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おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、英語のなぜに答える初めての英語史の著者、そして6月18日に研究者から刊行された英語語源ハンドブックの著者の堀田隆一です。
加えて、10月15日に夏目社より新刊書が出ました。同僚の井上一平さんとお届けしているYouTubeチャンネル、井上言語学チャンネルから生まれた本です。
井上一平、堀田隆一町。言語学ですっきり解決英語のなぜ、ハッシュタグひらがな6文字で井上なぜとしてご意見やご感想をお寄せください。
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英語の語源が身につく味を経る量、英語史をお茶の間に思っとうに英語の歴史の面白さを伝え、裾野を広げるべく毎朝6時に配信しています。
本日は11月28日金曜日。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今日はダニーデンの丘を登りながら撮影しているので、少し息が切れかかっています。
最近は散歩をしながらこうやって収録するのもいいなということで、音がきれいに撮れていさえすればということですが、いかがでしょうか。
多少風も吹いていたりしてガサついたりしたらすみません。なるべくいい音で撮ろうとはしているんですけれども。
無冠詞の疑問
さあ今日はですね、一昨日、井上言語学チャンネルの十数日前のですね、監視を扱った回が非常によく視聴されているということで監視の話をしたんですけれども、今日もですね監視の話です。
ただ今回はですね、リスナーさんから寄せられた素朴な疑問、これを取り上げようと思うんですね。
エルディオヘルワのコアリスナーの海塩さんから、先日、数週間前にもなりますかね、から寄せていただいた質問がありまして、これ確かになんでだろうなというふうに思ったので、
こちらでその問題意識をシェアしながら一緒に皆さんと考えていきたいと思います。
それはですね、ターンという動詞がありますね。これは曲がるとか、それから自動詞としては変わるという意味がありますね。
何々になる、何々に変わるという、このように自動詞として使うときの用法なんですけれども、例えば彼は言語学者になった。
特にですね、他の職業から言語学者に転校したみたいなときに、become、becameというよりはturn、turnedというのを使うことが多いですね。
その際に、例えばなんですけれども、彼は言語学者になった。
He turned linguistって言うんですね。
これbecome、becameを使うんであれば、he became a linguist。
He became a linguistというふうに、否定漢詞が英語の文法では必要なんですね。
ところがturnをbecomeの代わりに使うとですね、これ、aがいらないんですよ。
つまり無関心になるんですね。
あくまでlinguistというのは、加算名詞で、しかもですね、彼がなるのは一人のlinguistということで、
英語の規則ではですね、aが要求されそうなものなんですが、これなくて良いんですよね。
これ何でなのという鋭い突っ込み質問を海塩さんからいただきました。
これについて今回は考えていきたいと思います。
なぜhe turned linguistでは無関心なの?
海塩さんからの関心の疑問に行ってみたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
今回質問をいただきました海塩さんなんですが、
ヘルディオのみならず、ヘルはプレミアムリスナー限定配信チャンネル英語しのわのリスナーでもいらっしゃいまして、
非常に早い段階からですね、このチャンネル盛り上げ役ということでですね、本当にお世話になっているんですけれども、
鋭い質問が最近参りました。
漢詞に関する話題なんですけれども、
海塩さん英語をいろいろと勉強されているなぁというふうに思ったんですよね。
実際ですね、海塩さんからいただいた質問はですね、こういう文言だったんですね。
turnを自動詞の変わるで使うとき、保護に来る名詞は不定漢詞をつけないのはなぜですか?
