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おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ、英語史ブログの管理者、そして英語のなぜに答える初めての英語史の著者の堀田隆一です。
9月12日月曜日です。いかがお過ごしでしょうか。
いや、新しい週が始まりまして、来週ですね、このヘルディオでも何度かお話ししています。
いわゆるゼミ合宿というものを企画してるんですね。
9月20日火曜日と21日水曜日ということで、名前としてはですね、KO英語史フォーラム、KO History of the English Language Forum、略してKELFと呼んでるんですが、
KELF Conference 2022というかっこいい名前をつけているんですが、実質的にはゼミの合宿っていうことなんですけれどもね、それを企画しています。
その準備でなかなかてんやわんやという感じのこの1週間だったんですが、向こう1週間もさらに詰めの段階で準備しながらですね、
このVOICEでも生放送で部分的に皆さんにもお聞きいただけるような対談企画も用意しておりますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
レジスターの導入
さて、本日の英語の語源が身につくラジオヘルディオで扱う話題は、レジスターって何ですか?という話題です。
昨日の放送ですね、468回、エリザベス・ジョーの死をめぐってという放送の中でですね、レジスターであるとか死亡域というふうに訳すことが多いんですけれども、この用語を使ったんですね。
これまでの話題でも、このレジスター、死亡域という言葉は結構使っているんですけれども、一度ここでこの用語は何を意味するのかということですね、整理しておきたいんですね。
これ本当に便利でちょろっと使っちゃうんですよ。
だけど言語学上ですね、やはりこの概念と用語というのを押さえておくと本当に便利なことが多いので、一度ですね、やや教科書的な内容ではありますが、今回ですね、このレジスターとは何か、これについて考えてみたいと思います。
それでは本日もよろしくお願いいたします。
今日はレジスターという言語学用語についてお話したいと思うんですね。
社会言語学用語と言った方がいいんでしょうかね。
レジスターという英単語なんですけれども、日本語では、使用域とか言語使用域、使用される範囲、域ですね、ということで、他に位相というふうに訳す場合もありますけれども、ピタッと来ない訳語が多いので、レジスターとカタカナで言ってしまうことがですね、多いんですね。
多いんですけれども、この放送でもたびたびレジスターで使ってきています。
ですので、今後も使っていくことも多いと思いますし、本当に便利な用語なので、一度この辺りでですね、導入しておきたいと、しっかりと説明しておきたいと思います。
我々日本語を話したりですね、あるいは英語などを話したりするときに、言葉遣いっていう表現があると思うんですよ。
そして、状況によって言葉遣いを変えるっていうのは、日々我々がですね、生活の中で半ば無意識に行っていることです。
例えば、相手が誰かによって敬語を使ったり、使わなかったりするっていうこともありますし、手紙を書くとき、メールを書くとき、それから話すときとでは、いわゆる文体と言っていいんですかね、そういったものがかなり違うと思うんですよ。
で、すます体もあれば、である体、だ体もあるし、というようなあれですよね。日本語で言えばそういうことになります。
それから、どんな話題のことを話しているのか、あるいは書いているのかということによって、使う語彙であるとか、トーンであるとか、いろいろと微妙に異なってくると思うんですよ。
それは異なり方っていうのは、発音に表れる場合もありますね。発音とかアクセントに表れる場合もあるし、語彙を変えるっていうこともあるかもしれません。それから、文法を変えるっていうこともあるかもしれません。
言葉の様々な部分をですね、変えることによって、その場にふさわしい、いわゆる言葉遣いっていうものを使い分けているわけです。
そして、この使い分ける言葉遣いのそれぞれの範囲、領域のことをレジスターというふうに呼んでるんですね。もっと分かりやすく言うと、いわゆる言葉遣いのTPOのことです。
我々はTPOによって言葉遣いを選んで変えているわけなんですが、その一つ一つのTPOの塊のことをレジスターと呼んでいるっていうことなんですね。
