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2025-10-04 08:40

療養病棟入院基本料の現状分析:医療区分充足率と身体的拘束の実態から見る課題

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令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会では、療養病棟入院基本料等の現状について検討結果がまとまりました。令和6年度末に介護療養病床が廃止されることに伴い、看護配置25対1の経過措置が令和6年5月末で終了したことを受け、慢性期医療提供体制の構築が求められています。新たな地域医療構想では、在宅医療需要への対応を見据え、療養病床だけでなく在宅医療や介護施設等とあわせた体制整備が重要とされました。

分科会では療養病棟における医療区分の充足状況、栄養管理体制、在宅復帰の取組、障害者施設等入院基本料の4つの観点から現状を分析しました。医療区分2・3の施設基準を満たさない医療機関が入院料1で12.8%、入院料2で3.8%存在する一方、DPCデータでは入院料2の95.5%が医療区分2・3を6割以上受け入れていました。身体的拘束は認知症患者で25.7%、認知症のない患者でも13.6%実施され、病棟間でばらつきがありました。経腸栄養管理加算は届出910施設のうち約9割が算定実績なしで、栄養サポート体制の構築が課題です。在宅復帰機能強化加算は709施設が届出し、加算届出施設では在宅退院割合が高い傾向でしたが、加算ありでも死亡退院50%超の病棟が存在しました。

医療区分の充足状況と身体的拘束の実態

療養病棟における医療区分の充足状況は施設間で差がみられ、改善の余地があります。令和6年度診療報酬改定で中心静脈栄養の医療区分が病態と実施期間に応じて見直され、令和6年10月時点で入院料1の12.8%、入院料2の3.8%が施設基準(入院料1で医療区分2・3が8割、入院料2で5割)を満たしていませんでした。一方、DPCデータでは入院料2の95.5%が医療区分2・3を6割以上受け入れていることから、入院料2の施設基準を検討する余地があるとの意見が出されました。

医療区分2・3の疾患・状態、処置等に該当する患者割合は入院料1・2ともに増加しており、特に「医師及び看護師の常時の管理」に該当する患者が増えていました。分科会では、療養病棟の看護職員配置が20対1であることから、医療区分の高い患者を受け入れられる医療体制の検討が必要との意見がありました。また、褥瘡と肺炎を併発するなど同じ処置区分に複数該当する場合の医療資源投入量についても評価すべきとの指摘がありました。

身体的拘束の実施状況は認知症の有無で大きく異なり、課題が浮き彫りになりました。認知症のある患者では25.7%、認知症のない患者では13.6%に身体的拘束が実施されていました。病棟ごとの分析では、挿入デバイスのある認知症患者でも約3割の病棟が身体的拘束を全く実施していない一方、挿入デバイスのない認知症でない患者にも20%以上身体的拘束を実施している病棟が約2割存在しました。分科会では、デバイスや認知症以外の要素で患者像に違いがあるのか、病棟の見守り体制や夜間を含めた人員配置等まで踏まえて現状を評価し、検討を進めるべきとの意見が出されました。

経腸栄養管理と摂食嚥下機能回復の課題

療養病棟における栄養管理の現状は、中心静脈栄養への依存度が高く、経腸栄養への移行が進んでいません。医療行為・処置等の実施状況は令和4年度調査と同様の傾向で、中心静脈栄養が16.3%、胃ろう・腸ろうによる栄養管理が13.0%、経鼻経管栄養が26.7%でした。1か月に中心静脈栄養を実施した人数は11-20人の病棟が最多で半数弱を占め、中心静脈栄養を実施した患者のうち身体的拘束を行った患者の割合が高い病棟もみられました。

摂食嚥下機能回復の取組に係る診療報酬上の評価として複数の加算が設けられていますが、算定実績は低調です。中心静脈栄養を実施している患者の摂食・嚥下機能回復に必要な体制は、入院料1で約3割、入院料2で約4割が整備していました。しかし、体制を整備できていない医療機関のうち9割が今後も整備予定なしと回答し、その理由として内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影の実施体制確保が困難という回答が約8割に達しました。分科会では、日常的な嚥下訓練では反復唾液嚥下テストや水飲みテストのような簡易な評価法でもタイムリーに実施可能であり、全ての施設で検査体制が必要かは検討の余地があるとの意見が出されました。

経腸栄養管理加算の算定率は極めて低く、制度設計の見直しが求められています。令和6年8月から10月の3か月で経腸栄養管理加算を1回以上算定した施設は9.3%にとどまり、届出施設910のうち約9割が算定回数0回でした。届出が困難な理由として「栄養サポートチーム加算を届け出ていないため」が80%以上を占め、研修を受けた医師・看護師等の配置が難しいことが調査で示されました。分科会では、施設基準について検討を深めるべきとの意見がありました。また、認知症がないのに身体的拘束を受けながら中心静脈栄養を続けている患者の栄養管理のあり方は、さらなる議論が必要との指摘もありました。

