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2025-10-08 07:32

医療現場の働き方改革2025:医師・看護師の負担軽減と人材確保の最新動向

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令和6年4月から医師の時間外・休日労働の上限規制と健康確保措置が適用され、医療現場の働き方改革が本格化しました。令和6年12月時点で460施設が特定労務管理対象機関として指定されています。医師の47%が勤務状況の改善が必要と回答し、看護職員の約8割が施設基準を満たす配置に困難を感じています。入院・外来医療等の調査・評価分科会の検討結果から、医療従事者の働き方改革とタスクシフト/シェアの現状と課題を明らかにします。

医療現場では人材確保と処遇改善、ICT活用による業務効率化が喫緊の課題となっています。医師事務作業補助者の40%が必要数を確保できず、看護補助者も減少し続けています。夜勤手当は2010年代からほとんど変化せず、夜勤可能な職員の確保が困難になっています。ICT・AI・IoT活用が約7割の医療機関で進むものの、維持管理コストや使いこなせない職員の存在が課題となっています。

医師の働き方改革の現状と課題

医師の時間外労働規制が本格化する中、勤務環境の改善と人材確保が重要な課題となっています。地域医療体制確保加算を届け出ている医療機関では、届け出のない医療機関と比較して休日・時間外労働の平均値や最大値は長い傾向にあります。一方で、勤務環境の現状把握・分析を実施している割合やICTを活用した業務見直しの取組を実施している割合が高く、令和5年度と比較して令和6年度では休日・時間外労働の平均値や最大値が減少傾向にありました。

医師事務作業補助体制加算の届出医療機関数は年々増加傾向にあります。届出医療機関の約40%で必要数の医師事務作業補助者が確保できていません。医師事務作業補助者の定着に向けた効果のある取組として、評価・報酬に関する取組では「給与・賞与の見直し」「面談による評価フィードバックの実施」「人事評価制度の整備」が多く挙げられました。医師事務作業補助体制加算を算定している医療機関の57%において、医師事務作業補助者の人事考課が実施されています。

ICTを活用した医師事務業務の省力化の取組について、「作業効率の上昇」と「労働時間の短縮」が得られる効果の中で最も多く報告されました。労働時間の短縮の効果が得られるとの回答の割合が多い取組として「臨床データ集計等でのRPA活用」「退院サマリー等の作成補助を行う生成AI文書作成補助システム」「説明動画の活用」がありました。分科会では、医師の働き方改革を進める中で医師にかかる経費は増えており、地域医療確保体制加算はより評価されるべきとの意見や、ICT導入には多額の費用が必要であり支援を考慮すべきとの意見が出されています。

看護職員の確保と業務負担軽減の取組

看護職員就業者数は2023年(令和5年)に174.6万人となりました。看護職員の就業場所は病院・診療所が多いものの、訪問看護ステーション等において増加傾向となっています。新規の看護師資格取得者や看護師学校養成所(3年課程・大学を含む)の入学者数・卒業者数は減少に転じています。令和6年度には大学の定員充足率も100%を切っており、今後一層の少子化の進展を考えると、看護職員の確保と働き続けられる環境整備の取組が喫緊の課題となっています。

看護補助者の数は減少し続けており、正規雇用の割合は低下しています。許可病床100床当たりの看護補助者数も全体的に減少傾向にあります。看護補助者の定着に向けて、研修の実施、ラダーの活用、看護補助業務の細分化等の取組が進められています。看護補助者の定着を促進するための取組として、「看護補助者業務のマニュアルの整備」は77.2%、「看護補助者の研修の充実」は72.7%で実施されています。

入院料の施設基準を満たす看護職員の配置を行うにあたり、困難を感じることがあるか尋ねたところ、「大いに感じる」「感じる」は約8割でした。勤務シフトが組みにくくなったが3割を超え、看護職員の夜勤の回数(1人当たり)について「増えた」が2〜3割となっています。看護職員の負担の軽減及び処遇の改善に関わる具体的な取組としては、「妊娠・子育て中、介護中の看護職員に対する配慮」は最も多く実施されていました。子育てや介護を担う職員への配慮が進んでいる一方で、夜勤が可能な職員の確保や負担軽減が課題となっています。

