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2025-02-15 09:22

heldio #210. オープン借用とむっつり借用

#英語史 #英語学習 #英語教育 #借用 #意味借用
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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、授賞も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を失っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、オープン借用とむっつり借用、という話題です。
これは何のことかと言いますと、借用語の種類の話なんですね。
これまでの放送でも様々に取り上げてきましたが、英語という言語は、語彙を非常に多くの外国語、他の言語から取り込んでいます。
本来の英語に由来する語源の単語ですね。
本来語は英語全語彙の3分の1ぐらいしかなくて、残り3分の2は外から入ってきた単語であると。
借用語だらけという言語が英語なんですね。
そうしますと、外から入ってきた借用語を様々に分類する方法がありまして、一番簡単なのは何語から入ってきたかということで、
フランス語から、ラテン語から、コーノルド語からということなんですが、
借用語の仕方と言いますかね、語の何を借用したのかという観点からですね、大きく2つの種類に分けられるのではないかというふうに私は考えています。
それにつけた名前が、1つはオープン借用というもので、もう1つはムッツリ借用というふうに、
これ自身も私の造語なんですけれども、そのように読んで大きく2つに区分しているんですね。
それぞれどういうことかということを話していきたいと思います。
具体例がないと分かりにくいですので、日本語で考えましょう。
日本語も非常に多くの単語をですね、外の言語、よその言語から借りてきています。
古い漢語であるとか古くは漢語ですね。
そして近世、そして近代、現代ではですね、主に西洋語から多く借り入れているわけですね。
その中に英語ももちろんありまして、非常に大きなシェアを占めていますね。
語を借りるという時の語なんですけれども、語というのは意味と形から成り立っています。
これをソシュールはですね、シニフィエとシニフィアン、用語で表現していますけれども、語というのは意味と形から成るんだということですね。
意味は分かりやすいと思うんですね。形というのは発音する時、話し言葉の場合は音形、つまり発音になりますよね。
書き言葉の場合には文字、つづり字みたいなものになるんですが、目に見えたり耳に聞こえるものということですね。
意味というのは概念ですので、形はないですね。頭の中で理解するもの。
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この意味と形ががっつり結びついている塊ですね。これのことを記号と呼んで、今回の場合はこれをイコール語と考えていいと思うんですが、語というのは意味と形、これがくっついたものなんだということをまず理解しておきたいと思うんですね。
この語を借りるといったときに、何を借りるのか。語の意味の部分なのか、形の部分なのか、両方なのかということですね。ここで大きく2つに分かれると思うんですね。
まず普通の借用語。私たちが通常借用語とか外来語というときに意識するのは、そのまま外の言語にある、もうすでに語として存在しているものですね。そのまま意味も形もひっくるめて持ってくるというものですね。
例えば英語のワインという単語がありますが、これを日本語に取り込む際にワインとして、もちろんお酒のワインという意味と、もう一つ発音上ワイン。これを日本語に取り込むわけです。英語から日本語に移るわけですので、完全に一致というわけではありません。
例えば発音でもワインというふうに一音節で言うのが英語だとすると、それを日本語化してワインというふうに三音節で持ってくるわけですから、多少日本語化されています。アレンジが加わっています。ですが全体としてみればそのままコピーして持ってきたというふうに考えることができると思うんですね。
つまりワインを日本語のワインとして持ってきた場合、これはすでに英語にあるワインという意味と形が一体化したものを多少のアレンジはありますけど、基本的にはそのまま日本語に持ってきた。これは非常にわかりやすい釈用で、一番普通に我々が想像するタイプの釈用語だと思うんですが、これをオープン釈用と名付けておきます。
なぜオープンかというと、釈用をしたということがすぐにわかるから。ワインという日本語で言ったとしてもあるいは書いたとしても、これはもともとの英語のワインに基づくんだろうな、それをそのまま借りてきたんだろうなということはとてもよくわかります。なのでオープン。借りてきたことが非常にわかりやすく見えるということですね。
それに対して同じ英語のワインというのを日本語に訳した形で持ってくる場合があります。あまり今は普通ではないと思いますが、ぶどう酒という言い方がありますよね。
これはワインを、いわば意味をとって、そして生成過程と言いますかね、原料、材料みたいなことも念頭にぶどうからできたお酒だということで解釈した上で、いわば翻訳、移訳した形であくまでぶどうも酒もですね、既に日本語になっている要素、日本語にある要素を組み合わせて訳語を作ったって感じですね。
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この場合、一般には釈用語と見なさないんじゃないかと思うんですね。ぶどう酒ってやった場合には見栄えが明らかに日本語なわけですよ。ぶどうも酒もですね。なので何か借りたようには見えないんですが、確かに形状はそうです。形状はすべて日本語要素からできていますが、意味と言いますかね、意味概念そのものは英語のワインから借りてきていると。
つまりもともと日本語っていうか日本語文化の中にはワインに相当するものがなかった。それが外から入ってきたわけですよね。なのでやはりこの内容自体、意味内容自体は明らかに借りてるわけです、外から。ただ形はそのままワインに基づいて持ってきたわけではなくて、意味を取って日本語に訳したっていうことです。いい形です。
借用語なのかどうかということが一発でわからないという意味で、無言の借用と言いますか、むっつり借用と呼んでいます。
オープン借用とむっつり借用では同じところはですね、まず意味は間違いなく借りているってことです。
よその言語からですね。そして形も同じようによその言語からそのまま借りていればオープン借用。そして形はあくまで日本語要素を用いて、よその言語らしくない形で意味だけ受け入れる。これがむっつり借用ということになりますね。
さあもう一つですね。むっつり借用にはもう一つのタイプがありまして、これも紹介しておきたいと思うんですが、例えば日本語に神っていう言葉がありますね。神様です。
これは古来ですね、多神教の日本的な多神教の神を表していたわけなんですけれども、キリスト教の中に触れますと、日本でもですね、神に付される意味がですね、多神教の神ではなくて、キリスト教の一神教の唯一の神だという発想が入っています。
これはもともとデウスっていう単語であるとか、あるいは英語ではゴッドという単語と触れ合ったことによってですね、日本語母語話者がもともとあった神という単語に日本語に一神教の意味を移してきたということですね。
言い方を変えれば、あるいは見方を変えれば、神という単語に一つ意味が追加されたということになります。つまり一神教の神という意味ですね。これはなぜ追加されたかというと、もちろん西洋の言葉でのデウスであるとかゴッドがそういう意味を持っているからということですね。
やはりこれらのデウスとかゴッドという西洋の言語の単語ですね、これが持っている意味を日本語の神の中に持ってきた、連れ込んできたというふうに見えます。意味借用ですね。意味を借りてきた。形は神のままですけれども、そこに西洋語の単語の意味を借りてきたという意味で、これもまた意味を借りた、むっつり借用ということになります。
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ではまた。
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