ゴルフコース管理の現場
田村
コース管理の現場。この番組は、トーナメントコースをはじめ、様々なゴルフ場を渡り歩いた元キーパーの畑さんと、現場を支える事務員の私、田村が、ゴルフコース管理の現場で見えること、感じることを率直に語り合う番組です。
今回の収録は、音声が少し聞きづらいところがあります。音を良くしようと設定を調整したところ、上手くいかず少し変になってしまいました。
取り直すより、畑さんの熱意そのままにお届けすることを選びました。少しずつ改善していきますので、どうか温かく聞いてもらえたら嬉しいです。
はい。
おはようございます。
畑
おはようございます。
おはようございますって言ったら違うかもしれない。
田村
違うかもしれない。おはこんばんちは。
あの、スモールトークをしようかと思ったけど、またバサーッと編集で切らなきゃいけないかもしれないから、いきなり本題に入ります。
第2回の回の時かな、今度畑さんの芝の見方について話しましょうっていう風に言ったので、畑さんの芝の見方について聞きたいです。
朝、毎日、みんなが仕事が始まる前に、必ず18ホールのグリーンに立ってるの?
畑
まず朝は、今宮崎で仕事をしてる中で言えば、パッティンググリーンに毎朝立って状況を確認してる。
田村
それはなんでパッティンググリーンなの?
畑
なんとなく。周りの環境とか全て感じた中で、場所的に、立つのがパッティングがいいんじゃなかろうかっていう。
感覚?
田村
なんとなく?
それはさ、例えば基準となるのがここだなっていうのがあるコースもあると思うし、
ここのグリーンだけはいつも悪くなるんだよなっていうのがあるコースもあるじゃない?
良いグリーン、悪いグリーンがあるコース。
そういう場合でもなんとなく基準のところを1個探して乗る感じ?
畑
そうだね。よく言う出来の悪いグリーンか、逆にものすごく出来が良くて優秀なグリーンになってくるのも当然コースの中にはそういう状況って生まれてくるんだけど、
あまりにもそちら方面に立ってしまうと極端すぎて、平均的なところをまず選んで。
田村
なるほどね。じゃあまず平均的なところに立って何をする?
畑
まず芝生を見る。これ芝生を見るとは言うところになってくるんだけど、
まず見るっていうことはイコール対応することっていうのが基本性にある。
私が昔にガーデニングの先生と話したことがあって、
物を言わないものだから、きっかり対話してあげなさいよ。
ちゃんと答えてくれるからって言われたことがずっと印象になって、それが私の基本である。
田村
対話するっていうのは何をするの?
対話のしようがないよね。
畑
しようがない。だから自分が勝手に感じ取ったことを頭の中で置き換えながら。
田村
それは言葉として頭の中で、例えば「今日は寒いな」って。
畑
やってる。自分は芝生の主治医だと思ってるんだよね。
お医者さんがどう感じてどう判断するのかっていうのは、
経験値であったり、その人の顔色を見たり、多分これだろう。
っていう、まず判断していくよね。
田村
だからその最初の少しの状態が、朝一に芝生を見るっていうところになるのかな。
仏像とかと会話してる感じ?
畑
多分石像を作る方とか、自分の中で想像しながら会話を。
田村
大学の時、敬虔なクリスチャンの子がいて、その子はノートに青ペンで自分の問いとかを書いて、
その時に頭に浮かんだことを赤ペンとは違う色のペンで書くみたいなので、
神様とこうやって対話してるんだよみたいなことを言ってたから、そんな感じ?
畑
そう、まさしくそうだと思う。
田村
メモに取るの?
畑
メモに取る。
自分の言葉に置き換えて言語化する。
よく冒頭で言ってくれる、植物学的にはどうなのかっていうのが、もうハテナしかつかない。
田村
冒頭じゃなくてエンディングね。
畑
エンディングか。
ところが、どういうのかな。
日々経験してるとね、知識が入ってるから、まんざらね、嘘ではないよね。
おそらくこうだろうなっていう、そのおそらくの信憑性が経験とともに高くなる。
やはり経験してない状況で話具とかをするにあたっては、確信をついたところに行かないといけないよね。
田村
そうだよね。
本当にいきなりこの仏像とお話ししてくださいって言われても、何話したらいいかもわからないし。
畑
けど経験の中で、だんだんわかってくるようになった。
田村
そうだね、なんかちょっとそんな気がする。それは何分くらいそれをしてるの?
