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2025-03-09 10:00

heldio #232. なぜ thumb には発音されない b があるの?

#英語史 #英語学習 #発音 #綴字 #黙字 #綴字と発音の乖離
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サマリー

今回のエピソードでは、英語の単語 'thumb' における発音されない 'b' の存在とその理由について考察されています。特に、発音とスペリングの関係に焦点を当て、いくつかのタイプに分類される単語の例を通じて理解が深まります。

発音されないbの存在
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、なぜ thumb には発音されない b があるの、という疑問です。
昨日の放送で、なぜ親指は thumb なの、ということで、フィンガーと異なる独立した単語として、英語では thumb という単語を使うと。
これについて、語源的な観点から迫ってみました。
今回は、発音とスペリングの関係ということで、この親指を表す thumb というのは、t-h-u-m-b と書くわけですが、この最後の b は読まれないわけですよ。
b があったかもないかのように読まれるということですね。
考えてみれば、この mb で終わる単語というのはいくつかありまして、例えば climb の登るの意味の climb これも mb で書いておきながら b は読まずに m で止まっています。
climb ということですね。ある意味ではこの thumb っていうのも仲間なわけなんですけれども、なぜこのように mb と来た場合に b は発音されないのか、という一般的な問題に繋がりますね。
今回はこのスペリングと発音のギャップについて考えたいと思います。
今回のように mb で終わる単語ですね。これ、基本的には b が発音されません。
m で終わったのと同じような発音なんですが、いくつかありますね。そしていくつかこういう単語があるんですけれども、これは 3 タイプに分かれるということなんですね。
まず一つ目のタイプから行ってみましょう。これはですね、 climb, comb, dumb, lamb, tomb, womb
今、6 語あげましたが、これすべて mb という綴り字で終わっていながら、発音上は m で終わっているっていう単語なんですね。
この6 語はですね、実は古くはちゃんと mb で発音されてたんです。
例えば最初の climb を例にとりますと、これは文字通り、ローマ字通りに読んで、くりんぶって読んだんですね。
公英語では、これ登るという動詞ですけれども、典型的に原型はですね an という語尾をつけるんですね。
そうすると、クリンバン、クリンバンとなりまして、ちゃんと mb というふうにしっかり発音されてたんです。
後にですね、 an というのは語尾ですので、これが消えてですね、
この climb のところが語幹になるわけなんですけれども、この m と b という音ですね、これは音声学的には非常に似た音なんです。
m というのが、優勢、良心、美音と呼ばれるんですね。
まずこれ、声が出て、のどびこが震えて、そして両方の唇をしっかり止めて、その上で鼻から抜くっていうことですね、美音ですね、鼻の音っていうことです。
一方、その次に続く b というのは、優勢、良心、破裂音というんですね。
つまり、優勢と良心、両方の唇を使うって意味では一緒なんですが、これを強く破裂させた時に出る音っていうことなんですね。
m は美音、鼻に抜く音、一方 b は、むしろ口からですね、破裂させて、外に呼気を出すということでですね、
そこだけが違うということで、他はですね、舌構え、口構え、全部一緒なんですね。
ということで、非常に近い音っていうことで、融合してしまう傾向があるんです。
そうすると、m と b が融合すると、mm に近くなっちゃいますね。結局 b が m に飲み込まれる形になって、消えると、最終的には消えるという形で、
climb というふうになるわけですね。
その他の5つの単語も一緒で、comb だったのが comb になって、dumb だったのが dumb になり、lamb だったのが lamb になり、tomb だったのが tomb になり、womb だったのが womb になるっていう形で、
つづり以上は、もともとの b が結局残ってしまった形なんですけれども、発音上はこの b が消えてしまったために、現代としては、このつづりと発音がチグハグになってしまったというものですね。
