ゴルフコース管理の現状
田村
コース管理の現場。この番組は、トーナメントコースをはじめ、様々なゴルフ場を渡り歩いた元キーパーの畑さんと、現場を支える事務員の私、田村が、ゴルフコース管理の現場で見えること、感じることを素直に語り合う番組です。
はい。
畑
昨日さ、久しぶりにゴルフに行って、めっちゃ楽しかったんだけど、あのゴルフのメンテナンスをずっとしててさ、ゴルフをする機会って、なんか意外とないんだよね。
田村
まあ、最近ね、忙しいしね。
畑
なんかね、本来ゴルフをもっともっとして、ゴルフの良さをみんなに伝えてさ、で、コースに反映してもらうように促していくっていうのは本当は大事なことなんだけど、ところがなんか目の前にコースがあると、あんまりしないっていうのが現実かなと思いながら。
田村
久しぶりだったけど、たくさん叩いた?
畑
たくさん、まあまあまあちょっと叩いたね。
へへへへ。
まあけど、どういうのかな、自分のゴルフスタイルっていうのも変わってきちゃって、昔はね、スコアを追い求めて、やっぱり悪いスコアが出たらコースの責任にしたり、周りの人の責任にしたりね。
自分が悪いのに、そういった時代があって、スコアを求めちゃってね。
最近はやっぱりメンテナンスをずっと長年やってくると、ゴルフのスタイルももう完全に変わってしまって、コースを見るっていう面白さに目覚めてしまったね。
それはまあメンテナンスやってるからっていう以上に、コース設計家のお友達ができて、その方の考え方とか思想とか概念とか、ゴルフ場を作るにあたってのそういったものをね、ちょっとずつ教えてもらう流れの中で、
なるほど、グリーンのアンジュレーションって、なんとなく二段グリーンとか、ものすごくうねってるねとか、真っ平だねとかって、自分たちは素人考えで言ってるけど、設計家の人からしたら、まずプレイヤーはTショットを打ちます。
セカンドからまたグリーンを狙っていきます。それのバランスを取った上で、意味のあるグリーンを作ってる。
なかなか難しいけど、とにかくTショットをしてセカンドを打ってグリーンに乗すまでのストーリーを描いて、ゴルフコースを設計してるから、例えば1番ホールは少し難しい1番ホールにしようかなとか、じゃあスコアは本来4でパーなんだけど、4.1ぐらいのスコアにしてあげようかなと、このコースは。
少し難しくしようっていう設計をされるよね。じゃあ1番ホールは真っ平なグリーンよりも少しうねりをもたすグリーンにしようか、ここにはバンカーを3つ作ろうかとか、いろいろ工夫をしてスコアをコントロールするよね。
昨日一緒に行ったのも設計家のお友達? そう、設計家のお友達ね。もともとの設計は上田治さんっていう設計家の作られたコースなんだけど、それを手直しした設計家の方。なるほど。
じゃあその人が何考えてそういう風に設計したのかっていうのを聞きながらゴルフができるってこと?聞きながらしたのね。めっちゃ楽しいね。だからこのホールはね、ティーショットはあの場所に狙って、こう行くのがベストなコースだよと。
ところが右側を本来狙うべきところがベストコースだけど、左に打っていけば安全な場所に打てる。けどもスコアはパーが取りづらくなっちゃうよと。だから秦さん右にチャレンジしてごらんみたいな。って言いながらね。それは面白いかもしれない。面白いよね。
だからやっぱりコースってスコアだけではなくて、やっぱりそういう醍醐味も自分たちはそういう設計家を知ったからそういう喜びも覚えられるようになったんだけど。
設計家の意図
田村
でも普通のゴルファーの人がさ、ゴルフするときにその設計家の意図みたいなのってゴルフしてる中で見えたりするの?
畑
見えるっていうのか、見ようとする人もいないだろうし、一番ホールはミドルホールだねとか、池があれば池があって難しいねとか、その程度のことでね。まずわかることはないと思う。
田村
でもなんか絶対わかったら面白いのにね。
畑
面白いね。
田村
ゴルフ場のウェブサイトとかでさ、コースの説明ってあるじゃない。あそこにちょっと書いておいてくれたらいいよね。
畑
そうね、ちょっとマニアックになってくるけど、本来そういう意図で作ってるんですよっていうのをね、書くと面白い。
なんか前にさ、英語の本で翻訳したウェ、ウエッジウッド?、違う、なんだっけ?
