2025-07-24 18:02

#1516. 語源学者は複数の語源説があるとき,どのようにしてどちらが正しいと判断するのですか?

▼緊急告知! 2025年6月18日に本が出ました


📙唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.


- ぜひ Amazon よりご予約ください:https://amzn.to/4mlxdnQ

- 詳しくは研究社のHPをご覧ください:https://www.kenkyusha.co.jp/book/b10135166.html

- 7月13日(土) に朝日カルチャーセンター新宿教室にて著者3名が記念出版記念講座をハイブリッド開講します.詳しくは https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=8388868 をどうぞ.


▼パーソナリティ,堀田隆一(ほったりゅういち)の詳しいプロフィールはこちらの note 記事よりどうぞ.


- https://note.com/chariderryu/n/na772fcace491


▼heldio のビデオポッドキャスト版を Spotify で始めていますので,そちらのフォローもよろしくお願いします.


https://open.spotify.com/show/0xOyOIXBUrIZbnwSLeJsSb?si=zH5V2CjkS0ekqNz5ro7caw


▼helwa リスナー有志による月刊誌「Helvillian」の9号が公開されています


- 第9号(2025年6月28日):https://note.com/helwa/n/n79623d921a95


▼2025年7月7日に『英語史新聞』第12号がウェブ発行されています.


khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第12号がウェブ公開されています.こちらよりアクセスしてください


- 第12号:https://drive.google.com/file/d/1eQawDu2njFNMMVKDUr4JRZdIWTNHDdha/view?usp=drivesdk


第12号公開については,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio (https://x.com/khelf_keio) を通じても案内しています.

リツイートなどを通じて「英語史をお茶の間に」の英語史活動(hel活)にご協力いただけますと幸いです.


▼2025年第2四半期のリスナー投票が7月10日までオープンしています


- 投票会場:https://app.sli.do/event/weRify7g2SvDa89mZh7k1A


▼2024年9月8日(日)に12時間連続生放送の「英語史ライヴ2024」を開催しました.英語史界隈では前代未聞のイベントとなりました.詳細は以下の配信回,あるいは khelf の特設ページを! イベント後は,数ヶ月間かけて各番組をアーカイヴで通常配信していきました.


- heldio 「#1119. 9月8日(日)「英語史ライヴ2024」を開催します」 https://voicy.jp/channel/1950/1296042

- khelf 特設ページ: https://sites.google.com/view/khelf-hotta/英語史ライヴ2024特設ページ


▼X(旧Twitter)上で「heldio コミュニティ」が開設しています.


Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のリスナーさんどうしの交流と情報発信の場です.heldio やそこで配信された話題を「待ち合わせ場所」として,英語史やその他の話題について自由にコメント・質問・議論していただければ.heldio が広く知られ「英語史をお茶の間に」届けることができればよいなと.今のところ承認制ですが,お気軽に申請してください.

https://twitter.com/i/communities/1679727671385915392


▼プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) も毎週火木土の午後6時に配信しています


「英語史の輪」にこめる想い


1. レギュラー放送は,これまで通り,最大限に良質な内容を毎朝お届けしていきます.プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」のための課金の余裕がない方々(例えば中高生や英語史を真剣に学びたい苦学生など)は,無料のレギュラー放送のみを聴き続けていただければと思います.レギュラー放送では,皆さんに最良の放送をお届けし続けます.


2. プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」で得た収益の一部は,レギュラー放送の質を保ち,毎日円滑にお届けするための原資とします.


3. また,収益の一部は,Voicy 以外でのhel活をさらに拡大・発展させるための原資とします.


4. ときに khelf(慶應英語史フォーラム)やプレミアムリスナーにも協力していただき,hel活の新機軸を打ち出していきたいと思っています.企画本部としての「英語史の輪」です.

5. ぜひとも「英語史の輪」のプレミアムリスナーになっていただきたい方


 ・ hel活を応援したい方(資金援助,広報支援,盛り上げ係りなど.研究者,学生,一般の社会人など職種や専門は問いません.)

