特徴は「物理現象から法則が導かれている」こと
組織を考えるメディア、オーガナイズ。このポッドキャストはエールの篠田さんと山田で、組織を考える、
とらえなおす上で、我々が面白いと思った視点や観点をシェアしていこうという番組です。
では、篠田さん、今回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今回は、たまに訪れる篠田さんが好きな本シリーズ。シリーズ。
シリーズなのか分かんないけど、思わず熱く語ってしまいそうなやつがまた。
全力で。
ありました。これはですね、『トリニティ組織 人が幸せになり生産性が上がる三角形の法則』っていう本で、著者は矢野和男さんっておっしゃる方です。
で、ちょっとこの本について、今日もうマジ取り上げたい(笑)、って思ったのはですね。
この本で、詳しくはこの後に言うけど、一言で言うと、ビッグデータを使って、働く人が組織の中でどうあると幸せになり、組織のパフォーマンスが上がるかっていうのを、
物理現象として分析して答えを導き出した本なので、ニュートン力学の重力の法則みたいな感じで、法則が導かれてるっていうのがすごい特徴なんですよね。
これまでのこういう本って、そういったビッグデータ、しかも長年に渡って蓄積したものを分析したものってたぶんないから、どうしても法則ってタイトルに書いてあっても、結局その著者の方の経験則の範囲はどうしても出ないんですけど、これは全然違いますっていうところが、もう一個だけ覚えておいていただくなら、これだなと。
そういう本として組織で働いたり、人事とか組織開発に関わる人は、ちょっとこの本は特別扱いした方がいいと思いますよ、っていうのがベースですかね。
いやもう入り口から面白いですね。そこの角度から説明されるのがさすがですねって思いました。
多分あれですよね、矢野さんが何者かを補助線引いていただくとわかりやすいですよねって感じですよね。
そうします。矢野さんは、日立製作所の方なんですね。今はフェローっていうお立場なんですけど、日立グループの中にいるハピネスプラネットっていう会社を2020年に立ち上げて、今その代表っていう立ち位置です。
で、矢野さんはですね、もともと半導体の研究者なんですよね。
で、日立にも半導体の技術者研究者として入社してるんですけど、日立が半導体事業をやめてしまって売却しちゃったので。
それがキャリアの途中でそれが起きて、どうやっていこうかっていう岐路があったときに、半導体研究者としてどっか別の会社に行くではなくて、
人と組織っていうものに、自分がそれまで研究してきた半導体、広く言うと物理、物性みたいな法則性が人と組織の挙動においてもあり得るんじゃないか。
で、自分のそれまでの技術者として培ってきた知見をこの領域に応用したら何かわかるかもっていうので、過去20年は人と組織の研究をずっと続けてこられてるんですね。
今まで私が知ってる範囲で、このテーマで3冊出しておられて、一番初めの『データの見えざる手』っていう本がまずすごいインパクトがあったので、それでああって思い出す方もいらっしゃるかもしれないなと思います。
で、基本今回のトリニティ組織もそのデータの見えざる手の、こう言ってみれば、その次が『予測不能の時代』で、3冊目が今回の『トリニティ組織』なんですけど、一貫して人にですね、働いてる人の組織のメンバー全員にウェアラブルセンサーをつけて、
その人が誰と会って喋っているかっていう、近寄ったら近寄りましたっていうふうにセンサーが反応するのと、あとはその人の動きをずっと追っかけていて、そのパターンによって今歩いているのか座っているのかとか、あるいはその一緒にいる人と動きがバラバラなのか同調しているのかということが全部わかる。
で、一番初めはご自分一人に左腕にセンサーをつけて、今もつけてるらしいんですけど、20何年ひたすら自分の動きを記録し続ける。左手の動きを。
一冊目のデータの見えざる手はその話、個人の人間の動きだけで、実は人のメンタルの状態とか体の状態まですごいわかるんだっていうのが初めの発見で、今回はそれを組織にまで広げたっていう、そういう矢野さんと矢野さんの研究を一般向けに説明しているのが今回の本だという感じです。
3人いた時に、三角形ができているのか、V字なのか
