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2025-12-09 05:18

【令和8年度改定】薬局の無菌製剤処理加算とポイント付与規制の2つの論点を解説

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中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた調剤に関する議論が行われました。今回の資料では、薬剤調製料の無菌製剤処理加算と、患者誘引につながるポイント付与・配送料無料の問題が取り上げられています。

この資料では、2つの論点が示されました。第一の論点は、無菌製剤処理加算の対象年齢を6歳未満から15歳未満へ拡大するかどうかです。第二の論点は、ポイント付与や配送料無料の広告による患者誘引への対策をどう講じるかです。いずれも令和8年度改定に向けて、今後の議論が注目されます。

無菌製剤処理加算の対象年齢拡大が論点に

無菌製剤処理加算について、現行では6歳未満の乳幼児のみが加点対象ですが、6歳以上15歳未満の小児への拡大が検討されています。この背景には、小児に対する注射薬の調製において、年齢や体重に応じた投与量調整が必要となる実態があります。

現行の無菌製剤処理加算は、乳幼児への無菌調製を評価する仕組みです。乳幼児では、乳幼児用の製剤がないことや体内動態が成人と異なることから、個々の患者に応じた無菌調製が必要となります。この調製を評価するため、通常は中心静脈栄養法用輸液で1日につき69点、抗悪性腫瘍剤で79点、麻薬で69点が加算されます。6歳未満の乳幼児の場合は、それぞれ137点、147点、137点と約2倍の点数が設定されています。

しかし、医薬品の添付文書では「小児」は7歳以上15歳未満の児を指すとされています。15歳未満の患者に対する注射薬の調製においても、体重ごとに投与量調整が必要となることが多いのが実態です。たとえば、静脈経腸栄養ガイドラインによると、7〜12歳では60〜75kcal/kg/day、12〜15歳では40〜60kcal/kg/dayと、成人とは異なるエネルギー投与量が必要となります。

こうした状況を踏まえ、中医協では「6歳以上の小児の薬剤調製の実情に鑑み、無菌製剤処理加算に加点する患者対象年齢の範囲について、どのように考えるか」という論点が示されました。

ポイント付与と配送料無料による患者誘引が問題視

患者誘引につながるポイント付与や配送料無料の問題について、中医協で対策が議論されています。調剤報酬は中医協での議論を経て公定されており、ポイントのような付加価値を付与することは医療保険制度上ふさわしくないとされています。

ポイント付与については、平成29年の事務連絡で指導対象となる行為が明確化されています。指導対象となるのは、ポイントを用いて調剤一部負担金を減額すること、調剤一部負担金の1%を超えてポイントを付与すること、ポイント付与について建物外の看板やテレビCMなどで大々的に宣伝することの3つです。

また、処方箋ネット受付を利用した「トンネルを通じた経済的利益の提供」も問題視されています。具体的には、処方箋受付サイトを通じて調剤を求めた患者にアンケート回答後の謝礼としてギフトカードを提供するケースです。アンケート謝礼という名目であっても、薬局が支払う手数料が原資となっている以上、患者への経済上の利益の提供にあたるおそれがあります。

配送料無料の問題も同様の観点から指摘されています。令和7年度の薬局業務実態調査によると、1,133薬局のうち58薬局が患者希望により配送料無料で薬剤を配送しています。このうち22.4%がHP等で配送料無料であることを周知していました。HP等で宣伝した上で患者希望により薬剤を配送した場合、患者への経済上の利益の提供にあたるおそれがあります。

薬担規則に基づく規制の枠組み

これらの患者誘引行為は、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)で禁止されています。薬担規則第二条の三の二では、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならないと定められています。

中医協委員からは、郵送料無料などの取扱いについて令和8年度改定の議論で取り上げるよう要望が出されました。患者が保険薬局を選択する際には、薬局が親切丁寧に調剤を担当し、薬剤師が調剤・薬学的管理・服薬指導の質を高めることが本旨であるべきとの考えが示されています。

一方で、欠品等の薬局都合による配送については患者誘引に該当しないと考えられています。調査では、薬局都合で配送料無料としている薬局が720件あり、これはHP等での宣伝を伴っていないため問題とはされていません。

まとめ

令和8年度診療報酬改定に向けて、無菌製剤処理加算の対象年齢拡大と患者誘引対策の2つが論点として示されました。無菌製剤処理加算については、15歳未満の小児への投与量調整の実態を踏まえた対象年齢の見直しが検討されます。患者誘引対策については、ポイント付与や配送料無料の広告に対する規制強化の方向性が議論されています。薬局経営者は、今後の中医協での議論の動向に注視する必要があります。



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サマリー

2026年度の調剤報酬改定に関する議論では、薬剤師の専門的なスキルの評価と薬局のポイントサービスの規制強化が焦点となっています。この結果、患者に対する真摯な医療提供が強調されることが期待されます。

