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2025-09-23 07:08

医師の働き方改革を加速するICT活用|8割の病院が未導入の現状と改善策

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令和7年度入院・外来医療等における実態調査により、全国の約80%の病院で医師事務作業のICT活用が進んでいない実態が明らかになりました。医師の働き方改革が喫緊の課題となる中、生成AIやRPAなどの先進技術の活用が労働時間短縮の鍵となっています。本稿では、入院・外来医療等の調査・評価分科会で示されたICT活用による業務効率化の具体的効果と導入推進に向けた方策を解説します。

調査結果によると、生成AI文書作成補助システムを導入した医療機関では退院サマリー作成時間を最大66%削減する効果が確認されました。WEB問診・AI問診では1問診あたり40~50%の時間短縮を実現しています。説明動画の活用やRPAによる臨床データ集計においても、作業効率の大幅な向上と労働時間の短縮効果が報告されています。これらのICT技術は、医師事務作業補助者の業務負担軽減と医師の本来業務への集中を可能にする重要な手段となっています。

ICT活用の現状と導入の遅れ

令和7年度入院・外来医療等における実態調査によると、医師事務業務の省力化に向けたICT活用について、約80%以上の病院でいずれの取組も実施されていないことが判明しました。この現状は、医師の働き方改革を推進する上で大きな障壁となっています。調査によれば、ICTを活用している医療機関の取組内容は「説明動画の活用」、「WEB問診・AI問診」、「外来診療WEB予約システム」が上位を占めています。

導入済みの医療機関では、すべてのICT活用において「作業効率の上昇」と「労働時間の短縮」という明確な効果が確認されています。特に効果が高い取組として、「臨床データ集計等でのRPA活用」、「退院サマリー等の作成補助を行う生成AI文書作成補助システム」、「説明動画の活用」が挙げられます。これらの技術は、医師事務作業補助者が実施している紹介状の返書作成、診療情報提供書の作成、退院サマリーの作成などの主要業務において、大幅な時間短縮を実現しています。

医師事務作業補助者を必要数確保できない医療機関が40.1%存在する中、ICT活用は人材不足を補完する重要な解決策となります。入院・外来医療等の調査・評価分科会の中間とりまとめでも、給与や賞与の見直しだけでは限界があり、診療報酬の枠組みでの議論の必要性が指摘されています。

生成AI等による具体的な削減効果

生成AIによる文書作成補助システムの導入効果は、複数の医療機関で実証されています。1000床規模の国立大学病院では、退院サマリー作成時間を1時間から20分に短縮し、66%の削減率を達成しました。別の国立大学病院では、診療情報提供書と退院サマリー作成で平均47%の時間削減を実現し、年間1人当たり63時間の削減効果を生み出しています。

750床規模の民間病院では、医師事務作業補助者による退院サマリーの下書き作成時間を30分から0分に完全に自動化しました。医師による作成時間も10分から5分に短縮し、全体として大幅な効率化を達成しています。200床規模の民間病院でも、診療情報提供書・紹介返書・退院サマリー・主治医意見書等の作成において、医師事務作業補助者による下書き時間を30分から15分に短縮し、50%の削減効果を実現しています。

WEB問診・AI問診システムも顕著な効果を示しています。300床規模の民間病院では1問診あたり約10分から6分への短縮(削減率40%)、診療所では1問診あたり約12分から約6分への短縮(削減率50%)を達成しました。がん登録作業においても、生成AIの活用により患者スクリーニング作業時間で27.1%、がん登録作業時間で16%の削減効果が報告されています。

これらのシステムは、診療録からの情報収集、部門システムからのデータ抽出、情報の統合と構造化、要約作成といった一連のプロセスを自動化します。従来は医師事務作業補助者が手作業で行っていた業務が、AIにより効率的に処理されるようになっています。

今後の推進に向けた課題と方向性

入院・外来医療等の調査・評価分科会では、医師事務作業補助者の定着に向けた取組やICTの活用による省力化等について、令和7年度入院・外来医療等における実態調査の結果を踏まえさらなる検討を進めることが示されています。医師の働き方改革は急性期機能の集約化や病院間の役割分担とも密接に関連しており、急性期の医療機関機能を検討する際に併せて考えていくべきとの意見も出されています。

