1. 岡大徳のポッドキャスト
  2. 病棟における多職種連携の新展..
2025-09-19 07:35

病棟における多職種連携の新展開:リハビリ・栄養・口腔ケアの包括的アプローチがもたらす成果

spotify apple_podcasts youtube

令和6年度診療報酬改定で創設されたリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、急性期医療における多職種連携の新たなモデルを示しています。令和7年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会では、この加算の効果検証と病棟における多職種ケアの実態が明らかになりました。本稿では、加算導入から1年余りが経過した現在の成果と課題について、最新のデータに基づき解説します。

調査結果から、連携体制加算を算定した患者群では、ADL(日常生活動作)が大きく改善した割合が高く、早期リハビリテーション介入率が約9割に達することが判明しました。休日のリハビリテーション提供量は平日の86.5%を維持し、継続的なケアが実現しています。さらに、管理栄養士や臨床検査技師の病棟配置により、栄養管理の充実と検査業務の効率化が進んでいます。一方で、退院時のADL低下率や歯科受診率の改善、専門職間の業務分担の最適化など、今後検討すべき課題も浮き彫りになりました。

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の導入効果

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、急性期病棟において多職種が連携し、患者のADL維持・向上を図る取り組みを評価するものです。加算の算定要件として、専従の理学療法士等2名以上、専任の管理栄養士1名以上の配置が必要となります。また、入棟後48時間以内の評価・計画作成、土日祝日のリハビリテーション提供量が平日の8割以上、ADL低下患者割合3%未満など、厳格な施設基準が設定されています。

DPCデータの分析結果によると、加算算定ありの患者では、退院時にADLが10以上改善した割合が25.7%と、算定なしの14.1%を大きく上回りました。特筆すべきは、入院3日目までのリハビリテーション開始率が89.2%に達し、算定なしの68.5%と比較して早期介入が顕著に進んでいる点です。患者1人当たりの1日平均リハビリテーション単位数も、算定ありで3.1単位と、算定なしの2.3単位を上回る結果となりました。

加算算定施設における休日のリハビリテーション提供体制も充実しており、土曜日94.1%、日曜日87.8%、祝日65.1%と高い水準を維持しています。これは、算定なし施設の休日全体34.1%と比較して、約2.5倍の提供量となっており、切れ目ないリハビリテーションの実施が患者のADL改善に寄与していることが示唆されます。

地域包括医療病棟における多職種連携の実態

令和6年度改定で新設された地域包括医療病棟入院料では、リハビリテーション・栄養・口腔連携加算が設定されています。この病棟では、救急患者の受け入れとともに、早期からのリハビリテーション、栄養管理、口腔管理を包括的に提供することが求められています。

地域包括医療病棟における連携加算算定患者のADL改善率は42.9%と高く、入院3日目までのリハビリテーション開始率は92.9%に達しています。急性期一般病棟と比較しても、リハビリテーション介入の早期化と高頻度化が実現されています。休日のリハビリテーション提供量も平日の86.0%を維持し、継続的なケアが担保されています。

療法士の病棟業務への関与状況を見ると、生活機能の回復に向けた支援において、食事で46.0%、排泄で71.9%、離床の促しで76.6%の病棟で療法士が関与しています。これは地域包括ケア病棟と比較して高い割合となっており、専門職の積極的な関与が患者の生活機能回復に寄与していることが分かります。

管理栄養士と臨床検査技師の病棟配置がもたらす変化

管理栄養士の病棟配置は、栄養管理の質向上に大きく貢献しています。就業時間の5割以上を病棟で従事している管理栄養士は全体の38.1%にとどまりますが、病棟配置された管理栄養士は、GLIM基準による栄養評価、ミールラウンド、食事変更の調整など、専門性の高い業務を展開しています。

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算算定患者では、低栄養(GLIM基準)の入力割合が74.4%と、算定なしの58.8%を上回り、栄養状態の把握が進んでいます。また、入院栄養食事指導料の算定率も25.1%と、算定なしの16.7%より高く、栄養介入の充実が図られています。入院時に低栄養であった患者に対しても、積極的な栄養管理が実施されています。

臨床検査技師の病棟配置は、約3割の病棟で検査の準備や実施への関与が見られます。早朝採血、心電図測定、POCT検査の実施、検査結果の確認と医師への報告など、病棟に常駐することで迅速な検査実施と結果報告が可能となり、医師・看護師の負担軽減に寄与しています。検体再採取率の減少やインシデントの減少など、医療安全面での効果も報告されています。

