2025-03-27 12:50

#1397. 有標と無標

▼パーソナリティ,堀田隆一(ほったりゅういち)の詳しいプロフィールはこちらの note 記事よりどうぞ.


- https://note.com/chariderryu/n/na772fcace491


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▼helwa リスナー有志による月刊誌「Helvillian」が2024年10月28日に創刊しています.第4号まで公開されています.


- 創刊号(2024年10月28日):https://note.com/helwa/n/ne2b999d5af72

- 第2号(2024年11月28日):https://note.com/helwa/n/n94e9d9a74706

- 第3号(2024年12月28日):https://note.com/helwa/n/na7394ab1dc4c

- 第4号(2025年1月28日):https://note.com/helwa/n/nb6229eebe391


▼2024年12月30日に『英語史新聞』第11号がウェブ発行されています.


khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第11号がウェブ公開されています.こちらよりアクセスしてください


- 第11号:https://keio.box.com/s/kk0jss15l22pz1rpuysa0ys4nkpc3lwr


第11号公開については,khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio (https://x.com/khelf_keio) を通じても案内しています.

リツイートなどを通じて「英語史をお茶の間に」の英語史活動(hel活)にご協力いただけますと幸いです.


▼2024年第3四半期のリスナー投票による heldio 人気配信回


- 第1位 「#1219. 「はじめての古英語」第10弾 with 小河舜さん&まさにゃん --- 「英語史ライヴ2024」より」 https://voicy.jp/channel/1950/6049608

- 第2位 「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」 https://voicy.jp/channel/1950/6052858

- 第3位 「#1139. イディオムとイディオム化 --- 秋元実治先生との対談 with 小河舜さん」 https://voicy.jp/channel/1950/1298775

- 詳しくは hellog 記事「#5645. リスナー投票による heldio 2024年第3四半期のランキング」をどうぞ http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2024-10-10-1.html をどうぞ


▼2024年9月8日(日)に12時間連続生放送の「英語史ライヴ2024」を開催しました.英語史界隈では前代未聞のイベントとなりました.詳細は以下の配信回,あるいは khelf の特設ページを! イベント後は,数ヶ月間かけて各番組をアーカイヴで通常配信していきました.


- heldio 「#1119. 9月8日(日)「英語史ライヴ2024」を開催します」 https://voicy.jp/channel/1950/1296042

- khelf 特設ページ: https://sites.google.com/view/khelf-hotta/英語史ライヴ2024特設ページ


▼2024年8月26日より特別企画「helwa コンテンツ for 「英語史ライヴ2024」」が始まっています.ぜひ特設ホームページに訪れて,ライヴ当日まで毎日1つか2つずつ公開される helwa メンバーによる英語史コンテンツをお楽しみください.


- http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/etc/helwa_content_for_hellive2024/


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Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のリスナーさんどうしの交流と情報発信の場です.heldio やそこで配信された話題を「待ち合わせ場所」として,英語史やその他の話題について自由にコメント・質問・議論していただければ.heldio が広く知られ「英語史をお茶の間に」届けることができればよいなと.今のところ承認制ですが,お気軽に申請してください.

https://twitter.com/i/communities/1679727671385915392


▼「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズ(有料)を展開しています.


英語史の古典的名著 Baugh, Albert C. and Thomas Cable. *A History of the English Language*. 6th ed. London: Routledge, 2013. のオンライン講座です.毎回1セクションンずつゆっくりと進んでいき,内容について縦横無尽にコメントしていきます.シリーズについて自由にご意見,ご感想,ご質問をください.皆さんで議論しながら読んでいきましょう.1回200円です.

https://voicy.jp/channel/1950/570931


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3. また,収益の一部は,Voicy 以外でのhel活をさらに拡大・発展させるための原資とします.


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 ・ パーソナリティおよびリスナーさんどうしで,もっと交流したい方


以上,よろしくお願いいたします.