地域医療確保体制加算の評価向上も含め、診療報酬制度における適切な評価が重要な検討課題となっています。多くの当直医が大学病院からの派遣で満たされている現状を踏まえ、夜間の宿日直体制を維持していくことの重要性も指摘されています。

ICT導入の障壁として、初期投資コストや運用体制の構築、スタッフの教育などが挙げられます。しかし、労働時間短縮による人件費削減効果や医療の質向上を考慮すれば、中長期的には十分な投資対効果が期待できます。特に医師事務作業補助者の確保が困難な地域や施設においては、ICT活用が不可欠な選択肢となっています。

今後は、成功事例の共有と横展開、導入支援体制の整備、診療報酬上のインセンティブ設計などを通じて、全国的なICT活用の推進を図ることが重要です。医師の働き方改革の実現と医療の質向上の両立に向けて、デジタル技術の積極的な活用が求められています。

まとめ

令和7年度入院・外来医療等における実態調査により、医師事務作業のICT活用は約80%の病院で未導入という現状が明らかになりましたが、導入済み施設では明確な労働時間短縮効果が実証されています。生成AI文書作成補助システムによる最大66%の時間削減、WEB問診・AI問診による40~50%の効率化など、具体的な成果が報告されています。医師の働き方改革を実現し、持続可能な医療提供体制を構築するために、ICT活用の推進は避けて通れない課題となっています。各医療機関においては、自施設の業務特性に応じた最適なICT導入戦略を検討し、段階的な実装を進めることが求められます。



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サマリー

日本の医療現場におけるICTの導入状況は厳しく、約8割の病院がまだ導入していないという驚くべき現実があります。しかし、すでに導入された病院では生成AIやウェブ問診などの技術によって作業効率が劇的に向上しており、医療の質の向上が期待されています。

