令和8年3月11日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第648回)で「先進医療会議からの報告について」が議題となりました。この報告資料は2つの表にまとめられており、技術名や費用は一覧できる一方、制度上の位置づけや患者の実負担までは読み取りにくい構成です。本記事では、報告された3技術の評価結果を、先進医療制度の基本とあわせて整理します。
今回の報告では、がん領域の3技術がいずれも総評「適」と評価されました。先進医療Aでは、標準治療終了前に実施するがんゲノムプロファイリング検査(整理番号357)が、令和8年1月1日から告示適用となりました。先進医療Bでは、進行・再発大腸がん向けの遺伝子パネル検査(整理番号179)と、切除可能な膵臓がん向けの3剤併用療法(整理番号180)が、それぞれ令和8年1月1日と同年2月1日から告示適用となりました。費用欄は「保険給付されない費用」「保険給付される費用」「一部負担金」の3区分で示されており、患者の実負担は欄外の注記まで読んで確認する必要があります。
先進医療会議からの報告は、保険導入前の技術を確認する議題
先進医療会議からの報告は、保険導入前の新しい医療技術について、科学的評価の結果を中医協に伝える手続きです。今回の報告では、第147回会議(令和7年10月3日)と第149回会議(令和7年12月4日)で評価された3技術が対象となりました。
先進医療とは、保険診療との併用が認められた評価段階の医療技術です。この併用を支える仕組みが保険外併用療養費制度であり、先進医療に係る部分は保険給付の対象外、診察や検査など通常の診療と共通する部分は保険給付の対象となります。有効性と安全性が確認された技術は、将来的に保険導入の検討対象となります。保険導入されれば、その技術は診療報酬上の評価を受けることになります。
先進医療会議は、この評価段階の技術を専門家が審査する場です。会議では、申請された技術の有効性、安全性、技術的成熟度などを検討し、その結果を総評として示します。総評が「適」となった技術は告示に掲載され、告示適用日から先進医療として実施できます。
先進医療は、使用する医薬品や医療機器の扱いによってAとBに区分されます。先進医療Aは、未承認等の医薬品・医療機器等の使用や適応外使用を伴わない技術です。また、体外診断薬、検査薬、検査目的の医療機器を未承認等で用いる技術のうち、人体への影響が極めて小さいものも含まれます。先進医療Bは、未承認等の医薬品・医療機器等の使用や適応外使用を伴う技術です。また、安全性や有効性等に鑑み、重点的な観察・評価を要すると判断された技術も含まれます。今回の報告では、Aが1件、Bが2件でした。
先進医療A:標準治療終了前のがんゲノムプロファイリング検査
先進医療Aとして報告された1件は、がんゲノムプロファイリング検査を標準治療の終了前に実施する技術です(整理番号357)。この技術は、検査の実施時期を標準治療の終了前に前倒しする点に特徴があります。技術名の「標準治療終了前における」という表現が、その特徴を示しています。
対象となるのは、標準治療が終了する前の進行再発固形がん患者です。この患者は、標準治療が対象となる進行再発固形がん患者に限られます。さらに、関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき、全身状態や臓器機能等から、検査実施後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した患者であることが条件です。ただし、局所進行または転移が認められ、標準治療が終了見込みとなる進行再発固形がん患者は、対象から除かれます。
使用する検査システムは、5つのがん遺伝子パネルです。資料には、OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム、FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル、GenMineTOP® がんゲノムプロファイリングシステム、FoundationOne® Liquid CDx がんゲノムプロファイル、Guardant360® CDx がん遺伝子パネルが挙げられています。申請医療機関は国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院であり、告示適用日は令和8年1月1日です。
費用は、先進医療に係る費用が56万円、保険給付される費用が5千円、保険外併用療養費分に係る一部負担金が2千円と示されています。このうち先進医療に係る56万円は保険給付の対象外です。総評は「適」と評価されました。