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おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語詩ブログの管理者、 そして英語のなぜに答える初めての英語詩の著者の、ほったりゅう一です。
英語の語源が身につくラジオ、heldio。英語詩をお茶の間に思っとうに、英語の歴史の面白さを伝え、 裾野を広げるべく、毎朝6時に配信しています。
本日は3月27日木曜日です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。 本日取り上げる話題は、有標と無標、
言語学用語で、有標、標は標識の標ですね。
と、無標というのがあります。対立する用語なんですけれども、 有標の方はmarkedと言いますね。標識が立っている、マーク付けされているほどの意味です。
そして無標はunmarkedということなんですね。 これが言語学では非常によく使われる用語として定着しています。
そして言語変化にも深く関係する用語ということで、 英語詩の議論にもしばしば出てくるわけなんですけれども、
これまでヘルディオってですね、 ちらっとこの辺りの用語を使ってきたことはあるかもしれませんが、 ちゃんと導入していなかったなと思いまして、
こちらについて考えてみたいと思います。 実は簡単な用語概念でもないんです。
なので難しい、ちょっと避けてきたというところが、 なきにしもあらずなんですが、
解説、試みてみたいと思います。 それではどうぞよろしくお願いいたします。
marked、有標とunmarked、無標ということなんですけれども、 イメージとしてはマーカーが引かれているとかフラグが立っているという方がmarked、有標ですよね。
そうでなく地味でですね、 デフォルトという感じがするのがunmarkedということですね。
この対立概念のことを有標性、markednessというわけなんですが、 言語学ではこれが大変よく使われるんですね。
基本的にはこれは構造言語学という20世紀初めに起こった 言語学の考え方に基づくんですね。
ある特徴があるもの、それがmarked、有標で、 ないものがunmarkedという、言ってみれば二律背反的なプラスかマイナスかとか、
1か0か、オンかオフかみたいな発想ですね。 2つに二項対立に分けていくっていう考え方で、
ファジーなところを扱うのは苦手なんですが、 やはり何と言っても分かりやすいっていうところがポイントですよね。
構造言語学はこの分かりやすさというのが命っていうところがありまして、 そしてまさに構造的、体系的ですっきりと図式に表せるっていうことから、
03:04
言語学では重宝されてきた考え方なんですよね。 その中に有標無標という対立も組み込まれたということなんですよね。
これですね、なかなか定義づけるのは厄介で、 学派によってもこの定義が異なっていたりして簡単ではないんですね。
一番最初には音韻論の議論で出てきたものなんですね。 例えばですね、
TとDで表される詩音というのがありますね。 それぞれ
無声、死刑、破裂音。 だから有声、死刑、破裂音ということでTとDという違いですよね。
これは声の観点からこの2つの音は、詩音は対立していますっていう言い方になるんですね。
Tというのが無声の方で声が出ない。 のどびこが震えないっていうことですよね。
それに対してDで表されるドゥの方は、のどびこが震えるということで有声音と言いますが、
この2つを比べた場合、Tで表されるトゥの方が無表という風に言われます。
そしてドゥの方が有表と言われます。 つまり無声有声という対立と無表有表という対立は基本的にここではパラレルだということなんですね。
ただこれは詩音、特にTのような詩音を話題にしたからそうなんであって、例えばですね、母音アでいきましょうか。
これも理屈上は無声有声両方のバージョンがあり得ます。
アというのはこれ有声バージョンですね。これの無声バージョンはアになります。
つまりささやき声でアを言った時、無声バージョンアが出るんですね。
どちらが普通かデフォルトかというと、有声バージョンのアの方が普通で、
とりわけ何かささやきたい文脈でアという風に無声になるということはあるにせよ、基本形はアという有声の方だとなりますよね。
なので母音に関してはアに関しては有声音の方が無表で、無声音のアというのは有表ということになるわけです。
そうするとデフォルトかそうでないかという、そのような区別として捉えることができるということがわかったかと思うんですね。
ですがこのデフォルトとは何かっていうのが実は大問題でですね。
もうちょっと社会的な生活に引きつけていくと、デフォルトというのは皆さんどういうふうにお考えですかね。
一番普通なものとか常識的なもの、特別でないもの、よくあるもの、ありふれたもの、平凡なもの、いろいろな形容詞で置き換えることができると思うんですが、
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特にデフォルト、常識というとこれ簡単に定義できないってのがわかりますよね。
客観的に定義するにはどうすればいいかということをめぐってですね、いろいろ議論があるわけです。
