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2025-09-18 10:18

医療現場の生産性向上を実現する3つの戦略 - 看護職員確保・ICT導入・タスクシフト推進

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医療現場では深刻な人手不足と業務負担増大という構造的課題に直面している。令和8年度診療報酬改定に向けた議論では、看護職員の働き方改革、ICT活用による業務効率化、タスクシフト・シェアの推進という3つの戦略的アプローチが検討されている。本稿では、令和7年度第11回診療報酬調査専門組織入院・外来医療等の調査・評価分科会で示された最新データを基に、持続可能な医療提供体制の構築に向けた具体的な施策と課題を明らかにする。

分析の結果、看護職員の夜勤負担軽減と処遇改善が喫緊の課題であることが判明した。ICT活用については約7割の医療機関で導入が進んでいるものの、維持管理コストと人材育成が新たな課題として浮上している。特定行為研修修了者は13,887人に達し、タスクシフト・シェアは72.6%の医療機関で実施されているが、更なる推進には組織的な取組強化が必要である。令和8年度診療報酬改定では、これらの取組を評価する新たな加算の創設や既存加算の充実が検討されており、医療機関の経営戦略に大きな影響を与えることが予想される。

看護職員の確保と働き方改革の現状

看護職員就業者数は2023年に174.6万人に達したが、医療機関の約8割が配置困難を感じている。看護職員の離職理由は「看護職の他の職場への興味」が最多で、ライフステージに応じた「子育て」「介護」も主要因となっている。夜勤シフトの組みにくさは3割を超え、夜勤回数の増加も2~3割の医療機関で報告されている。

夜勤手当は2010年代以降ほとんど上昇していない現状がある。3交代制準夜勤で4,567円、深夜勤で5,715円、2交代制で11,815円という水準は、看護職員の負担に見合わない状況である。夜勤者確保策として「夜勤専従の導入」41.1%、「多様な夜勤の導入」34.2%が実施されているが、夜勤手当の増額は12.4%にとどまっている。

職業紹介事業者の利用は約7割の医療機関に及び、高額な手数料が経営を圧迫している。認定事業者の利用は42.6%で、令和7年4月から手数料率の実績開示が義務化される。都道府県ナースセンターによる無料職業紹介は年間約1万人の就業を支援しており、公的部門の機能強化が期待される。

ICT活用による看護業務の革新的効率化

ICT活用は72.9%の医療機関で実施され、特に急性期一般入院料1では約9割に達している。「ビデオ通話による会議」68.0%、「勤怠管理のICT化」63.8%、「紹介状・診断書の入力支援」35.6%が主な取組である。特定機能病院では「音声入力システム」の活用が48.1%と突出して高い。

看護記録の負担軽減では、電子カルテシステムの入力簡易化66.9%、カルテ様式間の自動転記31.5%、バイタルサインの自動入力26.4%が実施されている。音声入力導入により記録時間が約半減し、月平均時間外勤務が21.86時間から10.92時間に削減された事例もある。転倒転落予測AIシステムでは、リスク判定時間が患者1人5分から0分に短縮され、インシデント報告が460件から284件に減少している。

ICT活用の課題は「維持管理コストの負担」82.8%が最大の障壁となっている。「職員の習熟不足」53.3%、「教育・人材育成の時間」53.1%も指摘されており、導入後の継続的な支援体制の構築が不可欠である。令和6年度補正予算では828億円が計上され、生産性向上のための設備導入支援が開始されている。

特定行為研修とタスクシフト・シェアの推進

特定行為研修修了者は13,887人に達し、指定研修機関は474機関、年間受入可能人数は6,717人となっている。修了者の85.9%が病院に就業し、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」が最多の11,382人である。領域別パッケージ研修では、術中麻酔管理領域が203人と最も多く、在宅・慢性期領域984人と合わせ、多様な医療現場への貢献が期待されている。

タスクシフト・シェアは72.6%の医療機関で実施されているが、「とてもよく進んでいる」は1.6%、「進んでいる」は32.9%にとどまる。推進の工夫として「看護管理者中心の見直し」69.1%、「各職種代表者による検討」63.4%が実施されている。看護補助者との業務分担・協働では、「業務マニュアルの整備」78.9%、「研修の充実」74.9%により定着促進が図られている。

介護保険施設等との連携では、34%の病院が看護師による支援を実施している。感染症対策向上加算等を算定する医療機関の67.2%が介護施設への助言業務を行っており、地域包括ケアシステムにおける医療機関の役割が拡大している。令和6年度改定では、専従要件に介護施設への助言業務が含まれることが明確化され、月10時間以内の活動が認められた。