 ・ 毎日もっともっと英語史に触れたい方,レギュラー放送では足りない方

 ・ 私(堀田隆一)の話をもっと聴いてみたい方

 ・ レギュラー放送のような一般向けの話題にとどまらず,もっと専門的な英語史の話題も聴いてみたいという方

 ・ レギュラー放送で言えない/配信できないような「低い」話題(対談のアフタートークや飲み会での雑談など)も聴きたいという方

 ・ パーソナリティおよびリスナーさんどうしで,もっと交流したい方


以上,よろしくお願いいたします.

サマリー

語源学者は、複数の語源説を評価する方法を掘り下げ、語源に関する正確な答えが存在しないことを主張しています。英語語源ハンドブックの出版を契機に、語源の不明確さから生まれるさまざまな議論が行われています。語源学者は、言葉の真の語源を探る際に、さまざまな証拠を基に最良の選択を行う必要があると述べています。また、絶対的な正解がないという英語史の研究の難しさについても触れています。

語源の複雑さ
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語詩ブログの管理者、英語のなぜに答える初めての英語詩の著者、そして6月18日に研究者から刊行された英語語源ハンドブックの著者のホッタリウイチです。
英語の語源が身につくラジオheldio。英語詩をお茶の間にをもっとに英語の歴史の面白さを伝え、裾野を広げるべく毎朝6時に配信しています。
本日は7月24日木曜日です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
今日の話題は、語源学者は複数の語源説があるとき、どのようにしてどちらが正しいと判断するのですか。
という疑問。素朴な疑問って言っていいんですかね。
これ実際に私が受けた質問なんですね。
これにどう答えようかということでですね、考えまして今日お話しいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
先日土曜日ですね7月19日に朝日カルチャーセンター新宿教室にて、英語語源ハンドブックの著者提談が開かれました。
正式なタイトルはですね、深掘り英語語源ハンドブック徹底解読術出版記念提談ということでですね、
土曜日の午後に90分弱でしたが、立教大学の唐沢和友氏、愛知教育大学の小塚義隆氏と共に協調者3人でですね、
英語語源ハンドブックの使いこなし方その他をですね、お話しさせていただきました。大変盛り上がりまして会場参加の方からですね、
後半の最後の10分ぐらいだったんですが、いろいろな質問、熱い質問が寄せられまして、今日のこのヘルディオの本題もですね、実はそこで寄せられた一つの質問について掘り下げてみようということでですね、
今日、配信会のタイトルとして掲げたわけなんですね。実際にこの質問、当日ですね、会場参加の方から寄せられたんですね。
一言一句同じではないんですが、こういう趣旨の質問だったということでご理解ください。改めて今日のタイトルを読み上げますと、語源学者は複数の語源説があるとき、どのようにしてどちらが正しいと判断するのですかと、
いうことなんですね。これなかなかですね、答えにくい質問でもありまして、3人の著者の中で私がですね、一応のところ司会みたいな役回りだったこともありまして、他の2人にですね、なるべく発言してもらえればということで、最初に金沢氏、そして次に小塚氏にこの回答をですね、振ったわけですよね。
私自身は頭の中に考えはあったんですね。こういう形で返答しようかなということがあったんですが、時間その他の関係で、私自身はですね、この問いにですね、特にご返答することはなかったわけなんですが、その後もですね、ちょっとこの質問がずっと頭の中に留まっておりまして、
こちらボイシーヘルディオンにてお話ししたいなと、数日かけてですね、そんな思いに至った次第なんですね。
確かにですね、語源ハンドブックもそうですし、その他の英語語源辞典系もそうなんですが、一つに語源説が定まらないということは非常によくあるケースなんですね。
そちらの方が圧倒的に多いという言い方まではしませんが、やはりかなりですね、語源について揉めている単語というのは多いんですね。そもそも単語というのは数が多いですので、英語語源ハンドブックは基本戦語ということですね。
ジャセット8戦の中の最もよく出る戦語に限ったとはいえですね、とはいえと言いますか、だからこそかもしれません。実は語源不詳であるとか、複数の語源があるというものは意外とですね、多いんではないかとすら思われますね。
これちゃんとですね、数え上げたわけではないんですけれども、当日ですね、朝かるの当日に小塚氏がこの戦語については実は語源不詳のものどれくらいあるかっていうのを数え上げたんですね。で、その数字も紹介されていましたね。