病院勤務看護職員の夜勤手当(夜勤1回当たり)額は、2010年代に入ってほとんど変化がありません。看護職員の負担の軽減及び処遇の改善に関わる具体的な取組として「夜勤手当の見直し」は15.0%で実施、直近3年以内に実施した看護職員の夜勤者の確保策として、「夜勤者確保のための夜勤手当の増額(一律)」は12.4%、「夜勤回数に応じた夜勤手当以外の手当の支給」は8.7%で行われています。分科会では、夜勤手当は2010年代に入ってほとんど増加が見られず、割増賃金のみの支給にとどまる病院も4.4%存在する状況などがあるため、夜勤者の確保に向け夜勤手当の引き上げが必要ではないかとの意見が出されました。

ICT・AI活用による生産性向上の推進

ICT(情報通信技術)の活用は約7割で進められています。具体的な取組として「ビデオ通話(WEB形式)による会議の実施」「勤怠管理のICT化」「紹介状や診断書の入力支援ソフトの活用」が進められています。看護職員の記録に関する負担軽減の取組として、ICTを活用した取組としては、「電子カルテシステム等を活用したカルテ様式間の自動転記」「バイタルサイン等の測定機器からの自動入力」「文書作成補助システムの活用」が進められていました。

令和6年度診療報酬改定では、看護職員の更なる業務負担軽減の観点から、「夜間看護体制加算」等の夜間における看護業務の負担軽減に資する業務管理等のうち、「ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減」に取り組むことが望ましいことと位置づけられました。令和6年度補正予算では、人口減少や医療機関の経営状況の急変に対応する緊急的な支援パッケージ(生産性向上・職場環境整備等事業)として、生産性向上に資する取組として、ICT機器の導入による業務の効率化、職員間の情報伝達の効率化(チーム医療の推進)等の対応がなされました。

ICT機器活用継続についての課題について、「ICTの維持・管理等のメンテナンスにコストがかかる」「ICTを使いこなせていない職員がいる又は多い」「ICTの導入にあたって教育や人材育成に時間がかかる」の順で多く挙げられました。分科会では、ICT、AI、IoTを導入して取り組みたい一方、機器活用には初期の導入費用、維持メンテナンス費用、投資額も必要となり、一部導入時の補助金はあるものの、維持メンテナンス費用までを入院基本料等で補ってもらう必要があるのではないかとの意見が出されています。生産性向上や業務負担軽減の点では、音声入力やバイタルデータの自動入力などが有効だと考えられるものの、具体的な活用が進むための方策について検討が必要との指摘もありました。

タスクシフト/シェアの推進状況と今後の展望

医師から看護師へのタスクシフト/シェアが進んでおり、特定行為研修修了者も病床規模に関わらず配置されています。医師から看護師へのタスクシフト/シェアとして行われている内容として、「注射、採血、静脈路の確保」、次いで「事前に取り決めたプロトコールに基づく薬剤の投与、採血・検査の実施」「カテーテルの留置、抜去等の各種行為」「特定行為の実施」の順で推進されていました。特定行為研修の領域別パッケージ研修において、令和7年9月時点で、指定研修機関は277機関、修了者数は2,765人であり、特定行為研修修了者の85.9%は病院に就業している実態があります。

病棟業務におけるタスクシフト・シェアの取組の進行状況について、「とてもよく進んでいる」は1.6%、「進んでいる」は32.9%でした。タスクシフト・シェアを進めるための工夫・取組として、「看護管理者を中心に整理・見直しを行っている」が69.1%、「各職種の代表者が集まり整理・見直しを行っている」が63.4%が進められていました。分科会では、病院の看護の状況をよくわかっている看護管理者がキーパーソンとなり、各医療機関の実際の医療・看護業務の状況に応じて、看護の充実や質の向上のためにどうICT機器を活用するかをよく検討した上で導入されている好事例が示されました。

