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【中医協】iPS細胞製品など再生医療等製品3品目が保険適用へ
2026-10-03 06:13

【中医協】iPS細胞製品など再生医療等製品3品目が保険適用へ

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令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、再生医療等製品3品目の保険適用が議題となりました。3品目のうち2品目は「条件及び期限付き承認」を受けた製品であり、令和8年1月に中医協が了解した算定ルールに沿って価格が算定されています。本稿では、3品目の薬価と技術料、そしてこのルールが価格にどう反映されたかを解説します。

3品目は令和8年5月20日に薬価基準へ収載される予定で、いずれも神経の病気を対象とする高額な製品です。第一に、アクーゴとアムシェプリの薬価は、条件及び期限付き承認のルールにより、営業利益率を平均的な営業利益率の半分(7.8%)とし、有用性系加算の該当性を判断せずに算定されました。第二に、両品目の投与には、細胞調製の技術料として「K924 自己生体組織接着剤作成術」4,340点を準用し、移植手術の技術料として「K154 機能的定位脳手術」を算定する案が示されました。第三に、ゾルゲンスマ髄注は、既に収載されている点滴静注と同じ1患者当たり1億6,707万7,222円で算定され、費用対効果評価の対象となります。

今回保険適用される3品目の概要

今回保険適用される3品目は、細胞加工製品2品目と遺伝子治療用製品1品目です。3品目の基本情報は次のとおりです。

アクーゴ脳内移植用注

* 会社名:サンバイオ

* 対象疾患:外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺

* 算定薬価:72,716,528円(1回分)

* 算定方式:原価計算方式

アムシェプリ

* 会社名:住友ファーマ

* 対象疾患:レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の運動症状

* 算定薬価:55,306,737円(18瓶1組)

* 算定方式:原価計算方式

ゾルゲンスマ髄注

* 会社名:ノバルティス ファーマ

* 対象疾患:脊髄性筋萎縮症(抗AAV9抗体陰性、2歳以上)

* 算定薬価:167,077,222円(1患者当たり)

* 算定方式:別銘柄として算定しない

アクーゴは、健康成人の骨髄由来の間葉系幹細胞に遺伝子を導入した細胞を、脳の損傷部位の周辺に移植する製品です。この細胞から分泌されるサイトカインが、神経細胞の修復を促すと期待されています。臨床試験では、運動機能の指標(FMMSスコア)の24週目における変化量が、本品群8.3点、偽手術群2.3点となり、統計学的に有意な差(p=0.0401)が示されました。製造販売承認は令和6年7月31日ですが、生産体制の整備と算定方法の検討がなされていたため、収載まで約1年10か月を要しました。

アムシェプリは、iPS細胞から作ったドパミン神経前駆細胞を、脳の両側の被殻(運動の調節に関わる部位)に移植する製品です。移植した細胞がドパミン神経細胞に分化・成熟し、運動症状を改善すると期待されています。国内臨床試験では、有効性を評価した6例のうち3例で、オフ時の運動症状スコア(MDS-UPDRS PartⅢ)に、文献で報告された移植1年後の最大のプラセボ効果(-10.1点)を上回る改善が移植2年後に認められました。ただし、この試験は非盲検の非対照試験であり、資料では、定位脳手術を受けたこと自体によるプラセボ効果の可能性は否定できないとされています。製造販売承認は令和8年3月6日で、世界に先駆けて日本で承認された製品です。

ゾルゲンスマ髄注は、SMN遺伝子を運ぶウイルスベクターを髄腔内に1回だけ投与する製品です。成分は既存の「ゾルゲンスマ点滴静注」と同じで、投与経路が静脈内から髄腔内に変わりました。製造販売承認は令和8年4月3日です。

アクーゴとアムシェプリ:条件及び期限付き承認のルールによる薬価算定

アクーゴとアムシェプリは、類似する既存品がないため、原価計算方式で算定されました。原価計算方式とは、製造原価に営業利益や流通経費などを積み上げて価格を決める方法です。両品目は条件及び期限付き承認を受けているため、営業利益率と補正加算の扱いに、このルールが反映されています。

条件及び期限付き承認とは、有効性が「確認」ではなく「推定」された段階で、期限と条件を付けて承認する仕組みです。この仕組みで承認された再生医療等製品について、中医協は令和8年1月14日に診療報酬上の扱いを了解しました。このルールでは、算定時の扱いを次の3点としています。

