AI時代の授業計画
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
今日は385回、AI時代を生きる、ミニ単元で読む聞く話す書く✕ICT✕AIというタイトルでお届けしたいと思います。
私は、12月に入ってからの冬休み、少人数クラスの特別報酬で、何をやるかと生徒と相談していました。
90分の授業をかける3日間というわけなんですけれども、その最初の1時間は、ずっと取り組んできた私のクールジャパンのスライドが完成したので、それを説明する音声を録音しました。
生徒は何度も何度も自分の原稿を読んで、練習して、本番録音というところで間違えては何度も撮り直しをし、というように一生懸命に取り組んでいましたが、90分では時間が切れてしまったので、冬休みに残りを完成させて、年明けにポッドキャストに仕上げるという予定でおります。
そして、あと2日間、何をするか彼らと相談しました。年明けに模擬試験があるんですけれど、本当はその勉強をするのは本筋なんですけど、とっても彼らは浮かない顔をしているので、私はそこで提案しまして、
AIに関係する文章を読んで、いろいろ読んだり聞いたり話したり書いたり図式化したり話し合いしたりというのをやるというふうに提案したら、やるやるということだったので、この企画を発動させることにしました。
AI関連の文章については、もう6年ぐらい前だったかな、福井県の若狭高等学校の現在校長先生である渡辺先生が、6年前ぐらいに実践されていたAI関係の複数の文章の読み合わせの単元を参考にさせていただきまして、
AI時代を生きるという単元を過去何度かやってきたので、その題材を活用することにしました。
まず導入としては、AIの印象を生徒に聞きました。今現在自分たちがAIについてどういうイメージを持っているのか、そういうふうに尋ねたところ、彼らは便利とかすごい力があるとか、そういった反面、時々嘘をつくことがあるとか、おかしいことを言い出すとか、
AIに頼っていると自分たちの能力が低くなるとか、そういったことをお互いに発表し合っていまして、導入としてのモチベーションアップを図りました。
それから次に読んだ文章は、AIの性質とか機能について説明してある短い文章です。
新書の文章の部分なんですけれども、その要点をまとめさせました。
一つの段落にキーセンテンスがあるんですけれども、それを丸写ししてまとめれば要点まとめになるというような構造ではなかったので、自分なりにキーワードを抽出して、そしてそのキーワードで文章にまとめるという能力が必要とされる、そういった課題でした。
3段落あったので、1段落につき2分間計6分間でタイムトライアルということで時間を測って取り組みをさせました。
終わったら写真を撮ってロイロノートに提出して発表し合い、うまくいっているところとかいかなかったところを相互批評させながら、どうやったら美しい文章になるかというものを対話しながら仕上げていきました。
私はよく手書きを使わせるんですけれども、やっぱり手書きで書かせるときとデジタルで書かせるときと、生徒にどういう力をつけさせたいかというのを、あるいはどういうふうな展開を狙っているからここで手書きなんだという必然性をできるだけ考えるようにしているんだけれども、今回は文章を読んですぐ紙に書くというふうなことにすると、生徒の思考の負荷が下がると思ったんですね。
一回ディスプレイに目を移すと、やっぱり少し思考が途切れる生徒もまだ学齢が低いといるんですよね。高校生だったら大丈夫かなと思うんだけど、中学校1,2年生だとすぐ思考が切れるんで、紙っていうもので思考がずっと持続するような工夫っていうのも生徒の様子を見ながらやったほうがいいんじゃないかなと思っているタイプです。
その次の文章は、チャットボットが人々に与える影響について書いてあるものを読みました。
そこではチャットボットがあたかも人間であるかのようにコミュニケーションをとって、それで人々の心の中に入って悩みを解決してくれるっていうような文章だったんで、ここは意見や感想を述べるところにしまして、前が要点まとめだったんで、ここで脳の働き方を変えて自分たちの意見や感想を述べるところとして、
生徒にいろんな考えを述べさせた後、メリット・デメリットについて分析をさせました。
その話し合いをさせている様子は音声録音をして、それでその音声データをノートブックLMに取り込んで、一枚もののインフォグラフィックにまとめてもらうことにしました。
生徒の方はそれが生成されている間、話し合いに基づいて、今度はホワイトボードがあるところに移動して、今の話し合いのまとめのグラフィックレコーディングを書きなさいと言って、それで書いてもらってそれぞれ発表しました。