令和6年度診療報酬改定では、感染対策等の専門的な知見を有する者が、介護保険施設等からの求めに応じてその専門性に基づく助言を行えるようにする観点から、感染対策向上加算、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア診療管理料及び褥瘡ハイリスク患者ケア加算のチームの構成員の専従業務に当該助言が含まれることを明確化しました。地域の介護保険施設等に対して、医療ケア等に関する支援を行う病院が一定存在しており、病院規模に関わらず、特定行為研修修了者等の専門性の高い看護師が訪問による支援等を実施しています。今後、このような取組を推進していくために、効率的な実施に係る整備が進められることが期待されています。

まとめ

医療現場では人材確保と処遇改善、ICT活用による業務効率化が喫緊の課題となっています。医師の時間外労働規制と看護職員の配置基準を満たしながら、質の高い医療を提供するためには、医師事務作業補助者や看護補助者の確保と定着、夜勤手当の見直しによる夜勤者の確保、ICT・AI・IoT活用の推進が不可欠です。タスクシフト/シェアの取組も、看護管理者を中心とした現場主導の見直しや、特定行為研修修了者の活用により着実に進展しています。今後は、維持管理コストを含めた財政的支援の充実と、各医療機関の実情に応じた効果的な取組の推進が求められます。



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サマリー

日本の医療現場では、2025年に向けて医師と看護師の負担軽減と人材確保が重要な課題となっています。ICTを活用し、タスクシフトを推進することによって、業務の効率化や労働環境の改善が求められています。

