won'tの歴史的背景
英語に関する、そぼくな疑問。 なぜ、助動詞 will の否定形は won't になるのですか。
他の助動詞や、b 動詞と考えてみますと、 否定形の省略形ですね。
won't という形を、そのまま肯定形の形につければいいということになっています。
can に対して can't。 could に対して couldn't。 should に対して shouldn't。
b 動詞でも is, isn't. are, aren't. was, wasn't.
have なんかもそうです。 haven't, hasn't とですね。このように、
n apostrophe t のこの not の省略形を、そのままくっつければ否定形になるものが多いわけですが、
この頻度の高い助動詞 will に関しては willn't にならず won't という妙な形になる。
これを確かに考えてみれば妙なふうに感じられます。
歴史的に見ますと、この不一致、 肯定形と否定形で形が異なっているというのは、中英語の方言事情にさかのぼります。
中英語記には標準英語、標準的な英語の形というのがまだ未発達で、
イングランの各地で様々な方言、 生った発音が行われていました。
will の場合で言いますと、この i の音ですね、母音。 will は比較的多くの方言で発音されており、
広く分布していた発音なんですが、 それが肯定形の現代の will に発展していったということなんですね。
一方で別の方言、南部、中部、イングランドです。 ロンドン付近も入りますが、ここでは will もあったんですが、
wal という形もあったんですね。 wo と名まってしまう発音です。
wal というのがありました。 他の方言に行けば will であるとか wal であるとか、様々な母音があったわけですが、
この中部、南部では比較的頻繁に wal という形が使われたんですね。
will という方言では、多く否定形は will not ですので willn't になっていく。
ところが wal が使われることが多かった方言では won't で、won't となっていったということです。
例えば、英子の父と言われる調査なども wal という w o l の形をよく使っていました。
後にこの中英語期の次の時代に標準英語ができるという段になりまして、どういうわけかですね。
肯定形の方は will を中心とした i の方で、そして否定形の方は wal という南部、中部の発言に基づく否定形である won't の方で標準化が進んでしまったと。
そして現代、振り返ってみると、肯定形が will なのに否定形は won't というふうに食い違ってしまっているわけなんですが、
当時の中英語、当時の方言事情から近代英語記にかけての標準化という過程にあって、
違うところから違う方言形がたまたま選ばれてしまったという不幸な状況になったのが、現代の will、won't の歴史的理由ということになります。
音声の変化
ちなみにこの won't という形が本来だったんですが、ここから l が消えて won't になっていくわけですね。
英語ではこの l の音と n の音が隣に合わさると、この l が消えてしまうことが多いです。
他には例えばもう一つの助動詞 shall これ否定形は shan't というふうに l が消えてしまうということがありますね。これもまったく同じ事情です。
他にはくるみを意味する walnut ですね。これは現代でこそ walnut と l n と続きますが、18世紀ぐらいにはこの l が発音されていなかったんですね。
どうもこの l n という繋がりは英語ではあまり好まれないということで、won't ではなく won't となって現代発音されているという次第です。
この方言事情に由来するという説明をしましたが、実は別の説もあります。それも含めまして詳しくはヘログの89番、そして1298番の記事をご覧ください。