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おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、 そして英語のなぜに答える初めての英語史の著者の堀田隆一です。
9月17日土曜日です。いかがお過ごしでしょうか。 英語の語源が身につくラジオヘルディオ。本日の話題は
海にまつわる単語の関係
sea, ocean, marine, thalassography 海語の4層構造です。
海を表す単語。たくさんありますけれども、この類義語群がですね、どういう関係なのかということを、 語源、そして意味の観点からたどってみたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。 数日前にリスナーのマリーさんからいただいた質問です。
読み上げます。唐突に質問ですが、ocean, sea, beach が生まれた順はどんなでしょうか。
時代としては大海を認識した後に、それよりも小さいseaを意識したのか、 それともseaの果てにoceanを認識した感じでしょうか。
そしてbeachは、なんかさらに他の仲間のような感じがしますね。 別アングルの話ですが、海と言われてoceanかseaと浮かびますが、
海に行くという会話では、ビーチに行くと言った方が理解されやすいですよね。 ビーチがない海辺に行くことも実際はあると思いますが。
という海にまつわる単語群の関係という話題なんですけれどもね。
マリーさんご質問ありがとうございました。 今日はこれにお答えしたいと思います。
まずビーチの話なんですが、これあまり気づきませんでしたが、そうですね。 海に遊びに行こうって言った時に、海の沖合に出るというよりは多くの場合、
ビーチに行こう、海岸に行こうというような意味で使われているんですが、 日本では一般的に海に行こうという言い方してますよね。
英語で言えばやはりビーチということなんだろうなと思います。 一種のメトニミーですかね。隣接関係ということで、海に行くと言っても、
まさに海に行くというよりは、海と陸地の接点である海辺に行くというような 隣接関係を利用したメトニミーなんだと思うんですけどもね。
さあこの英単語ビーチについてなんですが、これ実は謎でですね。 16世紀以降に初めて出てくるんですが、これが何に由来するのかっていうのはよくわかっていないんですね。
どうも対応する単語が、小英語にも中英語にも確認できずにですね。 急に16世紀に文献に現れるということで、外から借りたわけでもなさそう。
かといってそれ以前の時代の英語ですね、にも対応物がないということなので、 ちょっと謎ということで、これ以上立ち入らないことにしたいと思いますが、
ズバリ海を表す単語には、マリさんが挙げてくださったように sea、ocean この辺が基本的な単語としてあると思うんですね。
語源をたどってみますと、まずseaという単語、これ小英語に存在します。 実はゲルマン語に広く存在しまして、ドイツ語ではseeって言いますかね。
これで女性名詞として使う場合は海となって、同じseeでもですね、ドイツ語では男性名詞として使うと湖って意味なんですね。
両方あるということです。それからニュージーランドってありますけれども、これzealandですね。 このzeの部分が海に相当するわけですね。
オランダ語に由来します。英語では最も普通に海というと、このseeというのがですね、最も古いし、小英語からあるということで親しみやすい単語としてあるんですけれども、これもですね、これ自体語源がどこにあるのかっていうことはですね、いろいろと議論されていまして、説があるんですけれども、一つ有力な説は
soul、魂ですね。s-o-u-l、なんかと土語源なんではないかと。 ゲルマンの思想、信仰によりますと、魂というのは
海であるとか湖であるとか、水から生まれるんだと。 そして
人の中にですね、生き物の中に魂が宿るんだというような、そういう考え方がある。 そして死んだらまた海なり湖なりに戻っていくというこのsoulというのと、その源であるseeというのは語源的な関係もあるんだというような説ですね。
比較的有力な説ですけれども、はっきりしたことは分かっていないといえば分かっていないという、非常にね、非近な単語なんですけれども、このように語源性のものがあるっていうのは面白いですね。
さらにこのseeについて面白いのは、ゲルマン語にはだいたいこのseeに相当する単語があるというわけなんですが、他の語派ですね。
つまりインドヨーロッパ語族の中の様々な派閥があって、それを語派と呼んでいるわけですが、ゲルマン語派にのみ存在して、例えばイタリック語派とかスラブ語派とかケルト語派とか、そういうものには見られないですね。対応する単語がsee。
これは非常に面白いことで、特にインドヨーロッパ祖語の段階でも、海に相当するズバリの単語っていうのは復元されていないんです。つまり、なかったっていう可能性が高い。
ここからインドヨーロッパ祖語の故郷の地は、海が周りになかった、つまり大陸の内陸部であるというような説を支持する根拠の一つとなったりしてるんですね。
ですから、海を表す単語っていうのはそれくらい重要性を帯びているというのが、このインドヨーロッパ比較言語学の中では非常に注目の集まっている単語なんですが、ゲルマン語で発生したとおぼしきsee、soulとの関係がありそうだという説ではあるんですけれども、これ自体が非常に大きな、そして興味深い問題だと思います。
次にオーシャン、こちらに行ってみたいと思うんですね。これはただ海というよりも広い海ですね。太陽、大海という感じですね。なので、Pacific Oceanというふうに使うわけです。
