応援の影響
みなさんこんにちは、こなやです。 今日は科学系ポッドキャストの日の共通テーマ
スポーツにちなんだ話を当番組アーカイブからお送りします。
スポーツには応援がつきものなんですけれども、 スポーツでの応援に意味はあるのかっていうのを科学的に検証した研究について
話しています。 では本編をお聞きください。
母校の代表チームを応援したりしますよね。 他にも日本の代表チームを応援しようみたいのがあるじゃないですか。
さらに選手の側もですねインタビューとかをされると、 応援している人の声援のおかげで良いパフォーマンスができたみたいなことを話したりするわけなんです。
応援しているっていうのは、やっぱり応援しているチームに勝ってほしいっていうのがあって、それで応援することによって良いパフォーマンスができるんじゃないかっていう考えが前提にあるわけですよね。
でも個人的にはですね、本当かよって思ってるんですよ。
人によっては人に見られていると緊張する人っていうのもいるんですよね。 僕も学生時代にはですね、スポーツしてて柔道してたんですよ。
で、なんか試合とかになって集中すると周りのことってほとんど意識しなくなるんですよね。 自分のことと相手のことしか考えてないみたいのがあって。
多分トップレベルの人、プロの選手なんかは集中力の塊みたいな人たちばかりですから、 きっとそうなんじゃないかなって思うんですよ。
だから制限を送るっていうのは意味ないんじゃないかと思ってるんです。 でですね、それを具体的に調べたっていう話があるんですね。
野球、特にですね、メジャーリーグっていうのはデータが豊富なんですよ。 例えばホームランを何本打ったとか、三振を何回したとか、ボールを何回キャッチしたとか、
そういうデータがすごくたくさん記録されているんですね。 それ数字ですから、その数字を科学的に解析するっていうのがあって、野球の統計解析っていうのがあるんですよ。
そういう解析が3、40年前ぐらいから始められていて、近年だとですね、そういうのを専門にやっているサイトがいくつかあるんです。
そのうちの一つ、ファングラフスというところで見つけた記事から今日はちょっと話していこうと思うんです。
メジャーリーグではですね、30のチームがあるんです。 一部、一つの都市に2チームっていうのがあるんですけど、大体一つの都市に1チームなんですね。
ホームって言って、自分の球場でプレーするか、相手の球場に出かけて行ってプレーするっていう、ホームとアウェーの試合があるわけなんです。
で、都市同士がすごく離れてますから、ホームだとですね、大体その都市の人が見に来るわけなんですよ。
なので、ホームゲームだと9割以上がそのチームを応援していると、そういうサポーターであるという状態なんですね。
だからホームの成績とアウェーの成績を比較すれば、応援の影響が調べられるんじゃないかって考えられるわけなんです。
そのデータを見て全てを平均化するとですね、ホームチームが54%勝利するんです。
だからアウェーは46%っていうことなんですね。 もしホームでもアウェーでも条件一緒だって考えるんであれば50%だから4%の違いが生じてるっていうことなんです。
これすごくたくさんのデータからそういう結果になっていて、しかも長年これが変わってないんですよ。
これをホームアドバンテージって言うんですけど、確かにホームチームの方が有利だっていうのははっきりとあるっていうことなんですよ。
でも応援で選手のパフォーマンス自体がそんなに変わるとは思えないんですよね。
そう考えさせるデータっていうのがあるんですよ。 例えばですね、プレッシャーのかかる場面とかってあるじゃないですか。
そういう場面でも選手の成績っていうのは変わらないっていうデータがあるんですね。 だから緊張すると失敗する選手って結構いそうな気がするんだけど、でもそうじゃないんですよね。
多分これがプロレベルだからっていうところがあって、そもそも緊張して失敗するような選手はこのレベルまで来れないとか、そういうことが考えられるんです。
だから選手は鋼のメンタルを持っていて応援でそんなパフォーマンスが変わるとは信じられていないんですね。
他にはですね、アウェイだとそこまで出かけていくっていう移動の負担があるんですよね。
ホームチームの優位性
あるいは球場っていうのが一個一個微妙に違いますから、それに慣れているかどうかっていう差があるっていう、そういう説もあって。
でもこの辺もですね、詳しくデータを見ていくとあまり説得力がないなと、効果があるとしても小さいだろうなと考えられているんです。
でも確かに勝率は違うんですね。 だから長い期間これは謎だったんですよ。
でも15年ぐらい前になるんですけれども、データの取得に革命的な技術が生まれたんです。
これがピッチFXと呼ばれるものなんですけれども、これがその謎を解き明かす鍵になるんです。
まずここでですね、野球全然知らないっていう人もいると思うので、ちょっと簡単に必要な分だけ野球について説明します。
ボールを投げるピッチャーっていうのがいるんですね。 その来たボールをですね、バットと呼ばれる棒で打ち返すバッターっていうのがいるんです。
そのピッチャーなんですけれども、どこにボール投げてもいいわけではなくて、この空間に投げなさいっていうゾーンが決まってるんです。
