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おはようございます。英語の歴史を研究しています堀田隆一です。 このチャンネル、英語の語源が身につくラジオheldioでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。 今回は昨日に引き続きですね、英語に関する素朴な疑問
千本ノックの続きをお届けしたいと思います。 千本ノックと言ってもですね、本当に千本できるわけではなく、数多くのという意味だったんですが、それにしても昨日は5本しか扱うことができずに、そんなつもりではなかったということですので、もう少しは行きたいなということで、本日続き、もう少し多く取り上げたいと思います。
今回取り上げる素朴な疑問も、昨日と同じでですね、1ヶ月ほど前に大学の英語史の授業の初回ですね、初回に学生から募った様々な質問、これをベースにいってみたいと思います。ではどんどんいきましょう。
仮定法の使用と歴史
1つ目、なぜ仮定法ではIでもわーになるのか。これ、If I were youっていうあれですね、この仮定法の、普通だったら仮定法括弧でIだったらわず文になるんじゃないかっていうところがわーになる。これは非常に例外的な感じがしますので、よく聞かれる質問だと思うんですけれども、端的に言うとですね、小英語の段階から仮定法は、いわゆる直接法ですね、
普通の法と別立ての活用表があったっていうことなんですね。直接法ですと、I was, you were, he was のように、わず、わーというのがこの2種類出てくるわけなんですけれども、仮定法の場合には当時の活用ではですね、
I, you, he 認証に関わらず、わーを使ったっていうことなんですね。ですので、言ってみれば別の活用表があって、仮定法ではですね、そちらのこの仮定法の活用表に従っていたっていうことです。これが現在まで残っているっていうことなんですね。
他の動詞もそうだったんです。全体的にはですね、B動詞だけじゃなくて、他の動詞だって、仮定法の活用表と直接法の活用表、これが別立てになっていたんですが、B動詞以外のすべての動詞において、実は合一してしまったんです。
なので、現代ではB動詞の活用だけがですね、仮定法と直接法とで違うっていうのは浮いて見えるんですけれども、これB動詞の場合、古い形が今の今まで残っているってことなんですね。なので、なぜ仮定法ではIなのにわーになるのかというのは、裏から見るとですね、
なぜB動詞以外の動詞ではすべて、仮定法と直接法の活用表がドッキングしてしまったのかっていう、こういう問題意識になるっていうことですね。
次、英語ではB動詞の否定文はB動詞の後ろにノットをつけて作ります。確かにそうですね。ではなぜ、be quietの否定文、禁止の形はbe not quietではなく、don't be quietなのですか、ということです。
通常、確かにB動詞の後ろにノットをつければ、平常文ですとですね、これだけで否定文を作ることができるっていうことなんですが、命令に関してはですね、be quietに対して、be not quietではなく、don't be quietというふうに、don'tを使うっていうことですね。
これなぜなのかということですが、これ統合論の変化として、なかなか面白い問題だと思うんですね。そもそも、don'tっていう形ですね。これが一般的になってきたのは、近代になってからのことなんですね。私のタイムスケールで言うと最近ということになるんですが、近代というのは1500年以降のことをだいたい言いますけれども、英語詞では。
比較的新しいもので、一般動詞にもですね、疑問文とか否定文を作るのに、今ではdoとかdon'tとか付くわけですが、こういう言い方がなかったんですね、それ以前には。それが1600年、そして1700年ぐらいにかけてですね、どんどんと一般化してきた。
否定文を作るときはdon'tだし、疑問文を作るときはdo youというふうになるし、ということで新しい文法なんですね。一般動詞にはそれが浸透したんですけれども、B動詞に関してはですね、いまだに昔ながらの作り方、さっきの仮定法も一緒ですけれどもね、B動詞はやっぱり特別で頻度が高いので、ということでですね、いまだにdon'tを使わずに、
そのB動詞の後ろにnotを付けたり、あるいは疑問文のときもですね、you areというのをひっくり返してare youというふうに疑問文を作るっていうことで、昔ながらの形が生き残っている。ただ面白いことに、この否定命令文の場合だけはB動詞もですね、don'tを受け入れたということになりますね。
これがなぜかというのは、英語の統合論の歴史でもなかなか面白いところでですね、ここで詳しく語ることもできませんし、私も完全にわかっていないということですので、とりあえずここまでということで。
関係代名詞の進化
次、なぜ関係代名詞はwhichなどで決まっているんですか。例えば、itでもいいのではということですね。これ関係代名詞の歴史っていうのはなかなか、小英語、中英語、近代語とですね、いろいろと変遷してきた歴史があるんですね。
基本的には小英語からずっと関係代名詞になるものはあるんです。だんだんと整備されてきたっていうのも本当なんですが、一応小英語から形としてはある。ただその関係代名詞として使う語ですね。
今だったらwhichとかwhoとかthatなわけですが、これがですね、どういう単語が関係代名詞として用いられるかっていうのは結構歴史の中で変わってきたんです。
小英語の頃はですね、今でいうtheに相当する形ですね。いわゆる定関詞です。これもいろいろ屈折して形が変わったんですけれども、いわばtheに相当するものが関係代名詞としてよく使われたっていうのがあるんですね。他にもありましたけれども。
そして中英語期になるとthatみたいのが対等してきます。これは現代まで続いているのでわかると思うんですね。そして中英語半ば、そして後期、そして近代語にかけてようやくwhichとかこのwh形ですね、疑問詞と同じ形が出てくるってことなんです。
その中ではwhoっていうのが一番遅咲きで一番最近現れたっていうことなんですけれどもね。itっていうのはなかったですね。疑問詞、whで始まる形が関係詞になって、それからもう一歩先に発達したthatとともに、現代に最も主流の関係詞となっているというそういう流れですね。
itみたいなものは直接は関係代名詞になったことはなかったですね。他にもwhatとかasとかちょっとした別物ですね。現代としてはいわゆる関係代名詞ではないものなんかも使われてきたりしましたし、現代の方言なんかでは残っているところもあったりしますね。結構歴史的変遷を繰り返してきたというところがポイントです。
次、なぜheは目的格と所有格が違うのにsheは目的格と所有格が同じなのかということで、これhe, his, him、このhis, himっていうのは違いますが、女性系の場合はshe, her, hersっていう風にherと重なってしまうっていうことですね。
これは最初に英語を勉強した時から、なんでこの表のこの2箇所は同じなんだと思った人も多いかと思うんですけれども、これはゲルマン語の昔に遡るとここやっぱり違かったんです。違かったんですけれども、比較的似ている形で音として発音として合一してしまったというのが答えになります。
だからheと同じでsheだって違かった。ところが発音の変化の都合で合一してしまうということですね。これは実はよくあることです。もともと分かれていたんだけれども、違いがそんなに大きくなかったもともとということもあり、発音の都合で歴史の途中で合一してしまうということですね。こういったパターンは割とあるものです。
もうそろそろ10分が近づいてきてしまいまして、これで打ち止めですね。昨日より少なくて4本しかノックできませんでしたが、意外と一つ一つに話はもうですね、この1000本ノック企画また気が向いたらやろうと思います。それではまた。