はじめに:新年度の授業準備と教材研究のテーマ紹介
デジタル時代の国語教育を語ろうにようこそ、パーソナリティーのKasaharaです。 この番組では、Google for Education認定トレーナーと認定コーチの資格を持つ、私、Kasaharaが教育にまつわる様々な話を配信していきます。
さて、新年度始まって初めての月曜日ですね。 恐らく今日か明日あたりから新学期が始まって、新級した生徒たちが登校してくる学校が多いんじゃないかなと思います。
入学式を先にやる学校もあれば、対面式が終わるとすぐに授業になる学校もあって、 今週の火曜日か水曜日あたりからもう普通の授業が始まるというところも多いんじゃないかなと思いますね。
先生方、授業準備は進んでますか? 自分は全く進んでません。どこを持つのかもよくわからないですね。
新年度というのは授業開きも重なる時期ですし、新しい生徒に対してどういう話から入ろうかと悩んでいる先生も多いと思います。
そこで今回は、高校1年生の評論文の定番教材である水の東西を取り上げながら、 授業者の頭の中でどんなことを考えながら教材研究を進めているのかというような話をしてみようと思います。
なかなかこういう話聞かないですよね。 水の東西は山崎雅一さんの文章で、高校1年生の評論文の定番として長く使われています。
賛成動画、教科書の紙面と本文をすべてウェブ上で公開してますので、よかったらそちらを見ながら聞いていただけるとわかりやすいかと思います。
リンクは概要欄に貼っておきます。 あと最初にお断りしておくと、今回話す教材研究の内容は一般的な高校の授業でこういう手順を踏んで準備していくよねというような話です。
国語の先生方以外には、国語の先生がこういうことを考えながら授業準備をしているんだなと、そういう視点で聞いてもらえたら嬉しいです。
さてここからが本題です。 ちなみに今回の教材研究の話をする上で、著作物の引用をどこまでしたらいいかなっていうのはちょっと難しいところがありまして、
本文の具体的な言葉をそのまま音声で引用しながら話すということはできるだけ控えようと考えています。
なので音声だけだと何の話をしてるんだろうと感じる部分が出てくるかもしれませんが、概要欄のリンクからpdf を開いてもらいながら聞いていただけるとわかりやすくなるんじゃないかなというふうに思います。
教材研究の進め方には先生によって流派みたいなものがあって、やりやすい方法も人によってだいぶ違いますね。
教材研究の進め方:精読と学習課題からのアプローチ
よく言われるのが、まずは自分でタイトルから最後まで丁寧に読んでいくというようなやり方です。
精読と言いますが、一行一行ゆっくりと読んでいくみたいな感じですね。
一方で教科書の一番最後の方のページにある、学習の手引きや学習課題を読んでから始めるという人もいますね。
もしくは年間のシラバスと学習指導要領の指導事項を先に確認して、今回の単元ではここを目標にするというゴールを決めてから文章を読み始めるという人もいます。
どれかが正解というわけではなくて、その時々の事情や生徒の様子によって組み合わせながらやっていくものなんじゃないかなというふうに思いますね。
自分の場合はまず先入観なく教科書の文章を読んでみることから始める場合が多いですね。
この時意識しているのが生徒の立場に立って読むということですね。 自分の中に高校1年生を憑依させるみたいなそんな感じです。
これまでどんな勉強をしてきた生徒がこの文章を読むのかみたいなことを考えるわけなんですよ。
ここは気づくだろうなーとか、ここは初めて出会う考え方になるはずなので、多分スルーしてしまうだろうなーとか、スルーしてしまうと多分後ろの方で読めなくなるんだよなーみたいなことをそういう目で読んでいきます。
生徒がつまずきそうなところを印をつけながら読んでいくみたいなそんなイメージですね。
そうやって読んでいくと気になる箇所がいくつも出てくるんですね。
例えば今日この後例で示そうと思っているのが何かというと、水の東西においては四字語の使われ方が結構特徴的なんですね。
そのーとかあのーとかいうような四字語が比較的繰り返し何度も出てくるんです。
で、こういう四字語の多さはこの文章が随想的な文体だからだと思いますね。
筆者の頭の中で思考の流れがあって、その思考の流れや感情の動きを描き表した文章なので、この言葉はあれを示しているとカチカチと明確に書くスタイルでもないし、読み解いていくような文章でもないなーっていうふうに思うわけなんです。
