2025-03-12 10:54

hellog-radio #7. なぜ英語は左から右に書くのですか?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #書き言葉 #文字論
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サマリー

英語が左から右に書かれる理由について考察し、その歴史的背景や文化的影響を掘り下げています。また、日本語が横書きになった経緯や、書字方向に関する社会言語学的要因にも触れています。

英語の書字方向の考察
そぼくな疑問。なぜ英語は左から右に書くのですかという問題について考えたいと思います。
これ非常に本質的な問題ですね。あまりに当たり前なので、あまり考えないのではないかと思うんですが、確かに英語は左から右に向かって書きます。
そもそもヨーロッパの多くの言語が左から右に書くということで、目には慣れているわけですが、よく考えてみれば、そもそも横に書くということの問題なわけですよね。
実は伝統的には日本語、さらに高野語で中国語では縦に書くという伝統があるわけですよ。これは江戸時代までずっと続いてきたわけで、江戸時代末期になって、ようやく西洋の影響で横書きになったわけですね。
その意味では、まず最初に縦書きか横書きかという問題があるんですが、ここから始めるそうですので、まずは横書きというのを前提としましょう、英語に関しては。
その際に、左から右という方向と右から左という方向、この2つが選択肢としてあり得るんですが、英語の場合は左から右に書くということになっている。
それをある意味、真似た形で日本語でも左から右なんですが、そもそもなぜ左から右なのかという、これは発問だと思うんですね。
これに関しては、例えば右利きが人間多いからという意見があるかもしれませんが、これはあまり理屈の通った説明になっていませんね。
これは右から左という言語もいくらでもあるからです。現在でも非常に世界の中で多くの人々に話され、そして書かれているアラビア語、ヘブライ語、シリア語などはご存知のとおり、右から左に書いていく言語です。
その言語の話者の右利きの人の比率が他よりも少ないというわけでもあるまいし、これは右から右利きが多いとか左利きが少ないという話だけでは少なくとも説明できないことは確かです。
実際、このアラビア語、ヘブライ語、シリア語であるとか、今英語の話題ですが英語が書かれているローマ字、ローマンのアルファベット。
これらは一つの大きなアルファベットファミリーと言っていいと思うんですが、これらの最初期のもの、最初期のアルファベットは実は右から左に書かれているんです。
アラビア語、ヘブライ語、シリア語などはそれを数千年間保持しているということなんですね。むしろ左から右に書き換えたローマ字のようなタイプがどうして変換した、変わったのか、こっちが問題になるということなんですね。
ヨーロッパでは、実は初期の古代ギリシャ語であるとか、初期の古代ラテン語の秘文などを見てみますと、実は右から左というものが見られるわけですね。
そしてなんと、我々の今問題にしている英語、最古の英文というのがいくつか秘文で残っているんですね。
これは450年から480年のものとされるある金のメダルが出てきたんですよ。
これ英語が書かれているんですね。ただアルファベットではなく、ローマンアルファベットの仲間なんですがルー文字で書かれている。
これ最古の英文が記された金のメダルとして非常に有名なんですが、1982年にサフォックのアンドリーというところで発見されました。
直径2.3センチの金の小さいメダルです。
こういうふうに文字が彫ってあるわけなんですけれども、コインですから、メダルですから円周に沿って字が書いてあるんですが、
横にならせばですね、やはり右回りの文字だったら左から右にということですし、左回りの円周で書かれているのであれば、それは右から左というふうに読めるわけなんですが、
これがなんとですね、最古の英文ですよ。最古の英文がこのメダルにあるものが右から左に書かれているんです。
つまり英語だってルー文字ではありましたけれども、右から左に書かれていたことがあるじゃんってことになるわけです。
いつからそれが左から右になったかということなわけですよね。
一つ面白いのが、これはヨーロッパでも至るところであるんですが、文字の書き順として横書きの場合ですね、
