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2023-10-05 16:03

e42 ネコの奇妙な味覚

ネコは魚が好きだというイメージがあって、それは日本以外の国でもそうです。

砂漠に暮らすヤマネコに由来するイエネコが特に魚が好きなのは不思議です。そんなネコの奇妙な味覚に迫ります。


https://www.science.org/content/article/why-do-cats-love-tuna-so-much-scientists-may-finally-know?utm_source=sfmc&utm_medium=email&utm_campaign=WeeklyLatestNews&utm_content=alert&et_rid=920280481&et_cid=4884326

https://academic.oup.com/chemse/article/doi/10.1093/chemse/bjad026/7238703?login=true

サマリー

ネコの奇妙な味覚についての研究が行われています。ネコは魚が好きなイメージがありますが、実はその理由はヒスチジンの存在にある可能性が示されています。この研究はMARSの子会社であるワルサムペットケア科学研究所によって行われており、魚が好きなネコの味覚とマグロの関連性を明らかにしています。

ネコの味覚の不思議
あの、ネコは魚が好きだっていうイメージがあるんですよね。
まあ、あの、サザエさんのテーマソングなんかがまさにそうなんです。
で、まあ日本だと魚をよく食べるわけで、だからそこで飼われているネコっていうのが魚を好きなのは、まあそんな不思議な感じはしないわけなんです。
で、こんな風にネコが魚好きなのは日本だけのことだと思っている人も多くて、
あまり魚を食べない地方のネコは魚よりも肉が好きなんだっていう話を聞いたことがある人っていうのもいるかもしれないです。
でも実際は欧米でもネコは魚好きっていうイメージがあるんです。
で、実際欧米でもネコは魚が好きで、キャットフードも魚風味のものが売ってるし、で実際売れているんです。
で、特にその欧米のイメージだとマグロ好きっていう、そういう感じなんです。
で、もちろん日本でもですね、そのマグロ、ツナのキャットフードっていうのはよく売れているわけです。
で、ネコっていうのは肉食動物なので、動物を食べるっていうのはまあよくわかるんです。
でも特に魚が好きだっていうのは不思議といえば不思議なんです。
っていうのはネコの祖先のヤマネコっていうのがいるんですね。
で、そういったヤマネコが約1万年前に人間と共生しだして、今のイエネコに進化していったんです。
で、それが起きたのが中東の砂漠地方だと言われているんです。
だから今のイエネコの祖先の動物っていうのは魚のいないところに住んでいた、魚なんか食べない動物だったっていうことなんです。
だからそんなヤマネコから進化した今のネコが魚を好きっていうのは不思議なんですね。
今日はこのネコの奇妙な味覚について調べていった研究を紹介したいと思います。
ポッドサイエンティストへようこそ、こなやです。
今日紹介する研究はワルサムペットケア科学研究所のスコット・マグレインらによって行われた研究で、
2023年8月にケミカルセンスに掲載されたものです。
ちなみにこの研究所っていうのはMARSという会社のものなんですね。
MARSっていうのはお菓子の会社でスニッカーズを作っているところなんです。
でもペットフードでも大手で、そのペットフード部門の研究所っていうことになります。
そもそも味覚とはっていうところなんですけれども、5種類の味があるんです。
甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、それに加えてうま味っていうのがあるんです。
うま味っていうのは味の素の味とか出汁の味ですね。
酸っぱい、苦い、酸味、苦味っていうのは有毒なものを避けるためにそういう味覚があると考えられています。
それから甘味っていうのは砂糖とかそういう糖の味なわけです。
糖っていうのは炭水化物なので、甘味っていうのは栄養素として炭水化物を検出するためにあるっていうことなんです。
2005年に発表された論文で、猫は甘味を感じないだろうっていうことが報告されているんです。
甘味を感じるのは下、そのベロの細胞に甘味の分子と結合する分子があるからなんですね。
そういうふうに特定の物質と結合してその細胞の中に情報を伝えていくものを受容体って言うんです。
その甘味の受容体っていうのがすでにわかっていて、TAS-1R2っていうのとTAS-1R3っていう2つの分子が結合したものなんです。
猫ではですね、このうちのTAS-1R2に変異があるっていうことがすでにわかっているんですね。
それでこの受容体が機能しなくなって甘味を感じなくなっていると考えられているんです。
猫は肉食なんですよ。だから人間みたいに穀類とか果物を食べているわけじゃないんですね。
ネコの味覚受容体の研究
なので甘味を感じる必要がないんでそういうふうに受容体が機能しなくなってしまってそのままなんだろうっていうふうに考えられます。
それから猫を含めてなんですけれども肉食動物は苦味の受容体も少ないっていう特徴があるんです。
じゃあ猫は何を味として感じているんだろうっていうところなんですけれども、猫が食べている肉が多く含むのはうま味なんです。
うま味の成分としてはアミノ酸とかカク酸があるんですね。
よくあるのはそのアミノ酸としてはグルタミン酸、それからカク酸としてはイノシン酸っていうのがあります。
こういった成分っていうのは肉とか魚にたくさん含まれているわけなんです。
