quarantineの起源
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、quarantine ー 隔離期間は40日、という話題です。
この単語、最近はすっかりよく聞くようになりました。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、検疫であるとか隔離を意味するこのquarantine というのが、日常語になってしまったということですね。
あまり聞きたくはないわけなんですけれども、非常に身近な単語になってしまったということです。
現在、2022年の1月21日現在ですけれども、日本に関しますと、入国して10日間自宅待機であるとか、事実上の隔離状態に置かれるということになっていますね。
10日間というのが、現行の隔離期間ということになりますが、実はこのquarantine というのは40日、40という意味なんですね。
これは、14世紀後半のヨーロッパを接近した例の酷刺病、black death ですね。ペストですけれども、このペスト予防のために、船が入国する場合に、隔離検疫期間となったこの40日に由来するんです。
もともとは、1377年にレバントやエジプトからイタリアへ入港してくる船を差し止めるというところから始まったんですけれども、シチリア島のラグーサ氏協議会が、感染地区からやってきた人々に30日間の隔離を命じた。
これが発端なんですね。40日ではなく、スタートは30日だったっていうことなんですね。
ですが、後にこの期間が40日に伸びたということで、これをquarantineと呼んだということなんですね。
語源的には、ラテン語のquadragintaという単語で、これがイタリア語にquarantineという形で受け継がれたということなんですね。
ただ、このイタリア語の単語が英語に入ってきたのは、ずっと後のことなんですね。
1663年に英語に入ってきましたので、発端となった国治病が発生してから200年ぐらい経っているわけなんですけれども、遅ればせながらですね、この40日を意味するquarantineが隔離、その隔離期間ということですね。
これを意味する単語として、英語に17世紀半ばに入ってきたということです。
この1663年の英語における最初の例というのは、実はですね、非常に有名なSamuel Pepysという人の日記が残っているんですね。
イングランドの海軍大臣だったんですけれども、当時の社会を詳細に記録した日記として、非常によく知られている英文学でも出てくるような文献なんですね。
この人の1663年の11月26日の日記ですね、これに出てくると。
その部分を少し省略しながら読んでみます。
It signifies now the thing, not the time spent in doing it.
ということで、このquarantine for 30 daysというのがシングルクオーテーションでくられているんですが、つまり30日の隔離ですね。
だけども、語源はquarantine、つまり40日ということで、この実際の記述と語源のチグハグ感というのをですね、最後のthoughという情報の部分で述べているんですね。
言葉の変化と時代の影響
期間というよりは隔離ということがこのquarantineの意味なんだというような補足説明を与えてくれているというところですね。
これが実は英語におけるこの単語の書類ということになります。
さあ、この単語の大元の語源となったのはラテン語のquadragintaという40を表す数字ですね。
quadragintaです。
このquadraという部分が、これが4ですよね。
そしてgintaの部分が10の倍数ということなんですけれども、そのままquadragintaで40。
分かりやすいといえば分かりやすいんですが、実はこれですね、英語では40というわけですけれども40のこと、これと同語源なんです。
信じられないくらいですね、隔たっている形もあまり似てないように見えますが、quadragintaというラテン語と40という英単語。
これがずっと遡ってですね、引用速度のレベルまでいけば、ある意味語根が一緒であるということになります。
ですからもちろん、今回話題にしているquarantineという隔離と40、それ自体も語源的につながりがあるということなんですね。
にわかには信じがたいかもしれませんが、このquadraですね、このqの文字で表されるqという音なんですけれども、これがどう考えても英語の4のfとは関係ないように見えるわけなんですが、
数々のシーンの変化を経てですね、これはラテン語側でもそうですし、英語側でもそうですが、変化を遂げた結果、今となっては関係ないかのようなシーンで始まっているわけなんですが、
大元を辿ると一緒ということになります。同じように後半部分、ginterですね、この10の倍数、10を意味するわけなんですが、これと英語の10、これはつながっているんですね。
今見たところですね、nぐらいしか重なるところがないように見えるわけなんですが、大元はつながっていると。
しかも面白いことに、大元はですね、nではなくてmだったんですけれどもね、それぞれの言語で長い時間をかけてシーン、そして母音もなんですけれども、変化を遂げた結果ですね、現在比べてみてもですね、どう関係があるのかわからないというレベルにまで離れてしまってはいますが、語源的にはつながりがあるということがわかるんですね。
さあ、14世紀の国死病がですね、言葉にも影響を与えたということなんですが、実際にこうした大きな事件であるとか流行病というのはですね、社会を変えるだけではなくて言葉も変えていくんですね。
これは14世紀でも一緒ですし、そして現在のパンデミック、新型コロナウイルスの感染症、これも同じです。当然時代は違いますし、その規模も違います。そしてこの社会的歴史的な意義もおそらくだいぶ違うものにはなるんだろうと思います。
しかし言葉に関して言いますと、やはり社会の変化を引き起こす、こうした大きな流行病は言葉を変えずにはいられないということですね。
新語が生まれ、そして古い語がなくなっていき、そして既存の語にもですね、新しい意味が加わるといった形で、社会的事件は言葉に影響を及ぼすもんだということですね。
それではまた。