魂と関連づけられる海っていうのが比較的身近な、密接な感じがする響きなんですが、一方オーシャンって言うとですね、ただただだだっぴろい海という感じですよね。
この語感の違いっていうのは、このオーシャンが外から入ってきた釈養語っていうことにも関係してると思うんですね。
もともとはギリシア語のオーケアノースですね。オーケアノースという、昔のヨーロッパ中心に見た世界地図で、ヨーロッパがあってアジアがあってアフリカがあって、その周囲をですね、円状に川みたいな、これが実際は海なんですけどね、外側の海っていう形で、これをオーケアノースとギリシア人は呼んでたわけですね。
外側に横たわるものぐらいの原理らしいんですけれども、このように外側に広がっている世界としての海、水域というのが本来の意味で、これがラテン語、フランス語と伝わって、英語には1300年ぐらいに入ってきたとされています。
ヨーロッパにおいて、シチュー海っていう海があるわけですね。これはシーなんですよ。メディテレーニアンシー。それに対して、より広い海っていうのが、The Atlantic Oceanということで、同じ海は海でもはっきりと区別するんですね。
海の語源と進化
SeaとOceanっていうの。この伝統っていうのがずっとありますので、英語の中にもSea、Oceanという区別として、1300年以降ではありますけどもね、言い分けるようになってきたっていうことです。語感に違いはあるわけですよね。間違いなくね。
もう一つですね、ラテン語に由来する海っていうのもありますね。だいたいはフランス語を経由して入ってはきたんですけれども、例えばMarine、海のっていうのはMarine Corps、海兵隊ですね。それからMaritime People、海洋民族なんていうときのMaritimeですね。これはラテン語のMare、海を意味するMareから来ています。フランス語のMerというような単語ですね。
実はこれは非常に古くてMoriというインドヨーロッパ祖母の水域ぐらいの意味だったと考えられていますが、これに遡るということで、実はですね、ラテン語等を経ずに直接ゲルマン系に流れ込んで、小英語のMereという、これやっぱり海とか湖っていう意味合いでですね、使われたんですが、これ現在でも一応ですね、Mereっていう形、M-E-R-E、Mere。
湖とか沼ぐらいの意味ですが、これ使われていますね。それからMermaid、マーメイドのMareの部分、これ小英語のMere、海に遡るわけですよね。
ですので、これはMarine、Maritimeのように、ラテン語、フランス語と経て入ってきたものもあれば、元々のインドヨーロッパ祖母から直に英語に入ってきたものもあるっていうことですね、このMで始まるタイプ。
そして最後なんですが、これは知らない人が多いと思うんですが、ギリシャ語で海をThalassaって言うんですね、T-H-A-L-A-S-S-Aです。
このギリシャ語の語幹に基づいた単語っていうのが、非常に専門的な用語として英語に入ってきていまして、例えばThalassic、海洋の、とかThalassography、海洋学、主に海辺の海洋学っていうことなんですが、こんなふうに4系列揃っていることになります。
Sea, Ocean, Marine, Thalassographyのようなですね、4層構造をなしている海語の紹介でした。エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。リスナーさんからのご質問にお答えする形で、海を表す類義語の語源を考えてきました。いかがでしたでしょうか。
身近な単語こそ、こういうふうにですね、面白い話題が、語源的話題が詰まっているという、そういう例だったと思うんですね。このように質問をお寄せいただければと思います。さて、Voice、生放送のご案内です。いよいよですね、来週、もう数日後に迫ってきましたけれども、9月20日火曜日と21日水曜日の両日、午後なんですけれども、
それぞれ1回ずつ、Voice、生放送をお届けします。1つ目は、9月20日火曜日ですね、の2時50分、午後です。午後2時50分から1時間という枠で、立命館大学の岡本博紀先生と私、ホッタアートで、英語バナキュラー談義と題するVoice、生放送をお届けします。
こちらの生対談につきまして、事前に何か質問を投げておきたいであるとか、こんなことを岡本先生に聞きたいというようなことがありましたら、ぜひですね、このチャプターにリンクを貼っていますフォームよりコメントをいただければと思います。
そして、翌、9月21日水曜日なんですけれども、午後4時から1時間という予定で、生放送をお届けします。こちらはいつもこのレギュラーの放送でも、いつもと言いますか、たまに行っている英語に関する素朴な疑問、1000本ノックということで、皆さんにですね、リスナーの皆さんにお寄せいただいた素朴な疑問に対して、いつもは私1人なんですが、
今度は生放送ということで、たっぷり時間をとって、熊本学園大学の矢泉博先生と私とでですね、お答えしていくというような、そういう趣向の生放送を行いたいと思っています。
これ、英語に関する素朴な疑問に答えるという趣旨ですので、皆さんからお寄せいただければと思うんですね。こちらも先ほどと同じリンク先になりますけれども、こちらのチャプターにリンクを貼っています。飛んでいただいて、そこから質問をお寄せいただければと思います。
たくさんお寄せいただけますと、次々にですね、お答えしていくということになって、テンポがリズムが出ると思いますので、ぜひお寄せください。
それでは、週末ですけれども、今日も良い1日になりますように、ほったり市がお届けしました。また明日。