在宅復帰に向けた取組と評価

療養病棟における在宅復帰の取組は一定の成果を上げていますが、機能の明確化が求められています。在宅への退院を評価する在宅復帰機能強化加算は令和6年8月時点で709施設が届け出ていました。加算では退院後1か月以内に患者が在宅生活を継続していることを、患者居宅への訪問または在宅医療を担当する医療機関等からの情報提供により確認することとされています。

在宅復帰機能強化加算の届出施設では在宅退院の成果が高い傾向がみられました。療養病棟における在宅への退院割合や死亡退院割合は施設ごとにばらつきがありましたが、在宅復帰機能強化加算を届け出ている施設では在宅へ退院する患者の割合が高く、死亡退院の割合は低い傾向でした。ただし、在宅へ退院する患者の割合が比較的高くても加算を届け出ていない施設が存在しました。

在宅復帰機能強化加算の要件については見直しの余地があるとの意見が出されました。加算ありでも死亡退院が50%を超える病棟があることが明らかになり、分科会では医療保険の療養病棟として望ましい姿とは言えず、加算の要件として死亡退院を含めた在宅復帰率を見ることもあり得るとの意見がありました。療養病棟は在宅医療とともに整備され、メリハリある体制となるべきであり、身体的拘束の実施状況も踏まえつつ、経腸栄養に切り替えるための工夫についても検討すべきとの指摘がありました。

障害者施設等入院基本料と特殊疾患病棟入院料の状況

障害者施設等入院基本料における患者要件の充足状況は看護配置により差がみられます。障害者施設等入院基本料の病棟における該当患者7割の基準は、7対1病棟では概ね満たされていましたが、10対1以下の病棟では7割に満たない施設が17.3%ありました。障害者施設等入院基本料・特殊疾患病棟入院料2においては重度の肢体不自由児(者)の該当割合が高く、対象疾患に該当する割合は全体で8割を超えていました。特殊疾患病棟入院料1においては難病患者等の割合が高い傾向でした。

障害者施設等入院基本料の病棟では廃用症候群が主傷病である患者の割合が多いことが明らかになりました。この背景として、レセプトやDPCにおいては元々の患者要件に係る傷病名ではなく、入院契機となった病名が記録されるため、入棟要件のいずれに該当するのかを把握することが難しいという課題があります。

まとめ

療養病棟入院基本料等の現状分析から、医療区分の充足率向上、身体的拘束の最小化、経腸栄養管理体制の整備、在宅復帰機能の強化という4つの課題が明確になりました。慢性期医療提供体制は在宅医療需要の増加に対応するため、限りある資源を活用し、地域の実情に応じた体制構築が求められています。今後の診療報酬改定では、これらの課題に対する施設基準の見直しや評価方法の改善が検討されることが期待されます。



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サマリー

日本の療養病棟の現状分析から、医療区分の充足率、身体的拘束の実態、栄養管理、在宅復帰の支援の4つの重要な課題が明らかになります。これらの問題は、療養病棟の運営や医療資源の分配に深く関わっており、持続可能な慢性期医療体制を築く上での重要な指標となっています。