* 原価計算方式の営業利益率は、平均的な営業利益率に0.5を乗じた値とする

* 有用性系加算は、算定時には該当性を判断しない

* 有用性系加算以外の補正加算は、有効性が推定にとどまることを踏まえて該当性を判断する

両品目の原価計算の内訳は、営業利益率7.8%(流通経費を除く価格に対する割合)で積み上げられています。

アクーゴ(1回分)

* 製品総原価:50,363,585円

* 営業利益(7.8%):4,260,694円

* 流通経費(0.84%):464,000円

* 消費税:5,508,828円

* 加算前の価格:60,597,106円

* 加算後の価格(算定薬価):72,716,528円

アムシェプリ(18瓶1組)

* 製品総原価:42,820,163円

* 営業利益(7.8%):3,622,530円

* 流通経費(0.54%):250,394円

* 消費税:4,669,309円

* 加算前の価格:51,362,396円

* 加算後の価格(算定薬価):55,306,737円

※加算前から加算後への増加率は、アクーゴが20%、アムシェプリが約7.7%です。アムシェプリの増加率が加算率の合計(20%)と一致しない理由は、資料には記載されていません。

両品目の補正加算は、市場性加算(Ⅰ)と先駆加算がそれぞれ10%で、いずれも加算幅(10~20%)の下限にとどまりました。市場性加算(Ⅰ)は、両品目とも希少疾病用再生医療等製品の指定を受けているため適用されました。先駆加算は、アクーゴが先駆け審査指定制度の対象品目であるため、アムシェプリが世界に先駆けて日本で承認されたため、それぞれ適用されました。加算率が10%とされた理由は、アクーゴでは国際共同第Ⅱ相試験の結果が薬事審査で限定的な評価とされたため、アムシェプリでは有効性を示すデータが限られているためです。なお、画期性加算と有用性加算(Ⅰ)(Ⅱ)は、両品目とも「該当しない」とされています。

両品目の収載後の扱いも、このルールで定められています。市場拡大再算定は、通常の承認を受けた製品と同じく適用されます。革新的新薬薬価維持制度(薬価改定時の引き下げを抑える制度)は、要件を満たせば適用され、両品目とも該当とされました。費用対効果評価は、分析に必要なデータが不十分と想定されるため、改めて承認を受けた際に該当性を判断します。改めて承認を受けた際には、営業利益率の係数と補正加算の適用・控除を薬価算定組織で検討し、中医協総会の了承を経ることになっています。

アクーゴとアムシェプリ:細胞調製と定位脳手術の技術料

アクーゴとアムシェプリの投与には、細胞調製と定位脳手術という2つの手技が必要なため、2つの技術料を組み合わせる案が示されました。定位脳手術とは、頭蓋骨に小さな穴を開け、画像で位置を特定しながら脳の深部に器具を到達させる手術です。

細胞調製の技術料には、両品目とも「K924 自己生体組織接着剤作成術」4,340点を準用する案です。準用とは、診療報酬点数表に該当する項目がない手技に、似た手技の点数を当てはめて算定することです。K924が選ばれた理由は、投与前に製剤を融解や遠心分離などで調製する手技が似ているためです。アクーゴの調製は、細胞の融解、洗浄、細胞カウント、エンドトキシン試験用サンプルの分注、細胞懸濁液の調製と細胞カウント、投与デバイスへの充填という手順で進みます。この調製は、製造販売業者が企画する講習を修了した医療スタッフがおこないます。アムシェプリの調製は、遠心分離、上清除去、投与デバイスへの細胞充填、細胞数の計算という手順で進みます。

移植手術の技術料には、両品目とも「K154 機能的定位脳手術 2 その他の場合」を算定する案ですが、移植部位によって点数が異なります。アクーゴは、1箇所の損傷部位に移植するため「イ 片側の場合」52,300点です。アムシェプリは、両側の被殻に移植するため「ロ 両側の場合」94,500点です。この2つの技術料を合計すると、アクーゴが56,640点、アムシェプリが98,840点となります。なお、アムシェプリでは、免疫反応を抑えるため、移植日の朝からタクロリムスを服用し、1年を目安に、その後12週間かけて減量・中止します(必要に応じて延長)。

ゾルゲンスマ髄注:既存の点滴静注と同じ薬価で算定

ゾルゲンスマ髄注は、既存のゾルゲンスマ点滴静注と同じ成分のため、別銘柄として算定せず、同じ1患者当たり1億6,707万7,222円で算定されました。「別銘柄として算定しない」とは、新しい製品として価格を一から計算せず、既存品の価格をそのまま用いる方法です。