看護業務のタスクシェアと専門職の役割分担

病棟における看護業務のタイムスタディ調査では、「診察・治療」と「患者のケア」に費やす時間が全体の約半分を占めることが明らかになりました。これらの業務において、多職種によるタスクシェアが進展しています。

診察・治療に係る業務では、栄養状態のスクリーニングは管理栄養士が87.0%の病棟で主として実施し、ADLのスクリーニングは理学療法士が23.1%の病棟で主として担当しています。薬剤の準備・セットは薬剤師が31.4%の病棟で主として実施しており、専門性に基づいた業務分担が進んでいます。一方、薬剤の投与やバイタルサイン測定、吸引などの直接的な医療行為は、依然として看護師が主として実施している状況です。

患者のケアに係る業務では、食事の配膳、排泄介助、見守り・付き添い、体位交換などで看護補助者が10~20%程度主として実施しています。環境整備については看護補助者が47.3%の病棟で主として担当しており、看護師の負担軽減に寄与しています。生活機能の回復支援では、排泄で理学療法士が3.9%、食事で作業療法士が2.3%、離床で理学療法士が15.2%の病棟で主として実施しており、専門性を活かした介入が行われています。

まとめ

病棟における多職種連携は、診療報酬改定を契機に大きく前進しました。リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の創設により、早期介入と継続的なケアが実現し、患者のADL改善に寄与しています。管理栄養士や臨床検査技師の病棟配置も進み、専門性を活かした質の高いケアが提供されています。今後は、退院時ADL低下率のさらなる改善、口腔管理と歯科受診の連携強化、専門職間の業務分担の最適化などの課題に取り組み、より効果的な多職種連携モデルの構築が期待されます。



Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

サマリー

日本の旧世紀病棟における多職種連携は、リハビリテーション、栄養、口腔ケアを通じて患者の回復を促進しています。新たに導入された加算制度によって、早期介入の重要性やチーム医療の進化が明らかになります。