いやー、データの見えざる手が多分2012年とか3年とか4年とか、それぐらい、ビッグデータとかデータサイエンスとかっていう言葉が多分市民権を始めた頃ぐらいに多分目にした記憶があり。
今、あの、アマゾンの今ページ見て2014年ですね。
それぐらいですよね。
やっぱりそうです。さすが記憶あってますよ。
そうですよね。
なるほど。で、それが今回は組織に来て、で、多分タイトルのトリニティ組織というのがキーワードそのものっていう感じなんですよね。
三角形ですという話なんですよね。
はいはい。
ここでわかったことっていう、まず一番初めというかわかりやすいのが、職場とか、これ塾で学んでる子どもとかも調査してるから、何らかそういう集団に。
3人いたときに、私と山田さんはこうやって定期的に会っておしゃべりしてます。つながってますと。
で、例えば私とエールの代表の櫻井さんも一定頻度よく話してます。
で、この3人の関係があったときに、私から見て、この山田さんと櫻井さんもしょっちゅう会って喋ってます。
ってなると、人間関係的には三角形が形成されますよね。この3人をそれぞれが一対一でつながる。
で、三角形ができてると、今の話でいうとその起点である私がハッピーになるんです。
へえー。
で、逆に私は山田さんとはよく話してます。私と櫻井さんもよく話してます。しかし、山田さんと櫻井さんは全然つながってません。ってなると、実は私がアンハッピーになって。
へえー。
で、私もそうだし、組織全体でいくと、組織にこの三角形、3人組み合わせるときに3人ともよく喋ってる。この三角形の数が多いほど問題解決力も上がるし、生産性も上がると。
へえー。
この三角形じゃないやつV字って呼んでるんですけど。
僕と櫻井さんがつながってない形だからですよね。
これが多いと、孤独感を感じるようになって、生産性も下がるし、離職も増える。
へえー。
すごい一見シンプルなんですけど、なかなかこれ深いし、かつ読んでいくと、えーそんなに?っていうくらいびっくりする説明力が高い話なんですけど。
へええー。
聴いてる方がどう受け取ってるかわかんないですけど、私を起点に仮に山田さんと櫻井さんっていうのが、私から見て部長と社長みたいだとするじゃないですか。
はいはい。
山田部長も私にやいやい言ってくる。櫻井社長もやいやい言ってくる。しかし、櫻井社長と山田部長は割と断絶ってこれめちゃくちゃ辛いじゃないですか。
いやー本当ですね。
こればっかりの職場。
はいはいはい。
と、いろんなつながりがある職場。
はいはいはいはい。
っていう、まああの。
へー。
コミュニケーション量と孤立感は関係がない
法則はこれですっていう、一見めちゃくちゃシンプルな話ではあるんですよね。
あと面白いのがですね、やっぱりこの話ってコミュニケーション量は別に孤立とは関係ないんだっていうのが、まずちょっと出発点として、これ分かったこと。
はいはいはい。
つながりとかコミュニケーション、その人が少ないことが、孤立をもたらすわけではない。
実はこの調査をしたときに、つながりの数とかコミュニケーションの時間が総量として多いか少ないかは、その人たちの孤立感の数値には差はなかったんですって。
へえー。
っていうのは、これもちょっと考えれば分かることで、人によって、いわゆる外向性・内向性って心理学組織のビッグファイブのうちの一つとしてあると思うんですよね。
ちょっと説明すると、外向性が高いっていうことは、言ってみれば刺激がいっぱいあって初めて満足する。お腹いっぱいになる。人間関係も。
はいはいはい。
内向性っていうのは割とそういう刺激とか人間関係に関しては単に少食ですっていうだけで。
はいはいはいはい。
大食いの人も少食の人も別に食べ物好きな人は好きだし、興味ない人はないって関係ないじゃないですか。それとちょっと私のメタファーとして。
なるほどなるほど。
外向的な人はいっぱい人付き合いをしないと満足しない。内向的な人は少数の人の刺激で満足するっていうだけで、幸せの度合いは、孤立感のタイプは別にそれぞれのお好みなので、そこじゃないんですよね。
だけど孤立感を抱きやすい人の特徴的な傾向はこのV字。
自分、その人の周りにV字が多いとその人は孤立感を抱きやすい。その人の周りに三角形がその人なりのちょうどいい量があったとして人間関係の。
なるほど。