畑
何分っていうのか、ものすごく短時間で終わるときもあるし、
例えば今で言えば、朝5時半に行けば、10時くらいまで同じ場所に立って、ずっと対話をしてる。
田村
その対話をしてるときっていうのは、もう見てるだけ?
畑
例えば、患者さんにお伝えとか、体温を測るとか。
で、体温を測るっていうのは、気温とか地温に繋がったり、
それから顔色表情を見るっていうのは、芝生の色や露の乗り方とか。
それからお腹の状況を見るとかいうときは、やっぱり足で踏んづけた、グリーンの上に乗ったときの感覚。
足の裏の感覚とかいうのを想像しながら、根のことを想像してる。
で、それから芝生って、人間と一緒でストレスをよく感じ出すと
独特の匂いが出てきたり。ホルモンが出るんだろうね、ストレスを感じると。
それからちょっとつまんでみたりして、皮膚の弾力、伸びたものがすぐ戻るかとか。
って言うのは、例えば芝生の表面の芝生芽をつまんで、軽く抜いてみる。
そのときに弾力を感じるとか、新芽がスポスポ抜けるとか、そういうのを感じたり。
それがメモ、だと思う。
田村
いつも一緒に仕事してたときさ、くり抜いて持って帰ってきて顕微鏡で見たりとかもしてたでしょ?
畑
そうそうそうそう。
それはそのときそのときで感じた中で、
今日は芝生を採ろうかな、芝芽を顕微鏡で見てあげようと。
田村
あ、そっか、毎日絶対やってるわけではなくて。
畑
毎日じゃない。
やっぱりこの診断をした中で、採ってみた方がいいよねっていうときは採ってみる。
田村
それはどういうときに?
畑
それはなんとなく、ちょっと顔色悪いなとか、ストレスを感じた匂いがしてるなとか。
踏んだ感じで、ちょっと違和感を感じる硬さがあるよねとかいうときは、
なぜだろうっていうのを見ないとわからなくて、
採ってルーペだけではわからないから、顕微鏡で見たり。
田村
細胞まではみないけど。
畑
顕微鏡で見てるのは、根の状態と茎とか?
根の状態、茎の状態。
田村
葉っぱも見るの?
畑
葉っぱも見るね。
それと稲に置き換えると、メソコチルっていう。
メソコチル。
軸の根元の部分。
根から直接出てるメソコチルっていうんだけど。
田村
あれ?
畑
メソコチル。
田村
土の中に隠れてるところ?
畑
隠れてる。
田村
あ、そこも徒長するんだ。
畑
軸があって、根っこが発根してる。
そこのキワッキワのところ。
イネで言えば、根からビュッと出てるところ。
そこが徒長してるとか、徒長してないなとか。
田村
それ、徒長してるのを見つけて、
じゃあどうしようっていうのを考えていくんだ、そこから。
畑
考えていく。
やっぱり分げつが進まないから、
やはり上に立っていくんで、
一本で立てば風にも弱いし、
健康な根元から分げつで株分かれしていくと、
そうすると土台がしっかりといって、
そんなところがあるね。
田村
めっちゃスケッチするよね。
畑
スケッチするね。
やっぱりスケッチはものすごくわかる。
田村
そうだよね。
スケッチするのとしないの、観察の粒度が違うもんね。
私、前にも話したことあると思うけど、
テレビで子どもたちに、
キリンの絵を描きましょうっていうのをやってて、
最初、キリンの前に連れてって絵描いてっていうと、
みんな黄色い胴体に茶色い斑点をチョコチョコってつけて、
首長くしてみたいな、
そういう一般的なキリンを描くんだけど、
ちょっと観察してみようかって言って、
茶色と黄色どっちが多いとか、
どこに毛が生えてるとか、
本当に角って黄色い角の上に茶色い丸がついてるんだっけとか、
そういうのを先生が問いかけながら見てて、
じゃあもう一回描いてみようかって言ったときに、
