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2025-09-21 08:00

令和8年度診療報酬改定の行方:入院医療評価の7つの重要論点と医療機関が準備すべき対応策

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令和7年9月11日、中央社会保険医療協議会の入院・外来医療等の調査・評価分科会は、令和8年度診療報酬改定に向けた重要な議論を行いました。本分科会では、診療情報活用の高度化やDPC制度の見直し、地域包括ケア病棟の機能評価など、今後の入院医療の方向性を決定づける7つの重要テーマが検討されました。医療機関は、これらの議論内容を理解し、早期に対応準備を進める必要があります。

今回の検討では、急性期医療の評価指標の再構築、高齢者医療への対応強化、重症度評価の適正化、医療従事者の働き方改革、多職種協働の推進など、医療提供体制の根幹に関わる内容が議論されました。特に注目すべきは、人口減少地域における医療機能の維持、内科系疾患の適切な評価、B項目測定の効率化など、現場の課題に即した具体的な改善策が示された点です。医療機関経営者は、これらの変化を的確に捉え、自院の機能と役割を再定義し、地域医療における位置づけを明確化する戦略的対応が求められます。

急性期医療の新たな評価軸:地域シェア率と人口規模への配慮

診療情報・指標等作業グループは、急性期医療の評価指標として、従来の救急搬送受入件数や全身麻酔手術件数に加え、地域シェア率という新たな視点を提示しました。地域シェア率とは、当該医療機関の年間救急搬送受入件数を所属二次医療圏内の全医療機関の合計で除した割合です。この指標により、20万人未満の二次医療圏において、救急搬送件数は少なくとも地域医療の中核を担う病院の存在が明らかになりました。

総合入院体制加算と急性期充実体制加算の要件統一についても議論が進展しました。両加算の心臓血管外科手術の対象Kコードと実績件数が異なる現状に対し、統一化の必要性が指摘されています。特に、人口が少ない地域での要件緩和が検討され、地域の実情に応じた柔軟な基準設定が求められています。こども病院や離島医療機関など、特殊な医療機関についても、その機能に応じた個別評価の必要性が認識されました。

DPC制度の精緻化:在院日数分布と点数設定方式の見直し

DPC/PDPS等作業グループは、現行制度の課題として、点数設定方式と実際の在院日数分布の乖離を指摘しました。多くの診断群分類において、平均在院日数が中央値を上回る正の歪度を有する分布となっており、現行の平均在院日数を基準とした第Ⅱ日設定の妥当性に疑問が投げかけられています。在院日数の中心傾向の指標として、平均値よりも中央値の採用が適切である可能性が示唆されました。

再転棟ルールについても、7日以内の再入院を一連の入院とみなす現行制度の運用実態が検証されました。持参薬使用による診療報酬上の二重負担問題も指摘され、適切なコスト評価の必要性が確認されています。地域医療係数における医師派遣機能の評価では、特定機能病院の基礎的基準との整合性を図る方向で検討が進められています。

包括期医療の機能分化:地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の役割明確化

地域包括医療病棟は、70歳以上の高齢者が多く、要介護度の高い患者、認知症を有する患者の割合が急性期一般入院料4〜6と比較して高い実態が明らかになりました。入院患者の上位疾患は、その他の感染症(真菌を除く。)、肺炎等、誤嚥性肺炎、体液量減少症、股関節・大腿近位の骨折、腎臓又は尿路の感染症、胸椎・腰椎以下骨折損傷などで、内科系疾患が中心です。内科系疾患では包括内の出来高点数が相対的に高く、請求点数には反映されにくい構造的課題が存在しています。

救急搬送受入件数以外の機能評価指標として、下り搬送等受入件数、直接入院、緊急入院、在宅患者緊急入院診療加算、協力対象施設入所者入院加算、介護保険施設等連携往診加算の算定回数などが検討されました。これらの指標は施設によってばらつきがあり、一定程度の幅で分布していることから、複数の指標を組み合わせた総合的な評価の必要性が示唆されています。予定・緊急入院別、手術の有無別による医療資源投入量の差異も確認され、患者群別の評価体系構築の可能性が示されました。