ちょっとそこまでは書いてないけど私の理解でいくと、外向的な人は自分を中心した人間関係が30ぐらいないとちょっと寂しくなっちゃう。
外向的な人は5でOK。この30と5が問題なんじゃなくて、5なら5なりに三角形が多ければ孤立感ないんだけど。
30だから孤立してないんじゃなくて、この30が全部V字だったらめちゃめちゃ孤独を感じる。
さっきの社長と部長がつながってないV字は実務上つらいみたいなことは往々にして目にするし、それは生産性低かろうっていうのすごいイメージが湧くんですね。
孤立感って感覚的にわかるところとわかんないというか、じゃあ30のうちVが多いっていう状態でも60人ぐらいとつながってるわけじゃないですか。
シンプルに言えばっていうのでもなんか孤独感につながるんですね。
これはちょっと矢野さんの本にはこういう説明があったんですけど、まずイメージでいくとV字、孤立感につながりやすい関係っていうのは用事だけのつながりだと。
三角形になると仲間関係になっていく。
もう一個の業務的な説明だと、さっきの櫻井さんと山田さんを社長と部長とかではなくて、フラットだけどそれぞれ別のチームに行って、それぞれ別のタスクを一緒に。
私はタスクを2個やってて、1個は山田さんとやってます。1個は櫻井さんとやってますみたいな、こんな状態だとするじゃないですか。
そうすると、私はすごく2つのタスクを抱えて忙しく仕事をしているんだけれども、山田さんとも櫻井さんとも、この仕事の話以上にはなかなか深まらない。
1対1で、用事の話からなかなか発展しないから。
さらには、私の中で、この仕事って私でしたっけ山田さんでしたっけとか、山田さん向けのタスクと櫻井さん向けのタスクどっち優先したらいいんでしたっけとか、そういうことで結構自分のエネルギーを使っちゃう。
確かに確かに。
で、これが3人でやろうよってなると、同じ2人のタスクだとしても櫻井さん山田さんは私はそれぞれのタスクを抱えてるって知っててくれてる。
はいはいはいはい。
なんか私がどっち優先したらいいのかなみたいなので悩んでるときに、悩んでんのって聴いてくれたりとか櫻井さんがじゃあ僕の後ででいいですよって。
はいはいはい。
こうしますみたいな話を3人で相談するみたいなことが可能になってきますよね。
はいはいはいはい。
なんかねタスクレベルでいうとこういう説明がなされてます。
なるほどー。
V字は板挟みになっちゃったり、どっち優先するんですかみたいな板挟みになっちゃったり、逆に自分をこう私という人をタスクごとに分割して、
はいはいはいはい。
機械のように自分を扱う方に流れやすいんじゃないですかっていう話なんだと思うんですよね。
「分業」は、実は生産的ではなかった
なるほど。
ここでめちゃくちゃ面白いのが、やっぱりこれまでのロジカルシンキング、つまりその大きな課題を小さく小分けして、
小分けしたものを1個ずつ解決すれば大きな問題が解決するのであるっていう考え方がV字の人間関係に帰結しているのであるっていうのが矢野さんの見立てなんですよ。
分けすぎじゃんっていう。
多分それが効率的生産的であるっていうふうに思われてましたよね。思われてますよね。過去形ですらない。
でもそれが実は生産性に逆行してましたっていうのがファクトベースで分かりましたっていう。
面白いですね。
面白いんですよ。いや嬉しいこの面白さがちょっと山田さんに伝わった気がする。
ちょっと読んでみないと多分あのまだ面白さの2割ぐらいしか味わってないんだと思うんですけど。
私の説明じゃちょっと部分的すぎるか。そうなんです、だからやっぱりこの話の面白いところ1個目はね、一番初めに言ったこれ法則って
あのどんなすごいなんかコーチでもせいぜい1万人じゃないですか。
でこれもなんかもう桁が全然違うし見てるポイントが、その人が意識してしゃべったことじゃなくて無意識の行動をキャプチャーしてるから、本当にその物理法則としての人間の集団の特性をつかんでるっていう、
そうですよね。
がゆえに、人間がこう頭で理屈をこねて考えた、その分業っていうのが生産的なんじゃないかなっていうのが
なるほど。
違ったよっていう。
なるほど。
この重みがすごいもうそんな人間の浅はかな、なんか分業万歳みたいのは全然その人間の本質を外してましたっていう。
面白いっていうか、あのページ見たら1兆件21年間のデータって書いてありますよね。