絵がもう全然違ったんだよね、観察の後って。
そうやって一個一個見ていく、観察していくっていうのは、
パッと見て、今日は元気って思うのと、
全然違う粒度で物を見れるんだなって、
あのテレビ番組見て思った。
畑
そうだよね。
やっぱり描くっていうことは、
まず第1回目描くっていう、第1回目が来るよね。
でも、第1回目見たからって、
全く訳がわからない。
田村
そうだね。
畑
状況になるね。
でも、この2回目、3回目、4回目を描いていくと、
そこに発見が生まれる。
違いがわかってくる。
それから次の想像ができるようになる。
田村
そうだね。
畑
そこがやっぱり重要なところ。
グリーンを見たときに誤診をしない。
田村
そうだね。
なんか春の芝を描いてさ、
すぐに何とかなるっていうよりも、
ほんと次の年とか、その次の年とかに、
去年はこうだったけど、
今年はこうだとかってわかるようになるしね。
畑
季節が流れていくものを定期的にこう見ていくと、
やっぱり流れが分かる。
田村
そうだね。
畑
流れがやっぱり重要な。
こういう勢いになればこうなる。
そういうのが1回目より2回目、2回目より3回目。
手に取るようにわかるようになるんで、
次の年からの芝生を仕上げるっていうことも想像ができる。
それを持たずに何か計画をしようとか、
それはできないと思う。
いろんなやり方があるから
一概には言えないけど、
私はできないと思う。
田村
じゃあ話戻って、パッティングリーンに立ちました。
芝生と対話します。
必要だったら芝生をちょっとサンプルを採ります。
で、その後は?
畑
その後は全てのグリーンを見に行く。
対話からの学び
田村
もう18ホールパッティンググリーン全部?
畑
全部見る。
やっぱりゴルフ場って広大な場所で、
70万平米とか80万平米とかある中で、
かなり広範囲のグリーンが散らばってる感じ。
どうしても1番グリーンの環境と2番グリーンの環境って違うと思う。
だからそれが18個あるって、
同じように成長はしないと思う。
田村
そうだね。
畑
だから必ず見るっていうことが大事。
そこで必ず会話をして、
田村
グリーンに立つんだ。
畑
立たないとダメ。
必ず見て、このグリーンがどういう状況なのか、
っていうのを総合的に考えて、
こうしようっていうことを考えていただくと。
田村
それぞれのグリーンでもさ、結構時間を使ってみるわけ?
畑
いや、それは毎日の中の流れがあるんで、
例えば1番グリーンは3時間立っていた。
2番グリーンに行ったら1分だった。
そういうことはあり得ると思う。
田村
なるほどね。
でもとりあえず立つっていうことをやってるのね。
それはグリーン刈が始まる前にやってるでしょ?
何分ぐらい前に来てるの?
みんなの仕事が始まる前。
畑
2時間ぐらい前には来てるよね。
最低でも。
田村
6時半だったら4時半じゃん。
畑
4時半に来てたよね。
田村
すごいね。
畑
ただ、刈りこむ前に全てが見られるかといったら見られない。
平均したところを毎回見る。
田村
気になるところ。
畑
悪いところを見る。
その状態を見て総合的に想像して
例えばグリーンの刈高であるとか…
あ、朝の段階でちょっと下げようって言ってすぐ下げられるものなの?
下げられる。
下げられるって判断したらね。
田村
判断したらね。
畑
判断したら下げられるし、逆にちょっとストレスかかりすぎてるよね、ちょっと上げたいよねって。
田村
1番、5番、3番は下げたいけど、8番、9番、12番は上げたいとか、そういうことないの?
畑
それはある。
田村
その場合はどっちに合わせる?
