今後、在宅で療養する患者の増加が見込まれています。こうした状況を踏まえ、薬局における在宅医療提供体制の整備が急務となっています。本稿では、令和8年度診療報酬改定で行われた在宅薬学総合体制加算の見直し内容を解説します。
今回の改定で在宅薬学総合体制加算は3つの観点から見直されました。1つ目は、加算1の評価が15点から30点に倍増した点です。2つ目は、加算2の施設基準が大幅に刷新された点です。3つ目は、加算2の評価が単一建物診療患者の人数で2区分に分かれた点です。
見直しの背景|薬局の在宅医療体制整備の必要性
今回の見直しは、薬局の在宅医療提供体制の実態と課題を踏まえた改定です。前回改定で在宅薬学総合体制加算が新設された結果、届出薬局は増加しました。しかし、届出薬局の多くで麻薬備蓄や調剤実績が乏しい実態が明らかになりました。
薬局の在宅医療への参画は、患者増加に対応するために不可欠です。中医協では、在宅患者の増加に備えた薬局薬剤師の他職種連携と地域単位での体制整備が議論されました。あわせて、評価基準を整理してメリハリをつける必要性が指摘されました。
実績が乏しい届出薬局の課題は、無菌調剤設備の使用状況からも確認できます。簡易型クリーンベンチを設置している薬局の84.6%で、設備の使用実績がありませんでした。この実態が、施設基準を「設備保有」から「業務実績」に切り替える見直しの根拠となっています。
在宅薬学総合体制加算1の評価倍増と要件強化
在宅薬学総合体制加算1は、評価と算定回数要件の両面で見直されました。評価は15点から30点に倍増しました。算定回数要件は直近1年間で24回以上から48回以上に強化されました。
評価の引き上げは、薬局の在宅医療への取り組みを手厚く評価する趣旨です。現行の15点から改定後の30点へと、評価が倍増しました。この変更は、在宅療養患者の増加に対応する薬局の体制整備を後押しします。
算定回数要件の強化は、より積極的な在宅業務を求める内容です。直近1年間の在宅患者訪問薬剤管理指導料等の合計回数が、現行の24回以上から48回以上に倍増しました。算定対象には、在宅協力薬局として連携した回数や同等の業務を行った回数も含まれます。ただし、同一グループ薬局に対して業務を実施した場合は除かれます。なお、情報通信機器を用いた場合の算定回数も対象外です。
在宅薬学総合体制加算2の施設基準刷新
在宅薬学総合体制加算2の施設基準は、4つの観点で刷新されました。1つ目は、無菌製剤処理設備に関する基準の廃止です。2つ目は、訪問実績と高度な薬学的管理の実績基準の新設です。3つ目は、常勤換算で3名以上の薬剤師配置基準への強化です。4つ目は、かかりつけ薬剤師に係る実績要件の廃止です。
無菌製剤処理設備の保有を必須とする基準は、廃止されました。現行では、無菌室やクリーンベンチ等の設備保有が要件でした。改定後は、設備保有ではなく、業務実績で評価する方式に変わりました。この見直しは、設備を保有しながら使用実績がない薬局が多い実態を踏まえたものです。
実績基準として、訪問実績と高度な薬学的管理の実績が新設されました。訪問実績は、単一建物居住者1人の場合に該当する訪問件数で評価されます。具体的には、在宅患者訪問薬剤管理指導料の1、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、ならびに単一建物居住者1人の場合の居宅療養管理指導費および介護予防居宅療養管理指導費の合計回数が対象です。この合計が、直近1年間で240回以上かつ全体(同種の算定回数の総合計)の2割超、または480回以上かつ全体の1割超のいずれかを満たす必要があります。なお、緊急訪問薬剤管理指導料および緊急時等共同指導料については、単一建物の人数を問わず全件が対象となります。
高度な薬学的管理の実績は、3つの選択肢から1つを満たす必要があります。具体的には、麻薬管理指導加算等が10回以上、無菌製剤処理加算が1回以上、または乳幼児加算と小児特定加算の合計が6回以上のいずれかです。これら3つは選択制であり、いずれか1つを満たせば要件をクリアできます。
薬剤師の配置基準は、常勤換算で3名以上に強化されました。現行は人数のみを定めた「2名以上」の基準でした。改定後は常勤換算3名以上が必要となり、原則として開局時間中は2名以上の常駐が求められます。あわせて、調剤応需および在宅患者の急変等への対応体制が要件となります。
かかりつけ薬剤師に係る実績要件は、廃止されました。現行では、かかりつけ薬剤師指導料およびかかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数の合計が直近1年間で24回以上必要でした。改定後は、この実績要件が削除され、施設基準の重点が在宅業務の実績に集約されました。
在宅薬学総合体制加算2の評価区分化
在宅薬学総合体制加算2の評価は、単一建物診療患者の人数に応じて2区分に分かれました。単一建物診療患者または単一建物居住者が1人の場合は100点になりました。それ以外の場合は50点になりました。
単一建物診療患者1人の場合の評価は、100点に大幅に引き上げられました。現行では区分なく一律50点でした。改定後は単独訪問の場合に2倍の評価となります。この見直しは、個別訪問が必要な患者への質の高い在宅薬学管理を評価する趣旨です。
単一建物診療患者が複数の場合の評価は、現行と同じく50点に据え置かれました。複数患者への効率的な訪問業務には、従来の評価が維持されます。区分化により、訪問形態に応じた評価のメリハリが付きました。
まとめ|在宅薬学総合体制加算の3つの見直しポイント
今回の改定で在宅薬学総合体制加算は、加算1の評価倍増、加算2の施設基準刷新、加算2の評価区分化の3つの観点で見直されました。加算1は、評価が15点から30点に倍増し、算定回数要件が48回以上に強化されました。加算2は、無菌製剤処理設備の基準とかかりつけ薬剤師の実績要件が廃止され、訪問実績、高度な薬学的管理の実績、および常勤換算3名以上の薬剤師配置の新基準が追加されました。さらに、加算2の評価は、単一建物診療患者1人の場合は100点、それ以外は50点に区分されました。これらの見直しは、在宅で療養する患者の増加に対応する薬局の在宅医療提供体制の整備を促す改定です。
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サマリー
2026年の診療報酬改定では、薬局の在宅医療における評価基準が設備保有から実際の業務実績へと大きく転換しました。かつて8割以上の薬局で使われなかった無菌調剤設備のような「形だけの体制」ではなく、加算1の報酬倍増と実績要件強化、加算2における常勤薬剤師の増員や麻薬管理・小児対応などの高度な薬学的管理、そして個別訪問の手間を評価する区分化が導入されました。これにより、薬局は地域医療を最前線で支える「動ける拠点」としての真価が問われる時代を迎えています。
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