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2025-09-26 08:41

少子化時代の小児・周産期医療体制の現状と課題:母体・胎児集中治療室の要件見直しと成人移行期医療の展望

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令和7年度第12回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、少子化が進行する中での小児・周産期医療体制の現状と課題が議論されました。出生数が72万人台まで減少し、医療機関の運営が困難になる中、母体・胎児集中治療室(MFICU)の医師配置要件の見直しと小児成人移行期医療の充実が喫緊の課題となっています。本稿では、これらの課題に対する現状分析と今後の方向性について解説します。

本分科会では、3つの重要な論点が示されました。第一に、出生数減少による小児・周産期医療体制への影響です。第二に、MFICUの医師配置要件と実際の運用状況の乖離です。第三に、小児慢性特定疾病患者の成人移行期医療の課題です。これらの課題は相互に関連しており、診療報酬改定を通じた総合的な対応が求められています。

少子化が小児・周産期医療に与える影響

出生数の急速な減少が、小児・周産期医療体制の維持を困難にしています。令和5年の出生数は727,288人で、前年より43,471人減少し、明治32年の人口動態調査開始以来最少となりました。この傾向は今後も継続すると予測され、14歳以下の人口はさらに減少していく見込みです。

出生数減少は、分娩取扱医療機関の減少を招いています。産婦人科を標榜していても実際に分娩を取り扱わない施設の割合は、病院で25%、診療所で65%に達しています。特に診療所における分娩取扱の中止が顕著であり、地域における周産期医療体制の維持が課題となっています。一方で、妊婦の高齢化により、35歳以上の妊婦が30%を占め、合併症妊娠や社会的ハイリスク妊産婦が増加しており、高度な周産期医療の需要は減少していません。

小児入院医療においても、病床稼働率の低下が問題となっています。小児入院医療管理料届出病床当たりの小児入院患者数の割合は約5~6割程度にとどまっています。令和6年度診療報酬改定では、小児入院医療管理料3において一般病棟との一体的運用を可能とする見直しが行われましたが、地域における小児医療体制の維持には継続的な対応が必要です。

母体・胎児集中治療室(MFICU)の運営課題

MFICUの届出治療室数は、令和4年7月から令和6年7月にかけて全国で11治療室減少しました。地域別では東北で4治療室、近畿で3治療室が減少しており、地域偏在が懸念されます。全国周産期医療(MFICU)連絡協議会のアンケート調査によると、届出変更の理由として「医師の配置要件を満たせない」が最も多く挙げられています。

現行の施設基準では、専任の医師が常時MFICU内に勤務することが原則とされています。令和6年度改定で一定の条件下で宿日直を行う医師も認められましたが、依然として人員確保が困難な状況です。実態調査では、MFICU内に常駐していない医師でも、院内にいる医師は概ね10分以内に診察開始可能であることが確認されており、緊急時の対応体制は確保されています。

母体搬送受入件数や多胎妊娠分娩件数が極めて少ない施設も存在しています。母体搬送受入件数が0件の施設が関東信越に、1~9件の施設が関東信越、東海北陸、近畿にそれぞれ存在しており、施設間の機能分化が不十分である可能性が示唆されます。一方で、産科異常出血は分娩前からの予測が困難であり、約20%の症例ではリスク因子が認められないことから、すべての分娩施設において緊急時対応体制の確保が必要です。

小児成人移行期医療の現状と課題

小児慢性特定疾病患者の成人移行期医療は、まだ十分に体制が整備されていません。小児科以外の医療機関で定期的に小児科に受診していた患者を紹介により受け入れた経験は極めて少なく、病院で平均0.6人、診療所で平均2.3人にとどまっています。受け入れ経験がない理由として、「対象となる患者の紹介がなかったため」が85%と最も多く、次いで「医師・スタッフの専門的な知識・経験が不足しているため」が17.7%となっています。

診療報酬上の課題も存在します。小児慢性特定疾病は801疾病が指定されているのに対し、指定難病は348疾病にとどまっており、約半数の疾病が指定難病に該当しません。小児科医療機関で「小児科療養指導料」を算定していた患者が成人移行期となり小児科以外の医療機関に紹介された場合、「難病外来指導管理料」の算定対象でない限り、同様の管理料を算定できない状況です。