これが一番分かりやすい定義だと思います。
ちなみにTPOってTime, Place, Occasionっていうことで和製英語なんですよ。
ですが、非常にうまくいっている和製英語だなと思いまして、言葉遣いのTPOを選びなさいなんて言われたときの、あのTPOがまさにレジスターと。
これはレジスターという言語学用語で、和製英語でもありませんし、広く国際的に通じる用語です。
なのでTPOと言いたいところなんですが、一応レジスターというふうに言っておきたいと思うんですね。
これなんです。
フィールドオブディスコースの考察
人は状況によって言葉遣いを変えるっていうことで、これ自然に行っていることなんですが、これがですね、しっかりと言語学の中でですね、学術的に考えられるようになったのは、そんな昔のことではないんですね。
機能主義言語学という分野の言語学で、ロンドン学派とも呼ばれますが、1960年代、ロンドン学派のハリデイという言語学者によって代々的に取り上げられたものとして知られています。
ハリデイの言語学では、言葉遣いって個人の中でもですね、状況によっていろいろ変わるものですよねという当たり前のことをですね、指摘して、そして何によって具体的に、例えばTPOだとTime, Place, Occasionということなんですが、これもう少し整理してですね、どういう時に人々は言葉遣いを変えるものなのかということを考えて、
大きく3つの判断基準があるのではないかというふうにハリデイは述べたんですね。これについて一つずつ見ていきたいと思います。
1つ目はフィールドオブディスコース、談話の場というふうに言うところのもので、談話の場、フィールドですね。
これ自体は非常に雑多で、ある意味もう無数の談話の場っていうのがあると思うんですね。日本語でも英語でもそうなんですけれども、何について話しているのかどういうふうに話しているのかっていうのをかなり広く捉える概念なんですね。
例えば、普段の日常的な言葉遣いっていうのを使っている一方で、例えば儀式であるとか儀礼なんかで使う表現っていうのは本当に限られた表現ですよね。決まった表現からある意味選ぶ、変なこと言っちゃいけない、決まった表現のみを使うみたいな儀礼とか儀式っていうのがありますよね。
つまり儀礼とか儀式っていうのは、それ自体が一つの談話の場を構成しているっていうことです。一方で、普段の日常会話っていうのもかなりこれは広いですけれども、一つの談話の場です。
それから挨拶、朝友達と会った時の挨拶っていうのもこれも一幕ですよね。一日の日常生活の一幕、その中で交わされる会話っていうのはやはりだいぶパターンが決まってますよね。たまにずれることがあってもパターンが決まっている。これなども挨拶の談話の場、挨拶という談話の場と見ることができます。
他にも無数ですね。例えば、大学の授業の講義なんていうのも一つの談話の場ですし、そしてこのVoicyのようなラジオの一つの番組っていうのも一つの場を構成していますね。
それから階段の語り、お化け話ですね。階段なんていうのもそうですし、科学論文なんていうともうパターンが決まってますよね。これなんかも一つの談話の場です。法律文章っていうのも典型的です。そして小説、これも幅がありますけれども一つの小説というジャンルと捉えることができます。
それからメールの文章であるとかチャットでの会話と言いますか文章と言いますかこういったもの、それぞれに特有の表現であるとか文法項目があったわけですよね。広くジャンルとか主題といったものに相当するかなと。
つまりありとあらゆる談話の場っていうのがあり得て考えれば考えるだけ思いつくと思うんですよ。お葬式という談話の場もあると思いますし、女王国王のスピーチという談話もありますし、居酒屋での会話っていうのもそうですね。このようにかなり広いものです。
さて、これが一つ目フィールドオブディスコース、談話の場ということでかなり雑多ですね。二つ目、これはモードオブディスコース、談話の媒体と訳していますけれども、これは話し言葉か書き言葉かっていう談話の媒体ですね。この二つです。
そして現在、コンピューターを媒体とした言語のやりとりっていうのが一般的になっていますけれども、これは話し言葉的でもあり書き言葉的でもあるっていう意味で、中間的な第三のメディア、媒体というふうにも考えられていますよね。こんなのも参入してきてるわけなんですが、そんなにいっぱいはありません。
レジスタの概念と構成要素