自然だとか普遍的だ、これがアンマークトな無表で、不自然だとか非普遍的だというのがマークトという考え方もあったりしますが、
こういったいろいろな概念ですね、の、いわば組み合わせみたいなもので、マークト、アンマークトというのができてきているので、
ゆるいといえばゆるい用語なんですね。もちろんこれをゆるくせずに客観的に定義したいということで、さまざまな言語学者が定義づけようとはしてきました。
さあ、音韻論の話から始まったんですけれども、形態論などにも波及していきます。
例えばですね、英語の場合、単数形と複数形があります。
dogに対してdogsというような対立ですね。この2つを比べた場合、どちらが無表でどちらが有表でしょうかといった場合、
基本的にですね、皆さん、dog、これがデフォルトの形で無表、そしてdogsというのはそれにsをつけた複数形という捉え方で、
こちらが有表というふうに捉えるんではないかと思いますね。これは我々辞書を見慣れていますし、辞書の見出しはdogなわけですよ。
dogsで見出し立ってないんですよね。辞書の見出しに立つのは普通の方という発想もあります。
さらに、形態論的に言えば、dogが基本にあって、それに複数形の時にプラスして図をつけるんだと説明づける。
つまり、基本形と派生形という関係にした方が順番としてですね、便利ですよね。
dogsが先にあって、ここからsを引き算して単数形を作るんだというのは、必ずしも直感的ではないんですよね。
この直感的ではないということをどう説明するかということなんですけれども、
dogsの方がデフォルトでunmarkedという感じはしますよね。
それを受け入れるにしても、先ほどの音韻論の場合の、つまり有性無性と引っ掛けて有表無表を決めるというやり方と、
今回のドッグドッグズのような形態論での有表無表の決め方というのは、一致してない感じはしますよね。
音韻論から形態論に移ったことで、何か基準がですね、ちょっとぶれてる感じがしないでもない。
さらに意味になりますと、もっと厄介になりますね。
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例えばですね、対義語、反対語というのがあります。oldとyoung。
これどっちが無表でどっちが有表ですかと言われた場合に、皆さんどのように答えますか。
どちらがベーシック、基本でもないという感じがするかもしれませんが、意味論の世界ではだいたいoldの方が無表、デフォルトの方でyoungが有表というふうに考えます。
これはなぜかというと、年齢を尋ねるのに、普通how old are youというふうにoldを使う。
デフォルトとしてoldの方を使うんだという発想になるからですね。
how young are youというと、若いことが分かっていて、どれだけ若いんですかという含みがある。
一方、how old are youというのは、そういう願蓄、前提というのはなく、純粋に、つまり生後3ヶ月の赤んぼにですね、how old is sheみたいに聞くことも可能なわけですよね。
としますと、音韻論、形態論とはまた別軸で、意味論では有表無表というのを区別している雰囲気があるわけですね。
とすると、一貫していろんな部門にわたって使える定義と言いますかね、有表性とは何かというものがないことになります。
ゆるーく言葉遣いをするのが便利な時っていうのはありまして、自然、デフォルト、ユニバーサル、
高頻度、基本的、規則的、こうした様々な観点をいわばひっくるめにして総動員して決まるような対立、これが有表無表ということなんですよね。
きっちりと定義付けないと、結局のところ常識的非常識的みたいなことになって、学術的ではなくなるというのがなかなか苦しいところなんですが、あまりに便利だということで、これが言語学で広く使われているということです。
ただですね、先ほども言いましたように、各分野の中ではそれぞれ定義がしっかりしているということもありますね。
そこでも、ただ論者によって異なるという考え方が異なるということもありますので、一貫した定義っていうのはあるんだろうかというのは怪しいところではありますが、
ただ、ゆるーく使っておくにはあまりに便利だということで、言語学でも手放さずにいる用語なんだと思うんですよね。
とりあえずはそのぐらいに理解しておいて良いんではないかと思います。
12:02
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
有表無表の対立というのは、いかにも言語学用語っぽくてですね、使っていると言語学しているなという気になって、
来るんですけれども、ちゃんと理解しようとすると、スルスルっと逃げていってしまうような、そんな用語概念であるということも気に留めておいていただければと思います。
このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご意見ご感想をお待ちしています。
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それでは今日も皆さんにとって良い1日になりますように、英語子研究者のほったりうちがお届けしました。
また明日!
12:50

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