多職種連携の導入
さて今回は、日本の旧世紀病棟で進んでいる多職種連携、これに注目していきたいと思います。
令和6年度の診療報酬改定で、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算というのが導入されました。
えー、ありましたね。
この新しい仕組みがですね、患者さんの回復にどうつながっているのか、共有いただいた最新の調査データがありますので、
これを基にその革新を探っていきましょう。
具体的にどんな成果が出て何が見えてきたのか、一緒に解き明かしていければと。
この加算制度、単に点数をつけるというだけじゃないんですよね。
リハビリ・栄養管理、それから航空ケア、この3つの柱を連携させることで、退院後の生活まで見据えた、より質の高いケアを目指すと。
つまり、患者さんのADL、日常生活動作の維持・向上ですね。
これを本気で目指す体制への転換を後押ししているわけです。
ADLの維持・向上ですか。
ええ。データを見ると、その変化が具体的にこう表れていて、非常に興味深いですよ。
では早速そのデータを。
まず驚くのは、この加算を算定している患者さんの方がですね、退院時のADL、これが大きく改善した割合が明らかに高い。
はいはい。
データで見ると、算定ありで25.7%。
25.7。
で、算定なしだと14.1%なんですよ。
ああ、それはかなり違いますね。
これはもう明確な差ですよね。
ええ。で、この差を生み出す鍵は、やはり早期介入にあるようです。
早期介入。
入院してからわずか3日以内にリハビリを開始できた患者さんの割合、これが算定ありだと、なんと89.2%に上るんです。
89.2、ほとんどですね。
そうなんです。算定なしの68.5%と比べると、その差は歴然としてますよね。
うーん。
まあゴールデンタイムともいえる期間をいかに逃さずに介入できるか、これが回復の軌道を大きく左右するということかもしれません。
なるほど。最初の72時間、ここが勝負という感じですかね。
ええ。
しかもその介入を継続するっていう意思も見えますよね。
休日、つまり土日祝日のリハビリ提供量がですね、算定ありの施設だと平日の8割以上を維持していると。
はい。
対して、算定なしだと全体の3割程度にとどまると。
うーん、そこも大きい。
この切れ目の無さ、これもADL改善を後押ししている要因と言えそうですね。
まさにその通りです。でですね、この連携の効果っていうのは、新しくできた地域包括医療病棟、ここでも確認されてるんです。
あ、地域包括医療病棟でも。
ええ。こたらだとADL改善率が42.9%。
おお、旧世紀一般より高い。
そうなんです。そして3日以内のリハビリ開始率も92.9。
92.9、すごいですね。これはなぜ旧世紀一般病棟より高いんでしょう。
地域包括医療病棟っていうのは、もともとその救急患者さんを受け入れつつも、早期から在宅復帰に向けた包括的なケアを提供するという役割なんですね。
はいはい。
まさにこの連携が不可欠な役割を担っていると。
だからこの加算でお勧められる連携体制が、より効果的に機能しやすい土壌があると言えるんじゃないでしょうか。
なるほど、そういう背景が。
今後の課題
ええ、療法資産が例えば食事46%、あと排泄約72%、離床約77%といったその生活機能そのものに積極的に関与している割合が高いっていうのもその表れだと思いますね。
より生活場面に直接リハビリ専門職が関わっていく。
そういうことです。より実践的な回復支援が進んでいるっていうわけですね。
うーん、なるほど。そして連携はリハビリだけじゃない。栄養管理の面でも変化が見られるんですね。
ええ、そうなんです。
管理栄養資産が平等に配置されることで、低栄養リスクの評価、例えばグリム基準での評価実施率が算定ありで74.4%。
74.4。
算定なしだと58.8%。そして栄養指導の実施率も上がっていると。
ええ、さらにちょっと興味深いのが臨床検査技師さんの病棟配置です。
検査技師さんが病棟に?
はい、約3割の病棟で採血とか心電図、あとPOCTという簡易検査ですね。これを病棟内で完結させてるんです。
これによって検査が迅速化するのはもちろん医師や看護師さんの負担軽減、さらには検体の取り違いリスクの低減といった医療安全にも寄与しているっていう報告もあるんですよ。
それは大きいですね。まさに現場での専門職活用が進んでいると。
そういうことですね。
こうしていろいろな専門職が病棟という現場で力を発揮し始めると、必然的に看護師さんの負担軽減にもつなげるタスクシェア、これも進みますよね。
ええ。
栄養評価は管理栄養士さん、薬剤の準備は薬剤師さん、ADL評価は療法士さん、環境整備なんかは看護補助者の方へといった具合に。
はい。専門性を生かした役割分担、これは着実に進んでいますね。ただ、すべてが順調というわけでもなくて。
あ、課題も。
ええ。課題も見えています。例えば、退院時にADLが低下してしまう患者さんをいかに減らしていくか。
うーん、それは重要ですね。
この連携体制加算の施設基準には、ADL低下率3%未満っていう結構厳しい目標があるんですが、これをクリアしてさらに改善していく必要があると。
なるほど。
あとは、航空ケアと実際の歯科受診との連携強化、それから専門職間のさらなる業務分担の最適化、こういったあたりが今後のテーマとして挙げられていますね。
なるほど。今回は日本の病院における多職種連携、特にこのリハビリテーション・栄養・航空連携体制加算という新しい試みがもたらした成果と、次なる課題というのを見てきました。
早期からの積極的なリハビリ、栄養管理の強化、そして専門職の病棟配置による効率化とタスクシェア、患者さんの回復を支えるチーム医療が確実に進化している、そんな様子がデータから読み取れましたね。
まさにそうですね。個々の専門職が持つ知識とか技術、これを結集して、より良いアウトカムを目指そうという動きが具体的な形になってきているなと感じます。
ただ、その連携の仕組み自体はできたわけですが、これを本当に有機的なものにして効果を最大化していくためには、やはり現場での継続的な工夫とか改善が不可欠でしょうね。
確かに、仕組みだけでは動きませんからね。さて、今回の内容を踏まえて最後に一つ皆さんに考えてみてほしいことがあるんです。
これらの専門職の連携がもっともっと深く、そしてシームレスになった未来の病棟。そこでは患者さん一人一人に対してどんな究極の個別化ケアプラン、これが実現可能になっているでしょうか。
未来の病棟ですか?
入院中だけじゃなくて、退院後の生活まで見据えた支援がどうデザインされているのか、ちょっと想像を膨らませてみるのも面白いかもしれませんね。
07:35

コメント

スクロール