成人移行期患者を受け入れた経験のある診療科は、内科が25.9%と最も多く、次いで消化器内科、精神科が各9.3%となっています。移行期医療の推進には、受け入れ側の医療機関における体制整備と、診療報酬上の評価の充実が必要です。

まとめ

少子化時代における小児・周産期医療体制の維持には、医療資源の効率的な配分と診療報酬による適切な評価が不可欠です。MFICUの医師配置要件については、地域の実情に応じた柔軟な運用を可能にしつつ、緊急時対応体制を確保する方向での見直しが求められます。小児成人移行期医療については、指定難病の対象拡大や新たな管理料の創設など、継続的な医療提供を支援する仕組みの構築が必要です。今後の診療報酬改定において、これらの課題に対する具体的な対応策が示されることが期待されます。



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サマリー

日本の少子化が進む中、小児・周産期医療体制の現状や課題が明らかになっています。特に、母体・胎児集中治療室(MFICU)の人員配置要件や高齢出産の増加が、新たな医療ニーズを生じさせています。

少子化の影響と医療の現状
さて、今回はですね、日本の少子化という大きな流れの中で、小児・周産期医療体制が今どうなっているのか、その現状と課題について深く掘り下げていきたいと思います。
特に、母体・胎児集中治療室、いわゆるMFICUですね、ここの人員配置の問題、それから子どもから大人への医療の移行、移行期医療と呼ばれるものに焦点を当てます。
今回の情報源は、令和7年度の国の文化会での議論に関する資料です。
この複雑な問題をですね、あなたがしっかり理解できるよう、大切なポイントを抽出してお届けします。
さて、早速ですが、この問題を解き明かしていきましょうか。
まず、出生数の減少、これが本当に深刻ですね。
そうですね。
令和5年には72万7千人台と、過去最少を更新したと。
これは医療現場、特に産科とか小児科にどう影響しているんでしょうか。
ええ、影響は非常に大きいですね。
まず産科ですが、看板は掲げていても、実際にはお産を扱わないという施設が増えています。
ああ、そうなんですか。
はい、病院でさえ約25%、診療所、クリニックですね、そこに至っては65%がもう分娩を取り扱っていないんです。
65%もですか。
ええ、特にその身近な診療所での分娩中止というのが、地域でのお産を支える体制そのものを揺るがしている状況です。
うーん、一方でその分娩数は減っているのに、高齢出産が増えているというデータもありますよね。
35歳以上の妊婦さんが全体の3割にもなると。
まさにそこがポイントなんです。
これはつまり、全体の数は減っても、より手厚いケア、ハイリスクなケースが増えている。そういうことなんでしょうか。
おっしゃる通りです。妊婦さんの高齢化ですとか、合併症を持つケースが増えていますので、ハイリスク分娩自体は増加傾向にあるんですね。
ですからMFICUのような、より高度な集散期医療へのニーズ、これはむしろ高まっている。そういう状況なんです。
なるほど。ちょっと皮肉な状況ですね。
ええ、そうとも言えますね。
小児科の方ですが、入院病棟もベッドの稼働率が5割から6割程度と、これも低い水準にあると。
ええ、そこも大きな課題ですね。当然ですが、お子さんの数が減れば、入院される患者さんも減りますから。
そうですよね。
例は6年度の診療報酬を書いて、これは医療サービスの肯定価格ですけども、この改定で一部の小児病棟と一般病棟を一体的に運用することが認められました。
少し柔軟にということですね。
そうです。ただ、これも根本的な解決にはまだ遠いかなと。地域の小児医療をどう維持していくか、さらなる工夫が求められていますね。
MFICUの課題とニーズ
限定られた資源の中でということですね。では、高度医療を提供するMFCIU、こちらの状況はどうでしょうか。
この2年間で全国で獣医施設も減って、特に東北や近畿で目立つとのことですが。
はい。MFCIUが減少している最大の理由、これはですね、医師の配置要件を満たせないことなんです。
配置要件ですか。
現在の基準では原則として専任の医師が常にMFCIUの中にいなければならないと。これが非常に厳しい。
常にですか。
そうなんです。令和6年の改定で、多少緩和された部分もあるんですが、それでも多くの施設で、この人員確保は困難な状況は続いています。