まとめ

医療現場の生産性向上には、看護職員の確保・定着、ICT活用による業務効率化、タスクシフト・シェアの推進という3つの戦略的取組が不可欠である。令和8年度診療報酬改定では、これらの取組を評価する加算の充実が検討されており、医療機関は組織的な改革を加速させる必要がある。特に、夜勤負担の軽減と処遇改善、ICT導入後の継続的支援体制、特定行為研修修了者の戦略的活用が、持続可能な医療提供体制の構築において重要な鍵となる。



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サマリー

医療現場の生産性向上に向けて、看護職員の確保、ICTの導入、タスクシフトの推進という三つの戦略が重要です。これらの取り組みは、患者に質の高い医療を提供するための鍵であり、現状の課題に立ち向かう必要があります。

医療現場の現状分析
こんにちは。今回のテーマは、医療現場の生産性、これをどうやって上げていくかですね。
人手が足りない業務の負担は増える一方、こういう構造的な課題にどう立ち向かうか。 令和8年度の診療報酬改定に向けた最新データ
令和7年度の診療報酬調査専門組織の調査結果、これをもとにですね、一緒に掘り下げていければと思います。
持続可能な医療提供体制の鍵となる、3つの戦略ですね。 看護職員の確保、働き方改革、それからICTの活用、そしてタスクシフト視野。
この現状を探っていきましょう。 まさに質の高い医療をどう維持するか、そして限られたリソース、特に人ですよね。
これをどう生かすか、そのバランスが非常に重要になってきます。 迫る令和8年度の改定が、これらの取り組みを後押しする大きな節目にあるかもしれませんね。
そうですね。 ではまず看護職員の確保と働き方改革、ここから見ていきましょうか。
看護師さんとして働いている方の数、これ自体は過去最高なんですよね。 2023年で174.6万人。
はい、そうなんです。増えてはいるんですが。 でも約8割もの病院が人が足りない、配置が難しいと感じている。
離職理由には子育てとか介護とかそういう事情もあるとは思うんですが、なかなか定着が進まない背景には何があるんでしょうか。
やはり一つ大きな要因として挙げられるのは、夜勤の負担ということでしょうね。 調査を見ると3割以上の病院で夜勤のシフトを組むのがもう難しくなっていると。
3割以上ですか。 ええ、さらに2割から3割の病院では看護師さん1人当たりの夜勤回数が増えているという実態があります。
しかもですね、その大変な夜勤に対する手当て、これがですね驚くほど低い水準で、もう何年も横ばいなんです。
え、そうなんですか。具体的にはどのくらい。 例えば3交代制の新夜勤ですと平均で5,715円。
2交代の夜勤でも1万1,815円。 この水準が10年以上ほとんど変わっていない。
それは厳しいですね。大変なお仕事に対して十分な対価が支払われていないと、そういうことにはなりかねませんよね。
夜勤専門の看護師さん、いわゆる夜勤専従の方を導入している病院は4割ほどあるようですが。
ええ、導入は進んでいるんですが、その一方で夜勤手当てそのものを増額したという病院はわずか12.4%。1割強に過ぎないんです。
なるほど。人材確保の面では民間の障害事業者を利用する病院が約7割ということですが、
一方で手数料が高いという声も聞かれますね。 そうなんですよ。
一応令和7年の4月からはその手数料率の開示が義務付けられることにはなっています。
ただまあそれが根本的な解決につながるかというと少し疑問も残りますね。
もちろん都道府県のナッスセンターのような公的な支援もあって、年間1万人ほどの就業を支えてはいるんですが、
この民間への依存度とコストの問題、そして公的支援の役割、このバランスをどう考えていくか。
やはり処遇改善と負担軽減、これが定着率向上の、そして持続可能性の鍵だと思いますね。
人が足りないとなると、やっぱり次は効率化という話になりますよね。ICT、情報通信技術の活用状況はどうでしょうか。
ICTの導入と課題
はい、全体で見ると導入している病院は7割強、72.9%ですね。
特に規模が大きくて、より複雑な旧世紀医療を提供している病院、例えば旧世紀一般入院量1などを算定しているところだと、約9割が何らかのICTを導入しています。
9割、かなり進んでいますね。具体的にはどういうことに使われているんですか。
主なところでは、ビデオ会議システムとか、勤怠管理システム、これが6割を超えていますね。
あとは、特定機能病院などでは、音声入力による記録システムなどもかなり導入が進んでいます。48.1%。
あ、音声入力、ここすごく面白いデータがあるんですよね。
ある病院の例だと、音声入力で看護記録にかかる時間が半分になって、月の残業時間が22時間近くあったのが、11時間弱まで減ったと。
それはすごい効果ですね。
