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2025-06-09 09:07

249 古典の背景知識は冒頭から?~リスナーさんからの質問~

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リスナーさんからの質問です。ありがとうございます。

黒瀬先生は古典を教える時に背景知識は最初に教えますか?(例えば「鴻門の会」をやる時に項羽と劉邦や当時の時代背景について説明してから読解に入るか)・・・以下略

いろんなパターンがあるとは思いますが、この質問の続きがある意味すごかったですwww

 

#古典指導 #古典教育 #背景知識 #授業の工夫 #生徒の興味関心 #受験指導 #新学習指導要領

サマリー

古典教育における背景知識の教授法について、リスナーからの質問に答える形で進められます。授業での知識の注入の必要性や生徒の興味を引き出す方法、さらに背景知識の重要性について詳しく議論されています。

古典教育の背景知識について
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
今日は249回、古典の背景知識は冒頭から?というタイトルで、リスナーさんからの質問に答えたいと思います。
先日、インスタのDMに、こんな質問がありました。この方は、ずっと前にも質問をくださった方で、いろんな質問を投げかけてくれて、私自身も自分の気づいてないことにハッとさせられて、とても助かっています。
ちょっと質問を読ませていただきますね。
黒瀬先生は、古典を教えるときに背景知識は最初に教えますか?例えば、孔文の会をやるときに、孔武と隆法や当時の時代背景について説明してから読解に入るか?
私は今、超進学校と呼ばれるような学校で働いているのですが、同僚の先生は、書読の文を読めるようになる力をつけさせるために、最初は情報を与えないと言っていて、どちらの方がいいのかなと思ったためです。
自身は、そんな進学校で勤務したこともなかったため、今までは理解を深めるために最初に確認していました。
という質問ですね。ありがとうございます。結構、この質問にはいろいろな奥深い話が入っていると思うので、私の考えをお話ししたいと思います。
まず、私とこの同僚の先生は、全然立ち位置が違うなと思ったんですね。授業の目標が私の考え方と全然違っていて、私は授業を知識とかスキルの注入や獲得だけに終わらせたくないと思っています。
これはいろんな先生もそうなんじゃないでしょうか。生涯生きて働く力になるように授業を考えたいなと思っています。
この先生は、書読で読める力をつけさせるっておっしゃっていましたけども、書読で読める力をつけさせるということは、要するに受験で必要な力っていう風な流れに見えるんですけどいかがでしょうか。
書読で読める力を別につけなくても、日常生活であるとか社会に出てからであるとか、別に書読じゃなくても、いろんな試行錯誤を経ながら読み深めていくっていうことをやれば、別にいいわけですよね、書読で読まなくてもね。
でも、書読で読める力をつけさせるっていうことは、受験で必要な力をつけさせたいっていうことが上位概念にあるということなんじゃないでしょうか。
これは、超進学校にお勤めになっているということなんで、超進学校では進路実績っていうのが大切なので、そういった意味では超進学校では求められるスキルなのかもしれません。
しかし、受験が終わったらこの力って必要なんでしょうか。
社会に出てからの方が、自分自身で問いを持ち、そしてその問いによって自分が意欲をかきたてられて、どんどんどんどん調べていき、学んでいき、自分の認識を深めていくっていうのが、卒業してからも大切な力なんじゃないでしょうか。
書読で読める力っていうのは、国語だけではつけさせることができないと思います。
例えば、地歴公民であるとか、理科であるとか、家庭科であるとか、いろいろな学校生活の学びの場で幅広く身につける教養が必要になってくると思います。
何より受験で出題される問題って、結局、高校教育の範疇から出てはいけないわけなんで、高校の授業の中から習得した背景知識でもって読めるかどうかを確かめることになると思いますので、別に高校の授業をきちっとやっていれば大丈夫な出題なわけですよね。
それこそ逆に言えば、教科横断であるとか、探究的な学びを進めた方がいいんじゃないでしょうか。この先生が、書読で読める力をつけさせたいっていうふうにおっしゃるのであれば、授業を教科横断的に、探究的に構成してはいかがでしょうか。
そんなふうに私は思ったんですけれど、もしその先生がそういうことをおっしゃるのであれば、私はこう答えたいと思います。
それから、生徒の興味関心を引きつけるために背景知識は最初に教えるのかどうかという問題についてですけれども、私は背景知識は時と場合によるとは思います。
特に導入部分では、生徒の興味関心を喚起することがとても大事になってくると思うんですよ。
なので、私がよくやるのは、やっぱりアニメを見せさせることですね。
例えば、この間、平家物語を扱った時には、あつ森の最後を扱ったんだけれども、平家物語のアニメのプロモーションビデオを見せることによって、平家物語の世界観に没入させるという、そういう仕掛けを作りました。
そこから、この時代背景の説明に入りました。
生徒はアニメという身近な表現方法によって、登場人物や世界にどんどん引きつけられていくので、その中で人物の説明をしたり、ストーリー展開の説明をしたり、背景知識の説明をしたりすれば、生徒の中にスーッと、そういった時代背景の知識が入ってきやすくなる。
生徒はアニメという身近な表現方法によって、キャラクターにものすごく親近感を持っているので、意欲的にこの知識を吸収していくと思います。
それはやっぱり、人間を理解したいという気持ちが生徒の中に、アニメという媒体を通じてではありますけれども、あるからだと思うんですね。
そういった生徒の興味関心、人間理解への欲求、こういうことを基にして導入部分を工夫したらいいと思うんですよ。
けれども、逆に長編ものでは、やっぱり背景知識がとても必要になってきます。
受験指導と新学習指導要領
先ほど述べた平家物語であるとか、源氏物語であるとか、そういったものはかなり背景知識が必要になってくるので、導入部分でそういった説明、あるいは講義、知識注入の場所を設けないと、なかなか深く読むということにはいかないと思うんですよね。
逆に短編はコンパクトになっているので、背景知識の確認については、発問で引き出したり、逆に調べさせたりすることもできると思います。
例えば異性物語とか、漢文の古事成語、こういったものについては、背景知識というのをある程度生徒から引き出すこともできるんじゃないでしょうか。
ということで、扱う素材によって背景知識がっつり型なのか、あるいは生徒引き出し型なのか、その辺のあたりは時間数と相談しながら、指導者が仕組んでいけばいいんじゃないかなと思います。
ということで、リスナーさんからの質問に答えてみましたけれども、このリスナーさんからの質問にあった同僚の先生のお言葉、書読で読める力をつけさせるというのは、どうしても私には受験指導ラインに乗った言葉というふうに思ってしまいます。
もしかすると、ご自身の受けてきた授業、あるいはずっとご自身がされてきた授業がバックボーンにあって、こういう言葉になるんじゃないかなと思います。
けれども、今、学習指導要領で求められているのは、対話的で主体的な深い学びです。
課題解決型です。探求型です。
まだまだ新学習、違いますね、現行になったんですよね。現行の学習指導要領のこういった指導方法が現場では浸透していない、もしくは受験指導というものが先に立って、なかなか現場では実践しにくいということなんじゃないでしょうか。
受験の在り方が変わらないといけないなという思いと、教員自身のバージョンアップが必要だなというふうに思わされたリスナーさんからの質問でした。
それでは、今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。
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