重症度、医療・看護必要度の適正化:B項目測定の効率化とA・C項目の見直し

B項目の測定については、入院初日にB得点が3点以上である割合が、特定機能病院や急性期一般入院料1で低く、急性期一般入院料2〜6や地域包括医療病棟で高いという二極化が確認されました。B項目は要介護度と相関し、入院や手術から4〜7日後には点数の変化が少なくなる傾向が明らかになりました。この結果を踏まえ、術後7日目以降や内科系症例での入院4日目以降における測定間隔の緩和が提案されています。

内科系症例におけるA・C項目の課題も浮き彫りになりました。内科系症例では外科系疾患と比較してA・C項目が一定点数以上となる割合が低く、重症度、医療・看護必要度がつきにくい実態があります。特に感染症患者では、抗菌薬がA項目で評価されないため、救急搬送や緊急入院の割合が高いにもかかわらず適切な評価がされていません。内科学会からの提案を踏まえ、免疫抑制剤の増点や緊急入院の評価強化などが検討されています。

働き方・タスクシフト/シェア:医療従事者の負担軽減に向けた方向性

働き方改革とタスクシフト/シェアについては、本分科会の議題として取り上げられ、医療従事者の負担軽減に向けた検討が行われました。医師の時間外労働規制の本格施行を控え、各医療機関では業務の効率化と役割分担の最適化が急務となっています。特定行為研修を修了した看護師の活用、薬剤師の病棟業務の拡充、リハビリテーション専門職の活動範囲の拡大など、様々な職種へのタスクシフト/シェアの推進が、今後の医療提供体制の持続可能性を確保する上で重要な課題として認識されています。

分科会では、タスクシフト/シェアを単なる業務移管ではなく、各職種の専門性を最大限に活かした協働体制の構築として捉える必要性が示唆されました。これにより、医師の負担軽減だけでなく、医療の質の向上と患者満足度の向上を同時に実現することが期待されています。各医療機関においては、自院の状況に応じた具体的な実施計画の策定と、段階的な導入が求められています。

病棟における多職種でのケア:ADL評価指標の統一化に向けた議論

病棟における多職種でのケアについては、患者の状態を的確に把握し、適切なケアを提供するための共通評価指標の必要性が議論されました。現在、ADL評価にはB項目、Barthel Index、日常生活機能評価、FIMなど複数の指標が混在しており、職種によって評価結果が異なることもあるため、多職種協働における共通認識の評価として、患者ケアや退院支援に役立つADL指標を整備すべきとの意見が出されました。

B項目については、「重症度、医療・看護必要度を把握し、適正な職員の配置数の実現を目指し、看護の必要性及び看護の量(療養上の世話)を測る指標」として施設基準通知に明記されており、人員配置、入退院支援、転倒・転落判断等の病棟マネジメント指標としての活用事例が紹介されました。今後、統一的な評価指標の導入により、看護師、リハビリテーション職、介護職等が共通認識を持って患者ケアにあたることが可能となることが期待されています。

大学病院における逆紹介割合の実態調査:地域医療連携の現状把握

全国医学部長病院長会議による調査では、82大学病院本院を対象に令和7年6月診療実績における逆紹介割合の実態調査が実施されました。78病院から回答を得て(回収率95.1%)、大学病院における逆紹介の現状が把握されました。逆紹介率の向上は、大学病院が高度医療機関としての機能を適切に発揮し、地域医療機関との役割分担を推進する上で重要な指標となっています。

今回の調査結果を踏まえ、各大学病院では地域医療機関との連携強化に向けた取り組みの必要性が確認されました。逆紹介を促進するための体制整備として、地域連携室の機能強化、連携医療機関との定期的な情報交換、逆紹介後のフォローアップ体制の構築などが今後さらに重要となることが示唆されています。地域医療支援病院としての機能評価においても、逆紹介率は重要な評価指標として位置づけられる見込みです。