ゾルゲンスマ髄注の薬価は、補正加算も外国平均価格調整もなく、点滴静注の薬価と同額です。薬価が「1患者当たり」とされた理由は、1人の患者に1回投与すれば治療が完結するためです。参考として示された米国価格は、AWP(平均卸売価格)が約4億6,559万円、WAC(卸売業者の購入価格)が約3億8,799万円です。ピーク時の市場規模は、2年度目に26人、43億円と予測されています。

ゾルゲンスマ髄注の対象は、2歳以上で抗AAV9抗体が陰性の脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者です。過去にこの成分の投与を受けた患者には、投与経路を問わず使用できません。海外第Ⅲ相試験(126例、支えなしで座れるが補助なしで歩けない患者が対象)では、運動機能の指標(HFMSEスコア)の約1年後の変化量が、本品群2.38点、シャム群0.56点となり、本品群の優越性が示されました。

ゾルゲンスマ髄注は、制度上、革新的新薬薬価維持制度と費用対効果評価の両方の対象となります。費用対効果評価の区分はH5で、既に評価対象となった品目に類似する品目に当てはまる区分です。このため、収載後は費用対効果評価の結果に応じて価格が調整される可能性があります。

まとめ:条件及び期限付き承認品の算定根拠を押さえる

第650回中医協総会では、再生医療等製品3品目の保険適用が示され、令和8年5月20日に収載される予定です。アクーゴとアムシェプリは、条件及び期限付き承認のルールにより、営業利益率7.8%、有用性系加算は判断せず、市場性加算(Ⅰ)と先駆加算は各10%で算定されました。両品目の投与には、細胞調製のK924準用4,340点と、定位脳手術のK154(片側52,300点、両側94,500点)を組み合わせる案が示されました。ゾルゲンスマ髄注は、点滴静注と同じ1億6,707万7,222円で算定され、費用対効果評価(H5)の対象となります。条件及び期限付き承認の2品目は、改めて承認を受けた際に営業利益率と補正加算が再検討されるため、今後の審査の動向にも注目が必要です。



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サマリー

中医協資料をもとに、iPS細胞などを使う再生医療等製品の価格設定を考える。アクーゴとアムシェプリは、効果がまだ推定段階の条件付き承認であるため、営業利益率を通常の半分の7.8%に抑え、有用性加算を見送った。製品価格に加え、細胞調製や脳深部への移植手術にも費用がかかる一方、早期アクセスと公的医療保険の持続性を両立させる必要があると説明する。ゾルゲンスマ髄注は既存の点滴製剤と同じ1億6,707万7,222円で設定され、費用対効果評価によって後から価格を見直す仕組みがある。最後に、こうした一回完結型の高額な遺伝子治療が一般的な病気にも広がった場合、現在の保険制度で支えられるのかという課題を提示する。

