現在完了形の文法ルール
今回の英語に関する素朴な疑問は、なぜ現在完了形は過去を表す副詞と共起できないのか、です。
確かに、これは非常に学校英文法などでも指摘される文法項目、ルールで例を挙げますと、
She came back from the US yesterday. これはOKですね。過去形cameとyesterdayが共起しているということです。
しかし、She has come back from the US yesterday. のように、現在完了形has comeというのと、
yesterdayという時を表す副詞、過去の一点を表す副詞と共起することは許されないというルールですね。
他には、He had an accident 10 days ago. はOKですが、He has had an accident 10 days ago. はダメという具合です。
他に、時の一点を問う、whenという疑問副詞ですね。 こちらも現在完了形と共起することはできないということです。
例えば、When did the civil war break out? これはOKなわけですが、When has the civil war broken out? これはダメということになっています。
この現象はよく知られているわけなんですが、実は理論的に言語学的に説明するのが難しいとされています。
現在完了というのはPresent Perfectといいますね。 なので、この問題、難問をPresent Perfect Puzzleというふうに呼んでいます。
いくつかの解決法、解決案というのが提案されています。
まず一つは、時制のスコープの問題だという捉え方ですね。 具体的に言えば、現在完了というのはHaveというふうに、現在形のHaveが出てくるわけですね。
これは形の現在形であると。 したがって全体としては、この文は現在のことなんだと。
それなのに、YesterdayとかTen days agoというような複式と凶器するというのはおかしなものであるという理屈ですね。
二つ目は、現在との関連という説です。
現在完了はよく言われるように、単なる過去ではなく、現在との関連を意識した過去、あるいは過去から現在への継続、とりわけ現在への関与ということに力点を置くんだということです。
したがって、明示的に過去の一点を示す、複式と凶器するというのは、過去から現在への継続とか、現在への関与という観点からするとフィットしないということですね。
これは非常によくなされる説明で、一般の学校英文本でもこのように解説されていることが多いのではないでしょうか。
また、ネイティブの直感にも比較的合うと言われているので、広く理屈として紹介されることが多いわけです。
しかし、現在への関与というのが確かに、現在完了の重要な特徴の一つですね、特徴づけるものだと思うんですけれども、
じゃあ、過去形を使ったからといって、本当に現在への関与というのが感じられないかというと、そうでもないという議論があります。
英語の歴史的背景
例えば、次の文はどうでしょうね。
Why is he so cheerful these days? He won a million in the lottery.
というふうに、最近彼は常に機嫌が良い。何でだと。
に対して、宝くじで100万円、100万ドル当てたんだということで、この答えの文でHe won a million in the lotteryというふうに、過去形を使うことに全く文脈上問題はない。
そして、明らかにそれが理由で、現在ご機嫌だということですので、現在との関与があるわけですよね。
過去形を使ったからといって、現在との関係がないとは言えない。
もちろん、ここでHe has won a million in the lotteryというのも可能ですが、両方の文とも、ある意味、現在との関連ということを前提にしているという意味では、大きな差はないということです。
このように、100%現在との関連ということだけで、ご説明を尽くすということは、なかなか難しいとされています。
他にも、意味論の観点から様々な仮説が提案されていますが、完全には、このPresent Perfect Puzzleというのは解決していないというのが現状かと思います。
そこで、角度を変えて、英語詞の観点からこの問題を見てみましょう。
実は、近代英語以前は、現在関与形と過去を表す副詞、副詞句というのも、中英語の例では意外と多く存在します。
ところが、これが17世紀くらいになって、いわゆる現代的なルールが定まっていきます。
つまり、現代のルール、現在関与形と過去を表す副詞とは競技できないというルールです。
教授的には、まだ説明尽くせないルールということは、先ほど述べましたが、この現代的なルールというのは、あくまで歴史の過程で獲得されてきたということです。
それも、比較的新しいです。
なぜ、どのようにそのルールが歴史上獲得されてきたのかというのが、英語史上の観点になります。
これも完全には解決していません。
現代英語に存在する文法のルールの多くは、かつては存在しなかったルールです。
ルールのなぜを考える際には、かつてはそのルールは英語になかったかもしれないという可能性を常に前提として持っておく必要があります。
その点を意識するだけで、現代英語の英文法のルールの見方が変わってくるかと思います。
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