選択の重要性
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学をポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマは、こちら。
『選ぶ、選べる。選べない、選ばない。』
今回は、「選ぶ、選べる。選べない、選ばない。」のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも、自然とつながっています。
その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、「「選ぶ、選べる。選べない、選ばない。」について。
日々、多かれ少なかれ、何かを選んでいる。選ばないでいる。そこにはどんな意味があるのか、何が起きているのか、気づくヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」とも、リンクするお話です。
小学生の頃、学校給食の時間。当時、めったにお目にかかれなかった、カップアイスが出た日のこと。
お手頃価格のバニラアイスだったと思いますが、材質のせいなのか、あるいは保管状態のせいなのか、カップの蓋の裏側に、それなりにアイスがついていました。
「気になるっ。」見逃せないくらいの量。じっと蓋を見つめたまま、頭の中は、ぐるぐる。
「うっ。もったいない。食べたい。」
正直、家で一人でいたなら、お行儀が良くないのは重々承知しながらも、食いしん坊の誘惑に負け、蓋の裏側のアイスも、ぱくっ。
堪能する案件。ただ学校、人目があります。周りには同級生、前方には担任の先生。見つかったら恥ずかしいですし、怒られそう。
まあ、見つからなければ良いってものでもないんですけれども。そうは言っても、目を離せない。じ~っと蓋を見つめ、口はぐぐっと、おそらく真一文字か、への字型になって、ひたすら我慢。
「食べたい。でも、だめっ。食べられないっ。くぅっ。」
その時、先生が何気なく一言。
「あら?みんな。蓋の裏のアイス、食べないの?」
「えっ、食べていいの?どういうこと?ひっかけ???」
今度は違う意味で、頭の中がぐるぐる。とは言え、思わず言いました。
「だって、お行儀が悪いもん。」おそらく、恨めしそうな目をしていたかも。
すると、先生が事もなげに、「こうやって食べれば良いでしょう?」
付属のスプーンですーっと、蓋の裏のアイスをすくい、口の中へ。
おいしそうに食べている。お召し上がりになっている。
「あぁっ・・・」、教室のあちこちから、ため息が漏れるような
驚きの声。「そんな方法が?」それならお行儀の問題なし。
食べられるっ。今の言葉で言うならば、まさに、「その手があったか!」
という、うれしい驚き。誰しも考えることは同じだったようで、教室の中の緊張感が喜びでふーっとゆるんだ、
そんな瞬間。その後はといえば、みんな一斉にスプーンで蓋の裏のアイスをすくい、
満面の笑顔で堪能。
もちろん、私も同じく。「はあっ。先生すごいっ!」教えて頂いていた、
どんな授業の内容よりも、心底、尊敬しました。他の同級生も
同じだったんではないかと思います。レベルの高くないお話で、すみません。蓋の裏のアイスは、食べられない。それは選べない。
承認欲求とその影響
そう思っていたものが、食べられる。選べる。
に変わった例です。ある時はこんなことも。
運動会で赤組になりまして、赤いうちわを作って持っていく、そんな流れ。
身近な大人が2人、それぞれ一生懸命、工夫を凝らして作ってくれました。どちらもベースは同じうちわ。
おそらく、どこかの会社かお店か、販促品だと思うのですが、白地のうちわ。
そのうちわを、1人は、水彩絵の具を塗って、赤色に。もう1人は、赤い画用紙を切り抜いて貼って、赤色に。
1つあれば良かったのですが、目の前には、うちわが2つ。
すると、「どっちが良い?どっちを選んでも良いよ?」そんな言葉で、どちらが良いか聞かれました。
正直、仕上がりの出来栄えで言えば、子ども心にも「あっちだな。」、そう思うものはありました。
ただ、それぞれが手間暇かけて、知恵を絞って、わざわざ作ってくれたもの。どちらの目にも「こっちでしょ?」という期待が見えるような、見えないような。
「うわあ。え、選べない。選ばせないでぇ。」
一方を選ぶことで、もう一方ががっかりする。それは、ちょっと・・・。またもや、頭の中はぐるぐる。
悩んだ末に、「どっちも良いな。両方持ってく。」
「気を使わなくて良いんだよ。どっちでも良いんだからね。」
そう言われましたが、そうは行きません。
「ううん、本当にどっちも良いもん。両方持って行きたいからっ。」
最後まで押し切り、運動会で、なぜか1人だけ、1つで良いうちわを、両手に1つずつ持って応援。
選べるけど、選べない。だから、選ばなかった。
こちらは、そんなささやかな例です。
人生に選ぶこと、選択することは、つきもの。今回は、承認欲求を満たす刺激=ストロークから考えてみます。
承認欲求を満たす刺激=ストローク。それは、誰もが求めているもの。空気や食べ物と同じくらい必要なもの。
だからこそ、何もないよりはマシ。何もないくらいなら、ネガティブでも何でも良い、取りに行く。それくらい、必須のもの。
誰もが求めてやまない、ストローク。認め認められて、得られるもの。
言葉だったり、アイコンタクトや態度の非言語だったり、1つ1つ、どれも貴重なストローク。
選択肢に関連して、何が起きているんでしょうか。
カップアイスの蓋の、裏のアイス。食べられない。食べることは、選べない。そう思っていましたが、方法を知らないまま、そうするしかない。そう思い込んでいただけ。
ある意味、選べないことを選んでいた、
とも言えます。実際は他の方法があり、お行儀問題もクリア。
食べられる。選べる。ストロークは、それを受けた行動が強化される。
そんな特徴もあります。選べないことを、選ぶ。選び続ける。
そうなると、それは強化される。そして、その思い込みは、本人にとっての事実になって行き、選べない。そこで停止。
他の方法を試すこともせず、だからこそ、実際に選べないまま、続く。
2つの赤いうちわ。選べるけど、選べない。選ばない。ある意味、選ばないことを選んだ、
とも言える。求められるまま、選ばなくてもいい。選ぶ。選ばない。どちらもあり。
ただ、ストロークはそれを受けた行動が強化される。
いつも選ぶ人なら、あるいは、いつも選ばない人なら、偏ったストロークで固まって、それが問題につながっているかも。
最初は蓋の裏のアイス、あるいは、運動会のうちわ。その程度だったとしても、繰り返しストロークを受けることで、関連するストロークのやり取りが続くことで、強化され、次第に問題はエスカレートして行きかねない。
そんな時は、ふと、立ち止まってみてください。
そして、選ぶ人なら、選ばない経験。選ばない人なら、選ぶ経験。意識的に、逆の選択肢を選んでみては?
逆の選択肢のストロークを増やすことで、自分の心の中で偏り、固まっていたエネルギーが緩む。自由に柔軟に、循環するようになる。
臨機応変に、選択肢に向き合える可能性が高まります。
では、今回覚えていただきたいポイントは、
「選ぶ、選べる。選べない、選ばない。」
まずは、気づくこと。そして、いつもと違う変化を味わってみませんか?
ここまで聞いていただき、ありがとうございます。
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お相手は、遠藤美保でした。
ありがとうございました。