そうです。
1兆件ですから。
1兆件。
ゼロ何個かわかんないですよね。
そうなんですよ。
そうです。
なんかそのあのいろんな組織とかに限らず、こう長い年数耐えているものほど実はすごく筋がいいものであるみたいなことって、僕は結構正しいと思ってるんですけど
それこそ分業するとかタスクをちっちゃく分けるみたいなことってたかだか4、50年もないかなみたいなものとしての、分業の知恵ですよねっていう中でいくと
実はそれが生産的ではなかったのかもしれないっていう話なのかな、っていうことの意味で、篠田さんが冒頭の「この本のインパクトをちゃんと理解してほしい」みたいにおっしゃったのって
天動説を信じた私たちに地動説がつきつけられた、っていう話
そういうことだなっていう、のだなって今まで聴いてわかりました確かに。
これは自分も含めてなんですけどやっぱり、一方で多くの人の性質としてなんか自分の経験とか体感とか自分が信じてきたものにどうしても戻っちゃうじゃないですか。
どうしてもロジカルにMECEに分けた方が、そっちの方が賢いと教わったし、賢いと言われたいから、そういうふうに自分を鍛えてきた自覚もあるわけですよ。
でもそれが今、少なくとも分業っていう意味においては真っ向から否定された。
少なくとも3人っていうこのうまく分けられないユニットにした方が生産性高いんだよっていう。
だからそこって自分も気をつけなきゃいけないなって思うのは、一回これ聴いただけだとまたふーって自分の元の信じてた世界にひゅーって戻っちゃうんで。
それはね、良くないなって。
いやそうですよね。今の篠田さんの聴いて僕すごい今、自分で勝手に腑に落ちたのは、自分の実感とどこが合うか探そうとしたんですけど、そういうことじゃないんだなってことだなって。
僕の実感かどうかとかどうでもよくって、法則として重力はあるよねって話と一緒だから、僕の実感上合うかどうかなんて話はしてないんですよ。
まさに。天動説を信じた私たちに地動説がつきつけられたっていう話で。
いやだって月動いてるじゃんとか。
僕の感覚と合わないんですよみたいな話じゃないんですよねこれって。
自由にそう思えばいいけど、それを主張してもあんまり意味ないですっていう。
それもはや科学というものへの挑戦みたいな話で。数値と統計学と科学でやったものとしての事実が事実というか。
別の言い方すると、別に自分の経験則を全否定する必要はなくて、地動説だって分かった上で、やっぱりお日様は東から昇って西に沈むわけですよ。
だからそれは自分たちの経験則として、経験則が通用する範囲ではそれを守ればいいんだけど、もうちょっと幅広い領域になるとこの地動説があるっていう。
そこをわきまえずに、やたら自分の経験則を無限に拡張して説明しようとするのはとにかく。
たぶん逆もしかりで、個別事象で言ったら、これは2人の方がいいでしょってことは全然あるじゃないですかっていうのは否定するわけでもなく、
その普遍的な法性の高い法則として、Vでなく三角だよねって話をしてるんであって。
じゃあ、櫻井さん、島田さん、山田さん、3人の関係の中でねっていうときに、これは2人の方が上手くいくじゃんっていう個別判断は別にあってもいいよねっていうのは、別の世界線の話ですよね。
っていうことなんだけど、とにかくこの法則が出たことで、組織開発、すごい詳しいです自分はって思ってる人ほど、この本をぜひお読みいただいて。
今山田さんが言ってくれてるように、これですべてが解決するわけではないから。
後半、まさに私がこれを読みながら、この本がカバーできてないところで、
エールとか、私たちがずっと扱ってきた、聴くとか、対話、補完する領域ってあるなっていうことも、やっぱり同時に仮説としては思って。
なんかそんな話がちょっとできると、いいかもなって思います。
その質問しようと思って、僕も興奮して全然忘れて、違う話をいっぱい投げ込んでしまいましたっていう感じで。
次回その話、しましょうか。
そうですね、ちょうどいいぐらいになったので、一旦ここまで終わって、次回エールであり、僕らのやってることとの繋がりみたいなことがもうちょっと展開できたら嬉しいですね。
はい、ということで一旦ここで今回は終わりたいと思います。
篠田さんありがとうございました。
ありがとうございました。