別の例だと、転倒とか転落を予測するAI。これを導入したら、リスク判定にかかる時間がほぼゼロになって、
インシデント、つまり事故報告の件数が年間460件から284件に大幅に減ったそうです。これは大きいですよね。
まさにICTが持つ効率化のポテンシャルは非常に大きいと言えますね。
ただ一方で、課題も少なくないんです。
最も多くの病院が挙げているのが、維持管理コストの負担が大きいという点。これが8割以上、82.8%に上ります。
8割ですか。やはりコストが。
ついで職員が十分に使いこなせない53.3%、あるいは操作を覚えるための教育に時間がかかる53.1%といった人材育成や就熟度に関する課題も半数以上の病院が感じています。
つまり導入して終わりではないわけですね。
なるほど。国も令和6年度の補正予算で、確か800億円以上、828億円の支援を打ち出してはいますが、特に体力のない周規模の病院にとっては、このコストと教育の壁というのはなかなか高いのかもしれないですね。
おっしゃる通りです。導入後の継続的なサポート体制、これが不可欠になってきますね。
タスクシフトの推進
そして効率化のもう一つの重要な柱が、タスクシフト・シェア、業務の分担を見直すということです。
特定行為研修ですね。これは医師の指示の下で特定の医療行為を行える看護師さんを要請する研修。修了者はだいぶ増えてきて、約14,000人、13,887人になったと。
ええ。指定されている研修期間も全国で474箇所。年間で6,700人以上受け入れられる体制にはなっています。
この研修によって、例えば、栄養管理に関する薬剤の投与量の調整であるとか、あるいは傷の管理なんかも看護師さんがより深く関われるようになるということですね。一番多いのは、栄養および水分管理に係る薬剤投与関連で、11,000人以上が修了している。
そうですね。ですから、潜在的な能力、ポテンシャルは非常に高いはずなんです。ただ、実際のタスクシフトシェアの進捗を見ると、7割以上の病院、72.6%が、何らかの形で実施しているとは答えているんですが、とてもよく進んでいると実感しているのは、わずか1.6%にすぎないんです。
えっと、たったの1.6%ですか。それはちょっと驚きですね。実施はしているけど、なかなか本格的には進んでいないと。なぜなんでしょう。看護補助者さんとの連携を強化するための工夫、例えばマニュアルを整備したり、約8割、研修を充実させたり、約7割半といったことは、結構進んでいるように見えるんですが。
うーん、結局のところ、個別の業務を、はい、これお願いと移すだけでは不十分で、部署や職種を超えた、もっと組織全体での協力体制とか、意識改革といったものが求められるからではないでしょうか。せっかく特定行為研修を終了した看護師さんの高い能力を、どう戦略的に現場で活かしていくか、その具体的な三つ筋が、まだ多くの病院で手探り状態なのかもしれないですね。
なるほど。
もちろん、病院から介護施設へ看護師さんが出向いて支援する34%といった地域連携の動きや、感染対策に関する助言業務、感染症対策向上加算算定施設の67.2%なども少しずつ広がってはいます。令和6年度の改定で、月10時間以内の活動が正式に業務として認められたというのも後押しにはなるでしょうが、まだまだ道半端という印象ですね。
そうですか。
まとめると、まず看護職員の確保と定着のためには、処遇改善と負担軽減が急務であること。そして、ICTによる効率化は大きな可能性を秘めているけれども、コストや教育という導入維持の壁があること。最後に、タスクシフトシェアを進めるには、個々の取り組みだけでなく、組織全体での変革が必要だということ。この3つの要素が、これからの医療現場の生産性を大きく左右するということですね。
令和8年度の新業報酬改定で、こうした現場の努力がどう評価されていくのか、これは本当に注目ですね。
まさにおっしゃる通りです。看護師さんの待遇の問題、ICT導入のハードル、そしてタスクシフトを実質的に進めるための組織変革。これらの課題に、各医療機関、そして国全体としてどう向き合っていくのかが、日本の医療が持続可能であるための試験史となると言えるでしょうね。
最後に、これを聞いているあなたにも、少し考えてみてほしいことがあります。ICTを活用した業務効率化というのは、非常に魅力的に聞こえます。先ほどの残業時間削減や事故干渉の例のように、効果も大きい。
ですが、その一方で指摘された維持管理コストや職員の教育・修熟といった負担は、特に経営体力の大きくない中小規模の医療機関にとっては、導入をためらってしまうかなり大きな理由になりかねません。
こうした技術革新の恩恵を、規模の大小にかかわらず、すべての医療機関がより平等に受けていくためには、これからどんな支援や工夫が必要だとあなたは考えますか?
ご視聴ありがとうございました。
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