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2024-08-22 09:45

heldio#33. 時・条件の副詞節では未来でも現在形を用いる?


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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、時・条件の副詞節では未来でも現在形を用いる、というお題です。
これは、大体、学校の英文法で定番として出てくる、覚えておかなければならない文法事項として習うことが多いんじゃないかと思います。
文法書にもよく書いてあります。時・条件の副詞節。典型的には、whenとかbeforeとかifとかですね。
このような接続詞で始まる副詞節は、未来のことであっても未来のwillなどは用いずに、現在形を用いるというふうに、いわば例外事項としてですね、未来のことなのにwillを使わないという例外事項としてよく出てくるんですね。
ただ、これなんでと思ったことはありませんかね。
そのようなものだと大体覚えるわけなんですが、考えてみると、なんでこんな妙な例外があるんだろうと思うわけですね。
これには歴史的な理由があるんですね。
しばしば言われるのは、普通ですね、ifなんかの文例をとりますと、例えばこんな文ですよね。
If it rains tomorrow, we will stay home.
ということで、もしこのifの中がですね、it rainsというのが正しい、認められている文法なんですが、
確かにtomorrowのことですから、明日のことですから、未来形を使って、if it will rain tomorrow, we will stay home って言うと、
willが2回分の中に出てくるわけですね。正しいと言えば正しいのかもしれませんが、ちょっとうるさいと。
こういう語の重複っていうのを英語を避ける傾向があるっていうのも、それも確かなことで、
なので、ifの中ではですね、繰り返しを避けるためにwillを使わないんだというような捉え方、
これあるかもしれないんですが、少なくとも歴史的に見る限り、この説明はですね、当たっていないということになります。
実際ですね、このif it rains tomorrow, we will stay home という時には、
if it will rain というのは出てこない、文法間違えだということになりますが、
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絶対に出ないかといえば、そんなこともなくてですね、実は意思未来を表す場合には、このwillっていうのは出ることがあるんですね。
if it rains のように、単純未来の場合は出ないんですけれども、するつもりだという強い意思のこもったwillの使い方であれば出るんですね。
例えばですね、if you will wait here a moment, I'll go and get a chair みたいに、
もしここでちょっとお待ちいただけるようであれば、椅子をお持ちしますというような言い方ですね。
この場合、意思がこもっている強い使い方のwillですので、実際will自体にも発音の矯正が置かれます。
If you will wait here for a moment, I'll go and get a chair のような文ですね。
なので、時条件の副施設において、willは出てこないというのは少し言い過ぎで、単純未来の場合には使わない、出てこないというふうに言うのが正確かなと。
さらに言うと、時条件だけではなくて情報ですね、の説なんかでも同じことなので、時条件、情報の副施設において、
未来のことでも単純未来のことであれば、それは現在形を使用するというのが厳密に言えばそういう規則なわけですね。
さて、これがなぜかということが問題なんですが、歴史を振り返ってみたいと思うんですね。
現在では仮定法というのがありまして、仮定法過去ですね。
If I were a bird あれですね。
あるいは仮定法過去完了というのもあります。
それから今だいぶ衰退してしまったんですが、実は仮定法現在というものもあるんですね。
あまり使われないわけなんですけれども、こういうふうな表現にいくつか残っていて、
例えば、God Save the Queenですね。
女王万歳なんていう時のGod Save the Queenであるとか、
それから提案するというような意味の動詞の後の妥当説なんかでは、
この仮定法現在、事実上原形と同じ形なんですが、これが使われると。
例えば、I'll suggest that he go and see a doctorなんていう文ですね。
I'll suggest that he go and see a doctorみたいな。
He ですから、本来は3単元のSがついて、He goes とかなりそうなんですが、
He go という形ですね。
こんなふうにちょろっと仮定法現在というのが残っていますが、
この仮定法現在というものが少し古い英語ですね。
近代英語以前まではもっと広く使われていて、
典型的に時、条件、情報の副詞説では、
まず何を言っても、この仮定法現在を用いるんだというような文法規則があったんですね。
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これは未来のことなのになぜ現在形を使わないのっていうのが、
我々現在の問題意識なんですけれども、つまり時勢意識ですよね。
古い英語ではこの時勢よりも先に、
まず仮定法なのか直接法なのかという法の意識の方が先立っているんですね。
時間は二の次で、条件、時、情報の副詞説内においては、
基本的にそこで言われることは想定上のものである、仮定上のものであるということで、
時勢という発想は二の次で、まず第一に法ですね、仮定法を使うんだという考え方が強いんですね。
そうすると仮定法というのは、四、五百年前の近代語ぐらいまではまだ残っていまして、
強く残っていまして、それが実は原型と事実上同じ形であるということなんです。
ですから冒頭に述べた、If it rains tomorrow, we will stay homeという文は、
五百年ぐらい前の英語ということを考えると、実はですね、
If it rain tomorrowというように、三単元のSがつかない仮定法現在の形、
イコール原型なんですが、を用いたんですね、しばしば。
If it rain tomorrow, we will stay homeということです。
さらに、If it is fine tomorrowと現在ですね、もし明日が晴れならばですが、
この文も五百年前であれば、If it be fine tomorrowというように、原型と同じ形のbeを使うと。
これは仮定法現在の形なんですけれども、beという原型と同じ形ですね。
これが用いられたんですね。
ところが、この仮定法自体が衰退してきてですね、If it rainというのは変ではないかと、
If it beなんてこんな繋がりは変ではないかと、あまり聞かれなくなってきたということですね。
If it beというのは変だけど、If it isならよくわかる。
あるいは、If it rainはちょっと変だけども、If it rainsとなれば、
通常通り普通の現在形になるということでですね。
時勢が未来なのに現在形を使うというよりは、どちらかというと、
仮定法のはずだったのに、それが忘れ去られて直接法になるという法の問題なんですね、時勢というよりは。
この仮定法、現在でも仮定法確保、確保完了なんかはまだ普通に使っていますが、
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実はこの千年ぐらい、さらにもっとですかね、千数百年の英語の歴史の中でですね、ずっと衰退してきてるんです。
この衰退の一つの現れが、この近代英語記から現代英語にかけて、
このIfとかWhenであるとか、時条件の副施設の中のWillを使わないという形につながっているということなんですね。
これは千年あるいは千数百年の歴史の中で考えるべき、結構大きな問題だということになります。
それではまた。
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