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2025-12-27 04:34

令和8年度診療報酬改定へ向けた3つの技術的論点|骨密度検査・遠隔心臓リハビリ・コロナ治療薬の扱いを解説

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令和7年12月24日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第638回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた技術的事項が審議されました。本稿では、骨密度検査の算定要件見直し、情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーション、新型コロナウイルス感染症治療薬の扱いという3つの論点について解説します。

今回の審議では、骨塩定量検査の算定間隔について学会ガイドラインとの整合性を図る方向性が示されました。遠隔心臓リハビリテーションについては、薬事承認されたプログラム医療機器に対応した評価のあり方が検討されています。新型コロナウイルス感染症については、5類移行後の状況を踏まえ、DPCにおける診断群分類の設定検討と抗ウイルス剤の特例措置終了が論点となっています。

骨密度検査の算定要件見直し

骨塩定量検査の現行算定要件は、患者1人につき4月に1回に限り算定可能とされています。この要件は、関連学会のガイドライン推奨と乖離している状況です。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版では、測定間隔について一般的に開始1年後、治療法が確立された後は1年間以上の間隔でよいとされています。このガイドラインでは、年に1回以上の測定を要する場合として、新規骨折発生時やビスホスホネート薬治療の一時中止を検討する場合等が挙げられています。

測定間隔を短縮する必要がある場合も明示されています。急激な骨減少・増加をきたす薬剤(グルココルチコイド、アロマターゼ阻害薬、抗アンドロゲン療法、骨形成促進薬)の投与時や、急激な骨減少・増加をきたす病態(吸収不良、全身性炎症疾患、長期不動、人工閉経)がある場合には、観察期間の短縮が推奨されています。

今回の論点は、このガイドライン推奨を踏まえた算定要件の見直しです。現行の「4月に1回」という要件を、ガイドラインに沿った形で調整することが検討されています。

情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーション

遠隔で心臓リハビリテーションを実施するプログラム医療機器「リモハブ CR U」が薬事承認されました。この機器は、専用のエルゴメータとウェアラブル心電計を併用し、遠隔で在宅の患者を最大8名同時にモニタリングしながら心臓リハビリテーションを実施できます。

このプログラム医療機器の有効性は、医師主導治験で確認されています。治験では、入院中の集団心大血管疾患リハビリテーション及び退院後3~4週間の通院による心大血管リハビリテーション後に患者を無作為に割り付け、当該製品を用いた遠隔心リハを実施した群と通院群を比較しました。12週間の介入終了時の6分間歩行距離の変化量について、非劣性が示されています。

安全性についても検証されています。有害事象の発生率は遠隔心リハ群49.1%、通院心リハ群35.7%でした。発生した有害事象はいずれも本品使用との因果関係は否定されています。

現行制度との整合性が課題となっています。心大血管リハビリテーション料の算定要件には、医師が直接監視を行うか、同一建物内において直接監視をしている他の従事者と常時連絡が取れる状態かつ緊急事態に即時的に対応できる態勢であることが求められています。施設基準には、専用の機能訓練室や酸素供給装置、除細動器、心電図モニター装置等の設置が規定されています。現時点では、情報通信機器を用いた場合の規定は示されていません。

日本心臓リハビリテーション学会のステートメント(2023年10月)では、緊急時対応の観点からケアギバーが状況把握できることが望ましいとされています。独居で近傍にもサポートできるケアギバーがいない場合には、遠隔心リハの適応には慎重を期するとの指針が示されています。

今回の論点は、これらの算定要件・施設基準と学会指針を踏まえた、遠隔心臓リハビリテーションの評価のあり方です。

新型コロナウイルス感染症治療薬の扱い

DPC/PDPSにおける新型コロナウイルス感染症の扱いについて、2つの論点が示されています。1つ目は診断群分類の設定検討、2つ目は抗ウイルス剤に係る特例措置の終了です。

診断群分類については、これまで出来高算定とされてきました。令和6年度診療報酬改定時は、改定に用いるデータの対象期間中(令和4年10月~令和5年9月)に感染症法上の位置づけの変更等が行われ、入院診療の実態が大きく変化していたため、引き続き出来高算定とされました。令和8年度改定では、データの対象期間中(令和6年10月~令和7年9月)に感染症法上の位置づけの変更等は行われていません。このため、「MDC毎の診断群分類見直し技術班」において、診断群分類の検討を行うことが論点となっています。

抗ウイルス剤の特例措置については、終了が検討されています。令和6年4月以降も当面の間、地域包括ケア病棟入院料や療養病棟入院基本料等を算定する患者、及び介護保険施設入所中の患者について、新型コロナウイルス感染症に係る抗ウイルス剤を包括範囲からの除外薬剤として薬剤料を算定できるとされてきました。令和5年度の千床あたり1月あたりの患者数は、最も多い地域包括ケア病棟で23.4人、療養病棟入院料1で15.3人、療養病棟入院料2で6.7人でした。介護保険施設では、介護老人保健施設で定員千人あたり2.8人、介護医療院で定員千人あたり19.6人でした。

