リスナーからの質問
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。
この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
今日はね、第187回、リスナーさんの質問、学力差のある教室での指導法って、というタイトルでお届けしたいと思います。
この間、インスタのDMが来ました。ちょっと読ませていただきます。
黒瀬先生、こんにちは。いつも先生から勉強させていただいております。先日はオンラインで心の指導法を学ばせていただきありがとうございました。
これ、私がこの間、授業道でやったやつですね。
この4月から、県内トップの超新学校に移動することになりました。
教科の指導ができるという喜びはあるものの、今度は短期間でどんどん教材を終わらせることを求められており、
わからない子は置いてきぼりでもいいから、上の子に向けて指導しなさいというような指導方針で、自分の指導感と合わずモヤモヤしています。
これはひどいですよね。これ本当に現実的にこういうふうな言葉が飛び交っているようになったら問題だと思うんですけれど、
黒瀬先生が新学校で指導される上で心がけていたこと等あれば、また授業道で紹介していただけるとありがたいです。
ということなんですけれども、私の中でこれを改めてどうやってるかなって考えていたら、
パッと思い込まなくて、もう無意識にやっちゃってるですね。
なので、自分が無意識にやっていることを今回丁寧にもう一度振り返ってみて、自分の中でどういう指導をしているのかというのを掘り起こして、
超新学校というか新学校でどうやっていったかというのを最後ら辺で話したらいいなというふうな感じで語りたいと思います。
まず学力差があるというのは、別に新学校であろうが、あるいは勉強が苦手な進路多様校であろうが、
学力差があるっていうのは多分当たり前。
どの教室でもどういう生徒実態でも学力差があるっていうのは私ずっとそうだったんで、あんまり特別に思ったことがないなっていうのが実感ですね。
まずは実態を知るためにいろんなことをやってみるっていうことがとても大事で、
自分がこうなんじゃないかなっていうある程度の予測、仮説を立てて授業をいろいろしてみることです。
その時になんとなくするんじゃなくて、できたらこういう狙いでこういうことをしようというのを考えて、まずはやってみる、仮説を立ててみる、お試しをしてみるということで、
例えば質問をするときにこういう質問はこういう意図でやったんだけどどうだったかなとか、聞き取れたのか、理解できたのか、答えに困ってるのか、質問の内容が難しすぎたのかっていうのを常にそこで検証していきます。
それから音読をするときもこの方法が果たしてこの子たちに合ってるんだろうかっていうのをどういう意図で音読をさせたのかっていうのを自分で意図を持って投げかけて検証していきます。
それから例えば記述をさせるときでもどういうふうな意図で持ってこの質問を投げかけてどういう答えが欲しいからこれにしたのか、量は適切だったのか、そして取る時間はどうだったのかっていうのを
ずっと検証し続ける期間が大事だと思います。いわばお試し期間。まずはいろいろやってみるっていうのが大事で、ここはきっちりトライ時間にしたいと思います。
意識してトライする。いいと思ってこれをやってどうだったかを検証するっていうのが大事だと思うんですよね。
私は本当にこれはいいなと思ったやり方は、ワークシートを中心に私は授業をやっているので、そのワークシートを毎時間回収して点検するんですね。
それいちいち丸とか×とかつけるんじゃないですね。どれくらいできているのかなとか、この子はどれくらいできるのかなとか、この子はどれくらい授業に対する取り組みができるのかなっていうのを毎時間毎時間提出させているとよくわかります。
返すのは本当に全員コメント書くと死んでしまうんで、過労死してしまうんで、反骨して線を引く。これだと持続可能になるので、だいたいこの子がいいなってところに線を引いて丸したりとかね、そういうふうにして返します。
そうするとどういうことがいいのかというと、一人一人が印象に残りやすいですね。この子は難しい子なんだ、この子はできる子なんだ、この子は丁寧に書く子なんだ、この子は書いていること以上のことを考えている子なんだということが日々プリント提出させることによってこちらの方が見取ることができる。これが最大の効果だと思います。
教育の工夫
で、できたら肉質が私はいいなと思っていて、肉質ね、もう本当にプリントに自分が字を書くっていうことでその子の心というか精神状態まで出てくるような感じですから、やっぱりこうデジタルの文字よりかは肉質で書かせる方がその子自身を丸ごと理解するっていうことにより近づくと思っているので、結構肉質で書かせる。
例えば焦って書いていてもですね、結構上手だなとかわかっちゃうんですよね。この子は雑に書いているようだけど本質を捉えるなとか、丁寧に書きすぎて時間がなくなっちゃうタイプなんだなっていうことが日々提出させることによって教室自体がだんだん自分の中に染み通ってきやすいですね。
