2025-06-02 10:01

heldio #317. dream,bloom,dwell ー 「意味借用」

#英語史 #英語教育 #英語学習 #意味借用 #古ノルド語 #言語接触
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サマリー

このエピソードでは、英語の単語の意味を他の言語から借りる現象、特に「dream」、「bloom」、「dwell」の語源に焦点を当てています。各単語が歴史的にどのように意味を変化させてきたのかについて具体例を通じて、言語間の相互作用の面白さを探ります。

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おはようございます。英語の歴史を研究しています、堀田隆一です。 このチャンネル、英語の語源が身につくラジオ、通称heldioでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
意味の借用の概念
今回取り上げる話題は、dream,bloom,dwell ー 意味を借りた意味作用、という話題です。
予想の言語から単語を借りてくる、これは非常に日常茶飯で、日本語でも英語でも非常に当たり前のように見られるんですね。
予想の言語の単語をそのまま、完全なそのままではないんですけれども、例えば発音なんかですね、例えば日本語が英語からこのdream という単語を夢の意味で借りてきて、今日本語で使っているわけですが、もちろん英語のdream
という発音ではなくて、あくまでドリームと日本化した形で、日本語の発音に近づけた形で取り入れる。ただ、形としてはdreamとドリーム、十分に似ていますし、意味も夢という意味で、直接そのまま取り入れたというように近いですね。
普通はこういうことが多いんですね。ところが中には面白いことに、予想の言語の単語の意味だけを借りてくる、つまり魂だけを抜き取って、自分の既にある自分の言語の単語の中に、その魂を注入するという言い方になりますかね。
もちろん何らかの形で、その外来の元の外国語の単語ですね、と自分の言語の単語の間に何らかの関連付けがなければいけません。
例えばそれは語形が似ているとか、語源が同じであるとか、あるいは明らかに対応する意味を持っている単語であるというふうに、2つの言語の間で、かなりわかりやすい形で関係があるといったときに、
その作用元の単語にあって、作用先の単語にはない意味がですね、流れ込んでくるといったような関係になります。これ具体例を挙げるのが早いので、見てみましょうね。表題に挙げた3つからいきます。
まずですね、dream、これは英語で今夢という意味を持ってますね。ところがこれはですね、小英語の段階ではまた違った意味を持ってたんですね。小英語ではdreamというふうに形、発音が少し違っていましたが、明らかにこれ現代のdreamに繋がる小英語形ということですね。
dreamということだったんですが、この小英語でのこの単語の意味は、夢ではなくて喜びとか音楽という意味すらあったんですね。つまりjoy、musicぐらいの意味です。いわゆる夢という意味はまだ存在していません。小英語のdreamはあくまで喜び、音楽という意味だったんですね。
では、この夢という現代の一番普通の意味はどこから来たのかというと、実はこれはバイキングの言語であるコーノルド語、現代の北欧諸語の祖先ですね。1000年ぐらい前の姿です。当時そのコーノルド語の語源的にも同じ単語ですね。
ドラウムルという発音だったんですが、これが既に夢という意味を持っていたんです。そして、8世紀半ばから11世紀ぐらいに、この小英語和歌、つまりアングロサクソン人とコーノルド語和歌、つまりバイキングたちが交わります。簡単に言えばバイキングがイングランドを攻めてきたということですね。そこで両言語が交わることになります。
その中で対応する小英語のドレイアムというのと、コーノルド語のドラウムルですね。これ同型との同じゲルマン系の言語ですから、対応するってことは和歌通しわかるわけですね。ところが意味は全く違っていた。小英語では喜び音楽だし、コーノルド語では夢ということですね。
ところが語形上、語源上をこの2つがリンクするっていうのは、字面に近いので、コーノルド語側の意味、つまり夢という意味が小英語のドレイアムの中に移ってきたということですね。
そしてその後、本来の小英語での意味だった喜び音楽っていうのはだんだんと消えていって、最終的には夢のほう、つまり借り物であるコーノルド語から入ってきたほうの意味のほうが、このDREAMの基本的な意味となって、そして現代に至るということなんです。
つまりDREAMという容器というか体、これはずっと小英語時代から現代に至るのはずっとあったんですが、その中身というか魂といいますが、これがコーノルド語のものに置き換えられてしまったと。
本来の小英語の喜び音楽、これが中身だったんですが、コーノルド語側の対応語の中身である夢、これに魂を乗っ取られてしまったと。
そんなように比喩的に表現することができるかもしれません。
bloomとdwellの変遷
同じようにBLOOMというのもそうです。これ花ってことですね。例えばThe cherry blossoms are in full bloomというときのBLOOMです。
花ですね。
ところが、これは今でこそ花の意味なんですが、本来は鉄の塊を意味するんですね。
これ小英語ではBLOWMAと言って、鉄の塊を意味した。
ところが対応するコーノルド語ではですね、このBLOWMと言って既に花の意味があった。
ということは先ほどのDREAMの場合と一緒です。
形状はBLOWMAとBLOWMですから、明らかに似ています。同型の単語ですね。
この同じ容器に、ほぼ同じ容器の中にですね、この内容、魂があったんですが、それもともとは鉄の塊だった。
ところがコーノルド語側の花という意味が入ってきて、この英語のBLOOMの容器を埋めてしまったと、そんなことになりますね。
もう一つ挙げておきますと、DWELLという単語ですね。
これは動詞で住む、暮らすぐらいの意味がありますね。
例えば、THEY DWELL IN THE FORESTのような表現で、住む、暮らすという意味が一番普通だと思うんですね。
ところが、これも元々の小英語DWELLLANDという発音の動詞だったんですが、
この小英語のDWELLLANDはですね、住む、暮らすという意味はなくて、迷わせるぐらいの意味だったんです。
READ ASTRAYぐらいの意味ですね。迷わせる。全く暮らす、住むという意味はなかった。
ところが、語源的にも語形的にも対応するコーノルド語のDWELLIAというものですね。
これはすでにですね、留まるとかグズグズする、つまり一つところに留まっている、住んでいる、暮らすということにもなりますが、
この意味をすでにコーノルド語側では持っていたということですね。
それが英語側にも、つまり英語のDWELLLANDという単語側にもこの意味が乗り移って、
この住む、暮らす、こちらの意味がむしろ基本となったということなんですね。
この意味釈要という現象が面白いのは、例えば英語のですね、DREAMなり、BLOOMなり、DWELLなりですね。
これ小英語からずっと現在まで単語としてはあるんですよ。形としては多少発音が変わったとはいえ、
ずっと辞書で言えば辞書の項目として常にあり続けたわけですね。
ところがコーノルド語と接触することによって、その中身、意味が完全にコーノルド語の対応するものに置き換えられてしまったという例なんです。
つまり旗目には何にも変わってない、ずっと存在し続けているんだけれども、魂、見えないところで中身が取り換えられちゃったっていうところが面白いですね。
意味釈要、意味だけ、つまり中身だけを拝借してくるということで、普通の釈要と違ってですね、中身だけを取ってくるという意味で大変面白い例ということになりますね。
実はこの手の例っていうのは意外とたくさんありまして、今回は英語とコーノルド語との対応関係ということで話しましたが、
例えば英語とラテン語であるとか、英語とフランス語であるとか、複数の言語が関わったような場合にもですね、結構この意味釈要が見られるということなんですね。
ただの釈要ではない、中身の釈要という話をお届けしました。それではまた。
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