先進医療B:大腸がんの遺伝子パネル検査と膵臓がんの併用療法
先進医療Bとして報告された2件は、進行・再発大腸がんに対する検査と、切除可能な膵臓がんに対する薬物療法です。いずれも、未承認等の医薬品・医療機器等の使用や適応外使用を伴う技術、または重点的な観察・評価を要する技術として、Bに区分されています。2件とも総評は「適」と評価されました。
1件目は、血中循環腫瘍DNAを用いたマルチプレックス遺伝子パネル検査です(整理番号179)。対象は、切除不能な進行または再発の大腸がんです。使用する医療機器はGuardant360 CDx がん遺伝子パネル、申請医療機関は東京大学医学部附属病院、告示適用日は令和8年1月1日です。費用は、先進医療に係る費用が98万4千円、保険給付される費用が4千円、一部負担金が2千円です。このうち先進医療に係る98万4千円は、全額を研究者および企業が負担するため、患者負担が0円となります。一部負担金2千円は、この注記の対象外です。
2件目は、術前・術後のイリノテカン静脈内投与、オキサリプラチン静脈内投与およびS-1内服投与の併用療法です(整理番号180)。対象は、切除が可能な膵臓がんです。使用する医薬品はオニバイド点滴静注43mgとエルプラット点滴静注液(50mg、100mg、200mg)、申請医療機関は国立がん研究センター東病院、告示適用日は令和8年2月1日です。費用は、先進医療に係る費用が312万円、保険給付される費用が289万円、一部負担金が127万円です。このうち先進医療に係る312万円は、薬剤費を企業が負担するため、患者負担が1万円となります。一部負担金127万円は、この注記の対象外です。
費用欄は3区分で示され、患者負担は注記で確認する
費用欄の3区分は、保険外併用療養費制度の考え方をそのまま反映しています。3つの金額は、いずれも典型的な1症例に要する費用として申請医療機関が記載した額です。記載額は四捨五入された概数です。金額の大小だけを比較しても、患者が実際に支払う額はわかりません。
「保険給付されない費用」は、先進医療そのものに係る費用です。この費用について、医療機関は患者に自己負担額を求めることができます。ただし、研究費や企業負担で賄われる場合は、患者負担が軽減または免除されます。
「保険給付される費用」は、保険外併用療養費に係る保険者負担の額です。この費用は、先進医療と併せて行われる通常の診療部分にあたります。診察、検査、入院などがここに含まれます。
「保険外併用療養費分に係る一部負担金」は、保険給付される部分について患者が負担する額です。この額は、通常の保険診療と同じ考え方で計算されます。したがって、患者の実負担は、先進医療に係る自己負担額とこの一部負担金の合計で把握します。
今回の3技術では、注記の有無によって患者負担が大きく異なります。整理番号179は、先進医療に係る費用の全額を研究者および企業が負担するため、その患者負担が0円です。整理番号180は、先進医療に係る費用のうち薬剤費を企業が負担するため、その患者負担が1万円です。整理番号357には同様の注記がなく、先進医療に係る費用は患者の自己負担となり得ます。
まとめ:3技術の評価結果と費用の読み方
中医協総会(第648回)では、先進医療会議で評価された3技術が報告され、いずれも総評「適」と評価されました。先進医療Aでは、標準治療終了前のがんゲノムプロファイリング検査が令和8年1月1日から告示適用となりました。先進医療Bでは、進行・再発大腸がん向けの遺伝子パネル検査が令和8年1月1日から、切除可能な膵臓がん向けの3剤併用療法が同年2月1日から告示適用となりました。費用欄は3区分で示されるため、患者の実負担を把握するには注記まで確認することが必要です。
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サマリー
中医協で報告された、がん領域の先進医療3技術について、制度上の位置づけと費用の読み方を解説する。先進医療Aは未承認薬などを使わない技術、Bは未承認薬などを使い厳重な観察が必要な技術で、今回はAが1件、Bが2件、いずれも適正と評価された。標準治療終了前のゲノム検査は、患者の体力が残る段階で次の治療計画を準備する点が特徴である。大腸がんの遺伝子パネル検査と膵臓がんの3剤併用療法は、資料上は約98万円、約312万円だが、研究者や企業の負担により患者負担が0円または1万円となる。一方、企業負担の注記がない約56万円の検査は患者の自己負担となり得るため、表の金額だけでなく欄外の注記を確認する必要がある。
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