この生の字っていうのはね。ということで私はそういう肉質を毎日見るっていうことをお勧めしたいと思いますけれど、働き方改革に逆行しない程度に。
最近生徒もね、過労死するんで線だけにしてるけど読んでるからねっていうふうに私は言うようにしていますので、それはちゃんと生徒も理解していると思います。
そういうふうな材料が揃った上で、実態を知った上でのワークシートを作成するとか、それから版書計画を作成するとか、そういうふうなことをしていますね。
例えば字の大きさはどんなのかとか、フォントはどうなのかと。フォントなんかはデジタル教科書体っていうのが抜群にいいわけですけれど、デジタル教科書体でいろんな子にユニバーサルデザインで見やすくする、認識しやすくする、負荷を下げるっていうことをするようになりました。
あとは学力の低い生徒だったら、書き入れる欄をカッコじゃなくて枠組みの空欄にした方がいいっていうのも、特別支援教育の観点から言うと有効ですね。
それから、目線異動が少ないように配置したりとか、より書きやすいような回答欄の工夫、それから図やイラストでサポートすること、あとは記述の量を調整すること。
例えば量を多すぎてもいけないし、少なすぎてもいけないし、多くても構わない子にはどういう風な記述の量のプリントのデザインにするかとか。
私なんかはよく波線を引いてここまでは書こうっていう風に、最低ラインはここを超えるようにしようと。もっと書ける子は3、4行ぐらい空欄の行を残しておいて、どんどん書ける子はこれどんどんはみ出していいよっていう風にやっています。
あとは時々書けない子にはヒントをそこにたくさん書いたりとかしますね。
さらに時間に余裕のある子はチャレンジ課題。
学力差を超える指導
例えばスーパー高校生級の課題にチャレンジとか、そういう自分の知識欲とか好奇心とかチャレンジ欲を刺激するような書き方でスーパー高校生級の課題にチャレンジした人はこちらっていうのを作ったりしますね。
という風なことをやりますし、あまりできない子で量が書けない子なんかは書いたことの同じ内容でも書き方を表現を変えて何回書いてもいいから量を書きなさいっていう風に言うと結構量をたくさん書くようになります。
というようなことをやりますね。
ということでワークシートの工夫について今まで述べてきましたけれど、やっぱり授業中のやりとりっていうか声かけも大事で、とにかく授業中にさりげなく褒める。
あんまり褒めすぎるとちょっとなんかかえってからかわれてるっていうような褒め殺し的な印象を彼らは受け取ってしまうので、いやみなくさりげなく褒める。
例えば発言したら、こういう風な指摘なんだねとかいう風に評価する。
より高いレベルの語彙を使ってその子を評価してあげるとか、ここまで気がついたのはすごいなとか、いいところまできたねとか。
そんな風にできるだけその発言を前向きに、肯定的に、チェンジというかうまくすり替えて評価してあげる。
それから教室をぐるぐる回るときにも、作業させている状態を観察しながら、いいじゃんとかね、あとはここまでできたからもうちょっとだねとか。
例えば、時々全然自分の考えとかが書けない子がいたりするんですけど、そういう子は無理しなくてもいいから、一行でもいいからねとか。
その子の実態をきちんと把握していれば、様々なバリエーションで声をかけることができると思うんですよ。
だんだんこうやると、皆さん取り組むようになります。
こういう毎日の地道な水やりで、教室がだんだん学びに向かっていく、評価してくれる先生がそこにいるので、だんだん学びに向かっていくということになります。
こうやって優劣を見えにくくする工夫の積み重ね、小さな積み重ねによって、教室全体が学びに向かって参加するような雰囲気作りができたときに、
やっぱり発問しても受け止めてくれるし、答えるときも、この先生は何を言っても、ここに教室で自分を居させてくれるんだという安心感で答えるようになるし、
そういった工夫が必要なんじゃないかなと思います。
全生徒の学びを重要視する
先ほどの質問にあったように、できる子だけを相手にしてできない子を放っておきなさいというような教室だと、
それはやっぱり自分は見捨てられているという、そういう感覚がその子に残ってしまって、学ぶということに向き合わない子をどんどん育てていることになると思うんですよ。
上の子は上の子で物足りなくなるということで、そういう子のために様々な生徒を想定したワークシート作り、声かけ、そういったことを日々工夫することによって、
だんだん教室中が学びに向かっていって、認識が足りていない子も時々鋭いことをズバッと言ったりしますので、それが全体のためにもとても良いことになります。
そんなふうに全ての生徒の答えとか、全ての生徒の考えていることとか、全ての生徒の取り組みを重要に位置づけてやる。
そのことによって教室全体が学びに向かうというようなことを、小さな小さな仕掛け作りを通して、日々教室という畑の耕しを行って土壌を豊かにしていくことが求められていると思います。
ということで、一応お答えになっているのかどうか不安になってきましたが、もっと聞かせて欲しいというふうなことがありましたら、リクエストをよろしくお願いします。
それでは今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。