今回の論点は、通常の医療提供体制へ移行していることを踏まえ、これらの特例的な取扱いを終了することについてです。

まとめ

令和8年度診療報酬改定に向けて、3つの技術的事項が審議されています。骨塩定量検査の算定要件は、ガイドラインとの整合性を図る方向で見直しが検討されています。情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーションは、薬事承認されたプログラム医療機器に対応した評価のあり方が論点となっています。新型コロナウイルス感染症については、5類移行後の状況を踏まえ、DPCにおける診断群分類の設定検討と抗ウイルス剤の特例措置終了が検討されています。



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サマリー

令和8年度の診療報酬改定に向け、骨密度検査の個人最適化、遠隔心臓リハビリの新技術、そしてコロナ治療の標準化が提案されています。これらの動きは、医療が患者の日常生活にどのように溶け込んでいくかを示す重要な変化です。

骨密度検査とリハビリの技術革新
こんにちは。さて今回は、2年後の医療がどう変わっていくのか、その未来を少し覗いてみたいと思います。
先日の中央社会保険医療協議会の資料をもとに、特に3つの大きな変化の兆しについて深く掘り下げていきます。
よろしくお願いします。
検査の間隔がより個人に最適化されたり、リハビリが自宅でできるようになったり、それからコロナも特別な病気じゃなくなっていくと。
ええ、大きな見感点ですね。
はい。では早速、1つ目の骨密度検査の話からいきましょうか。
はい。
今って、骨粗傷症の検査は、4ヶ月に1回まで保険が効くのが基本ルールですよね。
そうですね。そうなっています。ただ、最新の医学ガイドラインだと、実は治療開始1年後、その後は1年以上の間隔でOKとされてまして。
ああ、なるほど。そこにちょっとズレがあったわけですね。
ええ、これまでのみんな一律で4ヶ月に1回っていうルールがですね、もっと患者さん1人1人の状態に合わせた科学的な根拠に基づく頻度に見直されるっていうことなんですよね。
よりパーソナルにスマートになれと。
まさに。もちろん、ステロイド剤を使っている方みたいに特別な配慮が必要な場合は、短い間隔での検査が推奨されるという例外はちゃんと残りますけどね。
なるほど。そのパーソナル化の流れは治療の現場にも来ていると。特にリハビリの世界ですごい技術が登場したんですよね。
そうなんです。リモハブCRUという機器ですね。
リモハブ。
ええ。専用の心電計なんかを使って、医師がオフィスから、なんと最大8人の患者さんの心臓リハビリを同時に遠隔でチェックできるシステムです。
8人もですか。それはすごい。効果のほどは。
はい。臨床試験でも病院に通うリハビリと比べて効果は変わらないと、安全性も確認されています。
うーん、でも待ってください。心臓リハビリの保険適用って、確か医師がすぐそばにいることとか、除細動機が同じ建物にあることとか、かなり厳しい基準がありましたよね。
まさにそこが最大の論点なんです。
それだと自宅は絶対に無理じゃないですか。技術はあっても精度がボトルネックになっている。
おっしゃる通りです。技術はもうそこにあるのに、ルールが追いついていない典型例ですね。
うーん。
学会も、やはり緊急時に対応できるご家族がそばにいることが望ましいとしていて、特に一人暮らしの方への適用には慎重な姿勢です。
なるほど。この安全性と利便性の壁をどう乗り越えるか。
ええ。そこが今後の大きな課題になりますね。
新しい技術が精度の壁にぶつかっていると。一方で、大きな課題だった新型コロナはようやく精度上も日常に溶け込もうとしているんですね。
コロナ治療の通常医療への統合
はい。コロナが特別な感染症ではなくなったことで、二つの大きな特例が終わろうとしています。
ほう。
一つは、入院費の計算方法です。これまでは治療ごとにお金を計算する、いわゆる出来高算定でした。
ええ。
これを病名ごとに1日の費用が決まる、DPCという包括払いに組み込んでいこうという流れです。
ああ、もうインフルエンザとかと同じような扱いに。
そういうことです。
なるほど。もう一つは。
もう一つは、抗ウェリス薬の特例ですね。地域包括ケア病棟とか、特定の施設でコロナのお薬を使った場合、薬代を別で請求できたんです。
はいはい。
これも、もう患者さんの数が減ったので終了する方向で議論されています。
なるほど。これは、医療制度上もコロナが特別な災害から数ある病気の一つへ完全に移行する象徴的な変更と言えそうですね。
ええ、まさにそうだと思います。
よくわかりました。今日のポイントをまとめると、検査は個人の状態に合わせて最適化、リハビリは技術と安全ルールの攻めぎ合いにあり、コロナ治療はついに通常医療の枠組みに入ると。
そうですね。
未来に向けた3つの大きなうねりが見えました。
はい。そして、これら3つの動きって、実は大きな共通点があると思うんです。
と言いますと?
医療が病院で完結するものから、あなたの生活空間に溶け込むものへと変化している大きな証拠なんじゃないかと。
ああ、なるほど。
骨水土検査はあなたの生活リズムに合わせ、リハビリは自宅で行う。
この流れがもっと加速したとき、もしかしたら病院の役割そのものが、治療の場からあなたの健康を遠隔で支える司令塔のような存在に変わっていくのかもしれないね。
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