だから四字語が多さとして現れてきているので、そういうところを味わって読むといいんじゃないかなーみたいなことを考えていくんですね。
だから例えばこの四字語について授業の学習課題にするとき、この四字語が指している内容を答えなさいというような聞き方しちゃうともう台無しなんですよ。
でもそうじゃなくて、例えば四字語が多く使われているこの文章と新聞記事のように事実を述べる文章とで読んでいる時の印象はどう変わるのかみたいな聞き方をしてみるのも面白いと思うんですよね。
そうすることで、四字語の知識を確認するだけではなくて、文体の違いだとか語感ニュアンスの違いを楽しむような読み方につながっていくんじゃないかなーなんてことを思うわけです。
で、こういう課題のアイデアが出てきたときに次にやることが何かというと、学習指導要領の指導手法との整合性を確かめるという作業です。
国語の先生というのは、学習指導要領の指導手法を年間で猛打的に扱っていく責任が建前上あるわけなんです。
自分がやりたいことをやるだけでは授業としては全然足りなくて、ちゃんとやっていることが指導要領と合っているかどうかを確認するのはどこかの段階ではちゃんと考えなければいけないことなんですね。
まあ、学習指導要領はそれほど厳しく縛り付けるものではないので何とでもなるんですけど、自覚的に確認する必要はありますね。
先ほどお話しした四字語の課題であれば、知識技能の言語に関する知識に絡む内容はあるでしょうし、
この教科書では水の東西が書くことの単元に結びつけられているので、書くことの指導手法である文章の構成や展開効果といった観点と結びつけて考えていくと、
学習課題から授業を設計する際のギャップ埋め
学習課題としてだんだんだんだん輪郭がはっきりとしてきて、何をやったらいいかという授業の形が見えてくるようになるわけなんですね。
まあ、これが読んで気づいて授業を作っていくみたいなパターンの一つの例だったりしますね。
では今度は逆の方向から考えるパターンもお話ししてみましょうか。
学習の手引きや学習課題を見てそこから授業を立てるというようなやり方です。
概要欄のリンクから教科書の誌面を見てもらうとわかるんですが、一番最後のページに学習の手引きとして3つの問いがあります。
その中に対比的な表現を整理させるような課題も含まれてますね。
これを例にとってちょっと話そうかなというふうに思うんですが、ここで気をつけたいことが何かというと、この学習課題をそのままプリントにして生徒に投げつけて書かせるというのは多分一番つまんない授業になりやすいってことですね。
まとめてご覧と言われたときに、大人であれば今までの経験からある程度自然と表を書いて対比をさせたりすることはできるんですが、
高校1年生、まだ中学校4年生と呼んでもいいぐらいのレベルのそういう生徒たちにそれが自力でできるかというとなかなか難しかったりするわけです。
だからこの課題を授業でちゃんと扱えるようにするためには対比の表が書けるようなワークシートというものを用意したり、
そもそもどういう観点に注目すれば対比ができるのかを教えたり、もっと手前から対比できる概念というのはどういう特徴があるんだろうというのを確認したりというような、そういうような授業の設計が必要になるわけです。
つまり学習課題でゴールとなる模範回答のようなものを確認したら、そのゴールに向かって今の高校1年生の実力とのギャップがどのぐらいあるのかということを想定して、
そのギャップを埋めるための活動みたいなことを考えていくという作業が重要になるわけです。
これは先生方のまさに専門性にあたる部分だと自分は思っているので、楽しい部分なんじゃないかなというふうに思いますね。
ここで初めて教団に立つ先生が困るのが何かっていうと、そのギャップの見積もりが難しいということなんですよ。
自分自身、事業者自身はもう大人なので、高校1年生の時の自分がどのぐらいできていたかなんてもうすっかり忘れてるんですよ。
だいたい優等生になりすぎちゃってるんですね、自分の中のイメージが。
応用的な教材研究:生徒の実態と教育観に基づく授業作り
だからこそ自分なりの模範回答を作ってみた段階で、このぐらいの技術が欠ける生徒ってどのくらいいますかねーだとか、
このクラスだとどこまで期待できますかみたいなことを周りの先輩の先生に率直に聞いてみるというのが一番良いかなというふうに思いますし、
そういう努力はしたほうがいいかなって思いますね。
生徒の実態が見えないまま授業を積み重ねていっても、なかなか授業作りってうまくいかないですし、行き詰まってくるんですよね。
