2025-03-28 09:59

heldio #251. 複数形 Englishes の出現

#英語学 #言語変種 #世界英語 #複数形 #形態論
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サマリー

今回のエピソードでは、複数形の「Englishes」がどのように出現したかと、その背景にある世界英語の影響力の変化について考察されています。特に、アメリカ英語やイギリス英語を指していた「Two Varieties of English」が「Two Englishes」として簡略化された過程が注目されています。

Englishesの出現
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、複数形 Englishes の出現、
という話題です。
最近ですね、Englishes、特に世界英語、世界の様々な英語というのを総称して、World Englishes
という表現が聞かれるようになってきました。 通常ですね、Englishであるとか、Japanese、Chineseのような
言語名ですね。 これはですね、複数形なんかならないわけです。
本来は数えられるもんではなくて、ですから、あもつかないわけですね。
An Englishという言い方も本来はなかったし、Englishesという複数形もなかった。
まあ一種の固有名のようなものとして捉えられて、無関詞で使われる。
これがまあ普通の使い方だったんですね。 ところが最近、様々な英語が出てきた。
ということですね。American English、British Englishをはじめとして、Canadian English、Australian English、New Zealand English
の他、Indian English、Nigerian English、Singaporean English、Jamaican Englishのような様々な英語が現れてきてるわけですよね。
そのどちどちの生った英語っていうことなんですが、これを総称して捉えるという表現を求めた時にですね、なかなかうまい言い方がないということで、
簡単に言えば、Englishをそのまま複数形にしてしまおうということで解決を図った。これがWorld Englishesという表現なわけです。
これ自体は本当にこの数十年で、しかも本当に聞かれるようになってきたのは、21世紀に入ってからといってもいいと思うんですけれども、
こうした表現が出現するに至った背景は何なのかということを今回は考えたいと思います。
従来の表現方法
よく考えてみれば、発想としては非常にシンプルで、今までなかったので見新しく感じるだけで、
複数の英語があるんだからEnglishesという言われてみれば、まさにその通り何もひねっていないというふうに見えるわけなんですが、
我々の頭の中ではですね、言語名というのは複数形にしない、あもつかないし、いわゆるかさめしではないんだというふうに捉えているので、目新しく感じるんですよね。
つまり考えてみれば全く驚くべきことでもないように思えるんですが、常識的に思い込みとしてSはつかないんだと、
いったところに急にSがついた、ここに面白みがあるんだと思うんですね。これ発想の転換があるんだと思います。認識の変換といいますか。
それでは今まで何と言ってきたのかということですね。
これまでだってAmerican EnglishであるとかBritish Englishというものぐらいは当然アメリカ英語、イギリス英語という区別ぐらいあったわけですから、これを合わせて言ったときにどうなるのかと。
今まではAmerican and British Englishと言って済ませていたわけですね。
あるいはですね、もう少し丁寧に言うと、言語学的に言うとですね、An American Variety of Englishという言い方が正確なんですね。
英語という言語のアメリカ編集だと。このVarietyというのは編集と訳しますが、平たく言えばダイアレクトのことですね、方言のことです。
アメリカなまりのアメリカ方言の英語というぐらいの意味で、An American Variety of Englishという言い方はこれまでもあったと思うんですね。
ということはAn English Variety of Englishというのもありますし、A Scottish Variety of Englishもありますし、An Indian Variety of Englishという言い方もあります。
こうすると長いので、これをショートカットにした言い方がある意味では、American Englishであり、English Englishであり、Scottish Englishであり、Indian Englishであるということですね。
このようにHonorary Variety ofというのが省略されていると考えると、いろいろ言い方があって、例えばAncient French、古いフランス語なんていう時も、これ丁寧に言えばAn Ancient Variety of Frenchということですし、書かれた日本語、書き言葉日本語というのもWritten Japaneseと簡単には言えますが丁寧に言えば
A Written Variety of Japaneseということができますね。展開して丁寧に表現することができます。これを応用すると、例えばアメリカ英語とイギリス英語、2つの英語というような表現としては、従来からもこういう言い方が可能だったということなんです。
つまりTwo Varieties of Englishということで英語の2つの編集、アメリカ、イギリス英語のことというふうに表現できたんですね。
ですが従来はあくまでTwo Varieties ofという言い方で複数形を表して、Englishそのものは最後に従来通りの使い方でEnglishとSを付けずにいう表現だったわけなんですが、これが思い切ってショートカットをしてしまおうということでTwo Englishesというような表現が可能になったということが、
この複数形のEnglishesの出現の重要なポイントなわけです。これは単なる言い換えの問題のようにも思えますが、実際にはその背後にある英語感、英語をどう認識するか、英語をどう捉えるかという捉え方の変化なんですね。これがあるんじゃないかということです。
英語の歴史と変化
ではこの新しいと言われるEnglishesですね。この言い方が現れたのは一体いつなのか。ということでオークスフォードイングリッシュディクトナリーを引いてみますと、これがですね、Englishは加算名詞として初めて現れるのはどうも1910年のことなんですね。
これはメンケンというジャーナリストがですね、アメリカのジャーナリストがEvening Sunの中でこんな言い方をしています。The Two Englishes。非常に分かりやすいですね。アメリカ英語とイギリス英語を指してThe Two Englishesと言ったのが最初ということです。
このジャーナリストなんですけれども、批評家でもあるんですが、実はですね、アメリカ英語に関する名著と言っていいですね、クラシックと言っていいですが、The American Languageというタイトルの本を表した人でもあるんですね。
そしてこの人はですね、アメリカ英語といわゆる本家のイギリス英語っていうのが今後どんどん分かれて2つの異なる言語に分かれていくだろうと。2つの異なる英語に分かれていくだろうという考え方の人だったので、非常によく分かりますね。The Two Englishesというふうに表現したということなんですね。
これが1910年のことなんですが、その後もですね、比較的学術的な文脈で使われることが多かったようですね、このEnglishesっていうのは。
一般化するのはですね、もっとずっと後で、それは本当にこの30年40年というところではなかったかと思います。
これだって一般化したと言ってもですね、今でも人々の口に普通に昇るような用法かというとそうではなくて、まだまだ浸透しているとは言えないぐらい、それぐらい新しいEnglishの複数形、Englishesという用法ですよね。
かなり新しいもんだというところがポイントです。
それでも少しずつ広まってきているということは確かです。
では今までTwo Varieties of Englishと言っていたのが、端的にTwo Englishesというふうになってきたのは何なんでしょうか。
単に形式的なショートカットというだけではありません。背景にやはり何かあるはずです。
そもそも英語が複数あるっていう事態そのものは英語の歴史のスタートからあるんです。
今のアメリカ英語、イギリス英語、インド英語等々だけではなくて、そもそも5世紀の英語史のスタートからしてですね、英語は様々な方言に分かれていたって事で実態としては常に複数形だったんですね。
ところが表現として複数形はなかったってだけなんです。
ではなぜここ数十年で現れてきたのか、これは非常に面白い問題なんですけれども、
いくつか要因があると思います。そのうちの最も重要と思われる一つに注目したいと思います。
それは英語の基本であると我々が認識している英米変種の影響力の低下にあると思っています。ではまた。
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