ただ、資料を拝見すると、実際にMFCIUの中に常駐していなくても、同じ病院内にいる医師がすぐに駆けつけられる体制、
例えば10分以内に診察を開始できるような、そういう体制が整っている施設も多いという実態もあるようですね。
そうなんです。そこが議論のポイントでして。
ルールと実態に少しギャップがあるみたいな。
形式的な常駐要件だけじゃなくて、実質的な緊急対応能力をどう評価していくのかという点が問われていますね。
ただ一方で、興味深いデータとしてMFCIUでありながら、年間の母体搬送の受け入れがゼロ件という施設も存在するんです。
ゼロ件ですか。それはまた。
これは、もしかするとMFICU間での機能の分化、役割分担が十分に進んでいない可能性を示唆しているのかもしれません。
なるほど。でも、酸化の異常出血の約2割は予測不可能とも聞きますから、どの分娩施設でもある程度の緊急対応はやはり必要ですよね。
まさにその通りです。予測が難しい事態に備えるためには、すべての分娩施設で一定レベルの緊急対応体制は維持しなければならない。
MFICUの役割分担を進めつつ、地域全体の緊急対応能力の床上げ、この両方が必要になってきますね。
移行期医療の現状
はい。そしてもう一つの大きな柱、小児期から成人期への移行期医療、こちらについてはいかがでしょうか。
ここはですね、制度的なサポートがまだ追いついていない分野と言えますね。
小児慢性特定疾病、国が指定する長期療養が必要な子どもの病気ですが、そうした患者さんが成人して小児科以外の診療科に移る際にですね、
受け入れ経験のある病院や診療所というのが非常に少ないという実態があります。
少ないですか。具体的には。
データで見ますと、病院で年間平均0.6人、診療所では平均2.3人しかその紹介で受け入れた経験がないという状況なんです。
年間でたったそれだけ。それはかなり少ないですね。受け入れが進まない理由というのは、やはり専門性の問題が大きいんでしょうか。
えーと、最も多い理由はですね、そもそも対象となる患者さんの紹介がなかった。これは85%と大半です。
あー、紹介がない。
はい。ですが、ついで医師やスタッフの専門知識、経験が不足しているというのも17.7%あります。これも無視できない要因ですね。
なるほど。経験がないから受け入れにくいという面も。
そうですね。加えて、診療報酬の問題も大きいんです。
診療報酬ですか。
はい。小児慢性特定疾病は約800の病気があるんですが、成人になってから対象となるいわゆる指定難病、これは約350疾病なんです。
半分以下ですね。
えー。つまり、単純計算でも半数近くの患者さんは成人期に移行すると、小児科で算定できていた管理量などが算定できなくなる、そういうケースが出てくる可能性があるわけです。
それは患者さんにとっても、受け入れる医療機関にとっても大きなハードルになりそうですね。
ちなみに、受け入れ経験があるのは内科が多いとありましたね。
えー。25.9%ですね。やはり全身を見る内科系の診療科が中心になることが多いようです。
ただ、専門が細分化されている中で、各科がどう連携してスムーズに移行を支えるか、その体制づくりが急務といえます。
うーん、なるほど。まとめますと、少子化というこれも避けられない大きな流れの中で、限られた医療資源をどう賢く配分していくか、
MIFCUのような高度医療へのアクセスを維持しつつ、さらに小児から成人まで、ライフステージが変わっても切れ目なく必要な医療を受けられる体制、これはどう構築していくのか、まさにそこが問われているということですね。
おっしゃる通りだと思います。MIFCUの医師配置基準の、より柔軟な見直しや実態に即した運用ですね。
それから移行期医療に対する診療報酬上での、やはり適切な評価、これらが今後の重要な鍵を握っていると言えるでしょう。
次回の診療報酬改定などで具体的な改善策が打ち出されるのかどうか、注目していく必要がありますね。
そうですね。さて、最後にこれを聞いているあなたにも考えていただきたい問いがあります。
高度な医療へのアクセスを確保するために、病院のような物理的な施設を集約するという考え方だけでなく、
例えば遠隔医療の技術ですとか、地域の医療機関が連携するネットワーク、こういったものはこれからどのような役割を果たし得るでしょうか。
この点をぜひ、あなた自身の考えを深めるきっかけにしてみてください。
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