まとめ:令和8年度改定への戦略的対応と準備の必要性

令和8年度診療報酬改定に向けた今回の議論は、入院医療提供体制の大きな転換点を示しています。急性期医療の地域シェア率導入、DPC制度の精緻化、包括期医療の機能明確化、重症度評価の適正化、働き方改革とタスクシフト/シェアの推進、病棟における多職種協働のためのADL評価指標の統一化、逆紹介による地域連携の強化という7つの重要論点は、いずれも医療機関経営に直結する内容です。医療機関は、これらの変化を的確に捉え、自院の強みを活かした機能選択と、地域における役割の明確化を進める必要があります。特に、人口減少地域における医療機能の維持、高齢者医療への対応強化、医療従事者の確保と育成、多職種協働による質の高い医療提供は、持続可能な医療提供体制構築の鍵となるでしょう。



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サマリー

令和8年度の診療報酬改定に向けて、入院医療の評価に関する重要な7つの論点が議論されている。特に地域シェア率の重視やDPC制度の見直しが、新たな医療提供体制の構築に貢献することが期待されている。

医療評価の重要性
こんにちは。今日はですね、あなたと一緒に、これからの日本の医療にとって、非常に重要な資料を深く見ていきたいと思います。
令和7年の9月11日に開かれた中医協中央社会保険医療協議会の文化会ですね。そこで議論された内容です。
はい。中医協診療報酬、医療サービスの公定価格を決める国の重要な会議体ですね。
そうですね。で、今回は令和8年度の新業報酬を書いて、これに向けた入院医療の評価について、えーと、7つの大きな論点が話し合われたと。
これ、病院の経営とか、あるいは地域での役割にかなり直接関わってくる話ですよね。
えー、そうですね。
この資料の中から特に大事なポイントを抜き出して、それが何を意味しているのか、一緒に探っていきましょうか。
はい、ぜひ。
まず最初に注目したいのが、旧正規医療の評価なんですけど、これが変わるかもしれないと。
特に人口20万人未満の地域で、地域シェア率っていう何か新しい考え方が出てきてるみたいですが、これは具体的にはどういう?
あー、はい。これはですね、単にその病院が救急搬送を何件受け入れたかだけじゃなくてですね、
その地域の全ての医療機関の中で、どれくらいの割合、シェアをその病院が担っているのか。
なるほど、割合ですか。
ええ。つまり、地域への貢献度みたいなものを図ろうとしてるんですね。
人口が少ない地域でも、ちゃんと中核的な役割を果たしている病院をしっかり評価したい、そういう工夫だと思いますね。
ふむふむ。
で、それと同時にですね、DPC、入院医療費の包括払い制度。これも見直しの議論が進んでいます。
あ、DPCもですか。どういった点が?
えーとですね、入院日数の基準についてなんですけど、今までは平均値で見てたんですね。
はい。
これを中央値に変えるかもしれないという話が出てます。
平均値から中央値へ、それはどうして?
あのですね、一部に極端に長く入院される患者さんがいらっしゃると、平均値ってどうしてもそっちに引っ張られちゃうんですよね。
あー、なるほど。
ええ。そうすると、多くの一般的なケースでは、基準となる日数が実態より短くなってしまうという問題があったんです。
ふむ。
で、中央値にすれば、そういう外れ真似の影響を受けにくいので、より多くのケースで実態に近い評価ができるんじゃないかと。そういうことですね。
地域医療の連携強化
なるほど。評価の物差しそのものを、より実態に合わせようっていう動きなんですね。
そうなんです。これは例えば、長期のリハビリが必要な方を多く受け入れる病院と、短期入院が中心の病院とでは経営への影響も変わってくる可能性があって、病院ごとの機能文化を促す、そういう側面もあるかもしれません。
わかりました。次にですね、高齢者の入院が増えている中で、地域包括医療病棟、これの役割がよりはっきりしているという点。
はい、そうですね。
資料を見ると、70歳以上の方とか、妖怪ごとが高い方が多くて、肺炎とか骨折とか、そういう内科系の疾患が中心だそうですね。