畑
一番悪いところに合わせる。
田村
合わせる。なるほどね。
畑
でも、そればっかりをやっていても、グリーンってチグハグなものになってくるから、
プラスアルフィーをもっと持ち込む。
なるほどね。
それは何かっていうと、何番ホールは水はけが悪いから、
どんどん水はけを良くした状況を作って環境を改善しながら、
そうすることによって、大体同じようにやっても対応できるようなグリーンを最終的には仕上げていく。
田村
キーパーの仕事ってさ、グリーンを見て判断するだけじゃなくて、
例えば朝の作業とかで、ちゃんとみんなができてるかとか、困ってることがないかとか、
そういうのを確認するっていう役目もあるでしょ?
それは、グリーンを見に行くついでの片手間みたいな感じでやってるの?
畑
やっぱりこの役割分担っていうのをしないと、なかなか難しいと思う。
作業される人数も非常範囲に及んでる。
田村
そうなんだよ。
畑
そうなると、グリーンのチェックと人の管理っていうのは、
ある程度、ちょっと引き離して考えないとダメなんだよね。
どうするのかっていうときに、自分の分身を一人ない人やっぱり作る。
サブキーパーの領域の方。
そうか。
っていうことが大事。それはキーパーでしかできないんで、そこは絶対外せないけど、
田村
例えばサブキーパーを作るのであれば、その一人に集中する。
なるほど。まずその人を育てるために、その人に徹底的に教え込むっていうこと?
畑
教え込む。
田村
なるほどね。
畑
従業員の方々に対しては、サブキーパーの方から教えてもらう。
田村
それいいかもしれないね。
畑
キーパーは基本的にマネジメントが仕事なんで、役割分担はそこでしっかりしないと、
やはり組織として良くないと思う。
田村
なるほどね。
畑
最近キーパーってものすごく優秀で器用で、とにかく仕事しいって言われて、
仕事が大好きな人が多いかな。
すべて自分でやってしまう傾向にたる。
こうなることによって後継者が増えた。
みんなよくやる従業員とかはものすごく増えるんだけど、
その代わりに次の担い手っていうことだ。
どうしてもキーパーが全て自分でやってしまって、
人を育てるっていうことをおろそかにしてしまうから問題が出てくる。
そうだね。
技術の継承者がいない
田村
事になってしまう。
機械とかは乗れるけど芝が見れないとかね。ありがちだよね。
畑
そこで考えるのはアウトソーシング。
田村
キーパー派遣。
畑
ということにつながってしまう。
どうしても。
田村
ちょっと時間がそろそろ迫ってきてるんだけど、
芝を見るっていうところで言い残しがありますか?
次世代のグリーンキーパー育成
畑
観察は力なり。
田村
そうだね。
畑さんのノートとか見てると本当にそう思う。
あれいろんな人に見せてあげたりとかするけど、やる人って実際いないよね。
考え方が違うからね。
畑
だからそれぞれの独特でいいんで、
想像力を持って、考え方を持っていくことがキーパーを楽しむことの1つになる。
そうすると芝を見ることが楽しくなるし、
田村
好きになる。
一回この「いいよ」って言われてることをやってみるっていうのも大切かも。
畑
面白いかもしれない。
田村
新たな発見があるかもしれない。
じゃあそんなところで今日は終わりにします。
この番組は畑さんの経験をもとにお話ししています。
芝草学的には誤りや異なる解釈があるかもしれませんが、
こういう考え方もあるんだなと一つの現場の声として聞いていただけたら嬉しいです。
感想や質問など気軽にメッセージいただけると嬉しいです。
Xやインスタグラムでハッシュタグコース管理の現場をつけて投稿していただくか、
概要欄のお問い合わせフォームからも送っていただけます。
ここが気になった、こんな話が聞きたいなど一言でも大歓迎です。
もし番組を気に入っていただけたら是非フォローやレビューもよろしくお願いします。
次の配信の励みになります。
また畑さんは現在ゴルフコース管理アドバイザーとして活動しています。
現場の改善や品質向上の支援に加え、次世代のグリーンキーパー育成にも力を入れています。
芝の管理技術だけでなく、なぜそうするのかどう考えるのかといった考え方の継承を大切にし、
現場のスタッフと共に学び合うスタイルで指導を行っています。
番組を聞いて、一度話を聞いてみたい、うちのコースを見てもらいたいと感じた方は、
概要欄のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
長くなりました、最後のお知らせが。
畑
ありがとうございました。