生徒はホワイトボードということで、ノリノリで自分の考えたことを書いていって、少人数クラスでたった3人だったのですぐに発表させて、お互いがお互いの発表の良いところとかを指摘し合いまして、
そうこうしているうちにインフォグラフィックが完成したので、自分たちが書いたまとめのグラフィックレコーディングと比較しまして、AIのまとめがやっぱり素晴らしく出来が良くて、華やかなイラストもついてものすごく洗練されているってことに生徒たちが本当に驚いていますね。
だけど反面自分たちのちょっとした意見が取り入れられていないということについて、若干悔しがったり不満に思ったりしていましたね。
やっぱりAIは洗練された意見とか、抽象化された意見というのを取り入れて、雑味のある意見というのをちょっと排除してしまう性質があるんじゃないかということに私も気が付いたし、なんとなく子どもたちも子ども心ながらにそういうところは気づいたんじゃないかなと思いますね。
ICTとAIを活用した授業の実践
その次に3つ目の文章を読みまして、これは理由を説明する問題としました。ちょっと理由説明の問題としては、ダイレクトに文章に書いていないもので、文章の中の3,4箇所からキーワードを抽出してまとめるというテクニックが必要な問題だったので、ちょっと時間がかかるなと思ったけれども、まずは3分で書かせ、実際は4分で出来上がりましたが、
各自がそれを読み上げて、私の模範回答と比べてどう思ったかを話し合いました。やっぱり文章が整ってなかったり、説明が長すぎたり、例が入ってしまうというような指摘があり、各自がそれについて自分の文章を添削して、そして振り返りを書いて、論々の提出箱に提出しました。
読む、聞く、話す、書くというのが連動し合いながら、さらにそこに掛け算としてICT、さらに掛け算としてAIを導入していきました。こういうのって少人数だったからこそ、こんな複雑な構成でできたんじゃないかなと思います。
実はこの授業は綿密に計画を立てていたわけではなくて、生徒の様子を見ながら組み立てていったんですね。具体的に言うと、読む、聞く、話す、書くというのはもちろん連動させていこうと思ったんだけれども、生徒の様子を見て飽きてきたかなと思ったらICTを入れる、共有ノートを導入する。
さらに何かちょっとまた飽きてきたかなと思ったらAIを使ってまとめていく、比較する、音声を使ってさらに自分たちの考えを比較させるというように、様々な手法をその場その場の生徒の様子を見て判断して展開していくという方法を取りました。
これをできたのはまず少人数だったということは大きかったなと思うわけなんだけど、私自身が日頃から楽しみながらICTやAIの活用をやってて慣れていったというのが大きいかなと思いますね。
操作もスムーズにできるし、トライアンドエラーしてたおかげで何となく自分の持ちカードが多かった。そこで瞬時に判断してこれがいいなというふうに投入できたのではないかと思っています。
これって思えば冷蔵庫開けていろんな余り物とかストック材料を見て瞬時に判断しておいしい料理を作るといういわば家事のマネジメント能力が最大に生かされた瞬間とよく似てるなと思います。
やっぱり食事を作るというのは授業に似たところがあるなーってこの配信でも時々私つぶやいていたと思うんだけども日頃からなんとなく思ってました。
ということで毎日日常的にやっているその場にあるものをありあわせでコラボレーションしながら最大の効果を狙うという私の日頃の鍛錬、家事の鍛錬が授業でも生きてきたのではないかなと思います。
ということでこの国は女性がアンペイドワーク、家事育児なんかという労働に従事する時間が男性よりも圧倒的に大変に長い社会なんですけれども、女性の先生はそれにひけ目を感じることなく家事育児で培ってきたマネジメント能力を授業の方でも最大に発揮できるのではないかと思っています。
お忙しい子育て時期を送っていらっしゃる女性の先生方は決してひけ目に感じることはなく、自らのマネジメント能力の蓄積を信じて頑張っていただければなと思っています。
こういったAI活用、ICT活用と授業の話が家事労働の話とこんな風に結びつくというのはとてもAIにはできないことだと思うんですね。
こういった面白おかしい着地点を目指しながら異分野のものを結びつけながら新しいものを生み出すという態度、思考方法、これからも鍛えていきたいなと思っています。
それでは今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。