これ確かにと思ったんですよ。
私もなんでかなと多分思ったことはない、でもないのかもしれないんですが、今まで放っておいたというか、
こういう語法なんでしょうね、この単語に関してはとか、そういう強引な納得のさせ方をしていたんですが、
このようにですね、他の方からですね、質問が出ると、やっぱりそういう感覚いただきますよね、みたいな感じで、
すっかりですね、その問題意識に納得してしまうという、こういうことって本当にあるんですよね。
私もですね、このあたりのアンテナは高く張っているという意識はありながらもですね、専門家として、
それでもですね、やっぱりこれはこういうもんなんだよっていうふうに頭の中で片付けているものがいかに多いことかというのを今回も思い知らされたということなんですよね。
で、じゃあこれすぐにどう答えられるかというと、これ私答えられないですね。
そもそもがですね、このターンを○○になる、そして後ろに名詞の方語が来るというような言い方というのは、
頻度が高いわけではないということで、そんなにお目にはかからないというのは一つ背景にあると思うんですよね。
なので、問題意識が湧きにくいというか、湧く機会が少ない。
繰り返しあるとですね、こういうふうに何でだろうとか思う突っ込みの余地が出てくるんだと思うんですけれども、
なのでそのあたりを捉えてですね、質問された三塩さんは本当に鋭いなぁと思っている次第なんですけれども、
表現の背景
この表現はですね、表題に挙げたようなHe turned linguistみたいな文で現れるというよりも、
私少なくともですね、出会うのは、もともと○○だった人が○○に転身したそういう人というある定型的な表現があるんですよ。
例えばですね、法律家だった人が今は先生をやっていますっていう時に、
a lawyer turned teacherという言い方があるんです。
つまり、あ、プラス、前の職業、そしてturned、そして今の職業みたいな言い方ですね。
a lawyer turned teacher。
つまり、法律家なんだけれども、今はティーチャーに転じた人ですよというような、そんな語法ですね。
これはなぜそういう意味になるかというのはですね、
turnedというのが過去分詞として使われているんですけれども、
この過去分詞が自動詞、変異動詞の過去分詞だということで、言い換えればですね、
a lawyer who is turned teacher。
現代的に言えばbe官僚というのがあまり使わないので、
a lawyer who has turned teacherというふうに言い換えることができる、
そのwho isとかwho hasが省略されたものというふうに統合的にはとりあえず考えておくとですね、
わかるのではないかと思いますが、こんなちょっと変わった表現っていうのがあるんですね。
むしろこのようなある種の型にはまった表現ですね、
フォーミュラーみたいなものの中に出てくるturnの使い方なんですが、
確かにこのturnの保護にあたるもの、つまりturnの後ろにくる名詞ですね、
これはaを伴ってないんですよね。
数えられる加算名詞にもかかわらず、裸のままで出ているっていう、
ある意味英語の文法としてはイレギュラーな使い方をしているっていうことなんです。
これですね、ヨーロッパ系の言語でも英語以外の言語を勉強しているとですね、そんなに不思議に思わないんですね。
b同士の後ろにくる保護ですね、ここにその役職とか職業みたいなものが来るときに、
あまり不定関して使わないっていう言語の方が多いんです。
その意味では英語は割と特殊かなというふうに思うんですね。
ただ英語ではですね、ここに不定関して使うんだというのが基本ルールにもかかわらず、
turnという動詞を使うときに限ってはですね、このaが省略されるといいますか、表出されないっていう現象があって、
英語内部ではですね、これなぜなのっていうふうになるわけです。
つまり他のヨーロッパの言語と比べると、いやこれがデフォルトでしょ、みたいな言い方になるんですけれども、
英語内部としてはこれ、境地的に説明が必要な現象なんですね。
で、じゃあこれはなぜなのかというふうに調べようと思ったわけですね。
文法の解析
まず境地的な文法という観点からですね、文法書を引いてみました。
クワーク・エット・オールの広範な文法書によりますと、役職を表すとき、とりわけですね、
唯一無二の役割って言うんですかね、ユニークロール、その人でしか務まらないと言いますか、
その人しかいないユニークな役割、ロールですよね。ロールを帯びる場合には、
監視を伴わないという場合も英語ではあるというふうにされています。
例えばですね、そこで挙げられている例は、
マリーンはチームのキャプテンです。
ジョン・F・ケネディは1961年にアメリカ大統領になりました。
チームのチェーマンとして、この会議は終了します。
のような、唯一無二の役職ですよね。キャプテンとかプレジデントであるとか、チェーマンというふうに、
その組織においては一人しかいるはずがないというものについては、
これはザの省略ですね。アというよりはザが省略されるということがあり得るということなんですよね。
このようにですね、監視の省略といってもザ、定監視の省略に関しては、このユニークロールということで説明されるわけなんですけれども、
