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組織を考えるメディア Organize。このポッドキャストは、エールの篠田さんと山田で、組織を考える、とらえなおす上で我々が面白いと思った視点・観点をシェアしていこうという番組です。篠田さん、今回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
前回は、「聴く」という選択肢をもつことのパワフルさを、実際にアダム・グラントの本にも出てくる話をひも解きながらお話しいただきましたが。ちょっと違った形ですが、似たような、「聴く」というパワフルさみたいなことの話かなと思うんですけど。
今日はですね、今度は別の本、私が監訳した『LISTEN』に紹介されていた事例をお伝えしたいなと思います。
『LISTEN』という本自体がずっと綿々と「聴く」という話の本なので、事例はいっぱいあるのですけれども、特に人の考えが変わる。
要は、前回に続いて、組織の中でもよくある、違う考えが、ある意味、屹立してしまっている状況で、
私たち多くの場合、説得するとか命令するとか、場合によってはその人を無視して進めちゃうみたいなことで、解消しようとしがちなところ、聴くっていうのが使えますよっていうのが、前回の事例の一つだったんですけど、
それと同じ意図で、この『LISTEN』に出ているクエーカー教徒の風習というか、習慣であったクリアネス委員会っていう手法をご紹介したいと思います。
クリアネスって要は明確になるっていう、クリアですね、っていう意味と、
クエーカー教徒の宗教上はより、宗教的な意味での明確さっていうのも実はあるようなんですけども、この文脈では宗教とは全く関係なく、あくまで今お話ししたものの事例としてご紹介したいと思います。
この例では、主人公はパーマーさんという人で、ある学校の学長になりませんかっていうヘッドハントを受けてるんですよね。
どうしようかなと思っていると。こうやって何か人生の大きな岐路というか、意思決定をするときに、クエーカー教徒のコミュニティの中では、このクリアネス委員会というやり方を使いますという話なんです。
これはその意思決定に直面している人と、基本利害関係が薄い人を5、6人お願いして、委員会になってもらう。
この委員のお仕事は、この課題を持っている人にシンプルな問いかけをしてくださいと。アドバイスとかしない。
しかも難しい質問もしなくて、ただシンプルな問いだけしてくれっていう役割なんですよね。
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このクリアネス委員会において、いくつか質問が続いた後に、パーマーに「学長になるってことはどんな点が好ましいと思うんですか?」って質問する。
そうしたらパーマさんは、なんか結構社内政治がめんどくさそうだとか、寄付集めるのも大変そうだしとか、ちょっと嫌だなって思うことが口から出る。
そうしたら、「なるほど、じゃあどういうところが好ましいと思うんですか?」って。またこういうところが嫌だなって話をしてしまう。
ここで質問者がまた嫌なことばかり言ってますねとか言わないんですよ。もう一回シンプルに、「では好ましいと思うことは何ですか?」って。
そうやって3回聞かれて初めて、このパーマーさんは、あっ、嫌だなって思うことしか自分は言ってないって気がついて、
いやー好ましいと思うことは、学長になりましたって自分の顔写真が新聞に出ることですかねって言って、ちょっとみんなシーンってなって、でもここでまた委員は、ほら〜だからとかって言っちゃいけない。
また質問なんで、「じゃあ新聞にそうやって顔写真が載る方法って他に考えられますか?」っていう質問がその後に続いて。
そうやってこのパーマさんがその瞬間、この話を受けちゃったら、要は学長になるって話を受けてしまったら自分に嘘をつくことになるなってそこで気がついて、最終的にお断りしましたっていう、こういう例なんですよね。
ここの話がやっぱ面白いなって思ったのは、この人は例えば学長ってオファーを受けるかどうかっていうことを、意思決定の課題があるっていうことは明確に認識してるんだけど、
どっちに言っていいかわかんないっていう感じなんですよね。この時に多くの組織の中の状況だとアドバイスしたくなるじゃないですか。
実際相手はアドバイスを求めてる感じなわけだし。それ以外のやり方がありますよって、これもオプションの話なんですよね。聴くっていうこと、しかも徹底して聴く、要は問いかけることで、
意外と短時間にこの課題を持った人も、当初気がついてなかった論点に気がつけたり、この場合はその答えまで行ったわけなんですけど、そこまで仮に行かなかったとしても、
好ましいことありますかって問われて、嫌なことしか思いつかないっていう自分は何なんだっていう疑問は浮かびますよね。それについて考えようってなるじゃないですか。
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このやり方があるとか、人ってこういう挙動をするっていうことを知っておくっていうのも、めちゃめちゃ大事だなと思って。ちなみにパーカーパーマーさんは、この考え方を別に宗教の文脈ではなくて、人材開発とか組織開発の文脈に持ってこられるように、
ご自身でそういうメソッドを整理して、実はアメリカで広めてらっしゃるそうなんですよね。これは完全にクエーカー教徒だからどうかということではない応用可能性がある文脈だということも知って、めちゃくちゃ面白いなと思いまして、紹介をしました。