ICT導入の現状
こんにちは、ザ・ディープダイブです。今回はですね、日本の医療現場で、なかなか進まない医師の働き方改革と、その鍵になりそうなICT、情報通信技術ですね。
この活用状況について、最新の調査データなんかを見ながら、ちょっと深く掘り下げていきたいなと思います。
まず、驚いたのがですね、令和7年度の調査結果なんですけども、医師の事務作業を助けるためのICT、これがですね、全国の病院の、なんと約8割で、ほとんど導入されてないって言うんですよ。
えー、8割ですか。
8割。これ、かなり衝撃的じゃないですか。働き方改革って言われてるのに、なんでこんなに進んでないのか、その辺り、今日は見ていきましょう。
そうですね。この8割未導入っていう数字は、単に効率が悪いねっていう話じゃないんですよね。まさに日本の医療、その提供体制自体が持続可能かどうかに関わる、かなり大きな課題を示してるかなと。
医師の長時間労働って本当に深刻ですから、このICT導入の遅れっていうのは、改革の大きな足枷になってると言えざるを得ない状況ですね。
うーん、なるほど。でも一方で、じゃあ導入してる残りの2割の病院、そこではかなり目覚ましい効果が出てるという話もあるんですよね。具体的にはどんな技術が役に立ってるんでしょうか。
ありますね。代表的なのは、やっぱり文章作成を助ける生成AIです。
ああ、生成AI。
ある大学病院の例だと、退院サマリーってありますよね。あれを作る時間が、1時間かかってたのが20分になったと。
1時間から20分、それはすごい。
ええ、66%も短縮された計算ですね。また別の病院ですと、平均で47%削減。年間にすると、医師1人当たり63時間もの削減効果があった。なんていう報告も。
年間63時間ですか。それは大きいですね。
中にはですね、医師事務作業補助者の方が下書きをしてた作業時間が、AI導入によってもうゼロになった。30分かかってたのがゼロにと。完全に自動化されたっていうケースもあるようです。
補助者の作業がゼロに、それはすごいインパクトだ。他にはどうでしょう。
他にもありますよ。例えば、患者さんが事前にタブレットとかで入力するウェブ問診。
ああ、ありますね、最近。
それから、AIが対話形式で症状を詳しく聞いてくれるAI問診。これも効果的でして、問診1回あたり、だいたい40%から50%の時間短縮につながっているそうです。
半分近くですか。
さらに、パソコン上での決まった作業、定型作業ですね。これを自動化するRPAっていう技術があるんですが。
RPA、ロボティックプロセスオートメーション。
そうです。それを使ったデータ集計とか、患者さん向けの説明動画を活用するとか、こういったものも着実に作業効率を上げて、労働時間を減らすことにつながっていますね。
なるほど、いろいろな技術が現場を助け始めてるんですね。
そうなんです。ここで注目すべきは、こういったICTを導入した医療機関では、もうほぼ例外なく、
作業効率が上がった、そして労働時間が短縮されたっていう、その明確な効果が一貫して報告されてるってことなんですよ。
これはもう机の空論じゃなくて、実際の現場でもう証明されてると、効果があることはもはや疑いようがない段階かなと思いますね。
これだけ効果が明らかなのにですよ。なのになぜ8割もの病院で導入が進まないのか、なんか素朴な疑問が湧いてきますけど、人手不足も深刻だって話がありましたよね。
技術の効果と課題
そのあたりとはやっぱり関係があるんでしょうか。
それは深く関係してますね。調査ではですね、医師の事務作業を支える医師事務作業補助者、この方々を必要な人数確保できていない病院が、なんと4割、40.1%にも上ると。
4割も。
だからICTっていうのは、今いるスタッフの方々の負担を軽くするだけじゃなくて、この人手不足そのものをある程度補うそういう力も持ってるはずなんですよね。
なるほど。人が足りない。だからこそICTが必要。なのに導入が進まない。なんかジレンマみたいな状況ですね。
その導入の壁っていうのは具体的には何なんでしょう。やっぱり初期コストとか使い方を覚える教育とかそういうところですか。
ええ。もちろん初期投資ですとか、あるいは運用体制をどう作るか、スタッフへの研修、これは無視できない課題です。
ただ資料をよく見るとですね、単にコストだけの問題でもないような、もっと根深い課題もありそうだなと。
例えば今までの現場のやり方、ワークフローを変えることへの抵抗感とか、あるいは本当にそんなに効果があるのかっていうちょっと懐疑的な見方とかももしかしたらあるのかもしれないですね。
うーん、なるほど。
ただ忘れてはいけないのは中長期的な試探だと思うんです。
労働時間が短くなれば、当然人件費の削減にもつながりますし、何より医療の質そのものが向上するっていう期待もできるわけです。
特にその、補助者の確保が難しい地方の病院とか中小規模の病院にとってはですね、ICTっていうのはもう選択肢の一つじゃなくて必須のツールになりつつあるとも言えるんじゃないでしょうか。
あの、診療報酬の枠組みの中でICT導入を後押しするような、そういう制度面からのアプローチも必要だよね、という議論も出てきています。
なるほど。コストだけじゃなくて、制度とか現場の意識とかそういうところも変えていく必要があるということですね。
いやー、今回の話でテクノロジーが持ってるその大きな可能性と、それがまだ現場に十分に行き渡っていないそのギャップっていうのがはっきり見えた気がしますね。
これってもしかしたら、あなたが病院に行った時の待ち時間とか、あるいは受ける医療の質にも間接的に関わってくる話なのかもしれません。
そうですね。今後は、うまくいっている事例、成功事例をもっと共有したりとか、導入を支援するような仕組みを充実させかり、あとは診療報酬できちんと評価するとか、そういったことが普及の鍵になってくるでしょうね。
働き方改革と医療の質の向上、この2つをどう両立させていくのか、まさにその重要なキロに今立たされていると言えるんじゃないでしょうか。
そうですね。最後にちょっと皆さんに想像してみてほしいことがあるんです。
もしAIが医師の複雑な文書作成とかデータ処理を当たり前のように肩代わりするようになった未来、その時病院の中にいる他の事務スタッフの方々の役割ってどう変わっていくんでしょうか。
そしてその変化の中で新しく求められるスキルっていうのは一体どんなものになると思いますか。ちょっと考えてみると面白いかもしれません。
07:08

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