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2025-09-25 07:09

透析医療の転換期:34万人の患者と変革する診療体制の課題

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入院・外来医療等の調査・評価分科会は、令和7年9月18日、透析医療の現状分析と課題検討を行いました。約34万人の慢性透析患者数が2022年から減少傾向に転じ、患者の平均年齢が70.1歳に達する中、透析医療の提供体制は大きな転換期を迎えています。血液透析に偏重した日本の腎代替療法の構造改革が求められています。

本報告書は、透析患者の高齢化と減少傾向、腎代替療法の選択肢提供の実態、災害対策と診療体制の課題という3つの重要な論点を提示しています。血液透析を実施する医療機関の19.5%しか腹膜透析を提供していない現状があります。全患者に腎代替療法の3つの選択肢を提示している施設は51.2%に留まります。災害時情報ネットワークへの登録率は76.1%となっています。これらの課題への対応が、今後の透析医療政策の重要な検討事項となります。

透析患者の現状と腎代替療法の選択肢

慢性透析患者数は343,508人(2023年末)で、2021年まで緩徐に増加していましたが、2022年から減少傾向に転じました。この減少傾向は、年間約3.9万人の新規導入があるものの、患者の高齢化による死亡数増加が背景にあります。患者の平均年齢は70.1歳、新規導入患者の平均年齢は71.6歳と、透析患者全体の高齢化が顕著です。

高齢化の進展は、腎代替療法の選択にも影響を与えています。日本では血液透析患者の割合が諸外国と比較して著しく高く、腹膜透析は10,585人、腎移植は年間2,001例に留まっています。腹膜透析は生活の制約や食事・飲水制限が血液透析より少なく、自由度が高いという利点があります。しかし、医療機関側の体制不備や経験不足が普及の障壁となっています。

腎代替療法に関する情報提供も不十分な状況です。全患者に血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%に過ぎません。35.6%の医療機関は情報提供の取組を行っていません。患者の自己決定権を保障し、最適な治療選択を支援する体制の構築が急務となっています。

診療体制の課題と災害対策の現状

血液透析の診療体制には、複数の課題が顕在化しています。シャント閉塞等のトラブルは透析患者の入院理由として最も多く、93.6%の医療機関が自院または事前連携先で対応しています。しかし、5.9%の医療機関は事前連携のない医療機関への紹介となっており、緊急時対応の体制整備が必要です。

災害対策については、各医療機関の取組にばらつきが見られます。災害対策マニュアルの策定は80.5%の施設で実施されていますが、電源車や給水車の受入体制は22.9%に留まります。日本透析医会災害時情報ネットワークへの登録または自治体等との連携体制を確保している医療機関は76.1%です。大規模災害時の透析医療継続には、より包括的な対策強化が求められます。

腹膜透析の提供体制も大きな課題です。血液透析実施医療機関の77.1%が腹膜透析を提供していません。その理由として、対象患者がいない(59.5%)、器具設備の不備(38.6%)、医師の経験不足(18.4%)が挙げられています。緊急時や入院時のバックアップ体制への不安も、腹膜透析導入の障壁となっています。

診療報酬による政策誘導と今後の方向性

診療報酬制度は、腎代替療法の適切な選択を促進する重要な政策ツールです。導入期加算は、腎代替療法に関する十分な説明と選択支援を評価し、200点から810点の3段階で設定されています。腎代替療法実績加算(100点)は、腹膜透析や腎移植の実績を評価する仕組みです。

慢性維持透析の施設基準は、透析用監視装置の台数と患者数の割合により3つに区分されています。慢性維持透析1の届出医療機関数は増加傾向(令和6年:2,358施設)にある一方、慢性維持透析2・3は減少しています。この変化は、医療機関の規模や効率性を反映した診療報酬体系への適応を示しています。

緩和ケアの取組も重要な検討事項です。医療用麻薬を用いた疼痛緩和を実施している医療機関は32.2%、終末期や透析医療中止に関する意思決定支援は35.1%に留まっています。超高齢社会における透析医療では、治療の継続と中止、緩和ケアへの移行を含めた包括的な医療提供体制の構築が不可欠となっています。

まとめ

透析医療は、患者数の減少と高齢化により大きな転換期を迎えており、血液透析偏重から腎代替療法の選択肢拡大への構造改革が必要です。診療体制の強化、災害対策の充実、腹膜透析の普及促進という3つの課題への対応が、今後の透析医療政策の重要な検討事項となります。診療報酬制度を通じた政策誘導と、医療機関の体制整備支援により、患者中心の透析医療への転換を推進することが求められています。



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サマリー

日本の透析医療は34万人の患者を抱え、変革に直面しています。特に高齢化や治療法の選択肢の偏り、災害時の備えなどの課題が浮き彫りになり、患者中心の医療体制が求められています。