療養病棟の現状分析
こんにちは。 今回はですね、あなたと一緒に日本の療養病棟が今どうなっているのか、その現状をちょっと深く見ていきたいと思います。
先日、専門家の分科会で検討結果がまとまった資料がありまして、これをもとに、そのリアルな姿と課題を探っていこうと。
令和6年度末、もうすぐですけど、これで介護療養病床が廃止されるという大きな動きもありますし、
慢性期医療の在り方自体が見直される中で、療養病棟にはこれから一体何が求められていくんでしょうか。
そうですね。今回の分析資料では、特に大きなポイントとして、医療区分、それから身体的拘束、そして栄養管理、最後に在宅復帰、この4つの切り口から現状が報告されていますね。
4つのポイントですね。
このデータから、療養病棟が実際にどんな課題を抱えているのか、具体的に読み解いていければと思います。
はい。では早速、まず気になるのが、患者さんの医療的な必要度を示すという医療区分です。
これ、資料によると、入院量1の施設で12.8%、それから入院量2だと3.8%が、基準とされている医療区分2とか3の患者さんの割合、これを満たせていないと。これはどう見たらいいんですかね。
そこがですね、非常に興味深い点でして、一方で実際の診療報酬の請求データ、いわゆるDPCデータですね。
これを見ると、入院量2の施設の実に95.5%が、実際には医療区分2さんの患者さんを、もう6割以上受け入れているという結果が出てるんですよ。
公式な基準達成率と、現場の実感というか実態がかなり違うんですね。
そうなんです。大きなギャップがある。ですからこれは、そもそもその基準自体が今の状況に本当に合っているのかという問題提起にもなりますし、あるいは、例えば看護職員の配置を手厚くする20対1のような体制が、本当に医療ニーズの高い患者さんを適切に捉えているのかと。
なるほど。そういう混同的な問いにもつながります。あと、複数の処置が必要な、より複雑な患者さんの医療資源の投入量、これをどう評価するかっていうのも今後の論点になってくるでしょうね。
身体的拘束の実態
基準と実態のずれですか。わかりました。次にですね、ケアの中でもこれは非常にデリケートな問題だと思うんですが、身体的拘束についてです。
はい。データを見ると、認知症のある患者さんで25.7%、まあ4人に1人くらい。で、認知症がない患者さんでも13.6%に実施されていると。これはやはりちょっと高いなという印象を受けますけども。
その数字自体ももちろん重要なんですが、ここで特に注目していただきたいのは、病棟ごとのばらつきが非常に大きいという点なんです。
ばらつきですか。はい。例えばですね、点滴とかそういう医療的なデバイスを使っていない、しかも認知症もないという患者さんに対してさえ、2割以上の病棟で拘束率が20%を超えているという現実があるんです。
へー、そうなんですか。その一方でですよ。デバイスも使っていて、認知症もある、まあある意味一番ケアが難しいかもしれないと思われるような患者さんに対しても、全く拘束を行っていないという病棟が全体の3割近く存在するんですよ。
全くゼロのところが3割も。ええ。これは単にその患者さんの状態だけで決まっているわけではないということですよね。
ああ、なるほど。各病棟のケアに対する考え方とか、見守りの体制、あるいは人員配置といったそのまま運営縄の要因がかなり大きく影響している可能性がある。これは深く掘り下げて考えるべき非常に重要なポイントだと思います。
ということは、やり方次第では拘束というのはもっと減らせる可能性があるということにもつながりますね。
そう言えるかもしれませんね。なるほど。次に3点目。栄養管理についてですが、点滴、つまり中心静脈栄養に頼っている割合が16.3%と依然として低くはない。
その一方で医療とか警備中部といったいわゆる経調栄養ですね。そちらへの移行を促すためのインセンティブ、経調栄養管理課さんというのがありますけど、この算定が驚くほど低い。
トドペで押している施設の約9割が算定実績ゼロ。これはどういうことなんでしょう。
その体制整備がなかなか進まない理由としてですね、現場からはやはり演劇のつまり飲み込みの機能を評価するための、例えば内視鏡検査VEとか造影検査VFですね。
ああいう検査体制を確保するのが難しいという声が多く上がっているようです。
設備とか専門スタッフの問題ですか。
ただ専門家の中にはもっと快適なスクリーニング評価でも対応可能なんじゃないかという意見も出ています。
あとはそもそも栄養サポートチームNSTの体制を整えるとか、専門的な研修を受けたスタッフを配置するのが難しいといった、まあそういう現実的なハードルもあるようですね。
なるほど。
特に先ほどの高速な話ともつながってきますけど、例えば認知症がないにもかかわらず身体高速を受けながらずっと中心静脈栄養を続けているというようなケース。
これはケアのあり方として倫理的な側面も含めて本当にこれでいいのかと深く考えるべき点だと思います。
うーん、確かに。医療依存度とQOLのバランス、難しい問題ですね。
では最後に採択復帰の支援についてです。
これも在宅復帰機能強化加算というインセンティブがありますが、これの届け出ている施設は、まあ確かに在宅への退院割合は高い傾向にあると。
ええ、それはそうなんですが、しかしその一方でですね、この加算を届け出て強化していると言っている施設であっても、残念ながら死亡して退院される方の割合、いわゆる死亡退院率が50%を超えている病棟も実は少なくないという事実も明らかになったんです。
加算を取っていても半数以上が?
そうなんです。これは果たして療養病棟が目指すべきゴールとして本当に適切なのかと、あるいはその加算の要件自体が実態に即しているのか、少し見直す必要があるんじゃないかという議論にもつながっています。
なるほど、単に加算を取ればいいという話ではないんですね。
ええ、形だけではなくて実質的な、例えば地域の在宅医療との連携をどう強化していくか、そこが問われていると言えそうです。
うーん、今回の分析を通して、医療区分の実態把握の難しさ、それから身体的拘束のばらつきと改善の可能性、なかなか進まない経調栄養への移行、そして在宅復帰支援の実効性という、療養病棟がまさに今直面している具体的な課題がデータに基づいてはっきりと見えてきた感じがしますね。
そうですね。日本全体が超高齢者社会を進んで、在宅での療養を望む声も高まる中で、限られた医療資源をどう最適に配分していくのか、そしてそれぞれの地域の実情に合った持続可能な慢性器医療の体制をどう作っていくのか、今回のデータはそのための非常に重要なヒント、あるいは議論の材料を提供してくれていると思います。
今後の診療報酬改定などで、これらの課題に対して具体的にどういう改善策が打ち出されるのか、ここはしっかり注目していく必要がありますね。
はい。それでは最後に、これを聞いているあなたにもぜひ考えていただきたい問いかけです。
これからの療養病棟というのは、もっと高度な医療ケア、例えば集中治療後のケアとか、そういうものに専門性をたこめていくべきなんでしょうか。
うーん。
それとも、やはり住み慣れた自宅や地域へ戻るための、いわば中間地点とか橋渡しとしての役割、これをもっともっと強化していくべきなんでしょうか。
患者さん一人一人の尊厳を大切にしながら、地域全体の医療・介護システムを持続可能なものにしていくために、あなたは何が最も大切だと考えますか。
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