そして先輩の先生に話を聞くことで自分の人間関係も自然と良くなっていきますし、
そもそも授業は自分一人でできるものではなくて、
多くの人からバトンを受け取って、
次の人に渡していくものだという感覚を早いうちに持っておくのはいいことなんじゃないかなーなんてことを思っています。
では次に、長く授業をやってきた自分のような教員だと、
ちょっと応用的な教材研究の仕方もしたりするので、そういうような一風変わった
教材研究の仕方であるとかそういう話もしてみようかなと思います。
定番教材に何度も当たっていると、その教材だけを普通に教えるのではちょっと物足りないなーだとか、
これだと子供のニーズに応えきれてないなーみたいなことを感じるようになることがあります。
そういう時には、補助の資料を準備して読み合わせをしてみたりだとか、
書き換えをしてみたりみたいなそういう工夫をしながら授業を組み立てていくことはあります。
そういった授業作りをするときに、
自分が一番大切にしているのが何かというと、これも繰り返しいろんなところで話していますが、
生徒の普段の言語生活の実態です。
子供たちがどんなことに興味を持ち、
ICT・生成AIの活用と教材研究
どんな言葉遣いをしていて、どんなメディアで表現しているのかをよく観察して、
それとの関係性を考えるということが、授業作りの出発点にあるだろうなというふうに思っています。
水野党材で言うと、
今までやったことのないことというような縛りで今考えるならば、
例えば今の子供たちは、いわゆるアテンションエコノミーと呼ばれるようなソーシャルメディアの世界を生きていますよね。
そういう日常の中で生きている子供たちからすると、この文章って
一言で言ってしまえば、
噴水よりも思想通しの方がいいぜ、みたいな話をこれだけページ数かけて何度も何度も繰り返しながら書いているわけですよね。
それが今の子供たちの言語生活とはかなり距離があるんですよ。
だからそこから考えると、
自分の言いたいことをあえて持って回った言い方で、
何度も繰り返しながら表現するということの効果や、
味わいを楽しむような単元を立てるのも面白いかなぁなんてことを思うわけです。
水野党材に学んで、
自分の好きなもの、推しを何かと対比させながら、何度もしつこく
表現してみて書いてみよう、みたいな、そういう各活動を考えてみるのもいいかもしれないですね。
だからこういう授業作りをするときには、やっぱり子供のことをよく知っておくことは重要だなぁというふうに思いますね。
授業開きと言葉への向き合い方
また、こういう授業作りをするときにもう一つの軸になってくるのが何かというと、
授業者自身の教育館みたいなところはとても重要です。
教育館というと少し大げさかもしれませんが、
高校3年間を通じて子供たちにどんな力をつけて欲しいのか、
そういう自分なりのこだわりを持っているかどうかで、授業の方向性というのも全然変わってきます。
例えば、卒業時点で自分の言いたいことを相手に効果的に伝えることができる、
交渉できるような力を持ってほしいというふうに思っているならば、
水野党材で学ぶべきことって何かと言ったら、繰り返しと言い換えによって、
人を説得する工夫みたいなことに注目するようになるかもしれないです。
一方で、日本語の豊かさや表現することの楽しみを3年間で伝えたいというこだわりがあるならば、
この文章で使われている語彙に注目したり、
共感を促す表現ってどこなのかみたいな観点で、読むような単元を考えることになるんだと思いますね。
若い先生ほど、目の前の授業をこなすことで精一杯になりがちです。
まとめと今後の配信
それは当然なんですが、できれば早い段階で自分が高校3年間のゴールで、
子供にどんな姿になってほしいのかというような、そういうような仮説を自分の言葉で持つことをお勧めしますね。
それを言葉にしてしまうと、他の先生から検証されたり批判されることにもなります。
でも、そういうことを引き受けながら、
自分はこういう教育をやりたいと言えるようになることが、授業づくりを長く続けていく上では重要になると思います。
自分の教育観が定まってくると、何をやらなくていいかが見えてきて、
だんだんだんだん引き算の授業づくりができるようになります。
慣れないうちは、あれもやろう、これもやろうと盛りだくさんになりがちなんですが、
慣れてくると、シンプルな一言の指示でも豊かな活動ができるようになってきます。
ぜひ、自分の教育観を早めに言葉にするということは考えてみてくださいね。
で、最後にこのチャンネルはデジタル時代の国語教育を語ろうというタイトルなので、