ウィングドフット。
田村
あの本読んだ時もさ、ここで立ち止まって後ろを振り返るとこの木にこういう花が咲いててとか、まずここの藤のところで休んでくださいとか、なんかああいうのとか知るとやっぱ面白いなと思う。
木一本一本に意味があって植えられてるんだなっていうのを知って面白かった。
畑
だから自分たちはやっぱ思うのは、自分はメンテナンスの立場としてコースに携わってるけど、やっぱり設計家の人のそういう話を聞くとね、もっともっと表にね、設計家の人ってプロゴルファー以上に出るべきなんじゃないかなと。
世の中のゴルフ場ってこうして作られて、そこで選手がしのぎを蹴ったり、優勝争いしたりする。そこにまたメンテナンスっていう裏方がいたり、全てゴルフコースがあっての話なんで。
だからゴルフ場って何々コースがどこかにあるっていう存在は皆さんある程度は知ってるんだけど。
田村
でもマニアの人はいるでしょ。
畑
マニアでもわからないと。
昔は名だたる人がコースを作ってるケースがあったりしたから、あれだけど今はもうバブルが終わって、やっぱり新しいコースができない時代になってるんで、どちらかと言えば手直しをして改造していくっていうケースが多いから、現在改造してる人の名前が出づらい。
田村
確かにね。
畑
もともと作った人の名前は上田治さんとか井上誠一さんとかっていうのはわかるんだけど、
そのコースをその人の意を汲みながら悩みながら改造した設計家の名前っていうのはまず出ない。
田村
出ないね。
あのウィングドフットの本読んだ後でさ、ウィングドフットのところでトーナメントがあって、テレビ見て出てきたコース全然読んだ本と違ったもんね。
畑
違ったね。
田村
全く違ったもんね。あれ、そうだね、どういう意図でそういう風にしたのかとかって。
畑
元の設計をどういう意図でこう改造したのかとか、そこにまた2つ目の理由がついてくるよね。
田村
そうだよね、何かちゃんと考えられてそういう風にしたわけだもんね。
畑
どうしても古典的なコースの役割っていうのが終わって、次世代の役割を果たすべき改造するから、どうしても理由が必要になってくるよね。
そうだね。
クラブの進化もどんどんしていくし、アスリートの体型もどんどん変わってくるし、飛距離もどんどん伸びてくるしね。
田村
設計家の人っていうのはメンテナンスのことってどれぐらい考えて設計するんだろう?
畑
出身がグリーンキーパーを昔していて設計家になった人とか。
田村
そういう人もいるんだ。
畑
土木会社に勤めてて設計家になったとか、いろんな道筋があると思うんだけど、
キーパー上がりとかそういった人が設計家になった場合においては、コース管理のことは全面的に考えて設計するんじゃないかな。
例えば支配人上がりの人がなかなかないかもしれないけど設計家になったとしたら、
ひょっとしたら入場者が多く入った時に皆さんが気分よく回れるようなバンカーの数に作ったり、
田村
プレイヤーの進行も考えて儲けも考えた上で設計していくかもしれないし、いろいろやね。
設計家によって全然じゃあ一つのコースでもいろんなコースになり得るんだね。
面白いね。
畑
だからプロゴルファーが設計するのと、自分たちみたいにハンデキャップが30くらいの人が設計するのと、
全然ゴルフ感っていうものが違うからコースの設計って変わってくるもんね。
そこをうまく万人に受けるように設計するのが設計家の醍醐味であって腕であるんだと思う。
だからいろんな個展を勉強したりね、いろんなコースを周りに行ったりして勉強されてるよね。
だから尊敬するね。
だからもっともっと表に出て欲しいなと思う。
それともう1個言いたいのが、いいコースを設計をしてるにも関わらず、メンテが悪いコースが結構あったりする。
だからこれは自分たちに関わってくることなんで。
プレイヤーの体験向上
田村
それ具体的に言うとどういうこと?
畑
例えばシングルさんを対象にするんであればお上手だから、
そのパッティングなんかでも素人では3回4回打つものが2回か1回で入っちゃうみたいな。
そこには何を設計家が求めるかっていうと、
グリーンの形状とグリーンスピードっていうのは密接な絡みがある。
田村
グリーンのスピードとグリーンの形状?
畑
形状。グリーンのスピードとグリーンの形状っていうのは最大に考えて設計されると。
ハンデキャップ25とか30とか、自分たちみたいに90を切るか切らないかみたいな人を対象にするコースを設計する場合は、
できるだけ平らなグリーンを作って、
グリーンスピードは8.5フィートから10フィートぐらいに留める。
ところが、真っ平らなグリーンを作って8.5フィートから10フィートに留めるんだけど、
それで楽しめるパッティングができるんだけど、
メンテナンスが悪いと7.5フィート、8.5フィートまでの間ぐらいでのセッティングをしてしまうケースもあったりする。
そうすると平らすぎて全く転ばない。
田村
あー、なるほど。
畑
やっぱり設計とメンテナンスのシワフのクオリティっていうのはものすごくどういうのかな?