これやはりですね、情報の伝え方として話し言葉と書き言葉ってだいぶ語彙も文法も変わりますよね。それから発音って概念はもちろん話し言葉に限定のもので、そして文字表記っていうのは書き言葉に限定のものだったりするので、レジスタの中でもこのモードオブディスコース、談話の媒体っていうのは比較的わかりやすいと思うんですね。
3つ目、スタイルオブディスコースあるいはテナーオブディスコースと呼ばれるところのものですが、これは談話のスタイルと言っておきたいと思いますが、別の言い方するとフォーマリティ、形式ばっている度合いっていうことです。非常に形式ばった言葉遣いと略式なフランクなオープンな話し方っていうのがありますよね。
その間に中間的な段階っていうのが無数にあるわけなんですが、この堅苦しさとか軽々しさというこっちの基準ですね。これがレジスタを決定する3つ目の指標としての談話のスタイル、もっといえばフォーマリティということで考えていいですね。
談話の場、談話の媒体、談話のスタイルというふうに3つに概念上一応分けましたけれども、これは複雑に絡み合っています。
例えば居酒屋での会話っていうのは当然談話の場っていうのは居酒屋ですよね。そして話し言葉が普通だと思います。そして普通は酔っているのでスタイルとしては非常にインフォーマルなはずです。
この3つの属性が合わさって居酒屋のレジスタになるわけです。
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
今日はレジスタ使用域について解説しましたけれども、かなり広いぼやっとした概念だっていうことがわかったと思うんですね。それだけに非常に使いやすい。何々の言葉遣いっていう結局そういうことなんですよね。
居酒屋の言葉遣いであるとか謝る時の言葉遣いであるとかですね。遅刻の言い訳をする時のレジスタとかそれぐらい狭くレジスタを定めることもできるし、日常の話し言葉みたいに非常に広く捉えることもできるっていうことで伸縮自在。
勝手に新しいレジスタを設定することができる、あるものと見成すことができるって意味では本当に便利なのでついつい使ってしまうという、そういう用語の紹介でした。今後レジスタ使用域という用語をどんどん使っていくことになると思いますが、今回の解説を思い出していただければと思います。
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最後にお知らせです。
ということで、オープン一般に公開する形で2つほど企画を用意しています。
生放送企画ということで、リスナーの皆さんにももし都合がつけば、ぜひお付き合いいただきたいと思います。
1つ目は、英語バナキュラ談義と題しまして、9月20日火曜日の2時50分に放送開始です。生放送ということで1時間を予定しています。
昨日までの案内では2時45分からというふうに申し上げていたんですが、5分ずらしで2時50分からにさせていただきます。
ボイシーの生放送予約が10分刻みでしかできないということで、2時45分スタートってできなかったので、2時50分というふうに変更させていただきました。
立命館大学の岡本裕樹先生と、私ホットアートでバナキュラとは何かという話題でお届けしたいと思います。
11月25日に公開の映画グリーンライトの字幕監修を岡本先生がなされているということで、その裏話その他も聞きたいと思っています。ぜひお楽しみに。
そして2件目は翌日なんですけれども、9月21日水曜日午後4時から1時間の枠で生放送の予定なんですけれども、
こちらは熊本学園大学の矢泉博士先生と私ホットアートで、このヘルディオでも何回かすでにやっています。
英語に関する素朴な疑問1000本ノック。皆さんから質問を受け付けた上で、それについてひたすら回答していくというようなことを、今回は生放送で1時間という拡大枠でやってみたいと思うんですね。
一つ挑戦、トライアルということなんですけれども、こちらも楽しみにしていただければと思います。
2つの生放送企画なんですけれども、それぞれ事前にご質問、特に素朴な疑問というのは、疑問を集めるということが前提になっておりますので、ぜひご投稿いただければと思いますが、
1つ目の英語バナキュラについてもご質問であるとか、ご意見であるとか、こんなことをしゃべってもらえると聞きたいというようなことがありましたら、ぜひフォームよりお寄せください。
このチャプターにフォームと関連する案内のURLを貼り付けておきますので、そちらから詳細を確認いただければと思います。
それでは今週も一週間元気で過ごしましょう。
ホッタリウチがお届けしました。また明日。