もちろん今回取り上げているHe turned linguistという時、これはですね、彼が唯一無二の言語学者になったというわけでもないので、つまりザが省略されたものではないわけですよね。
あくまで何が省略されたかというと、これはまあというふうに考えたくなるわけですよね。
そうするとこの唯一無二の役割というユニークロールの説というのは、うまく当てはまらないということになります。
そこで困ったということになりまして、クワクエトールもですね、同じように困っているんですよ。
中の中でですね、ターンの場合は例外で、これは唯一無二じゃないのに、監視が省略されています。
これはなぜかよくわかりませんよね、という言い方まではしていないんですが、例外ですという言い方で終わっているんですよね。
つまりここで解決していないということになります。
監視省略の歴史的背景
では歴史的にはどうなのかということで、今度はですねターンをOEDで引いてみます。
そして後ろに名詞が来るようなケースを調べてみますと、近代英語の初期あたりから出てくるんですけれども、
その中にはですね、ちゃんと不定漢詞あを伴っているものもあれば、今回問題となっている構文のように既に漢詞を伴っていないという例もかなり初期から現れているということが確認できるんですね。
なのでなぜ監視省略が可能なのか、監視なくても使えるのかということに関しては、その事例が初期近代英語記のこのタイプの構文の一番最初から出ている感じはするので、
まあこの証拠の限りではですね、何か理由を突き止めるということはできないんですよね。
2つここでですね、巻き付いた点、コメントということで解決につながるかどうかわからないんですけれども述べておきます。
一つはですね、一つ定型的な表現として現代でもturn traitorという表現があります。
traitorというのは裏切り者ですね。つまり裏切り者になるということで、本来であればturn a traitorと言いたいところですし、主語が実際ですね、複数形であればtheyの場合はturned traitorsとなっているということからも、やはり本来はあるべきaが省略されていたというふうに受け取りたいんですよね。
そして誰々に対して裏切り者になったという表現が多いのでturned traitor to 誰々、つまり誰々にとって裏切り者となる、つまり誰々を裏切るという定型文句として使われる、いわばフォーミュラになっているんですね。
これは比較的よく使われるフォーミュラということで、このフォーミュラになると監視はですね、あったりなかったりとかいろいろあるんですね、他の表現でも。
なのでこれは問わないと言いますか、そういうもんだという解釈の仕方もあると思うんですが、例えばですね、こういった定型文句において不定関詞が省略される。
これが一つのモデルとなって、他のhe turned linguistのような、特に定型文句でもなんでもない表現ですよね。ここにも波及したんだという考え方はあるかもしれません。
ただ、これが本当なのかどうかっていうのは、いろいろと実証的に研究しなければいけないというところですし、そこまで全く私は詰めておりません。
なのでこれは本当に仮説中の仮説というふうに留まりますよね。
もう一つはですね、OEDの記述によりますと、このturnの後にくるのは、宗教的な派閥を表す名詞であるというふうな記述があるんですね。
例えば、派閥というよりも、もう宗教そのものですが、Christianとかですね、Catholicみたいなものが後ろにくる場合があると。
この場合、例えば、turn Christian、turn Catholicというと、これはですね、両方とも形容詞でもあり名詞でもあるっていう名詞なので、形容詞の場合これ問題なんですね。
つまりbecomeと同じ扱いですから、そのまま、むしろあを取るわけがないっていうことなんですね。
ただですね、名詞としても形容できるものなので、ChristianとかCatholicですね、あをつけてもよい。
あがついた場合には名詞、つかない場合には形容詞と解釈することができるっていう、こうした名詞形容詞、形容の語がturnの後には、特に宗派を表す単語でですね、
もし多かったのであれば、この辺が一つ混乱混同の発端となって、後ろにくるのが名詞であれ形容詞であれ、
あのような不定関係はつけずともよろしい、みたいな規則が出来上がったという、そんな経路もですね、これも仮説に過ぎないんですけども考えられるかもしれません。
というところまで私は考えましたが、そこで力尽きました。
はい、まだ全くこれについて実証的に調べがついたわけでもありませんし、仮説状態にとどまっております。
はい、本日もご視聴ありがとうございました。
エンディングです。
今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
いやー、本当に英語に関する素朴な疑問というのは、あちらこちらに転がってますね。
見逃して、来ただけで、見て見ぬふりをしていただけて、本当は問うべきものっていうのは、本当に無数に転がっているんだなっていうことを、今回も改めてですね、気づかされました。
ありがとうございました。
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それでは今日も皆さんにとって良い1日になりますように、英語史研究者のほったり打ちがお届けしました。
また明日!