まさにその通りで。で、問題はですね、そういった内科系の疾患、特に感染症なんかだと、今の重症度、医療看護必要度の評価ですね。
はい、看護必要度。
その中でも特にA項目、医療処置とかC項目、手術とか、そういった項目では実際の治療内容が点数に反映されにくいっていう、そういう課題が言われてるんです。
具体的にはどういう点が?
例えばですね、すごく重要な抗菌薬の点的治療とかが、評価の対象外だったりするんですよ。
あ、抗菌薬が対象外なんですか。それはちょっと現場感覚からすると、うーんって感じですね。
ええ、そうなんです。ですから、この評価方法自体を見直す必要があるんじゃないかと。
それともう一つですね、B項目。これは患者さんの身の回りのお世話の必要度、これを測る項目ですけど。
はいはい。
これを測る頻度をもう少し効率化できないかという提案も出ています。
本土の効率化?
ええ。例えば、入院したばかりの時は密に状態を見る必要がありますけど、状態が落ち着いてきたら測定の感覚を少し伸ばしてもいいんじゃないかとか。
なるほど。現場の負担軽減にもつながりますね。
そうですね。現場の負担軽減という視点も入っています。
その負担軽減といえば、やはり働き方改革とかタスクシフト、シェアも大きなテーマとして挙げられてますよね。医師から他の専門職へという。
はい。これは単に業務を移すということだけじゃなくてですね。
ええ。
やっぱりそれぞれの職種の専門性を最大限に生かして、チーム全体としての医療の質をこう上げていこうと、それが本質的な狙いだと思いますね。
チーム医療の質向上ですか?
ええ。その一環として、例えばADL、日常生活動作の評価。今、いよんな指標が使われていて、ちょっと分かりにくい部分もあるんですが。
ああ、確かに様々ありますね。
これをなるべく統一していこうと。そうすれば、多職種のスタッフが患者さんの状態を共通の物差しで理解できて、よりスムーズに連携できるようになるんじゃないかと。そういう基盤整備の話も進んでいますね。
なるほど。チーム医療の質と働きやすさ、両方を目指すということですね。
そういうことになりますね。
そして最後にもう一つ。大学病院のような大きな病院から地域のクリニックとかへ患者さんを戻していく、逆紹介。この動きもかなり強調されている印象です。
まさに。これは地域全体で医療機能を分担して連携を強めていこうという大きな流れの中の一つですね。
ふむふむ。
大学病院はより高度で専門的な医療に集中すると。地域のクリニックとかかかりつけ医の先生方が日常的な診療とか回復した後のケアを担っていく。
役割分担ですね。
役割分担と連携。これこそがこれからの日本の医療提供体制を考える上で非常に重要な鍵になってくると思います。
うーん、なるほど。見てくると地域シェア率、DPCの見直し、地域包括ケアの役割明確化、重症度評価の適正化、それから働き方改革と多職種連携、そして逆紹介による地域連携強化。
これらがなんかこう全部連動して今後の病院経営とか医療の質そのものを変えていく大きな動きになりそうですね。
ええ、おっしゃる通りだと思います。今回の議論というのは単に点数をどうするかっていう話にとどまらずにですね、やはり人口が減って高齢化が進んでいく日本でどうやって持続可能な医療提供体制を再構築していくのかというもっと大きな設計図の一部なんだろうなぁと。
ふむ。
だからこそそれぞれの医療機関が自分たちの強みをどう生かして地域の中でどういう役割を担っていくのか、その戦略的な視点というのが今まで以上に重要になってくるんじゃないでしょうか。
本当にそうですね。では最後にこれを聞いてくださっているあなたにちょっと考えてみてほしい問いかけをさせてください。
今お話ししてきたような変化がもし現実のものになったとしたら、あなたの関わっている医療現場ではこれからどんな価値を提供していくことになるでしょうか。
それは効率性なのか、あるいは専門性なのか、それとももっと地域への貢献度なのか、そのバランスをどう取っていくのか、ぜひこの機会に少し思考を深めてみていただけたらと思います。
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