虹の語源の探求
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、 そして英語のなぜに答える初めての英語史の著者の堀田隆一です。
10月9日日曜日です。いかがお過ごしでしょうか。 英語の語源が身につくラジオheldio。本日の話題は、【虹】の比較言語学です。
どうぞよろしくお願いいたします。 先日491回の放送で、【天の川とミルキウェイ】
比較語源学の楽しみと題しまして、 天の川というのを、いろいろな言語でどういうのか、
英語ではミルキウェイというわけですが、こうして語源をですね、比較するという、 比較語源学という、私が作った用語なんですけれどもね、
ちゃんとした学問分野というわけではないんですが、 そのようなトピックでお届けしたところですね、なかなか反響をいただきまして、
多くの方に聞いていただいたということでですね、ありがとうございました。 それを受けまして、比較語源学の第2弾をお届けしようと思います。
今回は【虹】、【rainbow】ですね。 虹の比較語源学について考えてみたいと思います。
まず英語から見てみますと、【rainbow】ということですね。 これは非常にわかりやすい語源で、ある意味わかりやすすぎるぐらいでしょうかね。
複合語で、第1要素が【rain】、そして第2用語が【bow】。 弓矢の弓ですよね。
ですので、そのまま雨の弓ということで、 雨の後に空に出てくる弓ということで、非常に単純明快ということですね。
これ実は小英語の時代から変わっていませんで、 小英語では【rainboga】と言いましたが、【rain】っていうのはもちろん【rain】につながって、【boga】というのが、これが【bow】に繋がっていくっていうことなので、
古くから存在した虹という単語なんですね。 ゲルマン語でもだいたい同じでですね、ドイツ語では【Regenbogen】とありますが、これも【rainbow】です。
デンマーク語なんかでも【rainbow】なんて言いますが、 これも【rainbow】ということなので、だいたいこの辺り一致しているようですね。
一方、ゲルマン語ではないフランス語あたりを見てみますと、 これは【arc-en-ciel】ということで、いわば【arch in the sky】ぐらいの意味ですね。
【rainbow】よりももっと単純かもしれませんね。 空の弓と言ってるの過ぎないっていうことです。
【arc-en-ciel】英語風に言えば【arch in the sky】ぐらいの意味合いです。 そしてこれはですね、ラテン語の【archus caelestis】
【archus caelestis】というものの、いわばなぞりだと思うんですね。 ラテン語のこの【archus】っていうのが
【arch】ということですね。弓なりのものということで、【caelestis】というのが空を意味する単語の続格形、 つまり空の弓ということになります。
単純であっさりしてるなっていうのがこの【rainbow】系と【arc-en-ciel】系ということで、 西洋の言語の代表としてですね、この辺りを見てみましたが、
それでは東洋の言語はどうでしょうか。 日本語なんですけれども【虹】、これ語源が諸説あるようなんでわからないんですけれども、
一説によると【苔】【ヌジ】【ノジ】といったようにですね、 これはおそらく【なじ】【なが】という【蛇】ですね。
【蛇】を表す単語と繋がっているのではないかということなんですね。 長細い【虹】の形状を【蛇】の形状と比較しているということになりますけれども、
実際この発想は珍しくないようですね。 漢字で言いますと【虫編】に【孔】、【孔字】、【孔字現場】の【孔】ですよね。
漢字というのは中国語を表すものですから、もともとはですね、中国語の発想で言うと、あれはですね、やはり【蛇】なんですね。【蛇】の一種。
【虫編】ですが、【虫】、いわゆる【昆虫】だけでなくてですね、【蛇】の類も含めてだいたい【虫編】を使うわけですね。
例えば【麻虫】なんていうのは【虫編】に【腹】、お腹の【腹】の右側の部分ですよね。 あれで【麻虫】と読ませるわけですけれども、やはりその使い方の【虫編】ということになります。
【虹】も【虫編】に【孔】と書きますが、やはり【蛇】の一種であるというふうに見てるんですね。
工事現場の【孔】の右側の作りの方はですね、左右への【反り】を表すということで、結果として【曲がった弓なりの】ということになるわけです。
実際、古代中国では【虹】っていうのは空に住む【蛇】、もう少し言えば【竜】ですかね。【竜】も【蛇】ですから【竜】の一種と考えられていました。
西洋と東洋の比較