ここまでICTや生成AIの話が全然出てきてないじゃんと思われた方いるかもしれませんね。
でも、基本的にはICT活用も生成AI活用も、ここまで話してきたことと同じ話なんですよ。
生徒の実態と、学習指導要領の指導手法と、学校のシラバスを重ねて何の力をつけてもらいたいかと考えるわけです。
その力を伸ばすために、ICTや生成AIが役立つならガンガン使っていくっていうイメージですね。
逆に、ちゃんと紙に向き合って、自分で悩んで作業した方がいいと思ったのであれば、
明確に今日は使わなくていいというふうに自分は指示しますね。
使う使わないかは、目標から逆算して決めるものなんじゃないかなと思いますね。
何もないときは自由に使っていればいいじゃんとは思ってますけれども、
時々介入して使わせないみたいなことがあってもいいとは思いますね。
とはいえ、水の東西のような教材を扱うときに、
ICTを意識的に組み込んでみることはあってもいいかなと思いますね。
なんせ、高校1年生の一番最初に扱う可能性の高い教材であるので、
ICT の操作に慣れてもらうという意味でも、何か意図を持って、
わざと使わせてみるというのはありかもしれないです。
例えば、コトバンクのようなオンラインの辞書を紹介して使ってもらうとか、
Google ドキュメントに本文の一部を移して、気になったことをコメント機能でクラス全員で書き込みながら
共有していく共同作業に慣れてもらうみたいな、
そういう初歩的なことをやってみるのがいいかなと思うんですね。
この授業では、ICTを使うことがあるんだという感覚を最初の時期に持ってもらえるだけでも、
その後の展開がだいぶ違ってきますからね。
ただ、使ってみようという気持ち自体は大切なんですが、
使ってみたら面白いでしょみたいなノリだけで進めていくと、大ごけする可能性もあるので、
ちゃんと注意は必要です。
操作のトラブルや生徒の戸惑いも含めて想定しておくと、
使う目的を自分の言葉でちゃんと言えるようにしてから望むということが重要ですね。
それさえあれば、ICTも生成AIも自然と授業の中に収まってくるんじゃないかなというふうに思いますね。
生徒が登校して始めると、
授業作りにゆっくりと向き合う時間はだんだんなくなってくるんですよね。
ちょっとした空き時間で急いでプリントを直すだとか、
放課後に次の時間の番書を考えるとか、そういう状況になってしまいがちですよね。
だからこそ、新年度の最初の数日、残された日々へ、一番じっくりと考えられる今の時間で、
良い授業をぜひ考えてみてみてください。
今回の配信はいかがだったでしょうか。
今回は、高校1年生の定番教材、水の東西を例にとりながら、
教材研究の時に自分が頭の中でどんなことを考えているのかということをお話ししてみました。
ちなみに、自分の勤務校はあと数日で授業開始なんですが、
自分がどのクラスを受け持つのか、何時間目に授業があるのかも、全然まだよくわからない状況ですね。
なので、授業準備もできない状態でどうしたものかなぁと頭を抱えているところです。
ただ、初回の授業、つまり授業開きについて言うと、
自分はどの学年であっても毎年丁寧に、
自分がやりたい国語の授業の話をするというところから始めています。
子供たちに、国語で学ぶこととは何だろう?を問いかけることから、手を変え品を変え、スタートをしていることが多いですね。
引き続き同じクラスを持ち上がるケースであっても、必ず最初に自己紹介のようなところから入るように心がけています。
常々思うんですが、国語の授業に限っても、自分はどんな国語の力を持っていて、
言葉に対してどのぐらい自信があるかということを、
大人も子供も、自己紹介し合うことが全然足りてないなぁと感じるんです。
年度の初めに、言葉への向き合い方をお互いに少しずつ擦り合わせるようなことを、
時間としてとっておくことがあっていいんじゃないかなと思います。
授業数が少なくて慌ただしいのはわかるんですが、
それでも個人的にはここを大切にしていくのはいいんじゃないかなと思っています。
本日のポッドキャストの裏話は、私のボイシーで朝6時半に配信しています。
ボイシーでは毎日の教育実践の話や、ちょっとした雑談もしていますので、ぜひそちらもお聞きください。
ここまでお聞きくださりありがとうございました。
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この番組は毎週月曜日に1回配信されます。
次回の配信もお楽しみに。ではまた。