仏徒軍であるいは牛公式と日本語では言っているんですが、牛が耕すって書きます。
つまり例えば1行目が左から右だったとしても、2行目はそのまますぐ下に降りて右から左に書く。
牛が電波と耕すように文字の流れが流れていくわけですね。
これ、運筆量というか手の動きが一番少なくて良いので、行を変わるときに。
非常に効率的というか経済的なわけですよね。
これは割と広く行われていたんです。
ギリシャ語やラテン語もそうですし、よく我々は見ることのある例のエジプトのヒエログリフ、西国文字なんかもそうですね。
小型文字で鳥の絵が鳥を意味したりするんですが、
くちばしがある行では右向きになって、次の行では左向きになったりというような形なんですね。
このブストロフェドンという書き方があった。
ここは橋渡しだと思うんですね。
原初のアルファベットは右から左だった可能性が高い。
ところが途中でブストロフェドンのやり方が出てきて、徐々に左から右向きの書き方にも目も慣れてきたし書く人も慣れてきた。
そのあたりが橋渡しになって、最終的には左から右の方向、左から右オンリーになっていったと。
つまり、当初は右から左オンリーだったものがブストロフェドンを経て、左から右にも慣れてきて、
そしてついには左から右オンリーの書き方になっていったという可能性があったわけです。
そのシフトがなぜ左から右になり、そしてそれが固定したかということに関しては、
先も述べたように右利きが多いからであるとか、そのほうが読みやすいからというのは後付けの理屈であって、
日本語の書字方向の変遷
やはりよくわからないところがあるんですね。
一旦何らかの事情で、その方向、書字方向が習慣化してしまえば、
あとはそのまま惰性でずるずると習慣化して、そして英語なんかも現代まできたということなんではないかと思うんですね。
その習慣がなぜできていたかというところが問題なんですが、これがなかなか難しい。
いろいろと理屈、説は唱えられていますが、なかなかわからないということなんですね。
これ恐らく合理的であるとか書き方、読み方のしやすさみたいなところからきているわけでは必ずしもないのではないかと考えます。
参考までに日本語を挙げます。
日本語も横書きになったのはそもそも英語の影響を受けてです。
それ以前はずっと縦書きしかなかったという世界ですね。
ところが横書きもされるようになってきた。
それでも日本語の場合もやはり実は左から右なのか、右から左なのかという問題はあったんです。
特に戦前から戦中にかけては右から左に書くというのも割とあったんですね。
これ何かで見かけたことがある人もいるかもしれませんが、
大正末期からむしろ右から左に書く方が日本固有で伝統的であるというイメージが出来上がり、
一方で左から右に書くのは欧米の武法であると。
一方それだけにモダンであるというイメージが定着したんですね。
ある意味対立です。
右から左が日本的、左から右が欧米的ということですね。
ところがですね、戦争に負けてしまったと。
敗戦とともに日本的な右から左というのが影響力を厳じていて、
その戦前からかなりインパクトの強かった、影響力のあった左横書き、
いわゆる左から右への欧米武法風のモダンなものが戦後一気に普及したという流れなんですね。
つまりここにはある意味社会言語が含みない見合いがあるということです。
どっちが書きやすいか読みやすいかという問題以上にですね、
日本固有伝統的対欧米武法、モダンという対立があり、
それが終戦とともに一方の側に大きく触れたということです。
その伝統の中に現代の我々もいるということ。
この日本語の例がどこまで参考になるか分かりませんが、
左から右あるいは右から左ということも単に書きやすい、読みやすい等の語だけではなく、
かなり社会言語学的な要因が働いて、そして一回習慣として定着したら、
そのまま惰性で流れて現在に伝わっているということが十分にあり得るのではないかと。
書字方向に関する深い問い
ですので、表題の疑問、なぜ英語は左から右に書くのですかというのは、
非常に素朴でナイーブな疑問のように見えて、実はものすごく深い可能性があるということです。
英語史や言語学には当たり前のことを掘り下げて考えていく面白さがあるということを教えてくれるような問いだと思います。
この問題に関しては、ヘログの572番、2448番、2688番等の記事をご覧ください。
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