そして、川の水を飲むために地上に降りてくるっていう姿が空の【虹】なんだというような想像、発想があるわけですよね。
ですので、ここにはある種の物語、ドラマ、空想力っていうのが隠されていることになって、【虹】や【竜】よりはずっと面白い語源だというふうに感じられますね。
ちなみに先ほど中国語漢字の発想として【虫編】、【虫】っていうのはいわゆる今の【虫】、【昆虫】だけではなくて【蛇】のようなものも含むんだという言い方をしましたが、
これ実はですね、面白いことに英語の世界でもそうで【ウォーム】ってありますよね。【ウォーム】、【ウジムシ】みたいなのが典型ですよね。
【ウォーム】っていうことで、【ウォーム】っていうと【ミミズ】とか【ウジムシ】とかあんなものを大体想像するわけなんですが、本来はちょうど中国語の【虫編】の【虫】と似たような感じでですね、【蛇】も表したし、さらに大きい【竜】なんかも表してるんです。
【ベオウルフ】という古英詩、古英語で書かれた非常に有名な作品がありますが、これ【ベオウルフ】という王がですね、最後に【竜】と【ドラゴン】と戦うわけなんですが、この【ドラゴン】は【ウォーム】なんですよ、古英語的には。
それが今ではですね、大体ちっちゃめの【ウジムシ】とか【ミミズ】みたいなものを指すんですが、ポイントはウネウネクネクネしてるものとサイズは関係ないっていうのが、古英語の【ウォーム】に相当する単語だったというわけなので、古代中国の【虫編】の【虫】と通ずるものがあるわけですね。
さて少し脱線してしまいましたが、【虫】を【蛇】の一種【竜】の一種だと見る見方は、実はですね、他に探してもありまして、オーストラリアの土着言語、いわゆるアボリジニの言語にもですね、【虫】を【蛇】の一種だという見る伝統があるようなんですね。
【レインボー・サーパンツ】というような発想なんですけれども、これはですね、アボリジニの背景にある物語、ドラマはですね、寒季、一年の中の乾いた時期です。寒季には、ウォーターホール、水の穴にですね、深くに住んでいるその【竜】なり【蛇】なりっていうのが、雨季になって、雷を伴う雲、雨が降ってくると、
おとたんに地上に現れ出て、それがいわゆる【虹】になるんだという、非常に想像力豊かな物語、ドラマっていうのが、背景にあるっていうことなんですね。
他に、簡単に調べたところでは、ハワイ語では【青アクア】と言って、神聖な雲というふうに読んでいるようです。
もう一つ忘れてました。中国語からの例で付け加えさせていただきたいんですけれども、【虹】に橋が架かったように出る虹って、たまにありますね。空に虹の虹が架かる。
日本語では【虹】の【虹】くらいの言い方しかないですかね。それから英語でもやはりダブルレインボーぐらいだと思うんですけれども、そのまんまで面白みはないんですが、中国語ではこれを【孔蟹】と言うようなんですね。
【孔】っていうのが虹ですよね。虫編に【孔】っていうことでしたが、【蟹】というのはアメカンムリに下に睨む、閉蟹するのが【蟹】ですね。
あの目編に右側に来るやつ、この右側の作りの部分ですね。これがアメカンムリの下に入って【蟹】と読ませるんですけれども、この【孔蟹】というのは【孔】は例のドラゴン【竜】ですよね。
【竜】のオスの方を指して【蟹】っていうのはメスなんだと。つまり、やはり【竜】のカップル、夫婦が一緒に現れてきてるんだということで、ここでもですね、非常に豊かな発想が隠されているということで、これは中国語、漢字の発想の勝利っていう感じでしょうかね。
今回の比較語言学ではですね。
英語の【rainbow】っていうのは非常に三文的で面白くないと言いましたが、一つだけ英語の名誉のために【crock of gold at the end of the rainbow】【虹の根元にある金の壺】【決して得られることのない報い】を意味する豊かな表現です。
コメントをいくつかご紹介します。
一昨日の放送ですね、生放送会のアーカイブということで、英語に関する素朴な疑問【千本の句】を1時間お届けしたんですけれども、それに対してですね、【後藤の海塩】さんよりコメントをいただきました。
解決のプロセス、試行錯誤を聞くのが一番ためになりますし、楽しいです。
ということでありがとうございます。
まさにその通りと言いますか、私もですね、答えに至るというよりも、解決に至るプロセスであるとか、それが必ずしもうまくいかないところもあって、試行錯誤するわけなんですが、それ自体がですね、一番面白いところだというふうに思っているんですね。