出汁の味ですから他には昆布とかキノコとか一部の野菜に多く含まれています。
うま味の受容体なんですけれどもTAS-1R-1とTAS-R-1-3がくっついてうま味の受容体を形成しています。
さっき出てきた甘味の受容体はTAS-1R-2と3だったんですけど、こっちは1と3なんです。
1と3に関しては猫でもちゃんと遺伝子はあるし、舌でこの遺伝子が働いているっていうことをこの論文で明らかにしています。
この論文ではこの遺伝子の配列をもう少し詳しく調べていったんですね。
そうするとグルタミン酸と結合する場所に異常があるっていうことがわかったんです。
だからうま味成分であるグルタミン酸とは結合しないっていうふうに考えられるんです。
じゃあうま味は猫は感じないのかっていうところなんですけれども、
バイオ細胞に猫の遺伝子を入れて検証していっています。
この猫のうま味受容体を作るバイオ細胞で調べてみたら、確かにグルタミン酸には反応しなかったんですね。
でも違ううま味成分のイノシン酸には反応するっていうことがわかったんです。
だから確かに猫の受容体っていうのはイノシン酸であればうま味に反応することができるっていうことがわかったんです。
グルタミン酸を含めてアミノ酸には反応しないんですけど、
いくつかのアミノ酸とイノシン酸を混ぜるとイノシン酸単独の時よりも強い反応があるっていうことがわかったんです。
この効果が特に強いアミノ酸としてヒスチジンっていうのがあったんです。
つまり猫のうま味受容体っていうのはヒスチジンがそこにあれば強くイノシン酸に反応するということがわかったわけです。
次はですね、猫そのものでテストをしていったんですね。
水を入れたボウルを2つ準備して調べていったんですけれども、片方にはただの水を入れておいて、もう片方にはうま味成分を溶かしたものを入れておいたんです。
それで猫がどちらを好むかっていうのを調べたんですね。
イノシン酸で調べてみるとそのイノシン酸が溶けている水の方をただの水よりも好んでいたという結果がまず出ました。
そのうま味成分1種類っていうだけではなくて複数の組み合わせっていうのもやっていったんですね。
いろんな組み合わせをやっていったんですけれども、イノシン酸とヒスチジンどちらも猫が強く好むっていうことがわかったんです。
だからバイオ細胞を用いた実験でも猫そのものの嗜好を見るっていう実験でもイノシン酸とヒスチジンによく反応するっていうことがわかったわけです。
過去の文献を見てみると、種類にもよるんですけれども、マグロにはイノシン酸がたくさん含まれているっていうことがすでにわかっているんですね。
さらに注目すべき点はヒスチジンがマグロには大量に含まれているんです。
でも豚肉とか牛肉とか鶏肉にはヒスチジンはほとんど含まれていないっていうことがすでに報告されていたんです。
ヒスチジンっていうのはタンパク質の成分ですから、タンパク質の長い鎖の中には確かに入ってるんですよ。
でも旨味の需要帯に結合できるフリーな状態のヒスチジンっていうのは肉にはほとんどないんだけどマグロにはたくさんあるっていうことなんです。
だから今回の研究で猫の旨味需要帯っていうのはイノシン酸とヒスチジンによく反応するんだけれども、そのマグロにはイノシン酸とヒスチジンがたくさん含まれていて、これが猫がマグロが好きな理由ではないかっていう、そういうことを示している研究だったんです。
ネコの味好みとマグロの関係
なぜ猫がこんな需要帯を持つようになったのかっていうところなんですけれども、この論文を解説した記事では一つの可能性を述べています。
その紀元前1500年くらいのエジプトで猫が何か魚を食べているような絵が残っているんですね。さらに中世の中東の港では猫が魚を食べていたという記述があるらしいんです。
だから、もともとは砂漠にいた生き物なんだけど、人間と生活するようになって、場所も移動して、魚も食べるようになって、それで好みが変化していったと、そういうことなのかもしれないと、そういう解説がされていました。
ただまあ、こういうことに対する理由っていうのはなかなか証明のできることではないんですよね。その今の状態でも、肉の猪さんを猫は感じることができるわけなんです。
だから、例えば今のアメリカの中央部みたいに、魚なんてほとんど食べないところで魚が好きであっても、別に困らないわけなんです。なので、単に偶然そんな変異が起きて、それが別に困らなかったから、今こういう状態であるっていう可能性も残されていると思います。
今回の論文ではですね、特に猫とマグロの関係っていう風に話が進められていたんですけれども、ちょっと補足をさせてください。他にカツオとかサバとかサンマもヒスチジンが多いんですね。
だから猫がサンマを食われて盗んでいくみたいな描写がたまにあるんですけれども、これも確かに猫はサンマが好きそうでツジツマが合うっていうところです。
それからヒスチジンについてなんですけれども、そういった魚はヒスチジンが多いんですけれども、他にヒスチジンが多い食品としては、味噌とかチーズがあります。
でも猫が味噌とかチーズを好きなイメージってないですよね。
これらの食品なんですけれども、うま味成分としてはグルタミン酸が多くてイノシン酸は多くないんです。
バイオ細胞の実験の結果を思い出してみると、猫のうま味状態っていうのは、ヒスチジンでイノシン酸に対する反応っていうのは強くなるんだけど、グルタミン酸には反応しないんです。
だからヒスチジンは含まれていても猫が味噌とかチーズを好まないっていうのもツジツマがあっていて、なかなか興味深いなというところでした。
じゃあ今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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