こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学をホットキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマは、こちら。『違う狙いのコミュニケーション』。今回は、「違う狙いのコミュニケーション」のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも、自然とつながっています。その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、「違う狙いのコミュニケーション」について。コミュニケーションの中には、違う狙いを持つものもある。そのポイントを知ることで、どんな意味があるのか、何が起きているのか、気づくヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」、第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども。」、第8回目「承認欲求を満たし合う、コミュニケーション3つの法則。」、第18回目「心の中の、メンバー5人。その付き合い方。」とも、リンクするお話です。
中学生の頃、こんなことがありました。具体的に何をしていたかはすっかり忘れてしまいましたが、教室で騒いでいたか、何かをしていたのか、いなかったのか。いずれにしても、それほど悪いことではなかったような。
ただ、教卓の前にいた先生の目が、キラリ。光ったように見え、そしておもむろに、メモ帳か何かに書き込む気配。当時は、それほどでもないことでも、目をつけられる。勘違いかもしれませんが、そんなふうに感じてもいたタイミング。
とにかく、「あっ、まずいかも」。とっさに、そう判断。「何とかしなくちゃ」。そう思うや否や、気づいたら、先生のところに行っていました。
「先生、わからないところ、質問したいんですが、いいですか?」
「ん?おぉ、何がわからないんだ?」
「あのぉ、ここなんですけど。」
教科書の特定の行を指しつつ、質問。回答してくださる先生。しばらくやりとりをした後、「ありがとうございます。よくわかりました。」
終わったころには、先生はメモのことはすっかり忘れて、さっさっと、教室の外へ。私はといえば、「良かったぁ…」と、一安心。
ある時は、こんなこともありました。
何気なく、偶然入ったお店。「ちょっと見てみよう。」、そんな軽い気持ち。
入ってすぐ、後悔。思ったよりも中が狭く、店員さんが一人、お客さんも私一人。
ちょっと見て、出る。いや、出にくい。何か買わないといけないような、勝手に感じる無言の圧力。
「どうしよう。何か買わなきゃだめ?」とは言え、買いたいものも特に見つからず、気まずい…。
「何とかしなくちゃ。」ひとしきり店内を見渡し、把握した上で、店員さんに聞きました。
「すみません。〇〇はありますか?」
実のところ、商品名は忘れましたが、この〇〇という商品がないことは、把握済み。
「え?あっ、すみません。それは、うちでは置いてないです。」
「あっ、そうですか。それじゃあ」。商品がないなら、出るしかない。そんな流れで、無事脱出。
って、当時の店員さんには、申し訳ないことです。
今なら率直に「すみません、ちょっと考えます。」など言いつつ、外に出るんですが、当時はこんな流れで出てしまいました。
さて、今回のお話、コミュニケーションの法則から考えてみます。
法則は3つあり、誰もが心の中に持つ「親・成人・子ども」の内、狙い、狙われたところから反応、やり取りをするのが、第1法則。
違うところから反応、やり取りが一時停止するのが、第2法則。
表面上の社交的なやり取りと、心理的なやり取りが、別に繰り広げられるのが、第3法則。
表裏の裏の面と書いて、裏面交流です。
今回のお話は、第3法則、裏面交流の応用版とでも言うんでしょうか、「角度のある交流」と呼ばれるやり取りです。
こちらは同じ部分から、相手に対し、同時に2つの部分を狙う。
1つは、表面的な狙い。もう1つは、それとは違う真の狙い。とでも言うもの。
そして、相手はこの、真の狙いの部分から反応を返す。
最初の例、中学生ではあるものの、私は「成人」から先生の「成人」に問いかけました。
「先生、わからないところ、質問したいんですが、良いですか?」
ただ、ちょっと嫌な言い方になりますが、真の狙いは、生徒の質問には絶対に答えるだろう、先生の「親」。
本能的に、ここを狙ったのでは?
そして、「親」から反応する先生。質問に答えている内に、そちらに集中。私にとって、おそらくあまり望ましくないメモは忘れていただけた、かと。
次の例。欲しいものがないお店に入ってしまった私は、これも表面的には「成人」から、店員さんの「成人」に問いかけました。
「すみません。○○は、ありますか?」
しっかりと、ないことは把握した上での、問いかけ。
これも嫌な言い方になりますが、真の狙いは、売る商品がないなんて申し訳ないと思うだろう、店員さんの「子ども」。ここを、狙ったことになるのでは?
そして申し訳なさそうに、「子ども」から反応する店員さん。私は気兼ねなく、お店を出られたかと。
こう解説してみますと、ずいぶんうまく切り抜けたようにも見えますが、振り返ってみれば、というお話です。
当時の私は、ただ何とかしたいという気持ちで、動いていただけ。
きっと皆様にも、そんなとっさの判断。結果としての、「角度のある交流」があるのでは?
時として、自分からだったり、相手からだったり。そんな「角度のある交流」。少し意識して、整理してみてはいかがでしょうか。
違う狙いのコミュニケーションを活用することが、人との関わりの中で必要だったり、不本意な状況から抜け出すことにつながったり。
逆に相手の違う狙いに気づいて、適切な対応ができたり。日常の選択肢が広がる、きっかけになるかもしれません。
では、今回覚えていただきたいポイントは、
「違う狙いのコミュニケーション」。まずは、気づくこと。そして、いつもと違う変化を味わってみませんか?
ここまで聞いていただき、ありがとうございます。
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お相手は、遠藤美保でした。ありがとうございました。