薬剤師の専門性の評価
さて、今回はですね、2026年度の調剤報酬改定、これに抜けた議論を深掘りしていこうと思います。
テーマは、薬局のあるべき姿。手元にある中京京中央社会保健医療協議会の資料を見ると、今まさに話し合われている、
なんというか飴と鞭のような、非常に面白い2つの論点があるんですよね。 面白い切り口ですね。
1つは、薬剤師の専門的な仕事をきちんと評価していきましょうという飴の話。
もう1つが、ポイントサービスみたいなちょっと過剰な競争にはブレーキをかけましょうという鞭の話。すごく対照的です。
まさに。では早速、その飴の話から行きましょうか。
薬局で注射薬なんかを無菌状態で調整した時の報酬、無菌製剤処理加算についてですね。
今のルールだと、特に手間がかかる6歳未満の子どもには報酬が約2倍になる特例がありますよね。
そうですそうです。ただ今回の議論は、その対象年齢を15歳未満まで広げるべきだっていう内容なんですよ。
15歳未満まで。
というのも、そもそも医療の世界で、小児というと一般的に15歳未満を指すんですね。
なるほど。
それに、例えば7歳の子でも10歳の子でも、体重に合わせてミリグラム単位で投与量を調整するっていうその精密な作業は変わらず大変なんです。
あーなるほど。つまりこれまでは例えば6歳と7歳で薬の準備にかかる手間はほとんど同じくらい大変なのに、
誕生日を1日過ぎただけで薬局がもらえる報酬がガクッと下がっていたみたいなことがあったわけですね。
おっしゃる通りです。その見過ごされてきた手間をちゃんと正当に評価しましょうと。
すごく現場の実態に寄り添った動きですよね。
実際に資料のガイドラインを見ても、7歳から12歳、12歳から15歳で必要なエネルギー量が全然違ってて、
成人と全く違う本当に精密な計算が求められる。この手間を評価すべきだというのが議論の核心なんです。
なるほど。専門的な手間をきちんと評価すべきだと。
ポイントサービスの規制強化
一方で、その専門性とは別のところで患者さんを集めようとする動きもあって、
そちらには今度は規制の鞭が入りそうだということなんですね。
それが2つ目の論点ですね。薬局でのポイント付与とか処方薬の無料配送の問題です。
でも僕らからするとポイントとか無料配送って嬉しいじゃないですか。何がそんなに問題になるんでしょう。
そこなんですよね。
やっぱり医療は公的なお金で成り立ってるから、一企業が自由に値引き競争をする市場とは違うみたいな話ですか。
まさにそこなんです。
懲罪報酬は高低価格なので、薬局が独自に経済的な利益を上乗せして患者さんを呼び込むというのは、
これは薬単規則というルールで原則禁止されてるんです。
ルールで。
はい。医療保険制度の公平性を損なう恐れがあるというのが理由ですね。
なるほど。具体的にどこからがやりすぎだと判断されるんでしょうか。
資料では分かりやすく3つのケースが示されてますね。
1つはポイントで自己負担額を直接値引くこと。
2つ目が自己負担額の1%を超えるポイントを付与すること。
そして3つ目がテレビCMなんかで大々的に宣伝することです。
最近は処方箋のネット受付サイトを使ったちょっと分かりにくい手口も指摘されてますよね。
アンケートに答えたらギフト券がもらえるみたいな。
ええ。たとえ社名という名前であっても、そのお金の出どころが薬局からサイト運営会社へ支払う手数料であれば、
実質的には患者さんへの利益提供と見なされかねないと。
なるほど。
配送無料も同じで、ウェブサイトなんかで大々的に宣伝している場合は患者遊園に当たる恐れがあります。
ただ例外もあるんですよね。
例えば薬の在庫がたまたまなくて後日届けてもらうとか。
はい。そこは重要な点です。
そういう薬局側の都合による配送で、特に宣伝を伴わないもの、これは患者遊園には当たらないと考えられています。
ということは今回の議論をまとめると、まず薬剤師の専門的なスキルを正しく評価する流れ。
ええ。
それとポイントとか利便性だかで薬局が選ばれる状況を是正しようという規制強化。
この2つが大きな柱になっているわけですね。
まさにその2点です。
特に後者のポイント問題は、患者さんがどの薬剤師に相談したいかじゃなくて、
どこが一番お得かで薬局を選んでしまうという本末転倒な状況を避けたいという注意標の強い意思を感じますよね。
うーん。
こうした規制の議論って、どうしても薬局側がどう行動すべきかっていう話が中心になりがちですけど、
少し視点を変えると、私たち患者側にも問いを投げかけているようにも思いますね。
と言いますと?
はい。薬局が提供するサービスの本質が薬剤師による専門的なケアにあるとするならば、
あなたが薬局を選ぶとき、本当に大切にしている基準って何でしょうか?
そして、今回の議論を知った上で、これから何を基準にかかりつけ薬局を選んでいきたいと考えますか?
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