それが幅いくつ、高さいくつって決まってるんですけど、その中を通過すればストライク、外れるとボールっていう風になるんです。
だからピッチャーはストライクを投げないといけないっていうことなんですね。 でもそのゾーン、ストライクゾーンの真ん中に投げるとバッターは打ちやすいもんで結構打たれてしまうんです。
なのでピッチャーはなるべくそのゾーンの端っこを狙うわけなんですよ。 なんだけど、このストライクゾーンっていうのがですね、ちゃんとした枠が設置されているわけではなくて、空間上をただ通過してくるのを審判がですね、見てその中を通ったかどうかを判断するっていう、そういう形になってるんです。
で、そのストライクゾーンのギリギリ端っこだとなかなか打たれないから、ピッチャーはそこを狙って投げてくるんだけど、でもそこから少しでも外れてしまうとボールになってしまってダメっていうことになっちゃうんですよ。
だから審判がその端っこをどこまでストライクと判断するかっていうのが最終的な結果にすごく重要なんです。
なんですけど、実際審判がどのあたりまでをストライクと呼んでるかとか、審判ごとにそのゾーンが違ったりするかとか、ピッチャーやバッターによって変わるのかとか、そういうことってただボールが空間を通過していくだけだから、なんかいまいちはっきり分かってなかったんです。
というか、もう知りようもなかったわけなんです。
なんですけど、それを解析する技術ができたんですね。それがピッチFXなんです。
これっていうのは高速なカメラをたくさん設置して、ピッチャーが投げたボールがどこを通過したかっていうのを正確に計測するシステムなんです。
これ2006年から徐々に導入されて、2007年には全ての球場で設置されました。
メジャーリーグ機構がこのシステムを導入したんですけど、このデータが一般にも公開されていたんですよ。
なので、こういう解析をやっていたサイトにいる人たちとか、あとは大学の研究者なんかがですね、このデータを細かく解析するみたいなことをやっているんです。
このデータを使ってですね、ホームとアウェーのピッチャーについて調べてみたら、
なんと審判によるストライクボールの判定がホームチームに有利になっていたっていうことがわかったんです。
つまりホームチームがピッチャーの時にはストライクゾーンが少し大きくなってストライクが少し増えるんです。
逆にアウェーのチームがピッチャーの時にはゾーンが少し小さくなってストライクが減るっていうことなんです。
応援の未来
野球のすごいところは、これが最終的な勝敗にどういう影響があるかっていうことを計算できるところなんですよ。
そういう計算を行った結果ですね、最初言ったようにホームチームが4%余分に勝っているんですけれども、この効果の70%までをこの審判によるバイアスによって説明できるっていう、そういうことだったんです。
つまりホームチームの方が勝率が高い理由の大半は審判によるバイアスであったんです。
これについてですね、心理学的な考察も行われているんですね。
人間というのは、なんか集団があるとそこに適応するために同調をするんですよ。つまり同調圧力っていうのがあるんですね。
無意識なんだろうけど、審判はそういうホームチームを応援している群衆があって、それに同調してその群衆が喜ぶことをしようとしているっていう、そういう解釈ができるんだとされています。
でですね、観客がその審判に影響を与えているっていうのは、他のスポーツでも解析が進みつつあるんですね。
僕はあんま詳しくないんだけど、どうもバスケットボールでもそうであるっていう結果が出ているみたいで、多分多くのスポーツでそうなんだと考えられます。
ということで、ここで分かったことをまとめるとですね、とりあえず応援に行くことには意味がありそうだということなんですね。
確かに応援しているチームの勝率は上がるということなんです。
でも普通は選手がいいパフォーマンスをできるようにって応援しに行くんだけど、でもそこにはあんまり意味がなくて、そこにいて、なんか騒ぐことによってですね、審判に同調圧力を与えるっていうのが応援することの本当の意味だということみたいなんです。
とまあ狙いは違っているかもしれないけど、応援することには意味があるということなんですけど、今後これが変わっていくかもしれないっていうところもあるんですね。
そのメジャーリーグではですね、さっきのピッチFXみたいなシステムを使ってストライクとボールの判断を人間じゃなくて機械で自動的に行ってしまうシステムがほぼ完成してるんですね。
で実際にそのマイナーリーグっていう二軍みたいなところではすでに導入されているんです。それから他のスポーツで行くとですね、例えばテニスなんかではその線ギリギリにボールが落ちた時の判定っていうのはもうすでに機械を使ってやっているんですね。これ結構前からやってるんです。
それから最近のスポーツ中継なんかを見ていると、サッカーとかバレーで機械を使ったリプレイが導入されているっていうのは皆さんご存知のところだと思います。
で当然こういうロボット審判にはですね、同調圧力は効かないわけで、今後こういうのがどんどん増えてくるとですね、応援の意味がなくなるような日も来るのではないかと考えられるわけです。
じゃあ今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。