さっきの、「いいことは何ですか?」って問いかけを3回ぐらいしてっていうので面白かったのが、もう2回目ぐらいで多分質問者側は気づいてるじゃないですか。
絶対気がついてる。
その時に、このたてつけじゃなかったとして、仮になんか嫌なことしか言ってないですよねって、むしろ言われた場合と、それでもいいことは何ですかって聞かれる場合で、言われて気づいたのと自分で気づくのって、多分パーカーパーマーさんの中で違いますよね。キャッチする瞬間のインパクトって。
全然違うと思うんですよね。前回の動機面談の構造とのおそらく共通点は、やっぱり自分で決めたいんであると。「人は自分で決めたと思いたい動物である」というところが今の整理をしていただいたので、共通項として浮かび上がってくるなって思いました。
そこで、今の山田さんの仮にのお話のように、「嫌なことばっかり言ってますよね」って言うと、それ気がついたの自分じゃないから、その解釈を若干、そんなには意識しないにせよ、押し付けられた感じになるんで、本当に自分が、「私って…」っていうふうに、そこまでのインパクトになれない。
そうですね。この話が、前回も今回も、篠田さんの口から何回も、人間ってこういうものだよね、みたいな感じの言葉が出てくるのがすごい面白いなと思っていて。
その、人ってどういうものかっていう理解の部分が、やっぱり僕らがなんとなく、特にOrganizeの中で、働くというか企業の中でって言ってる中でもっている、人間観というか、人間ってこういうものっていうのの捉え方が違うみたいな話はすごい何かしてますよね、これって前回と今回で。
もう本当その通りですね。私が、もっとこうだったらいいのにって願う理想の方向性っていうのは、前回と今回紹介したような人間観が共通理解になって組織が作られる状態。
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なるほど、なるほど。
なんですよ。もちろん、それだけで組織がドライブできるかって言うと、きっとそうではないから、当然今も有効な上位下達とか、指示命令系統っていうのは、それを全部なくせないっていうことはさすがに考えてないものの、
ただ、ここでも扱ったような、人は自分で決めたいものであるとか、大人として扱うといいことがあるっていうことが、ちょっと弱すぎませんかっていうのは、ものすごい声を大事にしたい。
いやー、そうまさに、いや本当ですよね。篠田さんがいま言われた、前提となる人間観をどこに置くか、どちらに重心を置くかっていう話と、現実問題、企業というものが何かの課題を解決し、事業を推進するためにやっていますっていう集合体である以上、
より能力の高い視野が広い人が決めて、みんなが従った方がいい場面って絶対あるじゃないですかっていう、そのこと自体は全く否定していなくて、そういう場面とか、ある種やらせる、やってもらうというか、いわゆる指示を、指示して、従わせるみたいな構造。
カードとしてやっぱり必要な場面はあるって話は、ベースの人間観の上にそれも乗ってますよねってことであり得るって話をしてるんですよね。
はい、そうですそうです。ので、何でしょうね、例えば、組織の中で、今、山田さんの話に乗っかると、ベースの人間観が、人っていうのは自分で決めたいものであるっていうものだとすると、ちょっとある状況においてしょうがないから命令して決めたみたいな、みんな行けって言ったっていう時に、「しまった」ってリーダーがちょっと思うと思うんですよ。
この状況はちょっとやってしまったが、もうちょっと一人一人が聴いてもらうことで、自分で考えたり自分で決めたっていう状況を、もうちょっと作れたんじゃないかなって思えるのが、いきたい方向で。
そうではない人間観の時って、命令してみんな動かしたっていうことに関してリーダーが、むしろ私やったやった、なんてすごいリーダー、リーダーシップ発揮したって満足感が高まっちゃうんだと思うんですよ。
確かに。
同じ状況に対する解釈が、ベースの人間観が違うと、個人の人間観っていうか、組織として共通の人間観ですよ。
違うと、同じ状況であるリーダーの意思決定と行動に対する解釈が、結構逆になると思うんです。
賛否両論はもちろん必ずあるんだけど、Netflixが多分7年ぐらい前か、2016年ぐらいにはカルチャードック、ずっと公開してるんですけどね、出したものが結構世の中にびっくりされて、その後本にもなったりした中に、
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例えば経費精算、経費のいくら使っていいかに関して、もう4語しかない。
Use your own judgment。
なるほど。
自分の判断で、っていうだけなんですよ。
仮にファーストクラスに乗ろうが、ものすごい高いホテルに泊まろうが、それが自分として良い判断だと、正当だと思えるんだったら、勝手にやれと。
でもそれは、それだけ取ると、もう経費使いたい放題じゃん、みたいに見えるけど、そうじゃなくて、ものすごく成果をむちゃくちゃ厳しく取る組織なんですよね。
ばんばん、人辞めさせられてるんですよ。だから業績を非常に厳しく見るのとセットの話で、その成果を上げるために、どういうやり方をやるかは、自分で決めてもらうのが一番効率がいいし、生産性高いよね、ある意味「大人ですよね」っていうことが、ものすごいベースにあるし、組織というか経営観点で見ると、
その経費の使い方をチェックするリソースが無駄で、そこには使わず、その分成果を上げる方、トータルの、個人だったりチームが事業推進の成果を上げるのかとか、上げてんのかっていうチェックとか、KPI設定にリソースを使うっていう判断をした結果だとは思うんですよ。