ただですね、その戦語以外の他の一般の英単語を、例えば5千とか8千とか1万ってやったときに、どれくらい全体として語源不詳のものあるいは複数の語源説があるものがあるかと比較して、今回の最頻戦語の値が多いのか少ないのかというところは検証してないという意味で数えていないということですね。
戦語についての絶対数は数え上げられておりましてね。朝かるの講座当日にはそれがですね、資料とともに提示されたかと思うんですけれども、いずれにせよですね、この戦語に限ってもなかなか語源一つに定まらないというですね、語源説が複数あるということがあるんですね。
それを受けて出席された方がですね、この質問を問ったわけです。
質問の背景と重要性
語源学者は複数の語源説があるとき、どのようにしてどちらが正しいと判断するのですか?という趣旨の質問なんですね。
これですね、なかなか難しいんですけれども、そしてからさわしい、こずかしいもそれぞれの立場、お考えからですね、回答していたと思うんですが、今日はですね、私がどう考えるかということをお話したいと思うんですね。
そもそもですね、このお聞きのヘルディオ、英語の語源が身につくラジオということなので、語源が身につくっていうことは正解があるんではないかということがですね、含意される、少なくとも示唆されるわけなんですけれども、ここはですね、なんともですね、私は違う考え方を持っていまして、語源に正しい語源と言いますか、真の語源。
これはですね、ないと思ってるんですね。ないと言いますか、わからない、たどり着けないものが圧倒的に多いし、一つかどうかもわからないとやはり思っている節があるんですね。
それなのに、英語の語源を1500回以上ですね、語ってるのかとお叱りを受けそうなんですけれども、これは私がですね、英語史、特に英語の語源を探ってきた結論としてですね、今考えていることなんですね。
そしてですね、これもまたですね、誤解を招くかもしれないので慎重に言わなければならないんですが、語源ハンドブックとかいろいろ語源の話をしてきた割にはですね、私は英語語源学者ではないんです。
このことはですね、朝霞の当日に唐沢氏もですね、述べたことなんですね。私は英語語源学をやっているわけではありません。それは無責任じゃないかという反応が聞こえてきそうなんですけれども、この審議はですね、英語史の研究者ではあるんですけれども、英語語源学者ではないんですね。
これですね、どう言えばいいですかね。そもそもですね、英語語源学者って、唐沢氏にしてもですね、小塚氏にしても、そして私にしてもですね、3人ともそれではないんですね。では他にどこにいるかというと、多分いないんですよ。英語語源学者っていないんですよ。
県人としてそう呼ばれること、そう見なされることもあるかなということは認めつつですね、私たちは英語史の研究者で英語語源学者ではないし、しかもですね、世界中探して英語語源学者と言える人がいるのかどうかっていうのは昔から今までですね、怪しいです。
語源学っていうのはそもそも、エティモロジーっていうね、語源そのものと同じ用語でですね、語源学、学の意味も含むわけなんですが、そしてそれに対してエティモロジストという人を表すですね、用語があるんですが、これですね、かつていたのかなって感じですね。少なくとも専業で。
ちょっとよくわからないんですが、多分いないでですね、語源について書く人とか辞書編参者という意味ではですね、いたんだと思うんですね。その場合、英語語源辞書編参者だと思うんですよ。
という、用語の問題をですね、いろいろ言って言い訳しているように聞こえるかもしれないんですが、ポイントはですね、先に述べたようにですね、英語の語源なり何語の語源もそうなんですが、本当のことは誰にもわからないというのが結論なんですね。
理論的再建とその限界
だからこそ、いろいろな説があるっていうのは最ものことですし、そしていろいろな説がなく一つに定まっているものも、逆に多いでしょということはその通りなんですが、それはですね、解決した体になっているということだと私は理解しています。
例えばですね、英語の語源で、古英語の形があります。さらにゲルマン祖語の形が比較言語学により再建されています。さらに遡ってインドヨーロッパ祖語、インヨー祖語の形が再建されていますということで、アステリスク、星印込みである語形が与えられていると思うんですよね。
それは理論的再建なんですね。理論的であれ、そこまで頑張って再建したんだから認めて良いだろうというのは確かにありますね。それで認めるとして、ただインドヨーロッパ祖語はですね、人類の最古の言語の姿ではないんですね。
それどころか、現在の有力な説ですとですね、人類の言語が10万年ぐらい前に生まれたと、さらに遡るかもしれませんし、もうちょっと遅いかもしれませんが、そしてインドヨーロッパ祖語というのは、せいぜい頑張って遡って紀元前4000年とか、一番遡る説でも6000年とか7000年とかなので、
