ノーベル賞と不斉自己触媒反応
この時間はZoom Up。毎週木曜日は科学です。
今日はですね、ノーベルウィークということもありまして、ノーベル賞にZoom Upしていきます。
毎日新聞客員編集委員の元村有希子さんです。
元村さん、おはようございます。
おはようございます。
あら、なんか疲れてます?
忙しいわ。
ノーベルウィークでね。
会見も夜だったし。
いやいやいや。
楽しい忙しさですけど。
いろいろ調べたりもしなきゃいけないでしょうし。
そんな中、日本人の蘇愛さんも受賞しましたのは嬉しいことですよね。
記者会見に行くときの蘇愛さんの帽子も可愛かったし。
はいはい。
なんかいいですよね。スーパーで電話を受けました。
そうですね。なんか親しみが湧きますね。
湧きますよね。
でもちょっと、研究のあれ難しかったですね。
不正自己触媒反応って難しくないですか?
難しいんですよ。不正有機合成における非線形効果と
自己触媒反応の発見が受賞理由。
どういうことなんだろうと。
ちょっと軽く説明しましょうか。
お願いします。
私たちの体ってタンパク質でできてて、
そのタンパク質ってアミノ酸からできてるんですね。
アミノ酸って本来2つの横顔を持ってるんですよ。
左から見た横顔と右から見た横顔。
科学の世界ではラテン語の左と右を取って
LDって呼ばれたりするんですね。
2つの横顔があるのに私たちの体を作ってるアミノ酸は
Lだけなんですよ。
なんでだろう。
なんで?ってなるでしょ。
あとほら、うま味調味料。
グルタミン酸ナトリウムでできてるんですけど、
あれもアミノ酸ですけど、
これもよくよく見たら
Lグルタミン酸ナトリウムって書いてあるんですよ。
そうだったっけ。そうなんですね。
そうなんですよ。
つまりこのLとDがあるのにLばっかりみたいな
不揃いを不正って言うんですよ。
不揃いですもんね。
この蕎麦さんが見つけた不正自己触媒反応っていうのは
なぜか片っぽだけに不揃いになっていることの
仕組みを解き明かすものだったんですよ。
自然には不揃い偏りがありますけど、
人工的に作ると同じ数だけできちゃうんです。
でも結果的に不揃いになっている理由は
わずかに多い方が自分を触媒にして
どんどんどんどん増えていくからだっていうことを
蕎麦さんは見つけたんです。
つまり自然界に偏りがあることの
謎を解く鍵になるかもしれない。
この蕎麦反応っていうのを意図的に使えば
活用すると望まない方を作らずに
人工的にいろんなものが作れるんですね。
お薬とかも片方は効き目があるけど
片方は効かないみたいな、そういうのがあるんですけど
人工的に作ると半分ずつできちゃって
より分けるの大変だしお金もかかるじゃないですか。
最初から片方だけ作れるっていうことでもあるんですよ。
これは工業的にもとても役に立つっていうことなんですね。
この分野、日本はすごく強い分野で
日本人的なのかな、こういう細かくやるのがすごく向いてるのかもしれませんけど
これは世界中に使われている反応の方式だし
自然界の謎を解くかも、まだ完全に解けてはないんですけど
有力な仮説として使われています。
でも蕎麦って日本では非常に珍しい苗字だなと思ったんですけど
科学の分野においてはこの蕎麦反応という名前として
知れ渡った名前なんですね。
そうなんです。
科学反応に名前が載るような科学者が日本には結構いてですね。
これからもちょっと期待できますよ。
すごいですね。誇らしいです。
ニュートリノを捉えるアイスキューブ実験
ただね、私が蕎麦さん以上に萌えたのは物理学章だったんです。
ニュートリノのやつですかね。
そうそう。
ちょっとこれも説明していいですか。
お願いします。
そのために疲れたんでしょ、だって。
そうなんですよ。
ありがとうございます。
連続で疲れてるんですけど。
ぜひ披露してください。
披露じゃなくてね。
披露じゃなくてね。
アメリカのハルチェンさんという人が今回物理学章に選ばれているんですが
何をやったかっていうと
南極にニュートリノを捕まえる巨大な観測装置を作って
太陽系の外から遠い宇宙から飛んできた高いエネルギーを持ったニュートリノを捕まえましたっていうものなんです。
ニュートリノって聞いたことあるなって思う人もいるかもしれないけど
幽霊粒子の別名があるんです。
幽霊ってのはすり抜けるとかそういうことですかね。
そこにいるのに見えないみたいなね。
めちゃめちゃ小さくて軽くて
電気的に中性なんで
人間のアサジエデンはどうやっても捕まえられないんですよ。
でも捕まえられないのにこうしている間にも
私たちの体を毎秒10兆個も通り抜けてるんです。
そうなんですか。
痛くも痒くもないですね。
自覚ないですもんね。
匂いもないし。
これを捕まえようっていうことに
物理学者は100年間奮闘してるんですよ。
なんで捕まえたいんですか。
聞いてくださいました。
メリットがあるからですよね。
