にしています。
一応、音声だけでもわかるように作ったつもりではあるんですけど、でもやっぱり映像を見た方がわかりやすいですし、努力して作ったというところがあるので、ぜひ見ていただければと思います。
ただ、申し訳ないんですけれども、多分Spotifyでしか見られないんですよ。
なので、他のプラットフォームで聞いている人は申し訳ないんですけれども、このエピソードだけSpotifyで探してみてください。
それとですね、タブレットに字を書いていくという、手書きのホワイトボードでやっていく形になるんですね。
それで、ちょっと申し訳ないんだけど、字が汚いんですよ。
ちょっとそれだけはお許しいただければと思います。
今日話をしたいと思っているのが、受容体についてなんですね。
すでに知っているという人もいると思うんですけれども、誰でも知っているというわけではないと思うんです。
でも、このポッドキャストには頻繁に出てくる言葉なんですね。
なぜ頻繁に出てくるかというところなんですけど、この受容体っていうのは生き物の機能を調節するのにとても重要な役割を果たしているんです。
だから受容体について調べた研究も多いし、ここを標的として細胞の機能をいじっているという、そういう研究が多いんです。
それに加えてですね、研究だけではなくて実用上も重要で、医薬品はこの受容体を標的にしたものが非常に多いんです。
そういう事情があって、この受容体っていうのは話に登ることが多いんですけれども、
ちょっとここで時間をとって受容体について話していきたいんです。
細胞と受容体の説明
まず細胞とはっていうところから話していきたいんですね。
皆さんよくご存知だと思うんですけれども、生き物っていうのは細胞でできているわけなんです。
細胞っていうのはいろんな特徴があるんですけれども、その一つが膜に覆われているっていうところなんですね。
その膜のことを細胞膜って言うんです。
そういった膜で囲まれた空間の中でいろんな化学反応が起きていて、それが生命の活動っていうことになるわけなんですね。
だいたい細胞の中も外も水があって、水に溶けた物質で反応が起きているわけなんです。
細胞膜なんですけれども、脂質、つまり油でできているんですね。
水と油っていうように水と脂質っていうのは混ざらないから、
細胞膜っていうものが細胞の中と外を仕切られた状態にしているわけなんです。
生きていくために外から物を取り入れたりとか、外へ物を出したりとかするんだけれども、
基本的には仕切られた空間でこういう物の移動をするためにはそれを司る分子があるっていうことなんですね。
その細胞1個だけでできた生き物っていうのがあって、
最近、バクテリアっていうやつとか酵母、ビールとかパンを作るのに使われる微生物ですね。
そういうのを単細胞生物って言うんです。
これに対して人間を含めた動物とか植物っていうのはたくさんの細胞からできているんですね。
そういった生き物のことを多細胞生物っていうわけです。
そういうふうにたくさんの細胞でできているわけで、人間だと数十兆個と言われています。
でも同じ細胞がただ集まってできているわけではなくて、いろんな種類の細胞があるんですよね。
筋肉の細胞であったり神経細胞であったりするわけです。
こうやって細胞が集まって生きているわけなんですけれども、ただぐちゃっと集まっているだけではなくて、
たくさんの細胞が一つの生き物として機能するために協調して働いているわけなんですよね。
そうするために細胞同士が連絡を取り合っているんです。
だから細胞間で情報を伝達するということが重要なんです。
例えば1個の細胞が別の1個の細胞に情報を伝えるというのはそういうことをしているわけなんですけれども、
必ずしも1対1で情報を伝えているわけじゃなくて、1個の細胞からたくさんの細胞に情報が行くということもあるし、
遠くの細胞に情報が伝わるということもあるんです。
こういうふうに情報が伝わるときって、多くの場合は何か化学物質が使われているんですね。
だから1個の細胞から化学物質が出てきて、それが情報の伝わる先の細胞まで移動していって、
移動していった先に、こういった化学物質を感知するそういう分子があるんです。
こういう情報伝達が行われるときに、情報を伝えるこういう分子を伝達物質と呼ぶんですね。
情報を受け取る分子の方を受容体と言うんです。
伝達物質が細胞間の情報伝達を行うわけなんですけれども、体のありとあらゆるところでそれが起きているんです。
伝達物質の中で、長い距離を移動して働くものをホルモンと言います。
インスリンって聞いたことある人多いと思うんですけれども、これって水蔵で作られるんですね。
そこから放出されます。
放出された後どこに行くかというとですね、まず血管の中に入るんです。
血管っていうのは全身を張り巡らされていて、その中の血液っていうのは全身を巡るわけなんです。
だから血中のインシュリンは全身に行き渡るっていうことになるんです。
こんなふうにですね、特定の場所で作られるんだけど、血液を通って全身に作用するものをホルモンって言うんです。
神経伝達物質と需要体の役割
それから脳の中にはたくさんの神経細胞があるんですね。
人間の神経細胞は100億個ぐらいあると言われています。
神経細胞っていうのは細長い形をしていて、細胞同士が連絡をしていて神経回路を作っているわけなんです。
この神経細胞っていうのは活動している状態とそうじゃない状態があるんですね。
だからオンになった状態とオフになった状態があるということなんです。
この組み合わせで脳全体として複雑な情報処理をしているわけなんです。
特定の神経細胞が活動すると連絡している次の細胞が活動する。
そんな感じで細胞から細胞へ情報が伝わっていくわけなんです。
神経細胞同士が連絡しているっていうことなんですけど、
でも完全にくっついているわけではないんですね。
少し隙間があって情報をやりとりするための構造があるんです。
この構造のことをシナプスって言います。
このシナプスの隙間に伝達物質が出てくるんです。
それでこの下流の細胞の方が活動するっていうことになります。