再生医療等製品の価格設定が難しい理由
普段私たちが物を買うときって、それが何をしてくれるかで価格が決まるじゃないですか。
でも、もし今日タイムマシンが発明されたとして、それに値札を貼るとしたら、どう計算しますか?
いやー、難しいですね。材料費から計算するのか、それとも過去に戻れるという体験そのものに値段をつけるのか。
まあ、前例がないですからね。
そうなんですよ。実は今日読み込んでいる中医協、つまり日本の医療保険のルールを決める会議の最新資料ですね。
そこではまさにこのタイムマシンに値札を貼るような途方もない議論が行われているんです。
今回の深掘りのテーマですね。
iPS細胞を使った脳の治療など、まるでSF映画のような技術がいよいよ現実の医療になろうとしています。
はい。でもその革新的な技術にどうやって現実の数字を落とし込むのか。これがこのディープダイブのミッションです。
早速なんですが、これすごく難しい最大の理由って何なんでしょうか?
それはですね、これらの治療が新しすぎるからなんです。つまり本当に長期間期待通りに効くのかというのがまだ推定の段階なんですよ。
なるほど。データが完全には出そろっていないってことですよね。
アクーゴとアムシェプリの利益率制限
今回の資料に出てくる外症性脳損傷に対するアクーゴ、これが1回約7271万円、パーキンソン病に対するアムシェプリが約5530万円、ものすごい金額じゃないですか。
そうですよね。ただこれらは条件付きで早く世に出すための特例ルールで承認されているんです。
だからこそ国も価格設定に対してかなり慎重にブレーキをかけています。
ブレーキですか?
具体的にはメーカーの営業利益率を通常の半分である7.8%に制限しているんです。
7.8%半分なんですね。
はい。さらに既存の治療より優れているからといういわゆる有用性加算も見送られました。
効くとは思うけど確証がないからボーナスはなしってことですね。しかもこれただ薬をポンと渡すだけじゃないんですよね。
おっしゃる通りです。
細胞を準備するための特殊な技術とか、あとは実際に頭蓋骨に穴を開けて脳の深部に移植するっていう、そういう超高度な手術もセットになるわけですよね。
細胞調製と脳移植にかかる医療技術
そうなんです。製品そのものの価格に加えてそういった特殊な医療技術にも莫大なコストがかかってくるわけです。
でもちょっとここで疑問なんですけど、企業側からすれば莫大な研究開発費とか失敗のリスクを背負ってようやく革新的な治療を形にしたわけじゃないですか。
確かにそうですね。
それなのに、まだデータが足りないからって利益率を一律7.8%に抑え込まれちゃったら、じゃあもう日本で新しい薬を作るのやめよって、今後のイノベーションの目をつむことになりませんか。
企業側の視点に立てばおっしゃる通り厳しい制約に見えます。ただ日本の公的医療保険というシステム全体を維持する側から見るとちょっと違った景色になるんですよ。
違った景色というのは。
もし推定段階の薬に満額の利益とボーナスをつけて、後から実はそこまで効きませんでしたとなったら、医療費のシステム自体がパンクしてしまいますよね。
ああ、なるほど。
患者さんが画期的な治療に早くアクセスできるメリットと保険制度が破綻しないためのセーフティーネット、この2つのバランスを利益率の制限というレバーを使ってギリギリで調整しているわけです。
システムを守るためのリスクヘッジなんですね。
ただその計算式だけでは説明がつかない不思議なケースも資料にあって、脊髄性菌移植症に対するゾルゲンスマ水中という治療なんですけど。
はい、あの難病の治療薬ですね。
これ、1患者あたりなんと1億6707万7222円なんですよ。
以前から点滴で全身に入れるタイプのゾルゲンスマがありましたが、今回は直接脊髄を覆う空間に注射する新しいタイプですね。
そうなんです。注射を打つ場所が変わった、つまり新しい製品が出たのにもかかわらず、国は価格を1から計算し直さずに既存の点滴タイプと全く同じ金額に設定したんですよね。
そういうことになりますね。
これって世界一高いソフトウェアを買うのと同じ感覚だなって思って。
ソフトウェアですか?
はい。Wi-Fi経由でダウンロードしても、USBメモリで直接インストールしても、中身のプログラムが同じなら、1回完結のライセンス料は全く同じみたいな。
まさしくその通りですね。開発コードを書くまでの莫大なコストに値段がついている状態です。
ただここには国側の巧妙な仕組みも隠されているんですよ。
というと、どういう仕組みですか?
この製品には、いわば後から価格を見直す権利がセットになっています。
費用対効果評価という仕組みの対象になっているんです。
後から見直す?
はい。1億6700万円という価格で一旦スタートしますが、実際に世の中で使われた後でデータを追跡します。
もし期待したほどのコスパではないと判断されれば、後から強制的に価格を引き下げられるルールなんです。
つまり、とりあえず今は払うけど、効果は後できっちり生産するよと。
ゾルゲンスマ髄注と既存製品の価格継承
これ、聞いている皆さんが毎月お給料から転引されている健康保険料の使い道の話ですよね?
ええ、皆さんの毎月の保険料がまさにこのシステムを根底で支えているわけです。
だとしたら、聞いているあなたに最後に少し考えてみてほしいんです。
今回お話ししたのは、患者数が少ない希少疾患の話でした。
はい、そうですね。
もし、あと数年後、例えば高血圧とか糖尿病といった誰もがかかるような一般的な病気に対してですよ。
1回完結だけど1億円かかる遺伝子治療が当たり前の時代になったら、一体どうなるんでしょう?
毎月みんなで保険料を出し合って医療費をカバーする現在のシステムでは、おそらく耐えきれないでしょうね。
ですよね。それとも全く新しい形の医療経済モデルを作るしかないのか?
タイムマシンが日常になる日までに、私たちが解くべき最大の謎かもしれませんね。
06:13

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