でもそこの根底にある人間観というのは、ものすごい人が自分で判断すると、より行動、意思決定の質っていうより、多分ご本人の納得度が高いから、より成果を上げるっていうドライブがかかるでしょっていう人間観があるなっていうふうに私は解釈をして、
なるほどなって。
今の経費は自分で判断せいっていうことだけ取るとあれですけど、めちゃくちゃ高いパフォーマンスが求められるし、それにクリアできるだけの能力の高い人を元々取っているし、会社として目指すこともすごい事業上も明確になってるし、なんかいろんなことの組み合わせの中で経費の使い方ももちろんチームにしてねってやってるし、っていうなんか組織全体のメカニズムみたいなことがあった、
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土台として、人って自分で考え自分で判断することが最も高いパフォーマンスだよねっていう思想のもと、会社ができてますよねってことですよね。
これをなんか下手に安直に取っちゃうと、いやそれはNetflixだからさ、シリコンバレーだからさ、みたいなことになっちゃってもそれは違う話で、今あくまで土台の人間観とその事業環境に適したNetflixならではの事業の作り方、組織の作り方で成り立つよねって話が一個あるし、
なんか、まあ卑近な例ですけど、我々エールの経営を一緒に携わっている中で、エールも土台の人間観は多分そっち側に寄せてやりたいって話と、とはいえ日本のスタートアップとしてこの領域の事業をやる中で、やっぱり会社として経営で判断するよねっていうこともあることもあれば、
いやでもそこ、なんか人間観がそっちにある上で、どうやってじゃあその舵取りをするかみたいなことって、なんか組み合わせで土台とやることの中ですごい考えてやってますよねっていうのも、なんかその構造の話はすごいしてますよねっていうことですよね。
そうですそうです。だから、ブロック塀と石垣の例えを使って、根底にあるその組織観とか人間観、それがその会社の、実はその価値観、まあそれを価値観をバリューって言ったり、ミッションって言ったりする会社もあると思うんですけど、
本当はその根底に人っていうものをどう捉えてるか、組織っていうものをどう捉えてるかっていうのが私はあると思っているんです。そこって意外と言語化されてないし、言語化難しいんですよ。本当に無意識に持っちゃってるから。
でも一方で、ちょっと戻りますけど、例えば今回のクリアネス委員会とかも長年、クエーカー教徒のコミュニティでは有効な方法として生きてきて、今実際これをやり方として広めてる方がいらっしゃるとか、
その前のモチベーショナルインタビューも科学的なエビデンスが積み上がってるっていうところからすると、組織によってどういう人間観を持っていただいてもそれは経営判断なんだけど、やっぱり科学的な人への理解っていうものをちょっとすっ飛ばして、個人の趣味とかその組織の趣味に走りすぎてると、あんまり良くないんじゃないかっていうのはちょっと思う。
で、そこで例えばエールみたいなとか、Netflixっていうのが、変わったニューエイジで異端ではないのではないかっていうのも私の主張であって、むしろこっちが本流だと思いますよと。
で、かつての工場のような職場のセットアップを念頭に置いた、上位下達が非常に厳しい、人の意思っていうものが基本出ないようにするっていうのが良い組織であるっていうのは、むしろその生産技術があったときの都合でしかなくて、そっちは本質じゃないんじゃないのっていうのが。
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多分私の主張なんだと思いますね。
なるほどなー。それが働く人にとっても幸せだった時代って、でもあったわけじゃないですか、きっと。それで、もちろん人によってはそれが辛かったとか合わなかった人ももちろんいらっしゃると思うけど、社会の状況で言えば工場のラインに入り、同じものをたくさん作ることによって、いいものができて、それが人に届いて製品を使える人が豊かになるし、自分も給料が増えるしっていう。
いい共存関係ができている中だと、そこで働くことにすごい幸せを感じるし、っていうこともきっとやりやすかった時代と。
特に本流というものがもし変わっていると捉えるならば、やっぱり世の中の働くとか、そもそも経営のやり方も割と変わってるよねって中で、根底からちゃんと問い直すというか、考えることになりますよねっていうことだなっていうのを理解しました。
はい、ありがとうございます。そうなんです、そういう面倒くさいことを考えながら、なんかもうちょっとこう、いいやり方が広まるといいなと思って日々暮らしています。
そのまま最後、なんか我々がエールという会社でやろうとしていることそのものみたいなことで最後にかえってきた感じがする話でしたね、今日のもなんか。
ですね、もう本当そうなんですよ。
なかなかこれが伝わりづらいのも含めてですね、あのこうやってポッドキャストで、なんか時間をかけながら僕らも読み解いて伝える形をちょっと作ってる感じもしますね。
ね、なんかこれ聴いていただいて、なんかうちのチームとかうちの組織はそうなってるよっていうところがあったら、すごいお友達になれる気がします。
そうですね、ぜひお聴かせいただけると嬉しいです。
はい。
はい、ということで今日はこの辺で終わりたいと思います。
篠田さん今日はありがとうございました。
ありがとうございました。