田村
密接な関係がある。
畑
関係がある。
だから設計家もメンテナンスのことを気にしないとダメだし、
メンテナンス部門もグリーンキーパーは設計家のことも知らないとダメ。
お互いにものすごい近い存在になって会話をしないとシグハグなメンテナンスになってしまう。
設計家は元のコースを作る人。
想像しながら表現していく人。
それは依頼主から施主さんからこういうコンセプトでこういうコースを作りたいんだ。
だから設計家にお願いする。
その意を組んで作っていく。
じゃあその意図を知った上で今度はキーパーのメンテナンスをしなければダメだ。
田村
うちの新しく来たグリーンキーパーの方も入ってきてすぐにコース設計図とかを見たり、
回収したからその回収の時にどういう意図があったのかっていうのを残ってるのがあるから
それを一生懸命読み込んだりとかしてやってた。
でもそういうのが残ってないところだって多いでしょ?
畑
多いね。設計家は依頼を受けてやってるから、
だからオーナーに聞くなり、お金を出した元のクラブの運営会社の当時おられた人に話を聞くなりしないと
それと言語化してある文章を見ながら、なるほどなるほどって精を背負っていく。
設計図がないところも多いもんね。
田村
設計図は昔はずさんなことが多かったみたいだからとか保管状況が悪くて紛失してるとかね。
畑
もうグリーンの形変わってるよとかね。
田村
だからそれでもやっぱり読み解くことはできるね。ある程度。
設計家の方もさ、自分たちのブランドっていうかその思いっていうのをさ、
残しとくためにちゃんと文章で残して渡すとかしてもいいかもしれないね。
いや、してるしてる。
あ、してるんだ。
それはいいね。じゃあそれをみんなにお知らせすればいい。
そう。それをお知らせする相手を自分は設計家は直接キーパーに伝えてほしい。
畑
そうだね。直で伝わったらいいよね。
田村
その表現をするのがキーパーだから。その設計家とか設計師さんの思いを表現する表現者だから。
畑
だって設計家の頭の中でさ、ここは絶対伸ばしておかなきゃ面白くないぞっていうところを短く買っちゃったりとかさ。
それは設計の中の戦略、戦略型設計。
昔はね、可罰型設計、戦略型設計っていうのがあって、
田村
現代はもうほぼ戦略型設計っていうものに移行してあるんだけど。
畑
可罰型設計?説明して。
田村
プレイヤーに罰を課す。
畑
どういう意味?
ゴルフコースの設計
畑
例えばTショットをします。で、良いショットをしました。
ナイスショットなのにバンカーに入ったりする。
それはもうあなたナイスショット打ったらここでハザードが待ってて一打罰が課されますよという場所を作ってしまう。
だからフェアウェイを横切ってしまうようなバンカーを作ってしまうとかね、IPポイントに。
いうのを昔、可罰型設計って言ったよね。
それより戦略型設計っていうのは、フェアウェイの横切るバンカーっていうのを作らずに、
例えば右サイドに1個だけバンカー作りますと。
左側はバンカー作りませんと。フェアウェイにしておきますと。
で、右側のバンカーを本来超えていけばものすごくいい場所に出そうな設計なんだよね。
そこをBラインって言うんだけど、そこを狙っていってバンカーの先に行ったらバーディーが待ってますよと。
それぐらいベストな場所に行きますよと。
田村
BラインのBはベストのB?
畑
ベストのBだと思う。
だからバンカーを配置して、このバンカーを果敢に超えていきなさい、チャレンジしなさいと。
そうするとバーディーが待ってる可能性が高いですよ。
田村
チャレンジした人だけが得られる?
喜びがありますよと。
畑
それを1本用意しとく?
用意しとく。それをBライン。
なるほど。なるほどね。
その代わりにミスをしたらバンカーに入りますと。
果敢に攻めなさいよ、こっちいらっしゃいっていう感じ。
ところがそんな人ばっかりじゃないから、自分はそういうリスクを踏まない方がいいんだっていう人は、
左側のバンカーのないフェアウェイを狙ってる。
その代わりにそこからの角度で狙うと、グリーンの前に深いバンカーがあったり、
なるほど。
グリーンが止まりづらい傾斜にしてあったりすると。
考えられてるね。
メンテナンスの重要性
畑
だからここでメンテナンス部門の話をすると、
じゃあそのご褒美を与えられるBラインに行って、
リスクを踏んで内緒とした人が飛んだ場所のフェアウェイが、
薄いフェアウェイであったり、ラチであったり、草が多かったりすると、
これっておかしいじゃないのと。
田村
おかしいね。それはおかしいね。
畑
それと刻みますと。刻んだにせよよ。
あえてリスクを回避して、
次の罰がどっかで待ってる可能性があるかもしれないけど、
田村
刻みますって言った人が、刻んだ場所の芝生の状態が悪いとか。
畑
一概には言えないんだけど、アンフェアになってしまうと、
それってゲームとしては成立してこないよねと。
それって設計家の意図と違うメンテナンスをしているがゆえに、
起こる現象なんじゃないですかと。
田村
設計家の方がさ、メンテナンスマニュアルみたいな、
ここは短く買ってとか、ここは絶対ラチ作らないでみたいなの作ったらいいんじゃないの?