医師の負担減少とICTの活用
こんにちは。今回はですね、日本の医療現場の働き方改革、特に2025年を見据えて、医師と看護師の負担をどう減らしていくか、そして人材をどう確保するか、このあたりお手元の資料をもとに、ちょっと深く見ていきたいと思います。
あのー、令和6年の4月からですか、医師の時間外労働の上限規制が始まりました。 これが現場にどういう影響を与えているのか、その確信に迫っていきましょう。
そうですね。今回の資料、いろいろ試算に飛んでるんですが、やはり人材不足の実態とか、あとはICT、情報通信技術ですね、これの活用がどこまで進んでいるか、それからタスクシフト、業務の分担ですね、こういった具体的な課題が見えてきます。
特に注目したいのは、国から特定労務管理対象機関、特に労働時間管理をしっかりやりなさいと指定された施設が、令和6年の12月時点で460もある。この数字はやっぱり現場の課題の大きさは物語っている気がしますね。
うーん、460ですか。なるほど。まずはその医師の状況から見ていきましょうか。時間外労働の規制が始まったわけですけど、資料を見ると、地域医療体制確保加算、これを届け出ている病院の方が、かえって労働時間が長い傾向にあるというのはちょっとと思いましたね。
そう見えるんですよね。ただその一方で、そういう病院ほどICTの活用とか業務改善には積極的に取り組んでいるという側面もあるんです。結果として労働時間は減少傾向にはあるんですよ。
ああ、なるほど。努力もしていると。
そうなんです。ただ別の答えもあって、医師の事務作業を助ける医師事務作業補助者、これは増えてはいるんですが、それでもまだ約4割の病院で必要な数が足りていない。
4割ですか。結構大きいですね。
だからその給与を見直したり、ちゃんと評価する仕組みを作ったりして定着してもらうことが非常に重要になってきているということですね。
なるほど。定着策ですか。ICTの効果という点ではどうでしょう。RPAとかAIを使った文書作成の補助とか、あと患者さんへの説明動画とか、こういうのが時間短縮につながっているという報告もあるんですよね。
まさにその通りです。効果は出始めていますね。ただやはり導入とかそれを維持していくのにはどうしてもコストがかかる。現場からは財政的な支援を求める声が熱よく上がっているのも事実です。
コストの問題は大きいですね。さて次は看護職員の方ですが、こちらもかなり状況は厳しいようですね。新しく看護師になろうという人が減っていて、大学の定員充足率も100%を切っているところもあると。
そうなんです。
将来の人材確保、これはかなり大きな課題ですね。
本当に深刻です。特に看護業務を支える看護補助者の方、この数が減っているのと、あと正規雇用の割合も低下している。現場の大体8割くらいがもう人員配置に困難を感じているという状況で。
8割もですか。
はい。具体的には夜勤のシフトがなかなか組みにくくなったり、あるいは1人当たりの夜勤の回数が増えてしまったり、そういう実態があるようです。
子育てとか介護をしている職員への配慮、これは進んでいるという話もある一方で、じゃあ夜勤ができる人がとなると難しい。しかもその夜勤手当の額が2010年代からほとんど変わってないと。
そこなんですよ。これは働くモチベーションにも関わってきますからね。手当の引き上げはもう待ったなしの課題と言えるでしょうね。
ですよね。
ただ実際に手当を見直したという施設はまだ多くはないというのが現状ですね。
そうなんですね。ではその業務効率化の切り札として期待されるICT、これはどうでしょうか。資料を見ると約7割の医療機関で何らかの形で活用は進んでいると。ウェブ会議とか勤体管理、電子カルテとの連携とか。
活用自体は進んでいますね。看護業務の負担軽減にもつながってはいます。例えばバイタルサインを自動で入力するとか、これは効果が期待されています。
看護職員の人材確保の課題
ただここにもやっぱり課題があって、維持管理のコストですね。それから職員のITスキル、あと使い方を覚えるための教育時間。この3つが導入の大きな障壁になっているという声が多いです。
なるほど。ツールを入れるだけじゃダメで、それをちゃんと使えて維持していく、その体制作りが追いついていないということかもしれませんね。
まさにそこがポイントだと思います。
もう一つの柱としてタスクシフト、タスク支援ですね。医師から看護師への業務の移管、これはどう進んでいますか。
こちらも進展は見られますね。主には従者採血とか、あと医師が事前に定めた手順書、プロトコールですね。これに基づく薬剤投与、こういうものが中心です。
あと特定行為研修という、より専門的な研修を終えた看護師さんも増えていて、主に病院で活躍されていますね。
興味深いのは、こうした動きが現場をよく知っている看護管理者、その方々が主導して進めているケースが多いという点ですね。
へえ、現場主導でそれは良い流れかもしれませんね。病院だけじゃなくて、地域の介護施設への専門的なアドバイスとか、そういう活動も広がっているんですか。
そうなんです。活動の幅も広がっていて、地域全体で医療資源をうまく活用しようという流れにもつながっていると思います。
なるほど。今回の資料をこうして見てくると、医療現場が直面しているその人手不足、待遇の改善、仕事の効率化というもうまったなしの課題、それに対して本当に様々な取り組みが進められているんだなというのが見えてきました。
医師の時間外労働規制とか看護職員の配置基準とか、そういう制約の中で医療の質をどう維持してさらに向上させていくか、まさに模索が続いているという感じですね。
本当にそうですね。医師事務作業補助者や看護補助者をどう確保してどう定着してもらうか、それから夜勤手当の見直し、ICTをどう効果的に使ってそれを支える体制をどう作るか、あと現場が主体となったタスクシフトシェア、これらが今後のその医療提供体制の持続可能性を左右するまあ鍵になることは間違いないでしょうね。
最後にですね、ちょっと皆さんに一つ考えてみてほしいことがあるんです。ICTの導入とか維持にはやっぱりコストがかかるという話がありましたよね。体力のある大きな病院は導入できても、中小規模の病院だとなかなか難しいかもしれない。
このいわばICT格差みたいなものが、将来私たちが住む地域によって受けられる医療の質に差を生んでしまう、そういう可能性はないでしょうか。この点について少し皆さんも思いをめぐらせてみてください。
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