あるのに捕まえられないって単純に悔しいってことはあるんですけど
ニュートリノって何かが壊れるときに生まれるってことは分かってるんです。
例えば星同士が衝突したとか
大きい星が爆発したとか
私たちが見えないような遠い宇宙で
激しめの天文現象があったっていうことを知るために
それで生まれて光の速さで飛んできたニュートリノを捕まえることができれば
このニュートリノはあのあたりで起きた激しめの現象の結果なんだってことを
類推できるわけです。
つまりそれは
遠い宇宙っていうのは昔の宇宙っていうことができるんで
私たちが何気なく暮らしてる宇宙の
大昔の出来事を
記憶したタイムカプセルみたいなものなんですよ。
なるほど。
だからよく分かってない宇宙の謎を解くのには相当使えるツールなんです。
でも幽霊だからよく分かんない。
捕まえるためにいろんな装置が開発されて
日本にはスーパー神を噛んでっていうのがあって
岐阜県の山奥の地下に巨大な水槽を置いて
水の中に飛び込むやつが時々わかるってやつですね。
水と反応しやすいってことは分かっているので
このハルセンさんは水じゃなくて氷だって思ったんですよ。
それで南極。
南極。
南極って氷の大陸ですよね。
マンションも建ってないしビルも建ってないし
それから氷だから波や風が影響されない。
だから南極大陸って地震も少ないことが分かっていて
雑音が少ないところに大きい装置を作ったらいいんじゃねって思ったんですね。
南極天のほぼ真下の氷床に熱湯をめっちゃ高圧で
ビューって注入すると穴が開きますよね。
溶けて。
そういう方法で86本穴を掘りました。
穴の深さ2.5キロ。
すごい。
その穴に高さを変えながら合計5160個のセンサーを埋め込んでます。
これも大変で、うかうかしてるとまた凍っちゃうんで
そっかそっか。
早く埋め込む。
その結果、巨大なサイコロみたいな観測装置が地下にできたんですよ。
なるほど。
サイコロの一辺が1キロ。1キロメートル。
溶石にして東京ドーム800個分。
すごい。
すごい。
四角い氷なんでアイスキューブっていう名前が付いてる。
なるほどね。
2011年に完成した翌年に早速大発見がもたらされました。
めっちゃ高いエネルギーを持ったニュートリノがキャッチできたんです。
太陽系の遥か外側で何かが起きてるらしいっていうことがそれで分かりました。
その後にも次々と成果を出していて
太陽何億個分みたいな超巨大ブラックホール同士がバーンぶつかって
そっから生まれたニュートリノが飛んできて捕まえたとか
いうことが分かってきました。
その意味では超巨大天体望遠鏡が南極の地下にあると思っていいと思いますね。
ここで多分、で、どうしたの?
で、それがどうしたって。
それは言っちゃいけない言葉だと思ってました。
事象が分かって今に何かヒントになるようなことがあるかもしれないという。
言っていいですか?
それがどうしたんですか?
夢があったりロマンがあったりっていうことですか?
でもやっぱりね、宇宙138億年の歴史の
歴史の小説が、歴史書ができてないんですよ。
ビッグバンで生まれたとか言ってるけど
ビッグバンの後何があったん?っていうことが分かってないんです。
なるほど。
でもその138億年の年表の端っこに私たち生きてるわけじゃないですか。
そうですね。
で、知能もあるんだから
その遡って昔何が起きたのかを紐解くことが
やっぱ人間としての責任じゃないですか。
なるほど。
これだけスケールの大きい世界があるっていうことだけでもちょっとワクワクするでしょ。
そうですね。
そうですね。
ロマンがありますね。
日本の技術と宇宙研究への貢献
しかもこのアイスキューブ実験って日本が結構貢献してます。
千葉大学でしたっけ?
日本から千葉大学が実験に参加していて
ニュートリノの検出性能を上げるプロジェクトを主導してるんです。
その埋め込んだセンサーってもともと日本の企業が作ってるものですし
アップデートのための改良も日本企業が中心になってできていて
その意味ではそうやって過酷な環境に耐える
そして性能のいいセンサーを作るみたいな技術っていうのは
必ずや私たちの暮らしを健康を支えるインフラになると
ここは多少役に立つ部分かもしれないですよね。
そうですね。
こういう地の冒険にちょっと私たちも参加できるっていうだけでも
ちょっと楽しい気分になりますよね。
物理学者がとても無邪気なかわいい存在を感じています。
そこなんです。そこです。
目をキラキラさせて語る人たちを見るだけでも
元復って感じがしますよね。
少年の頃に抱いて夢を今も追い続けているっていう
壮大なロマンですね。
少しは疲労が報われましたかね。
はい。よくなりました。
よかったです。
聞いていただいてありがとうございました。
分かりやすく解説していただいて
元村さんありがとうございました。
ありがとうございました。
この時間はズームアップ
木曜日は科学をテーマに
毎日新聞客員編集員の元村幸子さんでした。