透析医療の現状と課題
さて今日はですね、日本の透析医療に関する資料をちょっと深く見ていきたいと思います。はい。およそ34万人の方が関わるこの分野が、今まあ大きな変化の時を迎えていると、そういう話のようですね。
そうですね。患者さんの高齢化が進んで、しかも数がなんと減少に転じたというデータもあるようで、提供体制も変わらざるを得ない状況なのかなと。
はい。拝見した資料からもですね、日本の透析医療が抱えているいくつかの重要の課題というのが見えてきますね。はい。あの特に治療法の選択肢の問題、それから災害への備え、そしてやはり高齢化が進む中でのケアの在り方、こういったところが焦点になりそうです。
なるほど。なぜ今変革が必要なのか、ちょっとその背景にある要因を詳しく見ていきたいですね。ええ、まずちょっと驚いたんですけど、長年こう増え続けてきた透析患者さんの数が2022年に初めて減少に転じたということなんですね。そうなんです。ただこれって単純に新しく透析を始める方が減ったというよりは何か別の要因が大きいんですか。
おっしゃる通りで新規導入が減ったという面もなくはないんですが、それ以上にですね患者さんの平均年齢、これがもう70歳を超えていて。70歳ですか。はい。高齢化によって残念ながら亡くなる方が増えている。その影響が大きいと考えられています。なるほど。つまり患者さんの層自体が大きく変わってきているということなんですね。
そういうことなんですね。それで治療法についてなんですが、日本では圧倒的に血液透析が多いと。ええ、そうですね。一方で例えば自宅でできて生活の自由度が高いって言われる腹膜透析とか、あとは根本的な治療になる人員職、これは日本ではまだあまり普及していないという状況も見えてきました。
ええ、その偏りはかなり顕著ですね。資料を見ますと血液透析を行っている施設のうち、腹膜透析も提供できるというところがわずか19.5%。2割弱ですか。はい、2割を切っているんですね。
さらにもっと深刻かもしれないのは、患者さんに対して血液透析、腹膜透析、妊娠、この3つの選択肢ですね。これをすべてきちんと提示している施設が全体の半分、51.2%に過ぎないという点なんです。
半分。ええ、これはつまり患者さんが自分にとって一番良い治療法を選ぶ権利、これが十分に保証されていない可能性があるということなんですね。半数近くの患者さんはそもそも他の選択肢があることすらもしかしたら知らないかもしれないと。そういう可能性も残念ながらありますね。
なんでこんなに偏ってしまうんですかね。医療機関側には何か理由があるんでしょうか。そうですね。医療機関側が挙げる理由としては、腹膜透析の対象になる患者さんがうちにはいないんだというような認識があったり、あるいは設備がないとか経験豊富な医師が不足しているといった体制面の問題が大きいようです。
なるほど。ただ、結果的にそれが患者さんの選択の機会を狭める、そういう構造になっている可能性はありますね。治療の選択肢もそうですけど、災害時の備え、これも課題として挙げられてますね。ええ、これも非常に重要です。マニュアル自体は結構多くの施設が持っているみたいですけど、いざという時の体制がなかなか追いついていないみたいな感じなんでしょうか。
まさにその通りなんです。災害対策のマニュアルを持っている施設は8割を超えているんですが、実際に例えば電源車とか給水車、こういったライフラインを受け入れられる、そういう体制をちゃんと整えている施設となると驚くほど少なくて、2割強、22.9%にとどまるんです。
えっと2割強ですか。
ええ、透析以外の災害時情報ネットワークへの参加も約76%と、これもまだ万全とは言えない状況でして、透析は本当に中断できない治療ですからね。このギャップは非常に気になるところです。
本当に継続が不可欠な治療ですもんね。さらに高齢化という点で言うと、終末期医療、例えば透析を続けるか、あるいはどうしていくかみたいな意思徹底の支援、これはどうなっているんでしょう。
ああ、そこも非常に重要なポイントですね。透析の中止という選択肢も含めた、終末期について事前に話し合っておく、いわゆるアドバンスケアプランニング、ACP。これをきちんと実施している施設はまだ35%程度と、これも低い水準なんですね。
3割ちょっとですか。
高齢化が進む中で単に治療を続けるということだけじゃなくて、患者さんの生活の質、QOLですね。これをどう維持していくか、そして再期をどう迎えるかということまで含めた、もっと包括的な視点というのがこれからの透析医療には求められてきますね。
なるほど。診療報酬の制度なんかでも、そういう情報提供とか、腹膜透析、人員職の実績を評価する動きはあるようですが、現場の体制が追いつくにはまだちょっと時間がかかりそうですね。
そうですね。導入期の加算を見直すとか、そういう形でより丁寧な情報提供や代替療法の選択を促す仕組み自体は導入されつつあります。
はい。
ただ、それが実際に選択肢の拡大とか医療の質の向上につながっていくには、やはり施設側の体制強化が非可決ですね。
まさに制度と現場の足並みをどう揃えていくか、そこが問われている状況だと思います。
患者さんの高齢化と販俗の減少傾向、それから治療選択肢の大きな偏りがあって、災害への備えもまだ十分とは言えない、そして終末期ケアの課題、日本の透析医療は本当に大きな転換期にあるんですね。
患者中心の医療体制への転換
まとめますと、これまでのある意味血液投石中心の学位置的な体制から、患者さん一人一人がちゃんと十分な情報に基づいて、多様な選択肢の中から自分に合った治療を選べる体制へと大きく舵を切る必要性があるということが示されていますね。
はい。
それにはもちろん医療機関の努力も必要ですし、それを後押しする政策的な支援ですよね。これが両輪となって進むことが重要になってくるでしょうね。
なるほど。最後にですね、これを聞いているあなたに一つ問いかけさせてください。もしご自身とかあるいは大切なご家族が腎臓の機能を補う代替療法を選ぶということになったとしたら、どんな情報があれば、そして何を一番大切にしてその決断を下したいと考えますか。
医療者からの情報だけじゃなくて、ご自身の価値観とか望む生活をどうその選択に反映させるか、ちょっと立ち止まって想像してみるのも、この問題をより身近に捉えるきっかけになるかもしれません。
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