10万年前に対して紀元4000年5000年というレベルの話をしているので、インドヨーロッパ祖語の前段階にも必ず言語はあったということは間違いないんですね。そしてその姿は全く我々にはアクセスできないし分からないんです。
語源というのは、どこの語源を言うのかっていうことですよね。紀元前4000年のレベルで遡れる限りで最古の語源に遡れば、そこで語源として受け入れようということであれば、そこが語源となりますよね。
一方ですね、インドヨーロッパ祖語には遡らないけれども、ゲルマン祖語までは遡れるであるとか、あるいは古英語まで遡れるとか、いろんな単語があるわけですね。そうすると、なるべく古いところまで遡って、もっと遡ることができない限界まで遡るわけですね。
それを語源というのであれば、真の語源というのであれば、そこはですね、一生懸命我々はですね、探したり探ったりですね、する必要はあるかなと思います。ただ、その後は分からないんですね。
究極の語源ということで言うと、それが本当の正しいと言いますかね、真の語源という言い方をすると、ほとんどの単語は分かりません。遡る、一番最古の形で満足するということであれば、それはなるべく語源辞典であるとか語源ハンドブックもそうですが、与えてあります。
ただ、そのレベルで複数の説があった場合、この判断の基準っていうのは、もちろんなるべく周囲のですね、証拠を参考にしながら、ベストと思われる選択決断をするということは、英語史研究者もですね、すると思うんですが、限界はあります。
本当かどうか、100点なのかどうかというのは、確証できないからです。ですので、この問題ですね、確かに大変難しい問題ではあるんですが、与えられている、そして当該のですね、英語史研究者が持っている手持ちのベストな情報に基づいて、情報をですね、最大限に駆使して判断するなら判断する。
あるいはそれでも判断できないのであれば判断できません、というのが我々の仕事だと思うんですね。
究極の語源をですね、探ろうという試みは非常に尊いですし、そのつもりでなるべく努力するっていうことがあるんですが、限界があるっていうことなんですね。
その場合に限界があるにもかかわらず、いい加減な証拠であるとか、自分が信じていない論拠に基づいて、えいやとこっちだというふうに決めるというのは不誠実だと思っているわけですね。
ということで、そもそも語源学者っていうのはいるのかというところから初めてですね、私の思うところを語ってみました。いろいろとご議論いただければと思います。
絶対的な正解の不在
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
なかなか逃げ切らない答えだなというふうに聞かれた方も多いと思うんですが、これ私、語源だけでなくてですね、英語史の研究、それから人文系の研究全体にという、ちょっとテーマ大きくなりますが、
このヘルディオでもですね、折に触れて述べてきているのは、絶対的な正解はないっていうことなんですよ。
これはですね、何遍言ってもなかなかですね、分かっていただける方には分かっていただけるんですが、そうでない方には分かっていただけないと思うんですね。
これは絶対的な答えがあるという問題を解くこと、試験問題を解くことにすっかり慣れ切っているからなんだろうなと思うんですね。
高校まではそうですよね、答えが決まっています。そしてその予想されるあるいは期待される答えに正しく答えることが丸をもらうことであり、出世の方法であるということなんですが、
大学以降、特に大学院以降はですね、これを解体しなければいけないというふうに思ってですね、私は教育にも関わっているわけなんですが、もちろんこのヘルディオでもですね、その匂いは出しておりますし、
このことについてですね、皆さんに考えていただければと言いますかね、ご議論いただければと思いつつ、このチャンネルをずっとですね、やっているというところもありますね。
まさに語源というですね、このチャンネルのメインの話題であるこの話題でですね、今日のこの最終的な答えはないんですよと言い切るにはですね、ちょっと勇気がいるわけなんですが、今日の議論を聞いていただいてですね、わかっていただける方にはわかっていただけるかなというところですね。
ちょっとこれまでの通常回とは違った雰囲気でお届けしました。皆さんのコメントをお待ちしております。
このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご意見、ご感想をお待ちしています。
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それでは今日も皆さんにとって良い1日になりますように、英語式研究者のほったり打ちがお届けしました。また明日。
18:02

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