もともとは mb というふうに、ちゃんと発音されていたんだっていうのが、この6語です。
これが、タイプ A というふうに呼んでおきましょうかね。
そして次のタイプ B が、まさに今回の注目すべき、sum。これがタイプ B に当たるんですね。他にも、例えば crumb, limb, numb こんな単語がありますね。
これらも、つづり以上は mb で終わっていながら、m で発音としては止めるという意味で、タイプ A と全く見栄えは同じタイプなんですが、起源としては実は違うんです。
この今挙げたタイプ B に属する crumb, limb, numb, sum この4語に関してはですね、実はもともと b は発音上も、もちろん、つづり以上もなかったんです。全くなかった。
例えば、今回問題になっている sum で言ってもですね、小英語自体にはこれは suma という単語で、t-h-u-m-a のように綴って suma なんですね。
つまり b なんて、つづり以上も発音上も全くなかったということなんです。 b が入る余地なんかなかったんですね。
ところが、じゃあ何で入っているかというと、タイプ A の影響です。どういうことかというと、タイプ A の climb, comb, dumb, lamb, tomb, womb これはですね、結果的にですよ。
もともと mb はすべて mb と読まれていたんだけれども、 b がなくなって、発音上なくなって mb と書いてあるけれども、実際には発音は m で止めるんだよということになりました。
そして、こうした単語がですね、多くはないわけです。先ほど言った 6 語とか、プラスアルファあるかもしれませんが、そんなに多くはないんですが、この形で確定してしまった。
つまり、発音は m で終わるんだけれども、つづり以上は mb で単語終わりますよというような、特に climb なんかは非常に頻度も高い単語ですよね。
これで目と耳が慣れてしまった。つまり mb と書くけれども、発音上は m だよという、一度この規則ですね、つづり字と発音の規則がある程度馴染んでしまうと。
スペリングの逆転現象
確立してしまうと、あ、そうかと。 mb と書くけれども、発音は m なんだと。
あるいは逆に、語末が m で発音上は終わるけれども、これは mb と書いてもいいんだというような、一種の発音とつづり字の関係ですね。
イレギュラーな関係ではあるんだけれども、これが確立してしまうわけです。
そうすると、それを逆転とってと言いますかね、その確立した規則を逆転とって、 thumb っていうのは親指の意味なの。
親指の意味なの。 thumb っていうのは m で終わるなと。発音上ですよ。
発音上 m で終わるっていうことは、つづり字で書くときには m でももちろんいいけれども、 mb っていうのもありなんだということになるわけです。
つまり、先に発音とつづり字のイレギュラーな関係が確立してしまうと、それを逆に応用してですね、
サムみたいに発音上 m で終わるものにも、つづり字上 mb と書いてあっても、これは英語の一応規則なんだというふうに納得してしまうわけですよ。
こういうのを reverse spelling と言ってますね。
先に規則ありきということで、発音が m で終わるからそれに合わせて、スペリングも mb で ok ですよねという理屈で、
もともと b が入る歴史的な理由、語源的な理由が全くないにもかかわらず、 b を挿入してしまうということが起こるんですね。
これが、タイプ b の単語で crumb, limb, numb そして thumb というわけですね。
これはですね、中英語時代からこの b が挿入されたりするっていうこともですね、この reverse spelling としてあったんですが、
一般的に言うとですね、だいたい近代英語期以降にこの b が入れられて、そして確立したと。
そして標準英語に至るという流れが多いようです。
サムなんかは割と早くて、中英語大きにもですね、 b が入っている例は散見されるんですけれども、
一般化したのは近代英語というふうに考えていいんじゃないかと思います。
最後ですね、タイプ c なんですけれども、これは一語だけ bomb 爆弾です。
これも m で終わりますけれども bomb というふうに最後に b が入ります。
この b はですね、もともと綴り字にも発音にもなかったわけで、スペイン語から入ってきたんですけれども、対応するフランス語の単語が b が入っていたので、
それを真似して入れてしまった、スペリング上ですね。そんなわけです。
ではまた。
10:00

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