解決することももちろん大事なんですけれども、そこに至る過程で何をするかっていうことを、ここで頭をひねらせたり、他の方の意見であるとか視点みたいなものを共有しながら、だんだんと答えに近づいていくっていうプロセス、まさにこれが研究そのものなので、そこを【千本の句】の中でも私たちも楽しんでいるということですし、
聞いていただく方もですね、同じようなところに面白みを感じていただけるということで、とても嬉しいコメントでした。
ありがとうございました。それと関係するような内容かとも思うんですけれども、943回の話題ですね、支持詞This, That, Leave, Thoseの語源という話題でお届けしましたが、これに対しましてH74さんからコメントをいただきました。読み上げさせていただきます。
私の素朴な疑問についての解説をありがとうございます。先生の解説は豊富で高度な知識を組み合わせて行われているのに、噛み砕いて、しかも系統を立ててなされるので、分かりやすくてためになります。素朴な疑問はつきません。一つの疑問が解決しても、そこからまた別の疑問が生じることもあります。
AA時点で単語の意味を調べるようなものです。そこで質問ですが、素朴な疑問すべてを先生に質問することはできません。自分自身でも調べてみたいと思います。調べ方の手法をお時間があるときに教えていただければ嬉しいです。
というコメントです。ありがとうございます。これはなかなか難しくて、一つの調べ方があるといいますか、まさに先ほどもコメントを外資で述べましたが、研究そのものに割と近いんですね。素朴な疑問に答えるという。
そしてその研究の手法、調査の仕方というのをマスターすることが私自身の目標でもありまして、まだまだ道半ばということです。ある意味では今まで学んできたものであるとか知識を総動員にして、すべてを組み合わせて一つの答えに至る。
少なくとも至ろうとするということが、いわば専門学に答えるということになっているので、一つの正解といいますか、たどり着き方っていうのはないんですね。
そのためには、まず全体的な英語詞の語源を利用して何か問題を解くというようなケースですけどね。そのような場合には、広く英語詞の知識が必要なわけなんですけれども、やはり概論的な英語詞の流れ、英語の歴史の流れというものを抑えた上で、そして個々の単語について、例えば語源辞典を引くであるとか、
あるいは Oxford English Dictionary という、これも一種の語源情報が非常に豊富なので、語源辞典として使うことができるんですね。
この辺りが、まずすぐに答えられる、出てくる答えなのかなということです。一つは非常に大きく、英語の歴史を広く捉えるということで、解説のようなものを勉強していただくのが一番いいかなと思います。
一方、個々の問題については、語源辞典であるとか、大きな辞書を使うということです。さらに単語の問題ではなく、例えば文法の問題とか、発音の問題、つづり字の問題ということになりますと、単純にはいきませんので、
さらに異なった方法、資料というのを使いながら、解決に向けて、いろいろな本で調べていくという、そういうやり方を私はとっているわけなんですけれども、これも一つの間違いなく答えに至れる道っていうのはあるわけではありません。
常に試行錯誤ということになります。あまりきれいな答えにはなっていませんけれども、ぜひ浮かんだ素朴な疑問に、そのようなやり方で一度迫ってみると良いかと思います。
おだしょー コメントいただきましてありがとうございました。エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
虹の語源と文化
今日の話題は二次の比較語言学ということだったんですけれども、私が少し調べた鍵の言語、しかも調べられる範囲の言語で、二次っていうのは何というのか、そしてその語源は何かということを調べたにすぎません。
世界には無数の言語、無数って今7000とも言われていますけれども、それぐらい多くの言語がありますので、二次の背後にどういうドラマ、物語を持っているかっていうのは、もっといろいろバリエーションがあるのではないかなと想像されます。
そこで皆さんが知っている外国語であるとか、二次の由来などにつきまして、何か様々な民族文化言語から知っている情報がありましたら、ぜひコメントでお寄せいただけると、ますますこの二次の比較語言学、これが面白くなってくるんではないかなというふうに思います。ぜひご協力お願いいたします。
このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご質問、ご意見、ご感想をお待ちしています。Voicyのコメント機能を通じてお寄せください。
それでは、10月9日日曜日ですね。今日も良い休日となりますように。ほったりうちがお届けしました。また明日。