畑
それはあるのかな?
それは具体的なものはない。ないんだけど。
本来、ラチにしないこととかじゃなくて、
その設計家は、なぜここにバンカーを作って、
こちらをオープンにしているのかっていうのを、
キーパーは説明を受けてやれば、
どういうメンテナンスをしないとダメなのかが自ずと分かる。
それをより具体的に詳しく言語化するのであれば、
ここはこういう場所だから、ラチはありえないからねって書けば、
田村
ものすごく分かりやすい。
設計図にBラインとアンパイラインを書いておいて、
ここは用メンテみたいな図に書いておいてくれれば、
分かりやすいよ、そこまでで一つの仕事にして、
畑
ちょっとプラスもらったり。
それはいいよね。
だから何が言いたいかというと、
それぐらい、例えば田村さんと私が設計家とメンテナンスのキーパーとしたら、
田村
こういう会話をどんどんしないとダメなの、本当は。
そうだね、熱く語り合っておかないとね。
畑
激論交わしておかないと。
でないと表現した自分のせっかくのコースが、
田村
メンテナンス次第でいかようにでも変わってしまう。
本当だね。
それでさ、メンテが悪くて、あんまり機能してなくて、
そこに自分の名前が出るのもちょっと嫌だしね。
畑
ちょっとどころじゃない。
それはもう名前出さないで。
田村
以上に、何やってるのキーパーっていう話。
でもそれは言えないんでしょ?
畑
設計者側が仕事が終わった後に、何やってるのって言える?
それは、例えば監修とか設計っていう名前を残してもらって、
しっかりクラブ側と契約をしておけば多分言えると思う。
あーね、それした方がいいよね。
だから、私も昨日も設計家の方に言ってたんだけど、
やっぱり自分の表現して世に送り出してきた子供を見に行ってね、時々。
身にそぐわんようなメンテがされてたら、
やっぱり一言二言言って帰らないとダメだし、
それでも改善できない場合は交代させてくれとぐらいのね、
自然とした態度を取らないと、日本のゴルフコースがダメになっていっちゃう。
ほんとだね。
だからその辺は厳しいことを言うかもしれないけど、
お互いにね、お金を出す人がいて、表現者が表現して、
それを磨きをかけて初めてお客様をお迎えして楽しんでいただく。
で、何か不具合があれば、またその3人がタグを組んでやる必要がある。
そういった設計からリニューアルから手直しからメンテナンスから、
全て3人の共同作業になってくるんじゃないかなと。
だからどれも大切。
だからメンテナンスの立場で言えば、やっぱりキーバーは
貪欲にもっともっと技術を高めていかないとダメだし、
田村
勉強もしないとダメだと思うよね。
そういう裏に隠された意図っていうか、
畑
そういうのを知りたがるっていうのも大切だね。
それが昨日ゴルフをしてせずに思いました。
田村
分かりました。
じゃあちょうどいいお時間ですね。
この番組は畑さんの経験をもとにお話ししています。
芝草学的には誤りや異なる解釈があるかもしれませんが、
こういう考え方もあるんだなと
一つの現場の声として聞いていただけたら嬉しいです。
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概要欄のお問い合わせ本部からも送っていただけます。
ここが気になった、こんな話が聞きたい、
など一言でも大歓迎です。
もし番組を気に入っていただけたら、
ぜひフォローやレビューもよろしくお願いします。
次の配信の励みになります。
また、畑さんは現在、コース管理のアドバイザーとして活動しています。
現場の改善や品質向上の支援に加え、
次世代のグリーンキーパー育成にも力を入れています。
芝の管理技術だけでなく、
なぜそうするのか、どう考えるのかといった
考え方の継承を大切にし、
現場のスタッフとともに学び合うスタイルで指導を行っています。
番組を聞いて、一度話を聞いてみたい、
うちのコースも見てもらいたいと感じた方は、
概要欄のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
はい。ありがとうございました。
ありがとうございました。