こんなふうに特に神経細胞で働く伝達物質のことを神経伝達物質と言います。
ドーパミンとかセロトニンとかそういうのを聞いたことがあるっていう人も多いと思うんですけれども、
これらは神経伝達物質なんです。
神経ではこんなふうに連絡しているすぐ近くの細胞を刺激するんですね。
だからさっき見たホルモンとは違って神経伝達物質っていうのは非常に短い距離を移動して働くということになります。
じゃあ伝達物質がどのように下流の細胞に作用するかっていうところなんですけれども、
ここに需要体が働いているんです。
上流の細胞では伝達物質が合成されているんですね。
ただそれがいつでも放出されているっていう、そういう場合もあるんだけど神経伝達物質の場合なんかは、
特にこの上流の細胞が活動、興奮した時に放出されることが多いです。
だから上流の細胞が活動すると、このシナプスの隙間に伝達物質が出てくるわけですね。
下流の細胞には需要体が存在するわけですね。
物によっては細胞の中にあるっていうものもあるんですけれども、細胞膜を貫通する形で存在するものが多いんです。
鍵と鍵穴っていう言い方をすることが多いんですけれども、特定の伝達物質とその伝達物質の需要体っていうのはピタッと結合するんです。
伝達物質が需要体に結合すると需要体が活性化します。
これまで休んでいた状態だったのが働くようになるっていうことですね。
活性化した後に何が起きるかっていうのは需要体によるんですけれども、細胞の電気的な状態を変化させるっていうものがあるんですね。
これによってこちら側の細胞が興奮して活動が引き起こされます。
需要体の特異性
あるいは需要体によってはそうではなくて、細胞の中に何かしらの反応を起こすものっていうのもあるんですね。
こういった場合でも細胞に何かしらの変化が起きて、それで上流の細胞から下流の細胞へ情報が伝わって何かが起きたと、そういうことになるんです。
今ちらっと言ったんですけれども、需要体と伝達物質がピタッと結合するわけですね。
ドーパミンにはドーパミン需要体があって、ドーパミンが強く結合するんですよ。
なんだけどドーパミン需要体には他の伝達物質っていうのはあんまり結合しないんです。
だから別の伝達物質がやってきても、ドーパミン需要体は何の反応も起きないということになるんです。
さらに逆に何か別の伝達物質の需要体があったとき、例えばセロトニンの需要体が細胞にあったとしても、
ドーパミンがこの細胞に到達しても、セロトニン需要体は活性化しないので何も起きないということになるんですね。
その特異性っていうような言い方をするんですけれども、需要体と伝達物質で情報が選別されているっていうことになるんです。
こういうふうな特異性、情報の選別っていうのが非常に重要なんです。
体の中にはいろんな伝達物質があるんですね。
例えば神経伝達物質だったらドーパミンとかセロトニンとかアドレナリンとかセチルコリンとか他にもまだまだあるんです。
さらにそれに加えてホルモンだったらインスリンとかコルチゾールっていうストレスホルモンであったり、テストステロンっていう性ホルモンなんかもあったりするんです。
今ここに挙げたものっていうのはごく一部なんですね。
それぞれの伝達物質に複数の需要体があるんですよ。
例えばアセチルコリンだったらニコチン需要体とムスカリン需要体があるんですね。
ニコチンっていうのはタバコのニコチンです。
ムスカリンっていうのは毒キノコの成分なんです。
これらの需要体が使い分けられているんです。
異なる作用を引き起こすアセチルコリン
例えば運動神経っていうのがあって、それが骨格筋っていう体を動かすための筋肉をコントロールしているんですね。
運動神経からはアセチルコリンが放出されるんですけれども、それが筋肉にあるニコチン需要体に結合して、そうすると骨格筋の収縮が起きるんです。
アセチルコリンは心臓にも働いているんですけれども、心臓にはニコチン需要体ではなくてムスカリン需要体の方があるんですね。
こちらは副交換神経っていうやつなんですけれども、アセチルコリンが作用すると心臓の働きが弱くなるっていうことが起きるんです。
副交換神経って聞いたことある人も多いと思うんですけれども、副交換神経の方っていうのはリラックスした時に働く神経なんですね。
リラックスした時っていうのは心臓がゆっくり働くようになるんですけれども、その仕組みっていうのがまさにこれなんです。
こういうふうに別々の場所に違った需要体が存在して異なった作用を引き起こすことができるんです。
さらにアドレナリンだとα需要体とβ需要体があるんですね。
アドレナリンっていうのは心臓に作用するんです。
こっちはさっき出てきた興奮した時に働く交換神経の作用になります。
このβ需要体っていうのが心臓にあって、交換神経が興奮してアドレナリンが作用すると心臓の働きが活発になるんですね。
心拍数が上がるし血液を押し出す力も強くなるんです。
ここで見てほしいのは同じ臓器なんだけど異なった伝達物質が作用しているんです。
しかも作用が逆なんですね。
このおかげで体がどういう状態にあるかによって心臓の働きをうまく調節することができるんです。
こういう仕組みが体中の中に無数にあって、そのおかげで体中のいろいろな機能が複雑に調節されているんです。
さらに付け加えると医学的にも人間の体がこういう風になっているっていうことが利用されているんですね。
例えばアドレナリンが心臓の働きを強めるって言ったんですけれども、
ここで働いている受容体に作用して受容体を活性化する薬物を使えば心臓の働きを強めることができるんです。
さらに逆にこの受容体を阻害するような薬物を使えば心臓の働きを弱めることもできるんです。
今使われている医薬品の結構な割合っていうのがこういう風に受容体を標的にしたものなんです。
おそらく今後も受容体っていうのはこのポッドキャストにたびたび登場すると思うんですよね。
そういった時に理解に少しでも役立てば嬉しいかなと思います。
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